INFINITE・BUILD-無限創造-   作:たいお

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第33話 臨海学校に向けて=へぇ、デートかよ

 IS学園からそう遠くない市街地の道路を、マシンビルダーに乗ったビルドが時速80kmで駆け抜ける。通り過ぎる車を軽やかなバイク捌きで追い抜きながら、グングンと先へ進んでいく。追い抜かれた車の運転手や道行く通行人が、そんなビルドの姿を見て驚愕の色を表情に浮かべている。

 

 今回もビルドはスマッシュを倒す為に授業を抜けて現場へと向かっている。いつものようにマスターから連絡を受けた彼は、既にビルドへの変身を済ませている。

 

 それから暫くして目撃情報のあった現場へと到着したビルドは、マシンビルダーを停車させて地に足をつける。そしてそのまま周囲を見渡し始める。

 場所は既に使われていない廃工場で、近々工事の手が入る予定だと入り口の看板が示していた。しかし中の荒れ具合は、とても工事の予定が早まって出来たものだとは思えない。暴力的な地面の抉り方、壁等の損傷、間違いなくスマッシュの仕業である。

 

 だが……。

 

「なぁマスター、またスマッシュがいないんだけど」

『マジかよ。こっちもさっきから追加の情報を待ってるんだけど、全然こねーんだよなぁ』

「はぁ……これで3回目か」

 

 現場に来たのに、スマッシュがいない。ここ最近になってスマッシュを討伐しにきたビルドが味わうこの空振りは、既に1度や2度の回数ではなくなっていた。

 ビルドも続報を待ちながら周囲を探し回ってみるが、痕跡は工場内で途絶えているようで別の場所に移動した形跡は無い。空を飛べるスマッシュ、移動能力に優れたスマッシュであるならば、とっくに情報が入っている筈だ。

 

 結局、それから少し待っていてもスマッシュの情報が入ることは無かった。

 

「あーあ、今回は予め変身してすぐに対応出来るようにしたのに、これも無駄骨だったな」

『ドンマイとしか言いようが無いな。どうする、ウチに寄って売り上げ貢献に努めるか?』

「いんや、織斑先生に気付かれるかもしれないし、真っ直ぐ帰るわ」

 

 あの先生は勘が異様に鋭い。弟である一夏に対しては特に敏感で、彼がおかしなことを考えていると真っ先に見抜いてみせるのだ。尤も、当の一夏が分かりやすいというのもあるのだが。

 

『あいよ。それじゃあ気を付けて……おっ?』

「ん?まさかスマッシュ?」

『……いや、どうやらさっきのスマッシュが倒されたのを目撃した奴がいるらしい』

「倒したぁ?」

 

 スマッシュがいなくなっている時点で可能性として留めてはいたが、改めて言われると俄かには信じ難い話が飛び込んできた。

 ビルド以外でスマッシュに対抗出来る者など、現時点では軍用レベルのISくらいしか存在しない。それで辛うじて撤退に追い込める状態で、しかも公に軍用ISを使用すれば各国から目を付けられてしまうので、基本的にそれをスマッシュ討伐に向かわせることは叶わない。第一、そうなればISが市街地を飛び行く姿が目撃されているだろう。

 

 ビルドでもなく、軍用ISでもない『何か』がスマッシュを倒した。ビルドとしては聞き逃せない話である。

 

「で、スマッシュを倒したのはどんな奴だって?」

『えー何々……見たことも無い金色の戦士が現れて、そいつがスマッシュをあっという間に倒したんだとさ』

「金色の戦士とかそれ絶対に孫 悟飯だろ……勝てる気がしないんだけど」

『いや戦う前提なのがおかしいから。取り敢えず悟飯ちゃんの仕業じゃねーのは確かだべ』

「チチが乗り移ってんぞ」

 

 おふざけを入れながらも、ビルドはマスターから得た情報を脳に刻み込んだ。

 金色の戦士。それを突き止めない限り、また空振りする羽目になるに違いない。

 

 ビルドはバイクで学園に戻りながら、金色の戦士を探す方法を考えるのであった。

 

 

 

――――――――――

 

 学園に帰還した戦兎は千冬に報告した後、退室した職員室の前でシャルロットと顔を合わせた。

 

「あ、お帰り戦兎。今日も早かったってことは……」

「ただいま。あぁ、俺が着く前にスマッシュは倒されてたっぽい」

 

 どうやらシャルロットは戦兎を迎えに来たらしく、彼の進む方向に合わせて自分も肩を並べて歩き始める。ちょうど昼休みに帰ってきたので、その足で食堂に向かう算段である。

 

 食堂に着いた頃には、戦兎はシャルロットに金色の戦士のことまで伝え終えていた。

 

「金色の戦士……それが戦兎に代わってスマッシュを倒してるってことだよね」

「まったく許しがたい話だ。これで俺は3度も新しいフルボトルに出会える機会を失ったってことになるからな」

「まぁ、うん、戦兎らしい考えだよね」

 

 2人で日替わりの洋食ランチを選び、空いている2人席に向かい合って座る。戦兎はコーンスープを、シャルロットはサラダをそれぞれ1口目に選んで食事を摂り始める。

 

「けどその金色の戦士、かなり手際がいいのか……それともスマッシュに圧勝出来る程に強いのか、どっちなんだろ?」

「というと?」

「だって戦兎が駆けつける前に戦闘を終わらせて、姿を消すくらいに時間の余裕があるんでしょ?生半可な実力じゃ戦兎が着いた頃にもまだ戦ってると思うし」

「ふむ……確かにそうだよな」

 

 戦兎はシャルロットの推理を頭に噛み締めながら、パンを千切って口に放り込む。

 

「むぐ……俺としてはもう1つ気になることがある」

「何を?」

「その金色の戦士が、どうやってスマッシュを見つけ出してるかってことだ。ここ最近のスマッシュの出現地点はどこもここから近い場所にあるけど、近場を拠点にしてるにしても見つけるのが早すぎる。一般人からの発見がネットで呟かれる前に見つけて、それで倒す必要もあるんだからな」

「あ、そっか。3回目になってようやく金色の戦士の目撃情報が入ったってことは、そういうことだもんね」

 

 今回は運が良かったが、もし一般人がいち早く見つけてくれていなかったら今日も進展は得られないままだっただろう。

 そうなると、金色の戦士はどうやってスマッシュを見つけ出しているのだろうか。時間の猶予を考えると、それこそスマッシュが現れてから間もなく発見しなければならないが……。

 

「……いや、そもそも見つけ出すという発想が違うのか?」

「えっ?」

「もしもの話だ、シャル。その金色の戦士が自らスマッシュを生み出していると考えるなら、どうだ?」

「ス、スマッシュを!?」

 

 思わず大きな声を出してしまったシャルロットは、気付いた時には周囲の視線が自分に集中していることに気付く。その居た堪れなさに彼女は顔を赤らめながら肩を狭めて静かになる。

 

「ど、どうしてそういう見解に至ったのっ?」

「ぶっちゃけ憶測の域を出てないんだけどな。その金色の戦士がスマッシュを倒せるほどの力があるっていうなら、もしかすると金色の戦士はビルドの……或いはフルボトルの研究を応用して作った存在かもしれん。実際、スマッシュを即席で作ることもフルボトルを使って変身する技術を持ってる組織はいるからな」

 

 戦兎の脳裏に過るのは嘗て戦ったコウモリ男、ナイトローグの姿。

 もしも奴が金色の戦士となんらかの関わりを持っているならば、この一件は戦兎にとってますます調べる価値がある。

 

 戦兎はハンバーグの上にフォークを突き立てながら、今回の件に介入する意気込みを強めるのであった。

 

「……けどなんにせよ、先ずは金色の戦士を見つけないことには話が始まらないんだよなぁ。どうしたもんか」

「えっと、それなんだけどね戦兎。僕からちょっと提案があるんだけど……」

「ん?」

 

 提案とはなんだと戦兎がシャルロットの顔に注目すると、彼女は何故か恥ずかしそうに顔を俯かせている。先程の一斉注目の時にも顔を赤らめていたが、今の彼女の紅潮はそれとはまた違った毛色を漂わせている。平たく言うと、どこか甘ったるい雰囲気だ。

 

 そして待ち続けること数秒。もごもごと口を動かしていたシャルロットが意を決して口を開いた。

 

「こ、今度の日曜日なんだけど、僕と……デ、デート……しない?」

 

 その瞬間、周りの少女達はマンドラゴラのような声にならない悲鳴をあげた。

 

 

 

――――――――――

 

 そして日曜日。

 IS学園に最も近い大型モール、レゾナンスへと2人はやってきた。衣食住を揃えるならここ、と地元でも言われているだけあって日曜日の影響もあるだろうが今日も大きな人混みが出来上がっている。

 

 IS学園の外ということで、戦兎たちも制服ではなく私服で街に赴いてきている。

 戦兎はゆったりとした黒とグレーのツートーンTシャツに青のジーパンで、首元に薄手の黄色いスカーフを巻いている。隣のシャルロットは水色のワンピースの上に白いカーディガンを羽織っており、そこそこいいブランドのハンドバックを腕にぶら下げている。

 

 早速買い物を、と言いたいところなのだが早速問題が顔を見せ始めた。

 

「なんか周りから視線受けてね?」

「受けてるね……」

 

 周囲の人たちが戦兎たちの方を見ている。その理由は、モデルが務まりそうな美男美女の2人組が街にいることで一際目立っているから。目をハートにさせていたりデレデレしていたり、ハンカチを噛んでいたり血涙を流していたり。

 

 恐らくこの場に留まっていても面倒事に巻き込まれるだろうと踏んだシャルロットが、戦兎を連れて移動を開始する。

 

「それでシャル、まずはどこに行くんだ?」

「えっと、水着売り場かな。戦兎も持ってなかったって言ってたでしょ?」

「言ってたけど、ホントに要るのか?臨海学校なんてデータを取る為のイベントだろ?」

「そういう認識してるのはクラスでも君だけだと思うよ……1日目は自由時間なんだから、そこでちゃんと必要になるの」

 

 相変わらずの研究能な戦兎に頭を抱えながら、シャルロットは彼と肩を並べて歩いていく。

 今回の買い物デートに当たり、シャルロットは臨海学校に必要な物を揃えるという目的をその1として提案してきた。基本的に研究に必要な物と必要最低限の生活品と甘い物しか揃えない彼が水着など持っている筈も無く、彼を臨海学校の自由時間で遊ばせる為にも説得を兼ねて水着を買わせにきたのだ。勿論、自分の分も。

 いつもの戦兎なら今日は外に出ずに研究がしたいといって断る可能性もあったが、そこでシャルロットは最近の金色の戦士の出現を利用した。

 その2の提案として、こうして外出した際にスマッシュが現れた時にいち早く現場に向かえるようになるというものだ。幸いにも戦兎のバイクはビルドフォンとフルボトルさえ持っていれば持ち運びは容易なので、IS学園から赴くよりも遥かに速い。上手くいけば金色の戦士がいなくなる前に現場に到着出来るかもしれないのだ。

 

 こうして戦兎は主に2つ目の提案に乗っかってシャルと買い物することにしたのである。

 

「戦兎は海に行ったこと無いの?」

「あー、スマッシュと戦った時に2回ぐらいあったかな。どっちも海辺だったから泳いだりとかはしてないけど」

「へぇ。それじゃあ臨海学校の時は一緒に泳がない?それに皆と一緒にビーチバレーとかしてさ」

「うーん……まぁ、研究の気晴らしにでもやってみようかね」

「おっ、言ったね?約束だよ?」

 

 水着売り場に向かう足で、他愛の無い話で盛り上がる2人。

 シャルロットとしては、こうして話をすることで戦兎の人となりを少しずつ知れるのが嬉しかった。彼のことをもっと知ることが出来るこの時間が好きで、いくらでも一緒にいたいと思えた。

 改めてシャルロットは、自分が今まで他人事だと思っていた恋に夢中なのだと実感した。きっかけこそ唐突ではあったが、こんなにも自分の気持ちが昂ってしまう程に想い焦がれている。

 

「(そ、そういえば僕ら、異性で2人っきりで買い物……もといデートしてるんだよね……いやいや僕からデートって言ってたけど。ひょっとして戦兎も意識してくれてたりなんかは……)」

「ん?どうかしたのか?」

「だよね……」

「?」

 

 戦兎にそういう感性があるのなら、シャワー室で裸の状態で出くわした時にもっとそれらしい反応をしていてだろう。まさかの無反応なのだから、シャルロットも自分に女性としての魅力が無いのか不安になってしまう。

 だが、もしも戦兎が女性の……シャルロットの身体に興味を抱いたのなら、フルボトルの時のように興奮してくれるのだろうか。

 

「(ぼ、僕はどういう想像をしてるのさ……!で、でも、あんな風に求められるのもそれはそれでいいかも……)」

「シャルー、おーい、シャルー」

「は、はいぃ!?」

「どうした急に。いや、もう水着売り場に着いたんだけど」

「そ、そっか。もう着いたんだね。あ、あはは……」

 

 危ない妄想に片足を突っ込んでいたシャルロットであったが、戦兎の声が掛かったので手遅れにならずに済んだ。

 

 そんなこんなで、2人は水着売り場の前へと到着する。

 やはり女尊男卑社会の影響は売り場の体制にも及んでおり、女性の水着売り場の方が圧倒的にスペースを確保している。男性の水着売り場などその半分にも満たない広さで、まるで女性の前で肩身を狭くする男性を体現しているかのようである。

 

 さて、水着売り場が性別によって分かれているとなれば、必然的に2人はそれぞれ別の水着売り場へと行かなければならない。

 女性側にいても意味が無い戦兎がその場を離れようとすると……シャルロットが咄嗟に彼の手を握って引き留めた。

 

「うん?」

「あっ、えっと、その……戦兎に僕の水着、選んで欲しいんだけど……ダメかな?」

 

 上目遣いでそう戦兎に問いかけるシャルロット。

 彼に水着を選んで欲しいというのも勿論理由の内なのだが、折角2人でデートに来ているのにいきなり別行動になるのは寂しいから、というのも含まれてる。それに彼の水着の好みを知るいい機会でもある。

 

 やはりそういうのは面倒だろうか、とシャルロットが内心で不安を抱くのとは裏腹に、戦兎の返答はその心境を明るい方向へと晴らすものであった。

 

「いいぞ」

「え、いいの?」

「いや君頼んできた側だよね?別に俺は自分の水着に拘らないし、選んで欲しいっていうならそうするさ」

「……うん、ありがとう」

 

 自分の方を蔑ろにするのはいただけないが、こちらの要望を汲んでくれるその姿勢をシャルロットは素直に嬉く感じた。

 そのままシャルロットは戦兎を連れて女性の水着売り場へと足を踏み入れる。後で自分も戦兎の水着を見繕ってあげようと思いつつ。

 

 水着売り場に入って間もなく、戦兎たちは思わぬ顔見知りと出くわすことになる。

 

「……一夏と」

「ラウラ……?」

 

 IS学園での友人2人が、特集されている水着の前で真剣に水着を選んでいた。

 

 

 

―――続く―――

 




 中途半端になりましたが、今回はここまで。
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