ウルトラソッ・・・!   作:たい焼き屋台

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IFは完全に別次元ということでお願いしますm(_ _)m


IF おどるよる

 

 

 ――音が聞こえる。先輩がまた演奏しているのだろうか?

 

 

 昨日は仕事が終わった後、真っ直ぐに先輩の家に転がり込んでご飯を食べて――そして一緒に寝た。

 

 

 ご飯まではいつも通りだった。でも、その日はいつもと違った。私はなぜかいつもより先輩を目で追ってしまうし、先輩も妙に落ち着きがなくてそわそわしていたように思う。

 

 

「あはは~、先輩もついに日菜ちゃんの魅力に気づいたのかな?」

 

 

 ぎこちない空気を紛らわそうと軽口を叩く。いつも通りの冗談。普段なら軽くあしらわれて私が抗議して終わり。だから先輩が近づいてきたことにも無警戒だった。

 

 

 気づいたら先輩の顔は正面にあって唇には感触が。

 

 

「え……、せんぱ……きゃっ」

 

 

 そこから先のことは思い出すことも恥ずかしくて、でも忘れたくなくて。先輩の私を気遣う声も、優しく撫でてくれる手も、まるでラブソングの中にしか存在しないような甘い言葉も、全て私の大切な思い出だ。

 

 

 初めての経験に緊張もしたけれど喜びの方が大きかった。

 

 

 改めて先輩と一緒に寝たことを思い出して頬がゆるむ。浮かれすぎて仕事に支障がでないようにしないと。

 

 

 あぁ……それにしても人の体温を感じて眠ることはどうしてこんなに安心できるんだろう?

 

 

 微睡みに体を委ねながら先輩の温かさを感じていると徐々に熱が高まる。……というか熱い。寝ぼけ眼をしぱしぱさせながら開く。

 

 

「……え?」

 

 

 目を開いた先にあったのは先輩の姿でもなければ、見知らぬ天井でもなかった。

 

 

「「「Na na na na na na na」」」

 

 

 コールが眠っていた私の体を目覚めさせる。飛び跳ねる観客が地面を揺らす。頭上を人が流れていく。

 

 

 眠っていたはずの私はステージの最前列に立ち尽くしていた。未だに事態を飲み込めずにいたが体はリズムを取り始めていた。

 

 

 後ろの観客の圧力に負けないようにしっかりと足を地に着けステージを見つめる。ステージ上にいるのは見たことのないバンド。でも曲にはなぜか聞き覚えがあった。

 

 

「え!? 日菜ちゃん!?」

 

 

 違和感の正体を掴もうとしていると、もうすっかり聞き慣れた声が耳朶を打つ。声が聞こえただけで高鳴る心臓に自分でも呆れながら隣を振り返ると、驚いた顔をした先輩がいた。

 

 

 最前列では話すこともままならないので曲の合間を縫って落ち着ける場所に移動する。慣れた様子で飲み物をこちらに渡してくれる先輩にお礼を言いながら受け取る。

 

 

「どうして日菜ちゃんがここに……?」

 

「ここってことは先輩はここがどこか分かるの? 寝てたと思ったらいつの間にかライブ会場にいるし……これって夢?」

 

「夢なんだけど、ええと……説明するのは難しいな……」

 

 

 先輩からの話を纏めると、先輩は小さいときから寝ると度々このフェスにくる夢をみていたらしい。それで音楽に興味を持ってギターを練習して、私と出会えたと思うと夢に感謝しないとね。

 

 

 さっきのバンドの歌に聞き覚えがあったのも先輩はここで聞いた歌を広めるために動画投稿サイトに上げていたものの一つだからだ。

 

 

「って訳で、別に今までサイトに上げてた歌は別に俺が考えた歌じゃ無かったんだよ」

 

「うん。それはいいんだけどどうして日菜ちゃんにこんな面白いことを黙っていたのかな?」

 

「それはいいのか……」

 

「いいの! それで、どうして今まで教えてくれなかったの?」

 

 

 夢の中の人とはいえ、人の曲を勝手に使っている後ろめたさが先輩にはあったみたいだけど、自分の歌としてCDを販売したりしてる訳でもないし、そんなに深く考えなくてもいいと思うけどなぁ。

 

 

 むしろ歌を広めて多くの人の心をるんっ♪ってさせたことに自信を持ってもいいと思う。私もその一人だし。

 

 

「え、だって夢の中の話なんて普通信じて貰えないだろ」

 

「好きな人の言うことを疑ったりしないよ?」

 

 

 ストレートに好意を口に出すと先輩は真っ赤になる。昨日はやられっぱなしだったから少しぐらい反撃しても許してくれるよね?

 

 

 火照った顔を冷ますためか飲み物を一気に飲み干した先輩は吹っ切れたような顔をしていた。

 

 

「よし! じゃあ折角日菜ちゃんもフェスに来たんだし目一杯楽しもう!」

 

「さんせーい!」

 

 

 そこからはもうお祭りだった。最前列近くに切り込んでいってぐちゃぐちゃになって、そこで離れないようにするといった言い訳で先輩にぴったりくっついたり、近くでサークルが出来たら混ざって見知らぬ人と肩を組んだり、ダイブしようとしたところを先輩に必死で止められたり。

 

 

 夢のなかということもあって現実では顔を隠しながら歩くことも多い中、先輩と思いっきり遊べることが楽しくて、いつもより3割増しではしゃいだ。

 

 

 日もすっかりくれて残すは大トリのみとなった頃には二人ともヘトヘト……ではなく、まだまだ元気だった。今も最後のステージが始まるのかを今か今かと前の方で待っている。

 

 

「……一人の時も楽しかったけど、二人の方がもっと楽しいな」

 

 

 先輩の零した言葉に胸がきゅーっとなる。

 

 

 フェスだと友達と来ても目当てのバンドが違うと別行動することも珍しくない。それでも一緒に回れたほうがやっぱり楽しい。知らないうちに先輩の手を握る力が強くなる。気づいたら自然と繋がれていた手。この手を決して離したくはない。

 

 

 最後のステージの幕が上がる。

 

 

 先輩の言うとおりならこのステージが終わると夢も覚めるらしい。でも、夢が覚めても隣に先輩がいる。寝ても起きても夢みたいだ。

 

 

 ――目が覚めてもこの手が繋がれていますように

 

 

 

 

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