クラス代表を決める為の決闘試合、当日。
放課後の時間を利用して戦兎、一夏、セシリアによる3人の総当たり戦が行われる。試合の順番については、最初が一夏VS.セシリアで次戦が戦兎VS.セシリア、そして最後に戦兎VS.一夏といった具合である。
初戦の一夏とセシリアが、第3アリーナにて激闘を繰り広げている。……と言うよりは、完全初心者の一夏が代表候補生のセシリアに翻弄されていると言った方が的確か。
一夏の動きは非常にぎこちなく、不安定な飛行で見ていて危なっかしい。セシリアの攻撃を躱していく内に徐々に動きが改善されていくが、どうしても粗が目立ってしまう。
対するセシリアはレーザーライフルによる射撃と4機のビットを切り替えて攻撃し、一夏を確実に追い詰めようとしている。相手が素人である事を踏まえて、どこか様子見を含んだ戦い方を行っている。
そんな彼らの試合を、戦兎は1組の生徒と共に観客席で観戦していた。棒付きキャンディを口に咥えながら。
「ねぇねぇ戦兎くん、次の試合に出ないといけないのにこんなところにいていいの?色々と準備とかあるんじゃない?」
丁度彼の隣にいた少女――鷹月 静寐が戦兎にそう尋ねた。
ちなみに戦兎と一度でも挨拶をしたことのある、静寐を始めとした女子生徒は戦兎から『名字は言われ慣れてないから、名前で呼んでもらえると助かる』と言われており、お言葉に甘えて名前呼びをしているのだ。
質問を受けた戦兎であったが、何てことないように答えてみせる。
「平気平気。俺はそんなに準備する必要無いし」
「そう?ならいいけど……」
「それじゃあ戦兎くんにしつもーん、織斑くんってオルコットさんに勝てると思う?」
「一夏がか?ふむ……」
隣ではないが、近くの席に座っている別の少女――鏡 ナギの質問に答えるべく、戦兎は改めて試合の状況を分析する。
先程まで補助輪無しの自転車に乗り始めた時のような危うい飛び方をしていた一夏であったが、現在はセシリアの銃撃を積極的に回避出来る程に精度を高めている。目を見張らざるを得ない成長速度と言えよう。
更になんと、そこから一夏は攻勢に転じてみせた。セシリアの操るビットの動きを見切り出した彼は4機あるビットの内の1つを斬り捨てて破壊。続けて2つ目も壊していく。
「おぉ、結構頑張るなあいつ」
「織斑くん、凄い……ひょっとして織斑くん、代表候補生に勝てちゃうんじゃ――」
「いや、無理」
「え、無理なの!?」
感心している風にしておきながら、あっさりと敗北の方を推す戦兎の答えに、彼の方を見ながら驚くナギ。
周りの少女達もその返しに驚き、ナギと同様に戦兎に意識を向ける。
「いや、だって相性とか武装の種類とかを分析すれば割と単純じゃん?オルコットのブルー・ティアーズが遠距離型なのに対して一夏のISの……名前なんだ?まぁいいや、一夏のISは見たところ近接専門。一夏に関して言えばオルコットに近付かなければ勝機は永遠に訪れない」
「「「ふむふむ」」」
「が、その一夏が素人だというのが一番の問題点だ。確かにこの試合の間に急成長してるみたいだが、飛ぶ技術を身に着けただけじゃ肉薄するのは困難だろ。ましてや相手は現役代表候補生だし」
「「「むむむ……」」」
言われてみればその通りで、クラスメイトの少女達は喉を唸らせながら戦兎の言葉を思考と混ぜて噛み締める。
少し考えてみても、この決闘における男性陣の圧倒的不利さは明白だ。相手はある程度使い慣らした専用機を持っており経験も積んでいるのに対し、彼らは操縦時間数十分程度で知識も不十分な状態。ぶっちゃけ差が大きすぎる。
そしてアリーナでは、更に状況が一変する。
4つ目のビットを封じた一夏であったが、セシリアは隠し備えていた2機のビットからミサイルを射出。誘導型のそれは反転して逃げ回る一夏を執拗に追い続け、やがて彼を巻き込んで大爆発を起こした。
その光景を見ていた観客席の少女たちは各々が驚きの声を上げる。
「あぁ、織斑くん負けちゃった……」
「あーあ残念……けど代表候補生相手にかなり頑張った方じゃない?」
「……いや、どうやらまだフィナーレではなさそうだ」
爆煙が風に吹かれ、晴れたその先にいたのは今まで戦っていた一夏の無事な姿。しかし彼の身に纏うISは、白に輝く変化を起こしていた。
初期化と最適化の2過程を終え、一次移行を経て白式は正式に一夏の鎧となったのだ。
まるで狙い澄まされたかのようなタイミングで一次移行を果たす、台本が用意されていそうな王道の展開に戦兎は無邪気に笑ってみせた。カリッと口の中のキャンディが砕ける。
「いやぁ、こういう面白い展開はいいねぇ。最っ高だな」
――――――――――
その後、一夏とセシリアの試合が終わったことによって次の試合に出る予定の戦兎は対戦相手のセシリアよりも先にアリーナの地に足を踏んでいた。
先程の試合でビットを破壊されたセシリアはシールドエネルギーの回復と予備のビット装備換装の為に一旦下がっている。間も無く登場してくれるだろう。
そして戦兎が待機すること数分後、彼女は補給と換装を終えたブルー・ティアーズを装着してアリーナへと舞い降りてきた。先程までの試合の余韻は感じられず、真新しい状態に仕上げ直されている。
「さーて、それじゃあ来た事だし始めるとしますか」
「…………」
「ん?おーい、オルコットー」
「……え?あ、はい、なんでしょうか?」
「いや、そろそろ試合始めようかって確認したんだけど」
セシリアの様子が今までとは違っている事に戦兎は気付く。これまでは言い方が悪くなるが高飛車な態度をとり続けていた彼女が、急にしおらしい雰囲気を纏っているのだ。人の心の機微には疎い戦兎だが、ここまで大きな変化には流石に気付き、彼女に強めに声を掛けたことによって漸く彼女は意識をこちらに向け直した。
戦兎の一声に『大丈夫ですわ』と告げてから気を取り直すセシリア。
「その、赤星さん。先週までにわたくしが行い続けた数々の非礼、ここでお詫びを申し上げさせていただきます……本当に申し訳ありませんでした」
「ん?何が?」
「いえ、日本の、それも男性だからという理由で赤星さんや織斑 一夏さんには失礼な対応をとり続けていましたので……その、自分でも少々頭の整理が出来ていないのですが、せめて謝らなければならないことだけは思えまして」
確かに、特にクラス代表を決める際のセシリアの主張は少々過激な発言内容が多かった。日本を極東の島国と示し、男性を猿まで言い切ってみせたほどである。一夏との試合が終わった後、セシリアの脳裏にはその時のことが頭をよぎり、彼女の心をきつく締め付けたのだ。
だから、ちゃんと謝っておきたかった。今日の試合は先刻での一夏との言い争いで引き起こしたものであり、巻き込んでしまったことも含めて。
尤も、当の戦兎は全く気に留めていないのだが。
「ふーん。まぁ悪いと思ってそれを直そうって言うんなら、俺からは別段言う事は無いな」
「わたくしの非を、許して下さるのですか?」
「科学に限った話じゃないけど、何かしら悪い所が発生すればそれを改善しようと努める。そういう姿勢は俺にも解るし。そもそも俺は元から気にしてないからさ」
からからと笑ってみせる戦兎。
そんな彼の寛大な心を見せつけられて、セシリアは穏やかに微笑みながら彼に感謝する。
だが、彼らの見解には一点の齟齬が生じている。
片やセシリアは、自分の醜態を許して受け入れてくれる優しい心の持ち主だという印象を、戦兎に抱いた。待機ピットを発つ前に抱いた一夏への感情の正体をまだ掴めてはいないが、それとは違ったものだということは感じていた。
片や戦兎はというと、セシリアのこれまでの行動を許したとか許さないとか、そもそもそういう段階ですらない。今回の試合に関しては新しいボトルの戦闘データ収集が目的であり、クラス代表を狙う心算など彼には更々無い。一夏とセシリアの口論についても傍から面白がっていただけ。
極論を言うと、戦兎にとっては『割とどうでもいい』ことであった。
戦兎の対応に温情を感じているセシリアがその真意に気付く日は、果たして。
「さて、それでは改めて試合を……と言いたいところですが、何故ISを装備していないのですか?流石に生身の状態の方と試合をするのはお断りさせていただきたいのですが……」
「おぉそうだった。それじゃあ俺もそろそろ変身するとしますかね」
「変、身?」
セシリアの疑問の声に構わず、戦兎は制服の上に来ているベージュカラーのコートの懐からビルドドライバーと2本のフルボトルを取り出すと、準備を始める。ビルドドライバーをセットし、2本のフルボトルをシャカシャカと上下に振り出した。
その瞬間、何も無い空間から突如現れる数式の立体群。
この光景にはセシリアはおろか、アリーナの観客席にいる少女たちやピットにいる一夏と箒、管制室の真耶も驚愕のあまり目を見開く。
フルボトル内の成分が十分に刺激されたところで、戦兎はボトルのキャップを回してそれぞれをドライバーに装填する。
使用されたボトルの色は、赤と青。ボトルのデザインはそれぞれ、兎と戦車。
≪ラビット!≫≪タンク!≫
≪ベストマッチ!≫
周りの注目を気にせず、戦兎はドライバーのレバーを回していく。
≪Are you ready?≫
「変身!」
小型のファクトリー【スナップライドビルダー】が赤と青のハーフボディをそれぞれ戦兎の前後に形成し、彼を挟み込むことによって変身を完了させる。
≪鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエェーイ!≫
赤と青の装甲が交差された異形の戦士、ビルドが蒸気噴出と共に姿を現す。
予想外の人物の登場に、アリーナ全体にどよめきが蠢く。
「嘘、あれって噂の……!?」
「ビルド!」
「というか、あれの正体って戦兎くんだったの!?」
ビルドが世間に姿を見せたのは、今から約3年前まで遡る。
第2回のモンド・グロッソ以降、世界に異形の未確認生命体であるスマッシュが突如として出現した。スマッシュはただ本能のままに破壊と暴力を繰り返す存在で、人類の敵とみなした世界中の政府は彼奴らに兵器を差し向けた。
しかしその結果、スマッシュの有効打となり得る兵器はISしか無かった。それも競技用ではなく、軍用レベルの出力でなければならなかった。生半可な力ではスマッシュの装甲を破る事も出来ず、また彼らの力にかかれば通常兵器は鉄くず同然と化してしまうことを人類は思い知らされたのだ。
そして初めてスマッシュが現れてから数か月後、ビルドが出現した。
ビルドはISでしか倒すことが叶わなかったスマッシュに確かな手応えを与え続け、やがて人類の前で撃破、何よりも成分の浄化という行動を見せつけた。
ビルドの登場は瞬く間に全世界に知られ、注目を浴びるようになった。
「まさか……あなたがあの庶民の噂にあった、ビルドという戦士……!」
セシリアの驚きを余所に、ビルドは懐からビルドフォンを取り出すとその中のアプリを1つタッチして起動させる。
≪ISモード!≫
機械音声と共に、ビルドフォンは変形を開始。生物の羽よりも飛行機などのウイングをモデルとしたカスタム・ウイングがビルドの背中に装着される。サイズはやや小型で、ビルドの格闘の邪魔にならない程度に自重されている。
今しがたビルドが起動した【ISモード】というのは、ビルドがISと同じ土俵で戦えるようにする為に束が開発した、ビルドフォンに内蔵された特殊アプリだ。
起動することによってビルドフォン自体はISの基本装備であるカスタム・ウイングとして形成。これによりビルドは飛行可能になるタカやロケットといったフルボトルを使用しなくても空中戦を可能にする。更に装着と同時にビルドにはシールドエネルギーと絶対防御のシステムが搭載され、エネルギーが0になるとビルドは戦闘継続不可能となる。
ちなみにウイング展開中はアプリ内の機能を殆ど併行使用できる。地図アプリで周辺の地理を開いたり、電話アプリで他ISや通常の電話に通信出来たり、赤外線アプリで疑似ハイパーセンサーのような役割を行ったり。シールドエネルギーという枷があり、ビルドのスマッシュ戦闘時における攻撃性が競技用レベルに引き落とされるが、多様なアプリ機能のノータイム使用や飛行能力を加味すれば環境によってプラスになる機能である。
「さぁ、実験を始めようか」
お決まりの台詞を放ちつつ、ビルドはラビットハーフボディの脚部に備わっている跳躍機能を作動。左足のバネ部分が発光すると共に、大地を強く踏み抜いたビルドは空中にいるセシリアに向けて急速で肉薄する。
そのスピードは驚異的で、セシリアは瞠目せざるを得なかった。
「速いっ!?」
「そぉい!」
いつの間にか手に持っているドリルクラッシャーをビルドはセシリアに向けて振るう。その攻撃はセシリアが咄嗟にレーザーライフル――スターライトmkⅡの銃身を盾にする事によって防がれ、彼女の身体が後方に吹き飛ばされる形となる。
吹き飛ばされながらも体勢を整え直したセシリアは、すかさずライフルの銃口をビルドに向けて射撃。青い閃光がビルドに襲い掛かる。
「ふっ!はっ!……って、結構衝撃来るな、この攻撃」
刀身を高速回転させたドリルクラッシャーで迫るレーザーを弾き防いだビルドであったが、腕にかかる衝撃は中々のものだった。あのレーザーライフル、油断ならない火力を持っているに違いない。
「今しがたや先の試合のように、今度は易々と接近させませんわ!」
そう啖呵を切ったセシリアがIS名にもなっているBT兵器、ブルー・ティアーズのビットを3機アーマースカートから射出。4機まで出さなかったのは、先程の試合でビット操作中は自分から攻撃出来ない事が露呈された為に、少しでもビット操作の負担を減らして自分の攻撃の余裕に当てるという目的があるからだ。
実の所、この行いは今まで全機同時運用を中心に訓練してきたセシリアにとって初めての試みだった。訓練の段階で全機運用中に自分は攻撃が出来ないと悟った彼女は精密なビット操作を第1の目標にし、励み続けてきた。
しかし、目の前にいる相手は一夏と違って明らかに戦い慣れている。もう油断するつもりはないが、それこそ先程までと同じ戦い方をしていては勝機は薄いだろうと踏んだのだ。
「さぁ兎さん、踊りなさいな!」
ビット3機による射撃とセシリアのライフル狙撃が一斉にビルドに向かっていく。
観戦した時よりも一味違う戦いに仮面の下で舌を巻きつつ、ビルドは回避と防御に徹する。
ラビットタンクの跳躍力を活かす為に、カスタム・ウイングには周辺の空間を固形化して足場にするという機能が搭載されている。これによりビルドは各フォームの機動力を活かした空中戦を行うことが出来るのだ。
「そぉい!」
銃撃の嵐を捌きながら、ビルドはドリルクラッシャーをガンモードに切り替え、セシリアに向かって弾丸を放つ。放たれた弾丸は真っ直ぐセシリアの元へ向かっていったが、彼女が横に回避行動を取ってその脇を通り過ぎていく。
ビットを操りながら自身も攻撃するというスタイルの早くも適正してきている。それはセシリアが改めて感じた強い向上心が生み出した成果なのだろう。
そして彼女はとある確信を得て、4機目のビットを投入。今ならば嘗て為し得なかったことが出来る筈だと。
「うおっ、これはちょっとキツイな……!くっ!」
そして彼女の成長は、ビルドをピンチへと追い込んでいく。
更に激しくなる銃撃の嵐に対応を迫られるビルドは、少しずつ肉体への被弾が増え始める。今までこういったタイプの敵を相手にしたことが無かった分、少々分が悪い。
そしてついに、セシリアのライフルの一撃がビルドに直撃した。ビルドにとって非常に手痛い一撃だ。
「ぐぅっ!」
「このまま押し切らせていただきますわ!」
セシリアによる一斉射撃が吹き飛ばされたビルドに襲い掛かるも、ビルドは咄嗟にドリルクラッシャーで薙ぎ払い、被害を最小限に押し留める。
「やるねぇ……ちょっと仕切り直すか!」
そう言うとビルドは地面に急降下して着地。更に腰元から茶色のフルボトルを取り出して、それを手早く奮うとブレードモードに戻したドリルクラッシャーに装填した。
≪Ready go!≫
刀身に集束された、拳型のエネルギー体。
≪ボルテックブレイク!≫
ビルドはそのままハンマーの要領でエネルギー体の纏ったドリルクラッシャーを地面に叩き付けると、強力な衝撃波と砂塵が彼を中心に発生する。それらは四方八方から迫り来るエネルギー攻撃からビルドの身を守ってみせた。
その隙を見計らって戦兎は新たなボトルを2つ取り出し、ラビット&タンクと入れ替えた。
≪タカ!≫≪ガトリング!≫
≪ベストマッチ!≫
未だに残る砂煙の中で、ビルドはベルトのレバーをグルグルと回していく。
≪Are you ready?≫
「ビルドアップ!」
新たな装甲が形成され、それの装着が完了すると共にビルドは上空に向けて飛び立った。
砂煙の中から真上に飛び出す影に、全員の視線がそちらへと向けられる。
彼女達が目にしたのは、天に舞い降りた大翼。橙とメタルカラーのクロスボディで、手にはリボルバーサイズのガトリング、ホークガトリンガーが収められている。
≪天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェア!≫
【ホークガトリングフォーム】
タカフルボトルとガトリングフルボトルのベストマッチで形成される形態である。
タカハーフボディには翼のユニットが組まれており、これによりビルドに飛行能力を付与させる。更に現在はISモードでカスタム・ウイングを展開しており、それと融合して従来よりも巨大な翼となっているのだ。翼を大きく広げるその姿は、地上の者を威圧させる程の迫力がある。
ビルドがフォームチェンジをする光景は、対戦相手のセシリアを驚かせてみせる。庶民の俗な噂話だと話半分に聞いていたセシリアは、彼の噂の詳細までは知らなかったのだ。
「勝利の法則は、決まった!」
決め台詞と共に、ビルドは翼を羽ばたかせて高速飛行を開始する。先程のラビットタンクの時よりも流動的な飛び方だが、その飛行速度と小回りは段違いだ。その証拠に、先程まで苦しめられていたビットからの多数射撃を難なく躱している。
「くっ、姿が変わるだけでここまで性能に変化が起こるなんて……!」
「ま、これがフルボトルの力ってヤツ?後、俺のてんっさいな発明の成果」
ナルシストな言動を通信越しで告げつつ、ビルドは専用武器のホークガトリンガーのマガジン部に手を添えて、そこに回転を起こす。
≪10!20!30!≫
ガトリンガーの機械音声が発生。装填完了の合図だ。
ビルドはガトリンガーの照準を4つのビットに合わせると、トリガーを引いて弾丸を発射。文字通り飛ぶように放たれたタカ型の銃弾がビットの射撃を相殺しつつ、4機の内の2機を破壊していく。
「っ、わたくしのブルー・ティアーズが……ですが、まだ2機……いえ、4機残っているのをお忘れではなくて!」
その言葉と共に、セシリアはミサイルビットからミサイルを射出。
しかし、ビルドが描いた勝利の法則は崩れていない。彼が導き出した勝利への道は……短期決戦。
≪10!20!30!≫
ビルドは誘導ミサイルの追撃から逃れながら、装填を開始。しかし30までで止めていた先程とは違い、彼の手はそこで止まろうとしていない。
≪40!50!60!≫
逃走中もビットの援護射撃が加わり、激しく空中を飛び回るビルド。それでも、彼は装填を続けていく。
≪70!80!90!≫
攻撃を続けていたセシリアも、反撃せず着々と同じ動作を繰り返すビルドの姿にどこか言い知れぬ不安を掻き立てられて、集中が少し乱れてしまう。
そして。
≪100!フルバレット!≫
ホークガトリンガーは、最大装填を完了させた。
その瞬間にビルドは逃走しながら振り向いて、ビットにもミサイルにもセシリアにも照準を定めて、トリガーを引いた。更にそれら全てを覆う特殊な結界が出現し、隔離させる。
そして銃口から放たれる100の弾丸が空を駆ける。
一部の弾丸に当たって誘爆したミサイルの爆風を突き抜け、ビットの射撃を弾幕の力で破壊していき、セシリアの元へと飛んでいく。
「しまっ――」
セシリアが回避しようとした時には、時既に遅し。既に結界に閉じ込められている彼女に逃げる時間も場所も無かった。
ライフルの射撃が間に合わなかった彼女は多数被弾して、そのシールドエネルギーをゼロに。
「……完敗ですわ」
赤星 戦兎VS.セシリア・オルコット。
勝利を収めたのは、戦兎であった。
―――続く―――
トライアルフォームを出せなかった事が悔しい……。
■ISモード■
ビルドフォンのアプリとして内蔵されている、ビルドの外付け機能。ISと試合をする時に必要だろうと、束が事前に開発していた。メリット、デメリットは以下の通り。
【メリット】
・背部に展開されたビルドフォンがカスタム・ウイングとなって装着され、タカやロケット等のフルボトルを使わなくても長時間の飛行を可能とする。また、ベストマッチやトライアルに問わずそれらのフォーム(タカ、ロケット)になる事によって飛行能力が更に上昇する。
・ビルドフォン内の全アプリをノータッチノータイムで使用可能。地図の展開、赤外線による疑似ハイパーセンサー、電話機能からの通信回線、カメラ撮影、音楽再生、テレビ等々。
・展開されたカスタム・ウイングには周辺の空気を凝縮、固形化させる機能が備わっており、ビルドの脚部装甲特有の瞬発力、跳躍力等を空中で活かす事が出来る。
・ビルドフォンにISと同様のエネルギー供給を行うことで再度変身が可能になるエコロジー。
【デメリット】
・シールドエネルギーという概念が発生することによって、それが0になると本人が戦闘継続な状態でもビルドの戦闘機能が停止し、戦闘不可能状態に陥る。エネルギーは攻撃を受けた際に減少する。
・シールドが展開しない為、敵の攻撃は通常通りダイレクトに伝わる。代わりに各フォームの防御機能は健在。
・攻撃性能が競技用ISレベルにまで引き落とされる。
■ホークガトリングフォーム■
【身長】193cm
【体重】107kg
【パンチ力】9.7t(右腕)10.0t(左腕)
【キック力】13.5t(右脚)14.2t(左脚)
【ジャンプ力】41.7m
【走力】5.8秒
―タカハーフボディ―
①ソレスタルウィング:背中の可変飛行ユニット。内蔵エアブースターを稼働させることで高速飛行が可能になる。巨大化した翼で身を包み、敵の攻撃を防ぐことも。
②BLDストームショルダー:右肩部。内蔵エアスラスターを利用して飛行中の姿勢制御を行う。
③ブラストチェストアーマー:胸部の軽量装甲。激しく渦巻く空気のシールドを纏い、急降下突撃の威力を引き上げる。
④フライハイアーム:右腕部。高圧エアを利用して腕部の運動能力を向上させており、高速パンチを繰り出すことが出来る。
⑤BLDストームグローブ:右拳の強化グローブ。安定した素早い動作が可能なため、ホークガトリンガー等の武器を用いた攻撃を得意とする。
⑥フライハイレッグ:左脚部。高圧エアを利用して脚部の運動性能を向上させており、高速キックを繰り出すことが出来る。
⑥スカイクローシューズ:左足のバトルシューズ。脚先に隠した鋭い爪をキック攻撃時に展開し、敵に痛撃を与える。
―ガトリングハーフボディ―
①アームドチェストアーマー:胸部の重装甲。高精度のパーツを隙間無く組み合わせることで、物理攻撃に対する強度を高めている。敵の防御特性に応じた特殊弾を生成し、装備中の武器に装填する。
②BLDガンナーショルダー:左肩部。変身者の射撃動作等を最適化し、銃撃と格闘を組み合わせた高度な戦闘を可能にする。
③ガンメタルアーム;左腕部。防御に優れた重装甲で覆われており、重い鉄材を叩き付けるようなパンチで敵に衝撃ダメージを与える。
④BLDガンナーグローブ:左拳。グローブ表面を特殊火薬で覆い、爆発を伴うパンチで敵を吹き飛ばすことが可能。
⑤ガンメタルレッグ:右脚部。防御に優れた重装甲で覆われており、重い鉄材を叩き付けるようなキックで敵に衝撃ダメージを与える。
⑥ガンバトルシューズ:右足。シューズ表面を特殊火薬で覆い、爆発を伴うキックで敵を消し飛ばす。