INFINITE・BUILD-無限創造-   作:たいお

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第23話 暗殺の真実=忍ぶ影

 

「で、そのナイトローグがなんの用なんだ?」

『私はお前に用は無い。あるのはその男――ルー・サンチマンの方だ』

 

 ナイトローグはビルドから視線を外し、ルー・サンチマンと呼ばれた男の方へ向ける。

 

「お、おい!話が違うだろう!何故私がスマッシュになっていたというのだ!?そんなことは計画に含まれていないだろう!」

『貴様のつまらん復讐劇を達成する為には、対象を抹殺する為の強力な力だ。だから貴様にその力を与えたのだろう?』

「だから、何故私があんな化け物に変えたと聞いているのだ!スマッシュにするならば、そこら辺の適当な連中でいいという方針で通った筈だ!」

 

 先程からナイトローグとサンチマンの2人だけで話を進めており、ビルドはどういうことなのか分からず交互に見比べる。

 

「えーっと、つまりどういう状況?」

『簡単なことだ。先ずは貴様も把握している筈だろう、この男がシャルロット・デュノアの暗殺を目論んでいたということを』

「あぁ、うん」

『その理由は、シャルロット・デュノアの実母――コレット・ローレンシアとアルベール・デュノアが愛人関係を形成したことによる怨恨からだ』

 

 シャルロットがデュノア社長の愛人の娘だということは、既にシャルロット本人から聞いている。愛云々に関して疎いビルドは、その時はどこか実感の掴めない話だと思いながらそれを聞いていた。

 サンチマンの方にも視線を向け直すと、彼は発言していたナイトローグに噛み付かんばかりの勢いで睨みつけていた。

 

「あの男は……ロゼンダさんを蔑ろにして他の女と子供を設けた人間の屑なんだぞっ!正妻である彼女にのみ愛を貫き通すのが筋の筈なのに、そうしなかった堕落の存在があの男だ!!」

『貴様の事情など私の知ったことではない。デュノアグループの中でも高い財力を持つ貴様の資金援助、それを条件に復讐の為の力を与えてやった。私と貴様の都合などそれだけだ』

 

 歯を軋ませる程に悔しそうな表情を浮かべるサンチマン。

 先ず彼が名前を挙げた『ロゼンダ』というのはデュノア社長の正妻であり、サンチマンが好意を抱いている女性である。好意を抱いているとはいえ、前述通り彼女は婚約済み。2人が結ばれることは決して叶わない

 故にサンチマンはデュノアグループの一角として彼女の力になることを決意した。直接的に協力しているのはデュノア社長の方になるが、それが彼女の助けになっていると確信して。

 しかしコレットが亡くなってシャルロットがデュノア家に表立って迎えられた日を機に、サンチマンはデュノア社長が正妻以外の女性と子供を設けていることを知った。

 

 それからサンチマンは決意した。

 デュノア社長の愛人が残した宝――シャルロット・デュノアを抹殺することによって、彼の心を追い詰める復讐をしてやると。

 

「最初の暗殺をビルドによって邪魔され、奴を確実に倒すスマッシュを生み出すまで待ち続けて1年……余計な資金援助までしてやったというのに……!」

「え、俺が暗殺を邪魔した?」

『1年前のフランスに出現したスマッシュ、あれはシャルロット・デュノアを暗殺する為に我々が仕向けたものだ』

「マジか」

 

 思いもよらない真実に小さく驚くビルド。

 まさかあの時のスマッシュに人為的な思惑が施されていたとは思わなんだ、といった具合に。

 

『だが安心しろ、ビルドを凌ぐスマッシュ生成の準備は既に整った。そのままデュノアの娘を暗殺することも夢ではないだろう』

「っ、本当か!?ならすぐにそいつを出して、あいつに復讐を……!」

『いいだろう、望み通りにしてやる』

 

 そういうとナイトローグは手に持っている短銃の武器にブレード状の装備を合体させ、銃剣付きライフルのような武器を完成させる。

 そしてその銃口を、サンチマンへと向けた。

 

「っ!?おい、なんのつもりだ!?」

『1度ネビュラガスを浴びた人間が再びガスを浴びた場合、肉体がガスへの耐性を身につけてより高いレベルのネビュラガスが体内に蓄積される』

「……まさか!」

『そのまさか、だ』

≪デビルスチーム!≫

 

 ライフルのバルブ部を回し、そこから音声が発せられる。

 サンチマンにとってそれは死刑宣告のようにも聞き取れた。先程の戦闘で受けたダメージの影響で身体が思うように動かず、照準から逃れることが出来ない。

 

『復讐の為の、犠牲となれ』

「やめ――」

 

 制止の言葉も虚しく、非情にもライフルのトリガーが引かれた。

 ライフルの銃口から放たれた弾丸はサンチマンの肉体を直撃し、同時に黒い煙となって彼を覆い始めていく。

 

 ビルドは煙に包まれたサンチマンから距離を取り、ナイトローグの方へと視線を向ける。

 

「なーるほどね。最近【ネビュラスポット】から離れた場所、しかも日本ばっかりにスマッシュが現れてたのはこれが理由か。で、あんたは何者?」

『貴様が知る必要は無い』

「つれないことで。こっちとしてはネビュラガスの研究をここまで進めてるあんた……あんたらには色々と聞きたいことがあるんでね」

 

 フルボトルの主成分であるネビュラガス、その研究に携わっているとなればビルドも黙ってはいられない。あれはあくまで自分が研究する為のものなのだから。

 ナイトローグに対する敵意を高めながら、ロケットパンダの状態で戦闘態勢に入るビルド。

 

 そんな彼に目掛けて、横からロープフックが飛び込んできた。

 

「うおっ」

 

 咄嗟にそれに気付いて跳躍によって回避し、攻撃の主を視界に捉える。

 アウトロースマッシュ。右手には腕に代わってフック、左手には西洋のサーベルを携え、髑髏意匠の仮面を頭部に着けている。海賊風なルックスというのが総合的な外見評価だ。

 スマッシュは完全にビルドを標的として定めているようで、獲物を狙うような姿勢でジリジリとビルドに迫ってきている。

 

『私のことを忘れてはいないだろうな?』

 

 そう言いながらこちらに銃口を突きつけてくるナイトローグ。どうやら今回は相手も参戦して来るらしい。

 

 1対2のこの状況、先程戦闘を終えたばかりのビルドにとっては非常に厳しいものだった。

 しかし、逃げるわけにはいかない。そもそも、敵がそう易々と逃がしてくれるとも思えない。ならば戦うしかないだろう。

 

 ビルドはこれまでにない激戦になることを予想しながら、戦いに備えて構えを取る。

 そしてナイトローグに向かって、勢い良く飛び出していった。

 

 

 

――――――――――

 

 一方、こちらはIS学園。

 戦兎がスマッシュ討伐の為に抜けた後でも授業は普通に進められていき、そして本日の学業も終わりを遂げる。

 HRを終えた生徒達が教室から各自の量や自宅へと帰路につく中、既にとある場所に1人の人物が到着していた。

 

 それは、戦兎が寝泊まりしているプレハブ小屋。

 

「…………」

 

 ガチャ、と入り口の扉が小さな音を立てて開かれる。

 開いた扉から人物が入ってくる。その歩き姿は部屋の主とするにはどこか忍んでおり、そもそもこの部屋の主である戦兎は今頃スマッシュとナイトローグとの戦闘に務めている。

 よって、今入ってきた人物では戦兎ではない。

 

「…………」

 

 人物は不審な物音を立てないよう、部屋の中にある物にはなるべく触れずにキョロキョロと内部を探索し始める。

 人物は、とある『目的の代物』を探す為にこの小屋に侵入している。目的の代物は研究用スペースの方に在る可能性が高いと予め踏んでいた人物は、先ずそちらの方を探り出す。

 最初は作業机の上を調べていく。研究道具や資料の山が置かれているが、最低限のスペースは確保されており、調べる分にはまだ楽な方である。綺麗とも言い切れないが。

 だが、残念ながら目的の代物は置いてはいなかった。

 

 一旦研究スペースの方は中断し、次は生活スペースの方に移り出す。棚回りは後回しにし、まずは目に見える場所を探していくスタンスなのだろう。

 ベッド周辺を一瞥。見当たらず。

 キッチン周辺、同じく見当たらず。

 

「……!」

 

 遂に見つけた。

 テーブルの上に無造作に置かれた『それら』。普段は幾つか戦兎も持ち歩いているのだが、最近は数が多くなってある程度の数はこうして部屋に置いている。なんとも不用心なとも思うが、普通の生徒が『それら』を求めるようなことが無いので、戦兎もこうして自由にしてしまっている。

 

 人物は目的の代物を発見した喜びに胸を躍らせながら、それらに手を伸ばして――。

 

 コンコンッ。

 

「戦兎ー。もう帰って来てるー?」

「……っ!」

 

 ノック、そして女の子の声。

 誰かがこの部屋へ訪れることは無いだろうと思っていた人物であったが、その予測は外れてしまった。現に誰かがこの部屋の主を訪ねようとしている。

 人物は驚きでビクリと身体を震わせ、動きを止めてしまった。

 

「反応が無いな……まだ帰ってないのか?」

「うーん、授業のプリント渡さないといけないんだけど……仕方ないから部屋に置いておこうか」

「まぁ、教室に置いててもなぁ」

 

 ガチャリ。

 扉が来訪者によって開かれる。

 

「あれ?鍵が閉まってない……もう、戦兎ってば不用心なんだから」

「ははは。まぁこの学園で盗人なんて出て来ないだろうし、いいんじゃないか?」

「良くないよ。万が一の時に備えておかないと、後から後悔しても遅いんだよ?」

 

 この学園に通っている3人の男子生徒の内の2人、シャルル・デュノアと織斑 一夏が雑談をしながら部屋に入ってきた。

 彼らはそのまま生活スペース側の方へと足を運び、テーブルの方へと近づいていく。

 

「あーもう、こんな所にフルボトルを散らかして……戦兎って結構いい加減なところがあるよね」

「取り敢えず、プリント置きたいから脇に寄せとこうぜ。あ、落ちないようにな」

「うん。あ、メモも一応しておこうかな。後で携帯にメールもしておいてっと……」

 

 一夏が机の上の物を整理し、シャルルがメモを書き始めていく。

 この部屋に入ってきて、以前の状態を知らない彼らは当然気付いていない。

 

 

 

 

 

 机の上に置いてあったフルボトルが1つ、無くなっていることを。

 

 

 

―――続く―――

 





シャルロットの暗殺騒動については、特に引っ張らずに終わらせてしまいます。今後の壁として両親との和解と戦兎との擦れ違いの2つが残っていますので。

そして盗まれたフルボトルは未だ戦闘でも使用していないあのフルボトル……皆様ならお気付きですかね?
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