INFINITE・BUILD-無限創造-   作:たいお

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第7話 忍び寄る悪意=少女の危機

 

 クラス代表を決める為の決闘が終了し、翌日のSHRにて真耶の口からクラス代表が発表された。

 決闘の戦績は、戦兎が2勝でセシリアが1勝、一夏が勝利無しという結果に収まった。結果的に見れば一番成績の良かった戦兎がクラス代表になるところなのだが……。

 

「というわけでクラス代表は、織斑くんに決まりました!皆さん拍手ー」

「「「「「「フォォォォォォォウ!!」」」」」」

 

 

クラス代表になったのは一夏であった。当の本人は自分がなるとは思っていなかったらしく、周りの喧騒に置き去られて茫然としている。が、すぐ我に返るとガタッと席を立つ。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!俺、1回も勝ててなかったんですけど……」

「あ、それなんですけどね。オルコットさんと赤星くんが辞退したからなんです」

「じ、辞退!?なんで!?」

 

 名前が挙がった2人に向き直る一夏。しかし赤星もセシリアも何食わぬ顔で着席したままであった。

 

「だってクラス代表になったら俺の研究や発明の時間が削れるじゃん?嫌だよ」

「わたくしも、先日はこの場で大変失礼な発言をしてしまいました。代表候補生という立場ではあってはならない発言の数々、そのような無礼を働いてしまったわたくしにクラス代表になる資格はありませんわ」

「つまり」

「一夏さんがクラス代表に」

「なるしかないってことだ」

「皆さんも、きっとそれを望んでいますわ!」

「ですわ!」

「ええい、交互に喋るなややこしい!そして最後の最後を適当な相槌で済ますな!」

 

 そんな一夏の抗議も虚しく、周りのクラスメイトは戦兎とセシリアの言葉に賛成して一夏のクラス代表を支持している。残念ながらこの場に一夏の味方はいない。

 

「そういうことだ織斑。勝利した者には権利が与えられるが、全敗したお前に拒否権など与えられない。大人しくクラス代表に就任しろ」

「ど、どうしてこうなった……」

 

 これで決まりだ。

 

 

 

――――――――――

 

「ふんふんふーん……」

 

 放課後、戦兎は自身の寮室であるプレハブ小屋の研究スペースにて各ウェポンのチェックを行っていた。ドリルクラッシャーを分解し、駆動部に緩みが無いかを確かめる。今回はセシリアとの試合でも一夏との試合でも活躍してくれたので、点検は念入りに。

 

 今頃は食堂で一夏のクラス代表就任記念パーティが行われていることだろう。1組で料理やお菓子やジュースを持ち寄ってワイワイする、ありふれたパーティだ。

 

 しかし戦兎はそのパーティには出席せず、こうして部屋でビルドの装備を構っている。クラスメイトたち、特に一夏からは出席してくれと強くせがまれた為、途中からの参加ということでその話は決着がついている。

 パーティには戦兎の好物である甘い物も用意されており、その辺りを聞けば彼も出席したくなる。だが彼にとっては食欲以上にビルドの方が大事なので、先ずはこちらの方に手を付けたかったのだ。

 

 すると、机上のビルドフォンに着信が入った。

 戦兎がそれを手に取って電話に出ると、相手の声が届く。

 

『よう戦兎、調子はどうだ?』

「あぁ、マスター」

 

 相手は戦兎がマスターと呼んでいる、1人の男性であった。

 男の名前は【石動 惣一】。【nascita】という喫茶店のマスターで、戦兎も名前ではなくそちらで普段から呼んでいる。元々は宇宙飛行士で、10年前から束と面識があるという由縁で戦兎も彼と知り合うようになった。

 

「もしかして、スマッシュかっ?」

『残念ながら、スマッシュの目撃情報は無い。まぁ久しぶりに世間話でもと思ってな』

「なんだ……」

『おいおい、そんな露骨に残念そうな声するなよぉ。48歳が年甲斐も無く泣いちゃうぞ?』

 

 マスターが戦兎に協力している内容は、スマッシュの目撃情報を彼に伝えること。

 マスターはネットで開いている【スマッシュがいまっしゅ!】という独自のサイトを運営しており、そこにはスマッシュを目撃した一般人が情報を書き込むことが可能である。『自分の情報で仮面ライダーが助けに来てくれる、自分は人助けに貢献している』という心理を利用して現場の情報を集め、授業や研究などで情報チェックが疎かになる戦兎にマスターが届けるといった仕組みになっている。初期は悪戯も少なくはなかったが、今ではその辺りは改善されており、確かな情報筋も出来ている。

 

『ところでどうよ、女の園に入った感想は?』

「男女比率は予想通りだったな。いや予想外ならそれはそれで驚くけど」

『かぁっ……お前ってば本当になぁ。そういうことを聞きたいんじゃないんだよ俺は。もっとこう、かわい子ちゃんがいたとかそういうのをさぁ期待してるんだよ』

「かわい子ちゃん?いや、そんな名前の女子は聞いたこと無いけど」

『なんだよその酒の席で酔っ払って決めたような名前。違う違う、可愛い子、見た目がいい子のこと!』

「見た目?全体的に顔立ちは整ってると思うぞ、客観的に見て」

 

 マスターの質問に対して、なんともドライな返しをする戦兎。

 戦兎にとって男女の違いは興味が無いに等しい。女子しかいないこのIS学園に編入されられて一夏が心労を増やしていたのに対し、戦兎は何とも思っていなかった。尤も、束に拾われた時から彼の周りには彼女とクロエという女性メンバーしかいなかったのだが。

 

 マスターもマスターで、そんな戦兎の性分を何とか直してみようと話題を吹っかけ続けているのだが、これが中々上手くいかない。マスター曰く、折角の青春時代に研究ばかりにかまけているのは流石に泣ける……とのこと。

 

『はぁ、お前ってやつは……果たして在学中に恋人が出来るのやら。あ、美空は絶対に渡さんからな』

「美空がどうかしたのか?」

『気にすんなよ。ツッコんだらウチのコーヒーお預けだかんな』

「はぁ、まぁいいけど」

 

 マスターの淹れるコーヒーは、不味い。本人自慢のオリジナルブレンド【nascitaで何シタ?】は作る本人も認めるほどに不味い。現在は豆から拘ろうかと栽培面にも目を向け始めているが、未だ実現は叶っていない模様。

 ちなみに、戦兎は普通にそのコーヒーを飲めたりする。彼曰く、刺激的な味わいのコーヒーらしい。尤も、砂糖をガンガン入れるのが彼のスタイルだが。

 

『そう言えばお前、休日とかはこっちに遊びに来れたり出来るの?』

「ん?まぁ大丈夫だと思うけど」

『おっ、ならいいな。折角だからそっちで出来た友達を誘って来いよ。コーヒーのサービスくらいはしてやるからさ』

「でもサービスなんかしたら、只でさえ客足が悪くて儲かってない店が潤わないんじゃ――」

『うっせ!その分、食いもんから徴収するからな覚えてろよ』

 

 恨めしそうに台詞を吐き捨てるマスターと、自分よりも二回り上の大人をフッと鼻で笑う戦兎。

 そんな2人も知り合ってから数年。浅からぬ縁が確かにそこにある。

 

 

 

――――――――――

 

「えっと、この先の道を行けばIS学園ね……」

 

 夜。1人の少女が人気の少ない道を歩いている。

 少女の名前は凰 鈴音。中国の代表候補生にして、専用機【甲龍】を持つ者である。ボストンバッグ片手にその足が目指す先はIS学園、彼女はそこに転校することになったのである。

 4月の中旬にも満たない非常に中途半端な転校だが、それも全て彼女の想い人がIS学園にいるという理由から。

 

「一夏のやつ、男でIS動かすって何やってんのよホントに。実は女だったとか?」

 

 そう独りごちる彼女の口元は緩んでいた。言葉は相手に呆れているような印象だが、どこか嬉しそうにもしている。

 織斑 一夏がISを動かしたというニュースを聞いた途端、自分がISの操縦者になったのは運命だったんだと鈴音は直感した。当初はIS学園に興味が無かったので入学は辞退していたが、彼が入学すると決めた途端に掌を返して軍部にIS学園への入学を希望し、現在に至る。非常に無茶苦茶な話だと思うが筆記も実技もクリアー、特に実技はトップクラスの成績を収めるなど、確かな実力を彼女は有していた。

 

 IS学園に着けば、彼に会える。

 そう思うと鈴音の足取りは更に軽くなった。

 

 

 

 

 

『随分とご機嫌だな、凰 鈴音』

 

 しかし、上機嫌も長くは続かなかった。

 突然自分に掛けられた声に、鈴音は素早くそちらを振り返った。彼女が視線を向けた先は、暗い夜道とそれを照らす一筋の街路灯。

 

 暗闇の中から現れたその人物は、灯りに照らされてその姿を露わにする。

 生身の身体とはかけ離れた黒いボディスーツ、上半身には銀の装甲が施されており、肩辺りには煙突状のパーツが複数並んでいる。更に胸部とマスクのアイ部分は金色の蝙蝠状のデザインがある。

 それは一般人と名乗るには明らかに異形な存在だった。

 

「誰よあんた、不審者で通報するわよ」

 

 警戒心を露わにする鈴音。コスプレイヤーという線も無くはないが、名前を呼ばれた時点で彼女の中で可能性は0になっていた。単なるコスプレイヤーが、IS学園に転入するという報道が一切起きていないのにこんな夜道に出くわして、自分の名前を呼ぶなど有り得ない。

 

 しかしコウモリの怪人は鈴音の鋭い眼光にも全く意を介していない。

 

『なに、IS学園へ強引に転入できた貴様に我々からプレゼントを贈ろうと思ってな』

「はんっ、プレゼント?だったらせめてサンタの格好でもしてきなさいよ。そんなナリで贈り物したって危ない仕事にしか見えないのよ」

『御託はいいから素直に受け取っておけ。なにしろ……』

 

 コウモリの怪人は手に隠し持っていたライフル【トランスチームガン・ライフルモード】のバルブ部分に手を掛け、その部分を回転させる。

 

≪デビルスチーム!≫

 

 そしてその照準を、鈴音へと向けた。

 

『織斑 一夏と感動の再会が出来る舞台を用意してやるんだからな』

「えっ……!?」

 

 コウモリ怪人の口から良く知っている人物の名前が出たことによって、鈴音は思わずそれに気を取られてしまう。

 だが、その一瞬の隙が命取りとなる。

 

 ライフルから射出された弾丸が、真っ直ぐに鈴音の身体に向かって放たれ、そして命中する。ISを展開出来ていれば防げていた攻撃を、鈴音は隙を見せたために受けてしまったのだ。

 弾丸は鈴音の身体に直撃した瞬間に炸裂し、彼女を覆い尽くすほどの黒い煙が出現する。

 

「嘘っ、何こ――が、あ゛ぁっ!?」

 

 煙の影響で苦しみ悶える鈴音。既に彼女の精神状態はISを起動することもままならないほどであった。

 

『そういえば、まだ名前を名乗っていなかったな』

 

 未だ黒煙の中で苦しんでいる鈴音に向けて、淡々とコウモリの怪人は言葉を投げ掛けた。今の鈴音にその言葉が届くことは無いと知っていながら。

 

『私の名前は……【ナイトローグ】だ』

 

 コウモリの怪人――ナイトローグは背中の羽根を広げ、飛翔する。雲から現れた月によって照らされたその姿は、まさに夜を駆ける1匹の蝙蝠であった。

 

 

―――続く―――

 

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