重ねたキズナと巡る世界   作:唯の厨二好き

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展開を調べるので精一杯。

今回は淡々としすぎているかも・・・


第13話 まだまだハンター試験

 一次試験のゴールに到着後、イオリア達は、先ほど捕食生物に対応できなかった者は棄権した方がよいと触れ回った。

 

 大抵の者は最初から其のつもりだったのか、素直に棄権を申し入れ、渋った者も次はない旨を説かれては命が惜しかったのか、やはり棄権を申し入れた。これにより相当な数の受験者が棄権することになった。

 

 正午になり、二次試験会場の扉が開いた。そこで、イオリア達を迎えたのは美食ハンターのブハラとメンチだった。

 

 お題は、ブハラが豚の丸焼き、メンチが寿司だ。豚の丸焼きは問題なかったのだが、川しかないのにどうやって寿司を作るんだ? とイオリア達は頭を抱えた。

 

 受験者の大半が寿司という料理自体知らないことを考えるとアドバンテージはあるのだが、こんなの試験になるのか?と思わずジト目を向けてしまうイオリア達。

 

 おそらく未知の物に対する対応力でも見ているのだろう。たぶん、きっと。そう無理矢理納得したイオリアは、用意されていた調味料の選別をミクに、火の用意をテトに任せ、自身は川に向かった。

 

 その時、まったく忍ばない忍者であるハンゾーが寿司の概要を話したため、イオリアを追い越して川へ殺到する受験者達。唯一考えつく試験の意義が早速崩れてしまい、イオリアのテンションはダダ下がりだった。

 

 これでいいのかハンター協会、と内心ツッコミを入れながら、川魚に小石を高速で投擲し仕留めていく。一応【圓明流:雹】という技だが、食材ゲットに使っているので何とも締まらない。

 

 イオリアは、悪戦苦闘する受験者を尻目に、さっさと数匹を確保するとミク達の元へ戻っていった。

 

 周りの受験者が、イオリアの早業にポカンとしているのは無視である。ヒソカがニヤニヤしているのも無視である。キルアとゴンが対抗心を出してか小石の投擲を始めたのは微笑ましい。

 

 戻ったイオリアは、ミクに酢飯を作らせ、自身はテトと魚を捌く。淡水魚は寄生虫の危険性が高いので、ミンチにした後、ハンバーグ状にして和風だしで食べる寿司にするつもりだ。

 

 ……美食ハンターなら寄生虫ごときどうということもないのかも知れないが。

 

 ちなみに、ミクは酢飯初挑戦である。知識はあるし、フフンッと鼻息荒くやる気十分な様子だから大丈夫だろう。

 

 他の受験者がチラチラ此方を見ているが、イオリア達の作る寿司は、現代日本の「もう絶対迷走してるよね? 既に寿司じゃないよね?」とツッコミを入れたくなるような回転寿司のメニューを参考にしてるので、真似すれば余計に寿司からかけ離れるだろう。

 

 そうこうしている内に、ハンゾーが如何にも寿司! という感じの料理を持っていく。

 

 当然、生なのだが、やっぱり平然と食うメンチ。手間を掛けてるのが虚しくなるイオリアだったが、ハンゾーの見た目完璧な寿司ですら、あれこれダメ出しをしてやり直しをさせるメンチに、主人公組はどうやってクリアしたんだ!? と驚愕する。

 

 後に、会長ネテロが来て試験自体やり直しになるのだが、そんなことは知らないイオリアは、主人公補正ってスゲーと的はずれな感想を抱いていた。

 

 既に何人もの受験者が追い返され、ようやく完成した和風魚肉ハンバーグ寿司を持ってメンチの下へ行くイオリア達。三人分、微妙に味も変えてある。

 

 メンチは、なんだこれ? という視線を向けてきたが、取り敢えず食うことにしたらしい。さすが、美食ハンターである。全てはまず食ってからとは恐れ入る。

 

 イオリアがやっぱりダメか? と半ば諦めの境地にいると、突如、メンチの目がクワッと開いた。

 

「合格! 試験はここまで!」

 

 メンチの声が響く。次の瞬間、「何ぃぃーーー!」という悲鳴が会場に響いた。早速、ハンゾーが不当を訴える。

 

 曰く、そんなの寿司じゃない(尤もだ)。自分の寿司の方がましだ(全くである)。

 

 曰く、そもそもハンター関係ねぇ(ついに言ってしまった)、と。受験者から一斉にブーイングが押し寄せる。

 

 メンチもまた反論した。曰く、この試験は未知に対する対応力をみる点にある(イオリアの推測まんまだった。)

 

 曰く、川魚は寄生虫がいて危ない(じゃあ何でお題を寿司にした)

 

 曰く、見た目は寿司らしくないし、味もまだまだだが、丁寧で手間がかかっており、食べる者のことを考えて作っている。料理人とはかくあるべし(誰も料理人なんて目指してない)、だそうだ。

 

 さらにヒートアップする受験者と逆ギレを始めるメンチが遂に衝突すると言うとき、ハンター協会会長ネテロが現れた。

 

 そして、メンチを説得し、クモワシの卵でゆで卵を作るという試験に変更された。イオリア達も、難なく卵を取って来て合格を得た。

 

 現在、イオリア達は、三次試験の会場に移動するため飛行船に乗り込み、与えられた部屋で寛いでいた。

 

「はぁ~、やっと落ち着いた。何か濃密な一日だったな。主に変態ピエロのせいだが……」

「お疲れ様です、マスター。折角寛いでいるんですから、アレの話しは止めてくださいよ~」

「まぁ、変態ピエロ以外にも目を付けられてるっぽいけどね……三次試験も大変そうだよ。」

 

 イオリアは、テトの言葉に若干うんざりしながら、「聞こえな~い」とばかりに部屋の中をゴロゴロする。

 

 ミクはそんなイオリアを見て、興が乗ったのか「え~い!」と言って飛びつき、一緒にゴロゴロする。テトもクスクスと笑いながら、イオリアに飛び込んだ。

 

 やはり、ヒソカの相手は相当精神を消耗したらしく、しばらく三人は幼児退行したようにジャレ合っていた。

 

 一方、イオリア達の部屋の外には、滂沱の涙を零すレオリオと、気まずそうに目を逸らすクラピカ、若干頬が赤いキルア、苦笑いするゴンがいた。

 

 昼間のイオリア達の強さや行動に強い興味を持っていた四人は、一度ゆっくり話してみたいと、イオリア達の部屋を訪ねたのだ。

 

 そして、いざノックをしようとしたとき、中から楽しそうな男女の笑い声が聞こえ、さらに、「やんっ、マスターどこ触ってるんですか~」とか「ふふ、マスターのエッチ」などミクとテトらしき声も聞こえて、明らかに「イチャついてるんですね、わかります」という状況になって、遂にレオリオが男泣きを始めたのだ。

 

 ミクもテトも十人中十人が認める美少女だ。そんな二人と試験中にイチャつきやがって~! とレオリオの胸中に嫉妬の渦が巻く。

 

 いっそ、このまま乱入してやろうかと目が本気になり始めたところで、クラピカが羽交い絞めにして部屋に引っ張っていった。ゴンとキルアは飛行船の中を探索に出た。

 

 ゴンとキルアは、探索中ネテロと遭遇し、ゲームをすることになった。ネテロの持つボールを奪うという単純なゲームだ。

 

 しかし、ネテロは右手・左足を使わないという余裕を見せ、ゴンとキルアの猛攻を掠らせることすらしない。次第にヒートアップしてきたキルアはこれ以上やると殺す気でやってしまうと考えリタイアした。

 

 廊下を歩いていたキルアは、思い通りにならないどころか軽く遊ばれたことに湧き上がる激情を抑えきれずにいた。

 

 そんな時、運悪く廊下の曲がり角で、二人の受験者とぶつかってしまったキルアは、相手の態度と相まって、ナイフよりも切れる手刀を二人に振るった。本来なら二人の受験者は、何が起きたかも分からずに切断され事切れていただろう。

 

 しかし、そうはならなかった。キルアの手刀が二人の受験者に到達するまさにその瞬間、とてつもない殺気がキルアに叩きつけられたのだ。

 

 あまりの殺気に思わず硬直し、手刀が止まる。二人の受験者がチラとキルアを見るが何事もなかったかのように通り過ぎていく。

 

 二人には、キルアの感じる殺気が感じられなかったのだ。つまり、濃密でありながら完全に指向性を持った殺気ということになり、生半可な相手ではないことを示す。

 

 キルアは、ギギギと音がなりそうなぎこちない動きで振り返る。

 

 そこにいたのは、イオリアだった。

 

 イオリアは二人の受験者が完全に廊下の向こうに消えたのを確認すると、殺気を霧散させた。そして、さざ波ひとつ立たない静かな瞳でキルアを見据える。殺気は既になくとも、キルアはその瞳に射すくめられたように硬直したままだ。

 

「なぜ、殺そうとしたんだ?」

 

 イオリアが瞳と同じように静かな口調で尋ねる。キルアは、まるで自分が叱られているかの様に感じ、なけなしの矜持をかき集めて反発した。

 

「あんたには関係ないだろ」

 

 その言葉に、イオリアは少し考える素振りを見せ、再び、キルアに目を合わせる。

 

「昼間の俺を見れば、関係ないで済ます人間でないことくらいわかるだろ? ……まぁ、それはいい。確かに、キルアの人となり自体は、俺には関係ないしな。……だが、ゴンはどう思うかな?」

 

 キルアは、ゴンの名前が出た瞬間、自分の最後の矜持がガラガラと音を立てて崩れた気がした。

 

「お前が友情を結んだ相手は、八つ当たりで、人殺しをする人間を許容するのか?」

「な、なんで、八つ当たりって……」

 

 キルアは青ざめた顔で反論にもなってない返しをする。それが精一杯だった。

 

 キルアの心中は現在、自己嫌悪の嵐でグチャグチャなのだ。ゾルディック家という暗殺一家に生まれ、拷問の様な訓練を耐え、言われた通りに人殺しをする。そんな自分が嫌で、家が嫌で、暗殺者でない自分を探すために家を出たはずだった。

 

 なのに、自分はごく自然に人を殺そうとした。やはり、自分は所詮人殺しなのか。ゴンは、こんな自分と友達になどなってくれないのではないか。そんな思いがグルグルと渦巻く。

 

「お前らが会長と遊んでる()が聞こえてたからな。大体想像つく」

 

 イオリアは、そんなキルアの様子から、ちょっと言いすぎたか?と気まずげにし、次いで、ため息をつくと「説教とかガラじゃないんだが・・・」と呟いてキルアに語りかけた。

 

「キルア、お前、ちゃんと戦えよ」

「た、戦う?」

 

 イオリアの唐突な発言に疑問を浮かべオウム返しするキルア。

 

「そうだ、お前、今までの自分じゃない何かになるために家を出たんだろ?惰性だけで叶うと思っていたわけじゃないよな?なら、戦わないと。嫌な自分を押し付ける周りと、嫌な自分のままで居ようとする自分と。ゴンと友達で居たいんなら流されるなよ。さっきのお前は、戦うことすらなく、嫌な自分に屈したんだろ?」

 

「でも、俺は、ゾルディックで……」

 

「言い訳するなよ」

 

 イオリアの言葉に、ゾルディック家の教育のせいで仕方ないんだ、お前に何がわかる! と反論しようとしたキルアだったが、イオリアにバッサリ切られる。

 

「言い訳は逃げにつながる。逃げ続ければ、もう止まらないぞ? 坂道を転がる石みたいにな」

 

 イオリアの言葉に俯き、遂に言葉を発しなくなったキルア。やべ、ちょっと厳しすぎたか? とイオリアが若干焦る。イオリアの言葉は、常に自分に言い聞かせている言葉でもある。傍から見れば随分と自分に厳しいのだが、その自覚がないイオリア。

 

「まぁ、少なくとも、願うことは止めるな。理不尽な状況に仕方ないなんて思うな。例え、どうしようもない状況に陥っても足掻くことだけは止めるな。そうすれば、誰かが微笑んでくれる……かもしれない。俺は神様みたいなヤツに微笑んでもらったしな」

 

 キルアは、その言葉に顔を上げ不機嫌そうな顔をする。

 

「なんだよ、足掻いていればゴンと友達でいれるのかよ? そんな簡単な話じゃないだろ」

「だが、諦めるつもりがないなら、足掻くしかないだろう?」

「ふんっ」

 

 キルアは、禅問答じみてきたと思ったし、ただの根性論だとも思ったが、妙に自信満々に語るイオリアに少し気持ちが落ち着いてくるのを感じた。

 

 実際、イオリアは自分より遥か高みにいる。その男が、おそらく経験から培った思いを伝えているのだ。全てに納得できる訳ではないが、キルアは、少なくとも言い訳することだけは止めようと思った。

 

 だが、ほだされた様で癪に障るので、ささやかな反撃に出ることにした。

 

「試験中に、女とよろしくやってるような奴の言葉に説得力なんてねぇよ」

 

 ニヤと笑いながら、鬼の首を取ったように笑うキルアに、「ほぅ」と呟きイオリアもまたニヤと笑う。その笑顔に嫌なものを感じたキルアが咄嗟に逃げようとしたが、そうは問屋が卸さない。

 

「なるほど、キルア少年は、俺達のアレコレを覗き見して、興奮したと。それが忘れられないわけだな? 女の子に興味があるお年頃か~もしかして羨ましかった? うん?」

 

 果てしなくウザいイオリアが其処にいた。純情なキルアは顔を真っ赤にして「そ、そんなわけないだろうが!」と言って、ダッシュで逃げていった。からかい過ぎたか、と苦笑いするイオリアは、キルアが望む自分になれますようにと祈りながら、パートナー達の待つ部屋に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 一方、その頃、試験官控え室では、サトツとブハラとメンチが夕食を取りながら雑談に興じていた。

 

 話題はもちろん今年の受験者についてだ。今年の新人は例年に比べ期待できる粒ぞろいだとか、メンチの試験はないだろうとか、そして、注目する受験者は誰かという話になった。

 

「悪い意味で44番でしょ。あれは相当やばいって。いい意味なら、11番12番13番かな。彼等、最初からグループみたいだし。関係が気になるわ」

「ああ、お前が唯一合格出した奴らか。あれも相当だな。纏も上級者といってもおかしくないレベルだしな」

「私も、彼らには注目しております。何せ、一次試験で死者がたった2名しか出なかったのは、彼らが全員を守ったからですしね。行動原理、実力ともに注目に値します」

 

 その言葉に、驚愕を顕にするメンチとブラハ。

 

 過酷なハンター試験での死傷など自己責任だ。それをわざわざ守るなど理解し難い。しかも、実際、ヒソカに殺られた二人以外は守り通したというのだから、そのようなことプロハンターでも難しいことを考えるとますます驚きだ。

 

「しかも、亡くなった二人も、遺体を運んできました。できれば弔いを、と」

「なにそれ? 正義の味方か何かのつもり?」

「まぁ、なかなか立派な心意気だと思うぞ」

 

 メンチはどこか胡散臭そうに、サトツとブラハは感心しているようにイオリア達の話をする。いずれにしろ、イオリア達は注目される運命のようだ。

 

 

 

 

 

 

 三次試験の会場はトリックタワーと呼ばれる高い塔の屋上から始まった。72時間以内に生きて下まで降りることが試験内容だ。

 

 しかし、屋上には扉らしきものはなく、どうしたものかと受験者達が迷っていると、クライマーだという男が外壁を伝い降り始めた。

 

 あっという間にスルスルと降りていくクライマーを何となしに見ていると、巨大な鳥がクライマー目掛けて高速で突っ込んでいく。よく見ればその鳥は人面鳥だ。激しくキモイ。あわや食われるという瞬間、イオリアが叫んだ。

 

「テト!」

 

 イオリアがテトの名を呼んだと同時に、テトは銃:アルテを抜き発砲。銃弾は狙い違わず人面鳥の眉間を撃ち抜いた。「クケー!」という悲鳴と共に、錐揉みしながら落下する人面鳥。

 

「早く上がってこい!」

 

 イオリアの大声に、死の恐怖から呆然としていたクライマーは、慌てて塔を登り始める。

 

 その間も、人面鳥はクライマーを喰らおうと襲っていくが、そのことごとくをテトは一撃で阻害する。一応、銃弾は柔らかな鉛を使い威力も抑えてあるので、激痛が走るくらいで死にはしない。

 

 周囲で成り行きを見守っていた受験者やゴン達はテトの精密射撃に驚嘆の表情だ。高い塔の上は当然強風が吹いている上、飛んでいる鳥の眉間を撃ち抜いているのだから、その驚きも当然だろう。

 

 やっとの思いで登りきったクライマーは、安堵して座り込み、テトやイオリアに何度も頭を下げて礼を言った。

 

 ちなみに、これで棄権するらしい。

 

 屋上の端で座り込むクライマーを尻目に屋上を改めて見回すと、受験者が減っていることに気が付いた。どうやら、隠し扉が有り、それで塔の中に入れるらしい。

 

 イオリア達も扉を探す。暫くして見つけたものの、どうやら一人ずつしか入れないようだ。イオリアは、この先別れることを考えてミクとテトに拳を突き出した。それに合わせて拳を付き合わせるミクとテト。三人は頷きあって拳にキスした。そして、意を決して塔の中に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 テトが到着した場所は広場のようで誰もいなかった。何かないかと辺りを見回し、壁に書かれた案内に気づく。どうやらここは多数決の道と言うらしい。多数決の道は5人の受験者の多数決で進まねばならないらしく、仕方なくテトは壁にもたれながら受験者が揃うのを待った。

 

 10分ほど待っていると、ついに4人が揃った。その4人は、ゴン、キルア、クラピカ、レオリオで面識のある人物であることにホッとするテト。笑顔でゴン達に声を掛ける。

 

「ゴン君。皆。こっちだよ。ここに案内があるよ」

 

 テトの呼びかけに気づいて近寄ってくるゴン達。壁にある案内の内容を読んで、テトを含めた5人で進むことになったと理解したようだ。

 

「そういう訳で、よろしく、皆。改めてテトだよ」

 

 そう言って、手を差し出すテト。ゴン達もテト達の人となりが信頼に値することは今までの言動で分かっていたので快く握手に応じる。レオリオなんかは、テトに笑顔を向けられてデレっと鼻の下を伸ばしていたりもする。

 

 こうして挨拶を済ませ、5人は多数決に初っ端から揉めながらも進んでいき、遂に開けた場所に出た。

 

 そこには5人の試験官とリングがあり、どうやら各試験官と1対1で戦い3勝する必要があるらしい。一番手はベンドットという鍛えられた男でデスマッチ勝負だ。ゴン達は誰が対戦するかを話し合う。

 

「一番手はボクが行くよ。勝利の景気づけがあった方がいいでしょ?」

 

 ウインクしながらそんなことを言うテトに、キルアが反論する。

 

「大丈夫かよ? アイツ、たぶん軍人か傭兵だぜ?相当場馴れしてる。3勝すりゃあいいんだから、一番手は俺が行くぜ?」

「あはは、心配してくれるのかな? キルア君は女の子に優しいのかな?」

「な、そ、そんなんじゃねぇよ!」

 

 テトが微笑ましそうにキルアを見てそんなことを言うと、キルアは顔を真っ赤にして反論する。

 

 テトは、「大丈夫さ。すぐ終わるから」と言ってリングに向かい始めてしまった。キルアは「ふんっ」とそっぽを向き、ゴンとクラピカは心配そうにテトを見て、レオリオはテトと絡みそびれた! と悔しそうだった。

 

 

「さて、お待たせ。いつでもいいよ?」

 

 リングに登ったテトは自然体で立っている。手をだらっと下げ構えることすらしない。

 

 そんな、テトの態度に、舐められていると感じたのか青筋を浮かべるベンドット。

 

 散々痛めつけて鳴かしてやると暗い嗜虐心を沸き上がらせる。テトの容姿が優れていることも嗜虐心を煽る要因だろう。しかし、その望みは叶わない。

 

 試験官が「始め!」と合図をした瞬間、ドパンッという音と共にベンドットは崩れ落ちた。

 

 一瞬何が起きたのか理解できなかったベンドットだが、両手足に走った激烈な痛みに、ようやく攻撃を受けたことを認識した。先ほどの音は発砲音だ。呻き声を上げながら、しかし、信じられない思いでテトを見る。

 

 テトは何事もなかったように最初見た時と同じように自然体で立っていた。

 

「あぐっ、何が……どうやって、っぐ、銃なんて持って……」

「うん? どうやってって、普通に撃っただけだよ」

「撃っただけ、だと? っ、だが……銃など何も……」

「そんなの、ボクの抜き撃ちの速度が君の知覚の外だったっていう、それだけの話だよ。それより降参する?デスマッチに拘るなら、さらに鉛玉をプレゼントするけど……」

 

 その言葉に、ベンドットは戦慄した。認識できない程の速度で撃たれたなどシャレにならない。

 

 ベンドットは慌てて「ま、待て、降参する!」と敗北を宣言した。

 

 テトは、試験官に視線を送る。それに気づいた試験官がテトの勝利を宣言し、テトは意気揚々とゴン達の元へ返ってきた。「すぐ終わる」その言葉通り瞬殺してきたテトの笑顔にキルアやレオリオ、クラピカの頬が引き攣り、ゴンがキラキラした目を向ける。

 

「テトちゃん、すごい! ほとんど見えなかったよ! しかも4発も同時に!」

 

 テトの神業とも言うべき銃技にテンションだだ上がりのゴン。テトが使ったのは【銃技:インビジブルショット】スカートの下、太ももに固定したアルテを、文字通り認識できないほどの速度で抜き撃ちする銃技である。

 

 そう説明して、太もものアルテを見せるテト。捲れたスカートにレオリオの視線が釘付けとなるが、上手く角度を調整しているので覗かれる心配はない。

 

 盛り上がっている間に次の対戦者が現れ、ゴンが出場。ローソクの火を消すという内容で、難なくクリアし二勝目を上げた。三試合目でクラピカが蜘蛛の刺青(偽)を付けた対戦相手を半殺し、紆余曲折あったもののこれで三勝目。試験はクリアした。

 

 その後は特に何事もなく進んで行き普通に多数決をしてゴールした。

 

 ゴールには既にイオリアがおり、テトは嬉しそうに駆け寄っていく。その様子を、レオリオがハンカチを噛みながらキッーーと悔し涙を流して眺め、クラピカに肩を叩かれていた。

 

 ゴン達も、イオリアの方へ話をしようと近寄る。よく見ると少し離れたところでトンパがグッタリと座り込んでいた。疑問を投げかける一同へ、イオリアは苦笑いをしながら説明する。

 

「いや、俺とトンパは二人組で、迷宮みたいなところを踏破するって試験内容だったんだけど、ミクとテトが心配でさ、気が急いて……気がつけばトンパの首根っこ掴んで爆走してたみたいで……おかげで随分前にクリアしてたんだけど、トンパが未だあんな感じなんだよ。」

 

 心配だったというところで、テトが恥ずかしそうに「もう、マスターは心配性だなぁ~」と頬を赤らめる。

 

 目の前にイチャつかれてレオリオの嫉妬の念は留まるところを知らない。イオリアとゴン達は互いに何があったのか話しながらミクの到着を待った。

 

 

 

 

 

 その頃のミクは……黒くなっていた。

 

 原因は、隣を歩く変態ピエロである。塔の扉を開け到着した場所で、先に到着していたヒソカがニンマリと笑いながら「やぁ♥、二人っきりだね、よろしく♥」と声をかけた瞬間、ミクは絶望した。

 

 これから数十時間もこの変態と二人で試験に挑まなければならないのだ。ミクは全部斬り捨ててマスターの下へ行ってはダメだろうかと本気で考えたが、イオリアのためにも試験を投げ出すわけには行かないと必死に自分を言い聞かせた。

 

 それから、クイズに答えたり、計算問題を解いたりしながら先へ進んでいるのだが、ヒソカの方がしきりに話しかけてくる。

 

 やれ出身はどこだの、好きなものは何だの、今度食事でもどうかだの、舐めるような視線を向けながら自然と背後に回ろうとするヒソカに、ミクは脳内で惨殺することで精神を保つ。

 

 しかし、ミクがヒソカを極力無視し、つれない態度をとる度にゾクゾクと体を震わせ、殺気を向けようものなら放送禁止な感じになるので、ミクはわりかし本気で貞操の危機を感じつつ、「変態死ね!」と悪態をつくのであった。

 

 その後、試験官と1対1の勝負という試験がなされ、その対戦相手が連続婦女暴行殺人犯でミクに下卑た視線を向け仕切りに卑猥な発言をしてくるに当たって、ミクは鬱憤を晴らすように剣戟を叩き込み両手足を切断した。

 

 命乞いをする男に冷たい視線を向け無月を納刀するミク。「助かった!」と痛みを堪えながら喜ぶ男の背骨に、ミクは鞘を叩き落とした。

 

 ボギッという音と共に、脊椎をやられ不随となる男。

 

 ミクは、泡を吹いて気絶する男を一瞥もせず跨いで会場を後にする。顔は完全に無表情だ。ヒソカはそんなミクにまた興奮する。完全に悪循環だった。

 

 イオリア達が雑談し始めて1時間ほどすると、遂にミクが姿を見せた。俯きながら、なんだか黒い靄を全身に纏っているような異様な雰囲気である。

 

 「一体何事か!」とイオリアが駆けつけようとした瞬間、ミクの後ろから現れた変態に気がついて納得した。全員がミクに同情の視線を送ると、それに気づいたのか、ふとミクが視線を上げる。

 

 その目がイオリアを捉えた瞬間、ぶわっと目に涙を浮かべ、

 

「マスタ~~~~!!」

 

 と泣きながら、駆け寄りそのまま飛びついた。

 

 イオリアは、ミクをしっかり抱きとめると、縋り付くミクの頭をよしよしと撫でながら、「何もされてないか?」「よく頑張ったな」「もう大丈夫だぞ?」と優しく宥める。

 

 スンスンと鼻を鳴らすミクは、しばらく離れそうにない。テトも苦笑いしながら、ミクの頭を撫でる。

 

 ヒソカはそんな様子を面白そうに眺めているが、空気を読んだのかイオリア達の方には来なかった。

 

 その後、暫くして三次試験は終了したようで、試験官からクジを引くよう指示された。四次試験のターゲットを選ぶためらしい。

 

 三次試験の合格者は27人。イオリア達は其々引いた番号が互のものでないことに安堵した。

 

 イオリアの引いた番号は80番、ミクは281番、テトは198番だった。イオリア達は自分のターゲットを確認しつつ、自分達に一瞬向けられた視線をしっかり感じ取り、四次試験に向け気持ちを新たにするのだった。

 

 ちなみに、ミクがイオリアに抱きついた時点で、レオリオの嫉妬メーターは天元突破した。

 




いかがでしたか?

今回は、なんだか淡々としすぎている気がします。
試験内容調べるので精一杯で・・・気がつけば頭の中でレオリオさんが残念キャラに・・・
レオリオファンの方がいたら許してください。

今回は展開的に盛り上がりに欠けるので、イチャイチャ成分を大目にしてみました。
というか、妄想的にそんなシーンばっか浮かんできてしまって・・・
少しでもミクとテトを可愛く思って頂ければ幸いです。

あと、転生物の定番、SEKKYOUをやってみました。
ムズイ、ハズイ、
上条さんの偉大さを実感しました。作者にはとてもあんな高度なSeKKYOUと男女平等パンチは打てそうにありません。

次回は、ハンター試験ラストです。

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