重ねたキズナと巡る世界   作:唯の厨二好き

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ミクVS変態


第14話 ぶっ飛ばしますよ、この変態!

 四次試験は、ゼビル島という島のほとんどが森に覆われた場所で、1週間、受験者同士でナンバープレートの奪い合いをするという過酷なものだ。

 

 ゼビル島に到着後、さっそく森に入っていく受験者達。イオリア達も続いて入っていく。しばらく、歩きながら今後の方針を確認した。

 

「俺の指定プレートは80番、確かスパーとかいう女性だったはずだ」

「私は、281番、アゴンという剣士さんですね。同じ刀を使う人です」

「ボクは、198番、何とかモリっていう3兄弟の一番不幸そうな人だよ」

 

 さりげなく酷いことを言うテトをさらりとスルーして続ける。

 

「うん、じゃあ標的の確認もしたし、一度別れてプレートをゲットしたら、後は封時結界でもしてやり過ごそう。試験官が着いて来てるみたいだが、まぁ気にする必要もないだろう。集合場所は大丈夫だな?」

 

「大丈夫です!」

「問題ないよ!」

 

 ミクとテトの元気な返事に笑みを零しながら、イオリアも頷く。

 

「よし。やばいヤツもいるが、俺達なら大丈夫だ。もしヤバイと思ったら遠慮なく魔法も使っていいからな?それじゃあ、サクッと終わらせよう!」

 

 そう言って、いつものように拳を突き出しミクとテトが合わせる。イオリア達は一気に散開した。鬱蒼と茂る森の中にあっという間に消えていく三人に、担当の試験官が慌ててついて行く。1週間の長いサバイバル生活が始まった。

 

 

 

 

 

 イオリアは【円】を展開し、周囲200mを探索しつつスパーを探す。イオリアは、クジを引いたときスパーが世紀末さんをチラ見しているのに気がついていた。そして、イオリアの危機感が世紀末さんはヤバイ人と頻りに訴えていたので、スパーを狙う過程で遭遇しないよう注意していた。

 

 ちなみに、ヤバイというのは実力のことで見た目のことではない。念のため。

 

 しばらくすると、【円】に二人分の反応があった。イオリアは集中して耳を澄ますが、特に話し声など聞こえない。つまり、一人がもう一人を尾行しているのだろう。イオリアは反応があった方へ駆けていった。

 

 5分ほど時間を掛けて慎重に二人に接近すると、ようやく二人の容貌が見え始めた。イオリアは、喜ぶべきか嘆くべきか判断に迷うような複雑そうな表情をした。というのも、一発でスパーが見つかり、同時に世紀末さんも見つけてしまったからだ。

 

 イオリアは慌てて【円】を解く。

 

 世紀末さんは明らかに念能力者だ。能力者相手に【円】を使っては感づかれる可能性が高い。敵対行為と見られて交戦するのは避けたかった。

 

 イオリアは、さりげなく試験官の死角に周り【オプティックハイド】を発動する。慌てる試験官の音が聞こえるが、そこは華麗にスルーだ。世紀末さんと交戦するよりよっぽどいい。

 

 イオリアは迷っていた。いい加減に世紀末さんをギタラクルと名前で呼ぶべきか、ではなく、様子を見るか即行で仕掛けるかについてである。

 

 しばらく考えたイオリアだが、行動に移すことにした。十中八九、スパーでは世紀末さんを仕留められない。それどころか返り討ちに合うのが関の山だろう。そうすると、今度は世紀末さんからスパーのプレートを奪わねばならない。それなら、世紀末さんがスパーを無視している間に、サクッと終わらせた方が気を惹かなくて済むかもしれないからだ。

 

 イオリアは【絶】と【オプティックハイド】のコンビネーションでスパーの背後にあっさり回り込み、気配を殺しながら世紀末さんの隙を伺うスパーの首筋に手刀を振り落とした。あっさり気絶するスパーからプレートを回収し、ニンマリするイオリア。

 

 その直後、危機感の命ずるままに体を捻り、その場を飛び退く。同時に【オプティックハイド】も解けてしまった。この幻術魔法は、急激な動きには対応できないのだ。

 

 イオリアが一瞬前までいた場所の背後の木には針が深々と突き刺さっていた。たら~と冷や汗を流すイオリア。どうやら、イオリアの願い虚しく、世紀末さんの気を惹いてしまったようである。

 

「ふ~ん、避けるんだ。さすが、ヒソカが追いかけるだけのことはあるか。ところで、今の何?念能力?」

 

 イオリアに質問しながら近寄ってくる世紀末さん。どうやら、針を避けたこともそうだが、【オプティックハイド】に興味津々らしい。首から上をカクカク、カタカタ鳴らしながらやってくる姿は正直子供には見せられない悪夢だ。

 

 イオリアは、何とか無難に終わらせようと、取り敢えず会話に応じることにした。逃げたら追ってきそうだ。

 

「ああ、そんなところだ。俺は、この女性のプレートが標的だから目標達成だ。世紀……あんたの邪魔はしないから、もう行っていいか?」

 

 思わず、世紀末さんと呼びそうになり、慌てて言い直すイオリア。

 

 その返答は、

 

 「ッ!?」

 

 針の投擲だった。

 

 再び体を逸らして回避するが、それを先読みしたように針が投擲されていた。とんでもない速度と精度である。

 

 イオリアは、今度は回避せず飛来した針を掴み、体を一回転させつつ遠心力も利用してそのまま投げ返した。

 

――覇王流 旋衝破

 

 本来は、相手の射撃魔法を受け止めてそのまま投げ返す技だが、イオリアは修練を積み、弾丸などでも遠心力を利用して投げ返せるようにした防御技だ。

 

 ついでとばかりに拾っておいた小石を高速で投擲する。もちろん先読みして。【圓明流:雹】である。断じて魚をとる用途でないことがこれで証明された投擲技だ。

 

 世紀末さんは、投擲された小石を考慮してか、投げ返された針を指で挟んで止める。針の真後ろに同じ軌道で飛んできた小石はそのまま針で撃墜した。

 

 二人の間を静寂が支配する。しばらく見つめ合っていた二人だが、おもむろに世紀末さんが顔面の針を抜き始めた。「え、それ抜いていいの!?」と顔には出さず内心驚くイオリアだったが、直後、さらに驚愕することになる。

 

 なんと、世紀末さんの顔面がボキとかベキとか不吉な音を立てながら変形していき、猫目なイケメンに変身したからだ。イオリアは呆然とその変貌を見た後、ポツリと呟いた。

 

「セルフ美容整形……だと? そこまでイケメンに成りたかったのか。まさか、念能力を美容整形に使うなんて……なんてヤツだ……」

 

 世紀末さん改め、イルミ=ゾルディック。断じて、美容整形のために念を覚えたわけではない。何やら重大な誤解をしているイオリアに、流石にイルミが突っ込んだ。

 

「いや、こっちが素顔だから。美容整形のための能力じゃないから。……イルミ=ゾルディックって言えばわかるかな」

「ゾルディック? あぁ、キルアのお兄さん? なるほど、それなら納得だ。世紀末顔が嫌で念を修得したのかと思ったが、最初からイケメンだったんだな」

 

 ふぅ~と息を吐きながら妙な納得の仕方をされたイルミは、乱されっぱなしのペースを何とか取り戻そうと、再度イオリアに話しかけた。

 

「ヒソカが、随分とご執心だったからね。俺も気にしてたんだ。さっきの動きも【纏】の練度も只者じゃない。でも、サックスケース担いだ凄腕の念能力者なんて聞いたことない。……何者?」

 

「そう言われてもな、ただの音楽家? くらいしか言えることもないしな……なぁ、もう行っていいか? イルミさんの好奇心を満たせるような答えは持ち合わせてないんだ。無理矢理聞き出すってんなら文字通り死闘になる。あんたも目的があって試験受けてるんだろ? 少なくとも、試験続行を不可能にするくらいの自信はあるんだ。だからさ、ここらで手打ちにしよう。……ていうか、ヒソカがこっちに向かって来てるっぽいんだよ。早く逃げたい」

 

 そこまで一気に言い切って、イルミの反応を待つ。

 

 イルミは、しばらくボーと考えたと、「まぁ、いいか」と呟きながら懐に手を伸ばした。一瞬、警戒するイオリアだが、危機対応力が反応しないので見守ると、イルミが名刺を取り出し投げて寄越した。

 

「殺したい相手がいたら言って。初回限定で割引するよ」

 

 どうやら気に入られてしまったようだ。「ヒソカを頼むかもしれないな」と冗談混じりに言い、イオリアは今度こそこの場を離れることにした。ついでにスパーを回収しておく。

 

 それなりに距離を取り、試験官以外追って来ていないのを確認すると、ようやく緊張を解き「はぁ~」と深い溜息をついた。自分の主要人物ホイホイぶりに乾いた笑みを浮かべる。

 

 なにはともあれ、指定プレートは回収できたので良しとする。担いでいたスパーを近くの木にもたれかけさせ、イオリアは一度う~んと伸びをすると集合場所に向け駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 イオリアがイルミの正体に驚愕しているときより少し進んだ頃、テトもまたイモリを見つけていた。

 

 しかし、どうやらイモリはキルアを尾行しているらしく、本来ならさっさとイモリからプレートを奪うべきなのだが、少々親しくなったキルアがどうするのかと好奇心を刺激され、様子を見ることにした。

 

 キルアを尾行するイモリを尾行するテト。【絶】と【オプティックハイド】のコンボを見抜ける者はそうはいない。試験官はやはり慌てているが、テトも華麗にスルーする。

 

 どうやら、イモリはヘタレなようで、一向にキルアに仕掛ける様子がなかった。面倒になってきたテトは、やっぱりサクッと奪うかと動こうとした矢先、イモリの下に近づく二人を感知した。イモリの兄弟であるアモリとウモリだ。再び様子見を始めるテト。

 

 兄弟が揃ったことで自信を持ったのか、ついにイモリがキルアに仕掛けた。

 

 さすが兄弟というべきか、なかなかのコンビネーションではあるがキルアには通じない。キルアは全く危なげなく倒してしまった。キルアの標的はウモリだったらしくプレートを奪う。ついでとばかりにイモリとアモリのプレートも奪う。

 

 テトは、イモリのプレートを回収すべく動き出そうとしたが、その瞬間、キルアが信じられないことに、二つのプレートをぶん投げた。「あ~!」と思わず叫び出すテト。

 

 その声にギョッとしたキルア達が振り向くが、テトは高速機動に入りプレートを追ったため既にいない。

 

 テトがいる方向とは全く逆に投げられたため、追いつけるには追いつけるが出遅れた形になったテトの前に、忍ばない忍が登場。プレートを一つキャッチする。

 

 ぶつかりそうになり、テトは咄嗟に減速してハンゾーを避ける。着地と同時にもう一つのプレートは何処かに飛んでいった。

 

「うわ~、あれがイモリとやらのプレートだったらどうしよう? う~、遊んでしまった天罰か。はぁ~」

 

 ガクリと肩を落とすテトに、ハンゾーが声を掛ける。

 

「あ~それってもしかして198番か?」

 

 そう言って、手の中のプレートを肩を落としながら見せるハンゾー。そのプレートには確かに「198番」の番号が刻まれていた。

 

 まさか、ハンゾーが番号の確認もせずキャッチするとは思っておらず、当然飛んでいったほうが自分の指定プレートだと思っていたテトは目を丸くする。ついで、面倒なことをしなくて済んだと喜んだ。

 

「うん、そうだよ。そのプレートだよ。悪いけど貰えるかな?」

 

 そう言って手を差し出すテトに、ハンゾーは少し考えた後、

 

「タダでは渡せないな。一緒に、197番のプレートを・・・」

 

 ハンゾーが、手の中のプレートを引っ込めながら197番のプレートを一緒に探せと言い切る前にテトは動いた。一瞬でハンゾーの視界から消えると背後に回り、後頭部にゴツッと銃口を当てる。それから弾むような声で言い切る。

 

「ありがとう。プレートを取ってくれて」

「あ、ああ、気にするな。ほら、受け取ってくれ」

 

 即行で前言を撤回し、従順にプレートを渡すハンゾー。プレートを受け取りアルテをしまうテトに、呆れたような視線を向けるキルア。ハンゾーは盛大に溜息をついた。

 

「あんた、いい性格してるな」

 

 傍に歩いてきたキルアがテトに言う。ハンゾーも視線で同意した。テトは心外だと言わんばかりの表情で反論する。

 

「キルア君も人のこと言えないよ? いらないからってプレートを投げるなんて。知り合いだからって様子見なんてするんじゃなかったよ。イモリとやらはヘタレだし、兄弟揃ってキルア君の相手になってなくて見る意味なかったし。よかったのは、ハンゾーさんのドジっぷりだけだったよ」

 

 テトのナチュラルな毒に、イモリが「うっ!?」と呻き、三兄弟が「ぐうう!?」と嘆き、ハンゾーが「ははっ」と乾いた笑みを浮かべる。そんなカオスな状況を生み出しておいて、「じゃあ、もう行くね。キルア君も頑張って」と言い残し、ヴォという音と共に姿を消すテト。

 

 その場にいる全員が、盛大に溜息をついたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、四次試験会場の森に再び黒ミクが降臨していた。

 

 ミクは、運命の神がいるならソイツは絶望的に性根が腐っているに違いない! と全力で空を睨む。それくらい、ミクは自分の運の悪さを嘆いていた。

 

 というのも、ミクはイオリア達と別れたあと、標的であるアゴンを探して彷徨いていたのだが(ちなみに、円の範囲は200mに留めている。試験官が付いて来ているので下手に目立たないためである。)、そのアゴンがどうやらヒソカを狙っているらしいのだ。

 

 しかも標的というわけでもないのに、だ。剣士として強者と死合いたいのかもしれないが、ミクとしてはいい迷惑である。

 

 アゴンを見つけた時点で位置的にかなりヒソカに近く、アゴンの存在に気づいているようなのでミクは逡巡した。

 

 アゴンを襲えば、ヒソカは確実にミクに気づくだろう。そして確実に向かってくる。ミクはできる限りヒソカと対面などしたくなかった。三次試験の数時間はちょっとしたトラウマなのだ。

 

 もっとも、ミクが全力で高速機動をすれば、一瞬でアゴンからプレートを奪い、ヒソカがやってくる前に離脱できるだろう。トラウマが邪魔して、ついグズグズしてしまった。ミクは気を立て直し行動に出る決意をする。

 

 そして、いざ! と意気込んだ瞬間、覚えのある気配を【円】で探知した。ゴンである。どうやら、ゴンの標的はヒソカらしい。

 

 ゴンは、今は無理と判断したのかヒソカから距離をとり始めた。【円】を変形させヒソカが範囲に入らないよう調整しながらゴンの様子を見ると、何やら釣竿を振り回し始めた。おそらく、ヒソカのプレートを釣り上げるつもりなのだろう。

 

 ミクはさらに迷った。ゴンはこの世界の主人公ではあるが、未来が約束されているわけではない。この世界は、既に“イオリア達がいるハンター世界”なのだ。ゴンの真っ直ぐさや純真さは、ミクも気に入っている。素直にすごいと称賛してくれるゴンに、イオリアやテトも悪い気はしないようで、温かい目で見ていたのを覚えている。

 

 ヒソカという危険な変態を相手にすると分かっていて放置してよいものか。自己責任で切って捨てられる問題ではあるのだが、どうにも心配なミクはしばらく悩んだ後、様子見をすることにした。

 

 何やら瞑想中のアゴン、特に何もせずフラフラするヒソカ、修練中のゴン、ついでにゴンを標的に付け狙っている受験者ゲレタの4人を同時に見張るミク。

 

 なんで標的でもないのにヒソカに挑んでるんだ? 勝てるわけないだろ、身の程わきまえろ、何瞑想とかしてやがるんだ等アゴンに黒い感情をぶつけつつ、ミクは一夜を明かす。

 

 膠着中の事態は翌日に動き出した。

 

 槍使いのゴズがヒソカに勝負を挑んだのだ。ただ、ヒソカはゴズを相手にせず、どこからともなく現れた世紀末さんが仕留めてしまった。

 

 また何かでてきたよ~とうんざりするミク。しかし、会話を始めたヒソカと世紀末さんの、その内容を聞いてミクは思わず吹いてしまった。

 

「やぁ、ヒソカ。昨日、彼に会ったよ。サックスの彼」

「へぇ~♠ まさか、殺してないよね?」

「試してみたけど、すごいね、彼。俺の針を躱す奴はいても、おまけ付きで投げ返してきたヤツは初めてだ。彼も言ってたけど死闘になるよ。……だから、名刺だけ渡して別れた。」

「ふふふ♥」

 

 ミクは心の中で盛大に突っ込んだ。

 

(絶対マスターです! 初日にして、関わりたくないって言ってた人から名刺貰っちゃてますよ! 流石、マスターです。悪い意味で!)

 

 その後、世紀末さんと別れたヒソカは、クラピカとレオリオに遭遇しプレートを要求。あわや戦闘! という一発触発な状態を何とか脱した。

 

 しかし、二人の成長した様子に欲情したようで、あたりに殺気を撒き散らし始めた。

 

 ミクは「もう嫌!」とばかり、全部投げ出してサクッとアゴンをやるかと考えたが、当のアゴンが殺気に当てられたのかついに動き出した。そして、ヒソカに勝負を挑んだ。ゴンも虎視眈々をヒソカのプレートを狙っているようだ。

 

 ヒソカとアゴンの勝負は、案の上、勝負にならなかった。アゴンは倒され、その瞬間を狙ってゴンの釣竿がヒソカのプレートを剥ぎ取る。ゴンはそのまま一目散に逃走した。

 

 ゴンの逃走を見届け、ミクは取り敢えず、ゴンを狙うゲレタを背後から強襲し昏倒させ、そのプレートを奪った。もしかしたら、アゴンのプレートと交換しくれるかもしれないという打算からだ。

 

 嫌々、ヒソカとの交渉に出向こうとした矢先、ヒソカが猛スピードでゴンを追うのを探知した。

 

 ミクは驚愕する。ヒソカは自分の存在に気づいたはずで、それなら自分を襲ってくると予想していたのにゴンの方を追っていったからだ。完全に予想外である。慌ててミクもゴンを追った。

 

 現場に到着したとき、ゴンは既に地に倒れ伏し、その傍らに44番のプレートが転がっていた。

 

 ゴンは腹に打撃でも受けたのか蹲りながら吐いている。ただ、その目は何か言いたげに、悔しそうに歪んでいる。

 

 ミクは大体の事情を察した。おそらく、ゴンに追いついたヒソカがゴンを殴り倒し、その上で自分のプレートをゴンに譲ったのだろう。遊びの一環として。

 

「やぁ♥ やっぱり来たね。ゴンを追えば、君も来ると思っていたよ♥」

 

 どうやら、ゴンを追えば一石二鳥だと思ったようだ。その通りなので余計に腹立たしいミク。引き攣りそうな表情を何とか押さえ込み、無表情で交渉に出る。まぁ、交渉にはならないだろうと思いながら。

 

「あなたの持つ281番のプレートと、この384番のプレート交換しませんか」

「おや♠ 僕の指定プレートだね♥ で、これが君の指定プレート? ふふ、どうしようか?」

 

 無表情のミクとニヤつくヒソカが睨み合う。次の瞬間、ヒソカはトランプを高速で投擲した。

 

「ふふ、折角の機会だ♠ 互いに奪い合おう♥ 全部ね!」

「気色悪い・・・」

 

 ミクは、ついにポーカーフェイスを保てず嫌悪感を顕にしつつ、納刀したままの無月でトランプを払う。

 

 投擲直後に一気に踏み込んできたヒソカに、ミクの神速の抜刀術が奔る。

 

 ヒソカはそれをトランプで受け止めた。【周】で強化されたトランプは、やはり【周】で強化された無月を完全には止められず切断されていく。

 

 途中で手首を捻り半ば断ち切られたトランプを放棄しながら、逆の手で拳撃を放つヒソカ。

 

 しかし、その拳撃がミクに接触する前にミクの逆手で振るわれた鞘がヒソカの脇腹を直撃する。

 

――エセ飛天御剣流 双龍閃

 

 ミシッと音を立てながらも、咄嗟に【流】で防御力を上昇させたのか大したダメージはないようだが、【周】をされた鞘の衝撃には耐え切れずヒソカは吹き飛んだ。

 

 ヒソカは空中で身を翻し難なく着地するが、その時には、高速機動で背後に回ったミクがさらに抜刀する。

 

 剣線がヒソカの背中を奔るが、薄皮を一枚切っただけでやはりダメージは少ない。【円】を展開しているヒソカに奇襲は通じず、辛うじて【流】で防御されたらしい。

 

 やはり、ヒソカは天才レベルの実力者だ。オーラの量も練度も化け物じみている。オーラの操作だけとはいえ、まがりなりにもミクの高速機動についてきているのだ。

 

 その後も、ミクはヒソカの周囲を円を描くように動きながら、時折姿を霞ませつつ斬撃を叩き込んでいくが、その斬撃を薄皮一枚のダメージに抑えながら凌いでいくヒソカ。

 

 何度目かの斬撃を叩き込もうとした瞬間、ヒソカの体が有り得ない動きでその場を離脱した。構えはそのままに水平に移動したのだ。

 

 直ぐさま【凝】をするミクは、ヒソカの背中と背後の木に伸縮するオーラの繋がりを見た。そして、周囲の木々や地面にも無数にオーラのロープのようなものが張り付いていることに気が付いた。

 

 どうやら、移動とトランプの投擲を利用して、この伸縮性と粘着性をもったオーラを張り巡らし機動力を削ぐつもりのようだ。【伸縮自在の愛】――ヒソカの念能力である。

 

 思わず立ち止まるミク。伸縮自在の愛に警戒心を持ったのではなく単に触りたくなかっただけのようだが。

 

 その隙をヒソカは見逃さない。トランプの投擲と伸縮自在の愛を利用した体術でミクの動きを制限し、遂に地面に設置しておいた【隠】で隠したオーラを踏ませ、その動きを一瞬止める。

 

 直後、ヒソカの拳がミクを捉えた。ミクは咄嗟に腕でガードする。【流】をして防御力を上げていた上、服の下でシールドを張ったのでダメージはほとんどない。しかし、伸縮自在の愛が付着したのがわかった。

 

 吹き飛ぶミクをヒソカは逃がさない。その顔は歓喜とこれからミクを壊せることに対する興奮で彩られている。

 

 ミクに取り付けた伸縮自在の愛を一気に縮ませミクを引き戻す。片足が満足に動かせず、左腕を前方に突き出したまま引き戻されるミクは、しかし、その瞳に絶望どころか野生の狼もかくやという鋭さを宿していた。

 

 その眼光を見て悪寒に襲われるヒソカ。よく見れば、いつの間にか右手に持った刀が鞘から抜かれており、まるで引き絞るように右腕を後ろに下げ突きの構えをとっている。切っ先は、突き出された左手に添えられている。

 

 ヒソカは咄嗟に伸縮自在の愛を伸ばし距離を取ろうとするが、ミクは背面にオーラを圧縮し爆発させ一気に距離を詰める。ヒソカは回避行動を取りつつ、足の伸縮自在の愛を縮ませミクの体制を崩すが、時すでに遅しだった。  

 

 左手がロックオンしたようにヒソカに合わせて動き、ググと上半身を捻ったミクは上半身のバネを最大限に利用し神速剛力の突きを放った。

 

――エセ牙突 零式

 

 間合いの無い状態から上半身のバネのみで瞬時に極限まで引き絞った突きを放つ悪・即・斬な人の奥義である。本来なら、左片手一本突なのだが、ミクはどちらの手でも同じように放てる。

 

 ヒソカは全く余裕のない表情で突きに合わせて【硬】をした。【堅】では貫かれると思ったのだろう。それは全くもって正しかった。もし、ヒソカが、防御を捨て、必死に牙突を“攻撃”しなければ、今頃、ヒソカの胴体は上下に分断され吹き飛んでいたかもしれない。

 

 ヒソカは肩を抉られ、牙突の衝撃に吹き飛ばされながら背後の木に激突し、ズルズルと崩れ落ちた。一命は取り留めたものの、全く身動きがとれないようだ。

 

 ヒソカは気づいていた。最後のとんでもない突きがオーラを纏っていなかったことを。今までの斬撃のように【周】をしていれば、この程度では済まなかったということを。つまり、自分は手加減をされたのだということを。

 

 恍惚としながら、「“次”はあるかな?」と思いつつ、ヒソカは意識を落とした。

 

 ヒソカが意識を落としたことを確認したミクは、鞘を拾って無月を納刀した。その顔には、実に晴れやかな笑顔が浮かんでおり、「スッキリした!」という気持ちが溢れていた。

 

 一応、ヒソカが重要な人物であることを考慮して殺さないよう手加減したが、本当は仕留めてしまいたかったので、ちょっぴり残念なミク。

 

 黒ミクの辞書に容赦という言葉はないが、マスターのためという文字はあるので、迷惑がかからないよう配慮した結果が手加減して殺さないだった。地味にイオリアに救われたヒソカ。

 

 しばらく余韻に浸っていたミクだったが、ふとゴンのことを思い出し慌てて駆けつける。ゴンはよほど強く殴られたのか、ある程度回復しようではあるが未だ立ち上がれないでいた。頬が腫れ腹部を片手で押さえて顔を歪めている。しかし、それは痛みのせいだけではないようだ。

 

「ゴン君、大丈夫ですか?」

 

 心配して安否を尋ねるミクの言葉にも反応せず、ヒソカを見つめるゴン。

 

 ミクは傍らに落ちていた44番のプレートを拾う。そして、ゴンの手を取ってそれを握らせた。ゴンは、ギョッとして思わずそれを振り払う。落ちたプレートを、ミクはまた拾ってゴンに握らせた。

 

「ミクちゃん、これは……」

「あの変態から譲られたんですよね? ゴン君はそれが気に入らない。そうですよね?」

 

 ゴンの言葉を遮り、事情は察していると伝える。ゴンは再び悔しそうに唇を噛んだ。

 

 そんなゴンに、ミクはニッコリ笑ってバンッと肩を叩く。

 

「なに暗くなっているんですか! 元気一杯でなければゴン君らしくありませんよ! そんなに納得できないなら、今よりもず~っと強くなって、今度はゴン君があの変態をぶっ飛ばせばいいんです。それで、倒れ伏す変態の前にそのプレートを投げつけてやりましょう!」

 

 ミクのその言葉にポカンと口を開くゴン。マジマジとミクの笑顔を見ていると、次第に鬱屈した気持ちが霧散していき自然と笑顔が漏れ出した。

 

「うん! そうだね、おれ絶対強くなって、実力でこのプレートをヒソカに返すよ!」

「その意気です! ゴン君ならできますよ!」

 

 しばらく二人で盛り上がり、ゴンも立ち上がれるくらい回復すると、ミクはゴンにイオリア達と合流する旨を伝えその場を去ろうとした。そんなミクにゴンは元気よくブンブンと手を振る。

 

「また、ゴールでね、ミクちゃん! ありがとう!」

「はい、ゴン君もお気を付けて~。いつか確実に変態を仕留められるように頑張ってください~」

 

 最後まで笑顔のミクは、そのまま風のように去っていった。発言が微妙に黒く、ゴンは笑顔がひきつりそうになったが、そこは堪える。ミクの笑顔が少し怖かったなんてことあるわけないのだ。うん。

 

 四次試験2日目にして全員が指定プレートを集め終わったイオリア達は互いの無事を喜びながら、何があったのか報告し合っていた。そして、イオリアがイルミと、ミクがヒソカとやり合ったことを報告し合い、出歩けば確実に厄介事を引き起こすと恐れおののき、【封時結界】を張り中に引きこもった。

 

 外で突然消えたイオリア達にオロオロする試験官達がいたが、やはり華麗にスルーした。

 

 

 

 

 

 

 それから5日経ち、四次試験終了の合図がだされイオリア達はスタート地点に戻った。

 

 結局、戻ってきたのはイオリア達を含め12名だった。その中にはミクにボコボコにされたはずのヒソカが何でも無い様に入っており、イオリア達をみてうっとりしているようだ。よほど、ミクとの戦いがお気に召したらしい。

 

 「う~」と唸りながらミクはイオリアの背後に隠れ出てこない。ゴン達もイオリア達の方へ手を振りながらやって来てミクの様子から事情を察し同情の視線を向けていた。

 

 案内を受け、一行は最終試験会場に向かうため飛行船に乗り込んだ。

 

 飛行船に乗り込んで間もなく、会長ネテロの面接があったが、特に何事もなく終わった。

 

 イオリア達の注目受験者はやはりゴンだったし、戦いたくないのは満場一致でヒソカだった。後者の質問は、ネテロの質問にかぶせる勢いで即答だった。その目にはむしろ懇願すら含まれており、ネテロをして引いてしまったほどだ。

 

 あと、ネテロから今年の失格した受験者の約3割を生存させたことについて、なぜ助けたのかと問われ、イオリアは「それが誓いだから」と一言答え、ミクとテトは「マスターの望んだことだから」とこれまた一言で済ませた。何か感じるものでもあったのか「うむうむ」と頷くネテロ。

 

 ハンターになりたい動機を聞かれたとき、単に「便利だから」と答えたのだが、どうやらいい意味で納得してくれたらしい。

 

 イオリアとしては「(金が稼げて)便利だから」という意味だったのだが、「(誓いを守るのに)便利だから」ととってくれたらしい。ちょっぴり罪悪感を抱くが、ここ数日でレベルが上がったスルースキルで流した。

 

 最終試験は、敗北したものが上に上がるという特殊なトーナメントで一勝でもすれば合格というものだった。殺してしまうと失格で相手に参ったと言わさなければならない。

 

 発表されたトーナメント表を見て、安堵するイオリア達。今までの経験からイルミやヒソカと当たるのではと戦々恐々としていたのだが、全員、まず間違いなく二人とは当たらないようになっていた。

 

 第一試合はハンゾーVSテト。第二試合はイオリアVSゴン、第三試合にポックルVSミクだった。トーナメントの性質から試合可能回数が多い方が有利なので、現在の成績順なのかもしれない。

 

 第一試合、ハンゾーとテトが向かい合う。

 

 ハンゾーの顔は強ばっており、対照的にテトは満面の笑顔だ。ゴン、キルア、クラピカ、レオリオは、いつか見た光景そのままに、テトの両手がだらんと下がっているのを見て、「うわ~」という表情を見せた。また、あの初見殺しの銃技を使うのか? と、ハンゾーに心配そうな視線を送る。

 

 そんな視線を受けているせいか、それとも四次試験の時のテトを思い出しているのか、ハンゾーの額に汗が流れた。

 

 そして、試合開始の合図がなされた瞬間、

 

「まいったっ!」

 

 会場にハンゾーの力強い敗北宣言が響き渡った。会場がシーンと静まり返る。

 

 テトはキョトンとした後、審判に視線を送り、その視線を受けてテトの勝利が宣言された。

 

 「無理、絶対無理」と呟きながらゴン達のいる方へ行くハンゾーに一同は優しい視線を向け、「気にするな」と肩を叩く。それを尻目に、イエーイとハイタッチをするイオリア達。本当にスルースキルのレベルが上がっている。

 

 続いて、第二試合が始まった。イオリアVSゴンだ。ゴンは、構えをとり初っ端から全力全開で戦いを挑む。イオリアはそのことごとくを捌いていく。武術においてはイオリアは達人級だ。正式な武を習っているわけでも、実戦経験が豊富なわけでもないゴンでは唯の一撃すら入れられない。

 

 最初は勢いよく攻撃していたゴンだが、イオリアが一切攻撃をしてこないことから遂に叫んだ。

 

「なんで何もしないんだ! おれじゃ相手する価値もないの!?」

 

 もちろん、イオリアにそんなつもりはない。ただ、イオリアは、普通にやってもゴンは決して負けを認めないのではないか? と考えていたのだ。どれだけ殴っても、きっとゴンは諦めない。曖昧な知識だけでなく実際に試験の間、ゴンを見てきて思ったことだ。

 

 したがって、ひたすら捌いておけばネテロ会長とのゲームのように程よいところで納得してくれるのではないかと思ったのだ。

 

 しかし、イオリアの考えはゴンの矜持をいたく傷つけたらしい。もしかすると、ミクから聞いたヒソカとのことも影響しているのかもしれない。

 

「悪かったv。覚悟しろ、ゴン」

 

 そう言って、イオリアは始めて構えをとる。そして、やる気を漲らせ突っ込んできたゴンにカウンターを合わせた。

 

 ドンッという音とともに、ゴンのボディが打たれ体が浮き上がる。「カハッ」と息を吐きながら、しかし、ゴンはひるまずさらに猛攻を仕掛ける。

 

 が、攻撃の合間に的確にボディーブローのカウンターを入れられる。

 

 しばらく同じ攻防が続くと、次第にゴンの動きが鈍ってきた。どうやらボディーブローの影響で呼吸障害に陥りチアノーゼの症状がでているようだ。

 

 ゴンは苦しそうに必死に息をしようとするが、イオリアの追い打ちがそれを許さない。遂に、ゴンは膝をついた。

 

「ゴン、ここまでだ。参ったと言ってくれ」

 

 イオリアがゴンに降参を促す。しかし、ゴンは紫っぽく変色した唇を震わせながら「嫌だ」と拒否の言葉を呟く。その瞳も絶対諦めないと強い光を宿している。

 

 イオリアとしては、ゴンに怪我を追わせずに追い詰める方法としてボディブローを選んだのだが、やはりゴンは折れなかった。イオリアは「やっぱりこうなったか」と内心溜息をついた。

 

「審判、参りま……」

 

 イオリアはゴンは絶対折れないだろうと、仕方なく敗北宣言をしようとした。テトの合格は決定してるので、ライセンス売却で金儲け! という当初の目的はすでに達成している。試合もまだできるし問題なかった。

 

 だが、ゴンはそれも気に入らないらしい。

 

「い、嫌だ!」

 

 イオリアの意図を察して遮るように叫び、ガクガクと震えながら立ち上がろうとするゴン。根性で勝利したとは思えないらしい。

 

 イオリアは何とか説得しようと言葉を投げかけるが、ゴンは一切無視する。

 

 その頑なな態度に怒りを覚えたイオリアは、心配そうな表情を消し無表情になる。ツカツカとゴンに近寄ると、未だ苦しそうに細い呼吸をするゴンの胸倉を掴んで持ち上げ目線を合わせた。

 

「甘ったれるな、ゴン。自分の弱さを認められない者が強くなどなれるか。今のお前は弱いんだ。認めろ。俺は認めたぞ? 弱い自分を。血反吐を吐きながら鍛え上げたんだ。お前は、俺に勝る努力をしたのか? 対価も払わずに最良の結果など求めるなよ」

 

 静かな、しかし深く重い声で批難されたゴンは息を呑む。しばらく、ゴンを睨みつけていたイオリアだが、ふと表情を緩めた。

 

「お前を軽く見て棄権しようと思ったわけじゃない。あれだけやられても折れないゴンの不屈の心に俺の方が折れたんだ」

 

 だから、俺の負けだ。そう言うイオリアをジッと見つめるゴンは、やがてコクと頷く。それを見てゴンを降ろし、今度こそ審判に「参りました」と告げる。審判も頷いてゴンの勝利を宣言した。

 

 ゴンはいつの間にか意識を失っていたので、イオリアはゴンを背負って医務室に預けに行った。会場では、その様子を面白そうに見るものや微笑ましそうに見る者もいたが、甘いと切り捨てるような厳しい視線を向ける者もいた。

 

 第三試合、ミクVSポックルの戦いは一瞬で終わった。試合開始の合図と同時に踏み込み、神速の抜刀術で無月を首筋に突きつけた時点でポックルは敗北宣言をした。

 

 その後、二回戦でイオリアの相手となったハンゾーが諦念の表情を浮かべていたので、テトにトラウマでも植えつけられたか? と罪悪感に駆られ、目的を達して半ばやる気がなくなっていたイオリアが敗北宣言したり、それでミクとテトがちょっと悲しそうな顔をしたので、3回戦目でキルアが相手になったとき本気で相手をしてしまい、実力の違いを感じたキルアが敗北宣言したり、合格したことでイオリアに抱きついて喜びを表現するミクとテトにレオリオが狂化し、ただでさえヒソカ戦でボロボロになっていた対戦相手のボドロをさらにボロボロにしたり、ゾルディック家の末っ子問題が勃発したり、その後ずんと落ち込みジメジメするキルアが棄権して、満身創痍ながらボドロが合格したりした。

 

 合格後、ホテルの控え室で、プロハンターについてのあれこれを聞いたり、食事を取りながら今後の話などを合格者の間で雑談したりしていると、ゴンが目を覚ましたらしく、しかもキルアのことを聞いたようで、激昂しながらイルミに突っかかった。

 

 キルアは既に実家に帰っており、ゴンはイルミの腕を折りながらその所在を聞き出す。ゴン達はキルアを迎えに行くようだ。

 

 イオリア達も、一緒にキルアを迎えに行かないかと誘われたが断った。このままではゴン組にズルズルと付き合うことになりそうだし、ゴン達ほどキルアと深い仲になったわけではない。それに何より、

 

「悪いな、ゴン。俺達の帰りを待っている人達がいるんだ。それに、必ず救うと誓った相手も……。だから、ゴン達とは一緒に行けない」

 

 真摯な瞳でそう言うイオリアに、「そっか」と心底残念そうに肩を落とすゴン。クラピカとレオリオに宥められ渋々納得する。「帰るためにやらなきゃいけないことがあるから、もしかしたらまた会うかもしれない。」とグリードアイランド編を思い浮かべながら、ついゴンの表情にほだされて慰めてしまうイオリア。ミクとテトも苦笑いしながら頷く。

 

 その言葉に、「そうだね、また会えるよね」と納得し、ニッと笑うと拳を突き出した。キョトンとするイオリアに、すこし恥ずかしげにしながら、イオリア達がやっているのを見て羨ましかったと告白するゴン。これには全員笑みを零し、せっかくだからと、クラピカやレオリオも一緒に拳を突き合わせた。

 

 全員の目標が達成できることを祈って、イオリア達とゴン達は互いに背を向け歩き出した。

 




いかがでしたか?

黒ミクの牙突・・・恐ろしい。自分の妄想にビビリました。
きっと、作者の妄想の十分の一も表現出来ていないでしょうが・・・

そしてSEKKYOU2
恥ずかしい上にブーメランで作者は自分の妄想にダメージを受けました。

次回は、グリードアイランド編に入ります。ハンター編は念を覚えさせたかっただけなのでサクサク行きます。


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