戦姫絶唱シンフォギア 聖遺物の導き   作:ミリー

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お待たせして大変申し訳ありません...。今年中にもう一話投稿する予定ですのでお待ち下さい...!


はじまり

 言峰零士。そう名乗った彼の目を風鳴弦十郎は見つめる。偽名を使っているようには見えない、それでも何かあるように感じた。年は20代前後に見えるが、どこか達観しているような、様々な感情、思想がない交ぜになった人物を見たことが無かった。

 

「――そうか。すまないな。手間を取らせて」

「いえ、これくらい構いませんよ」

「今日はもう遅い。医者は何と言っていた?ここに泊まっていくといい。家族や知り合いに連絡は――」

「大丈夫です。一人暮らしですので」

「それでは我々はここで。司令」

「ああ、ゆっくり休んでくれ」

 

  そう言い残し、2人は退室していった。彼も会釈して見送る。その後、僅かに時間が空いた後先ほどの3人が入ってくる。

 

「いやー、ダンナの話が長い長い。待ちくたびれた」

「奏、そう言わないの」

「あはは...わたしもそうでしたよ」

 

 そう話す様子から3人の仲の良さが伺える。快活な雰囲気を出す赤髪の少女は待っている間退屈だったのか少し疲れたような表情をし、凛々しい青い髪の少女はそんな様子を見て苦笑いを浮かべ、茶髪の少女は何かを思い出したような表情を浮かべている。

 

「っと、悪いな。あたし達だけで話してて」

「いえ、それで私に何か?」

「あー、その...悪かったな。こっちに巻き込んで」

「申し訳ない」

「ごめんなさい!」

「...謝らないでください。怪我をしたのはあの場にいた私の責任です」

「でも!あたしらがしっかりしてたら...!」

「むしろ、謝らなければならないのはこちらです。あれほどの力です。他人に知られてはならないことなのでしょう?」

「それは...」

 

 先程話していた風鳴弦十郎と名乗る男が言っていた世間に見せるにはまだ早いということ。それに付き添っていた緒川と呼ばれていた男が署名を求めた書類の内容。大まかに言えば、今回の件に関することは口外してはならないということだった。

 もちろん憲法に抵触するというのも事実だろう。だが、承認されていないにも拘らず開発、運用がされているのだろうか。今、彼はただの一般人に過ぎない。知ってしまった、その事実だけであの場で存在を消されてもおかしくはなかった。

 だが、それを彼女らは望んでいないのかそれとも生かされているのか、今は分からない。

 

「答えなくても結構です。あの力を使っている皆さんから確認したかっただけですので」

「...えぇ、重ね重ねすみません。あのことは内密にお願いします」

 

 青い髪の少女は再び頭を下げる。そこで茶髪の少女が何か気付いたように声をかける。

 

「...翼さん、奏さん」

「立花?」

「どうした?」

「2人が直接会うのってマズイんじゃないですか...?」

「「――――あ」」

 

 そう言った瞬間、2人の表情が固まった。しばらくすると今度は3人で慌て始める。

 

「どどど、どうして気付かなかったんですかぁ!」

「いや、そのー何と言うか。...忘れてた」

「わ、私も...その...。ごめんなさい...」

「あわわ、どうしよう...。バレたら一大事ですよぉ!」

「何かマズイことでも?」

「「「え――――」」」

 

  再び3人が一斉に固まる。数秒後、立花と呼ばれていた少女が遠慮がちに尋ねる。

 

  「あのー...ご存じ、ないん、ですか?ツヴァイウイング」

  「ツヴァイウイング...そちらのお2人のことでしょうか?」

 

  再び固まる。次の瞬間————

 

  「えぇぇぇぇ!」

 

  声が、音が爆発した。とっさに耳をふさぐ。2人は反応が遅れたのだろうか、顔をしかめている。落ち着いたのか青い髪の翼と呼ばれた少女が話す。

 

  「立花…ここは病室だ。大声を出していい場所ではないぞ」

  「あっ…。その…ごめんなさい!つい…」

  「まったく…、他の人もいるんだ。少しはあたしみたいに落ちつけ」

  「「————」」

  「…?何だ、2人とも」

  「「奏(さん)がまともになってる…!」」

  「どういう意味だよ、それっ!」

  「とと。それより、本当に知らないんですか、ツヴァイウイング」

  「おい、それよりって何だ、それよりって」

  「まぁまぁ、奏」

  「すみません。こういった芸能や流行には疎いもので」

 

  嘘は言っていない。テレビや雑誌などをほとんど見ない零士は芸能など娯楽には疎い。テレビは精々ニュースを見る程度。パソコンやスマートフォンも使うが、メールなどの連絡手段として使われている。

 

  「あたし達もまだまだだなぁ、翼」

  「そうね。もっと頑張らないと」

 

  自分たちのことを知らない人もいると知った2人は新たに決意をする。

 

  「さて、時間も遅いからそろそろ行きましょう。明日も学校だ」

  「あっ、もうこんな時間!うぅー、未来怒ってるかなぁ...」

  「おー、頑張れ学生。しっかり勉強しろよー」

 

  もう外は暗くなっている。授業のある学生はもう寝ている人もいるだろう。

 

  「それじゃあ、私達はこれで」

  「次に会ったら色紙持ってこいよ。サイン下さいって言うくらいにでっかくなってやる!」

  「えぇ、その時は是非」

  「さようなら、お兄さん!」

 

 

 

 

 

 

 

  ――――――そんなことがあった夜から数日。零士は街中を歩いていた。

  あの翌日、怪我は大したことはなかったがまた別の問題が発生していた。

 

 

 

 

 そう、衣食住だ。

 

 

 

 

  幸いにも財布は手元にあった。しかし、1人の人間が生活するには全く足りなかった。そのため、やむを得ず魔術行使のための宝石を売り、当面の生活費を工面することとなった。

  食事は最低限に済ませ、ネットカフェに泊まる日々を過ごしていた。

 

 

  だが、それ以上に情報が無かった。ネットカフェを利用したのも情報収集するためだ。他にも図書館など様々な媒体で調べていくと気になることがあった。

 

 認定特異災害ノイズ

 

 

  13年前に国連総会で認定された特異災害。世界中で突然発生し人間だけを襲い、接触した人間を炭素変換する。既存の兵器は効果がほぼ無く、一般的な対抗策は逃げること。シェルターに避難して自壊を待つ他ない。

 

  ノイズの情報を大まかにまとめるとこうだ。しかし

 

 

  (国連でこんなものが認定されたことはなかったはず...)

 

  そう、認定特異災害など聞いたことがなかった。ましてや13年前に認定されたということは世間にそれなりに認知されているはずだ。それを聞いたことがないということから考えられることは2つある。

 

 

  まず、1つは特異点。過去に現在までに影響を与える「何か」が発生し、それに巻き込まれた可能性。

  2つ目は考えたくはないが――平行世界に渡った可能性。だが、それは最早魔法の領域だ。あの宝石翁が関わっているとは思えない。かといって現在、他の誰かが第二魔法が使えるはずがない。

 

  だが、どちらも言い切ることができない。他に何か有益な情報がないか調べていくと、冬木市が存在しない(・・・・・・・・・)ことが分かった。どちらともかけ離れすぎている。これら2つの可能性を考えていくと、ふとあることに気がついた。

 

  (――――あの物体はどこにいった?)

 

  大空洞で見つけたあの法螺貝のような物体。あの場所に移動した時には既に手元に無かった。だとすれば――

 

  (あれが特異点を作り出すもしくは平行世界に渡る力があった...?でも何故大空洞にあって突然起動した?――――――この音っ!?)

 

 

 

 

  考えを巡らせていると街中に警報が鳴り響く。

  ――――ノイズだ。

 

 

 

 

  急いでシェルターの場所を確認するが。幸いにもそう遠くない場所にあった。急いで向かうと、既に周りの人々は駆け出していた。距離にして数十メートル。駆け出そうとしたその時、

 ノイズが目の前に出現した。

 

  「――――っ!」

 

  駆け出そうとした足を止め、反対方向へと走り出す。それを見たノイズは後を追い始める。遠回りになるが他のシェルターは遠く、今からではノイズが道中で現れるかも知れない。どうにかたどり着かなければ死あるのみだ。

 

 

  しばらく走るとようやくシェルターに向かう道に出る。しかし、

 

 

  「っ!ノイズ――――!」

 

  行く手を阻むかのように再びノイズが現れる。それを見て僅かに動きが止まる。その瞬間、ノイズが殺到する。

 

  「くぅっ!」

 

  どうにか体を動かし、回避する。だが、次は避けられない。その時――――

 

 

 

  「おぉぉぉらぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 

  気合いの乗った掛け声と共に槍が振るわれる。その一閃で近くにいたノイズは消滅する。

 

  「よっ!何日かぶりにまた会ったな!」

 

  突然の出来事に混乱しているとそう声を掛けられる。

 

  「あなたは!?」

  「悪ぃ!今はちょっと手が離せねぇ!話は――こいつらをぶっ飛ばしてからだ!」

  「奏さん!こっちは――ってあの時のお兄さん!?」

  「何っ!?」

 

  そうしている間にまた誰かが現れる。顔を見るとあの夜に会った3人だった。

 

  「立花!彼のことを頼んだ!」

  「分かりました!お兄さん、わたしの後ろに!」

 

  青い髪の少女は前に出ていき、立花と呼ばれていた少女が彼を守るように構える。

 

  (ノイズに有効な対処法はないはず...。しかし、明らかにあの槍はノイズに効いた...。一体どういうことだ?)

 

  「でぇぇええりゃぁぁぁぁあああ!」

  「はぁぁぁああ!」

 

  STARDUST∞FOTON

  蒼ノ一閃

 

  槍が投擲される。するといくつにも同じ槍が現れ、ノイズを貫いていく。

  太刀を構える。それは次の瞬間には巨大な剣となり、振るうと青いエネルギー刃がノイズを両断していく。

 

  「せぇぇりゃぁぁあああ!」

 

  2つの攻撃から逃れたノイズがこちらに向かってくるが、振るわれる拳に粉砕されていく。

 

 

 

  どうにか危機は去った。周囲のノイズが全て消滅して、ようやく体の力を抜く。

 

  「大丈夫ですか、お兄さん!どこか痛いところありませんか!?」

  「えぇ。あなた方のおかげで無事です。ありがとうございます」

  「ふぅ、無事で何よりだ。というか、まさか二度も会うとはな」

  「そうね。すみません、また…」

  「書類、ですね?」

 

  また、彼女たちに会ったということはあの書類にサインしなければならないということだ。少々面倒に思っていると、黒い乗用車が近くに停車する。3人も予想外だったのか不思議そうにしている。中から1人の男性が出てくる。

 

  「緒川さん?」

  「また会いましたね、言峰零士さんでしたね?」

  「はい、そうですが…」

  「申し訳ありませんが————あなたを一時的に拘束させていただきます。」

  「————っ!?」

  「緒川さん何で!?」

  「そうです!彼はただの——」

  「そう言いたいのですが、事情が変わりました。こちらに来ていただけませんか?」

  「…分かりました。そちらに従いましょう」

  「おい、お前…!あぁもう、後で説明してもらうからな!緒川さん!」

  「もちろんです。では」

 

  両手に手錠がはめられる。容易に外せないように電子式のものだった。乗用車——どうやらリムジンらしい——に全員が乗り込む。

 

 

  しばらく走っていると街を抜けて高台に向かっているのが分かった。そこには見慣れない建物がある。

 

  「ここは…?」

  「リディアン音楽院、その高等部です」

 

  そのまま校舎を抜けていってしばらくしたところで止まる。

 

  「着きました。ここで降りて下さい」

 

  促されるままに降りる。歩いていくと扉が現れる。中はエレベーターで、パネルを操作する。エレベーターが動き出す。どうやら下に向かっているようだった。やがて止まり、扉が開いた先には、

 

  「ここは…?」

  「ようこそ!特異災害対策機動部二課へ!」

  「あなたはあの時の…」

 

  あの夜に会った赤いスーツの男性が同じ格好で待っていた。他には数名のスタッフがこちらを見ている。同時に手錠が外される。

 

  「手荒なことをしてすまなかったな」

  「それで、要件は何です?拘束までしたのですから、よほどのことでしょうか」

  「司令、私たちは——」

  「いや、君たちもいてくれ。その方が説明しやすい」

  「それってどういう——」

  「はぁーい、それは私から」

  「了子さん?」

  「実はね、あなたたちが初めて会った時、彼からフォニックゲイン(・・・・・・・・)が観測されたの」

  「フォニックゲイン!?それって...」

  「そう、私の理論なら人体、ましてや男性から観測されることはないはず。でも彼からは観測された。十分異常でしょ?」

  「そう、だから彼を呼んだ。再度聞きたい。君は何者だ?」

 

  その場にいる全員から目を向けられる。しばらく考え込むように目を閉じていた。やがて目が開き、一言。

 

  「...条件があります。今から話すことは外部に伝えないこと。上層部、国にもです」

 

  その条件に一同は面食らう。情報を洩らす気はなかった。しかし、上層部に報告せず自分たち二課だけにとどめるなど決められるはずがない。やがて否定と捉えたのか短く息を吐き、立ち去ろうとする。

 

  「...それでは私は――」

  「分かった」

  「弦十郎くん...本気?」

  「責任は俺が持つさ。頼む、話してくれないか」

 

  全員が弦十郎の言葉に驚くが、やがて諦めたように彼を見る。

  足を止め、向き直ると口を開き微笑む。

 

  「良いでしょう。では改めて、私は言峰零士。神秘を学び、始まりを目指す者――魔術師です」

 




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