Re:ゼロから始めるグランドオーダー   作:タイガ原

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今回はちょっと長めです。


第12話 「アイスブレイク」

「あっさり終わりましたね……」

 

「ああ、そうだな。必死こいて何とか倒したのが馬鹿らしくなってくる」

 

 スバルとオットーは、倒れ伏した魔獣たちを遠目に、二人揃って並んで項垂れる。

 

「まさに『今一歩のギルティラウ』だァなァ」

 

「そんな言い方されてんのか、アレ……」

 

 ちらとガーフィールを見れば、どこか物足りなさそうに歯をカチカチと鳴らしている。しきりに何かを気にしているようで、たびたび視線が泳ぐ。

 

「……なァ、大将」

 

「いいぜ。向こうが許してくれるんなら、だが」

 

「……! 流石ッだぜ、大将。俺様が言う前ッからまるっきりお見通したァよ」

 

 ガーフィールの顔がパッと明るくなり、目はキラキラと輝きを湛える。くるりと方向転換して、小走りで目的へ向かっていく。

 

 その彼女(目的)を目の前にして、真っ直ぐに目的(彼女)を見据え、こう切り出した。

 

「俺様と、一戦交えちゃァくれねェか」

 

「ガーフィールさん?」

 

「迷惑だってなァわかってる。だっけどよォ……」

 

 マシュはふるふると首を横に振り、ガーフィールの言葉を遮る。もうこれ以上、言葉は必要ないと。

 

「いいえ、それ以上の言葉は必要ありません。ただ全力で打ってきてください、ガーフィールさん──ガーフくん!」

 

「オ、おォ!」

 

 断られるとばかり思っていたガーフィールは、突然のマシュの叫びに面食らう。だが、次の瞬間には口の端を吊り上げ、拳は固く握り締められ、身体は闘気に満ち溢れていた。

 

 構えられた盾に、真正面から打ち込む。

 

「──ッ!」

 

 本当に本気で、全力で打ち込めたわけではなかった。それでもまさか、盾が微動だにしないとは。

 

 何のカラクリがあるでもなく、ただ純粋に、圧倒的な防御力によるものだということを感覚で理解して、驚きと歓喜とが湧き上がった。

 

 全力ではないにしても、ほぼそのつもりで打った一撃。それを、こうも簡単に防がれてしまう。ならば、次こそは全力で──ではなく。

 

 あの一撃を完全に防ぎきれるのならば。それを多少上回った程度では、結果はほとんど同じだ。

 

 であれば、限界を超える──などと、脳筋一辺倒の考えをする男ではない。

 

 頭に血が上ってこそいなければ、必要に応じて搦手も使えるのがガーフィールの強み。

 

 全力で打ってこい、というのはつまるところそういうことだ。今できる全てを使って戦おう、と。

 

 肉体が歓喜に震える。その震えが足の裏から地面へと伝わっていく感覚があって。そして、ガーフィールの『力』が発揮される。

 

「え……? あっ……!」

 

 突然、マシュの足元の地面が隆起した。体勢が崩れ、防御は不完全になる。そこへ、ガーフィールの追撃。

 

「オラァ──!」

 

「く──!」

 

 盾で防ぐも、ガーフィールの一撃は不完全な防御で防ぎきれるほど甘くはない。 衝撃で空中へと吹き飛ばされる。

 

 地面を隆起させたのは、ガーフィールが世界から与えられた加護、『地霊の加護』によるもの。地に足がついている限り、地の防護を受け、地面を操作する力。

 

「まだまだァ!」

 

 マシュが着地、体勢を立て直そうとした瞬間に、もう一度足元を隆起させた。

 

 だが、同じ手に二度も引っかかりはしない。地面がせりあがるのと同時にその地面を強く蹴り、跳躍。

 

「やぁぁっ!」

 

「ちィ!」

 

 盾の重量に位置エネルギーを追加して、そのままガーフィールに突撃する。

 

「効ィきゃァ、しねェ!」

 

 地に護られているガーフィールも、マシュほどではないが充分に固い。マシュの力は防御が主体。攻撃に割く力は少なく、地の防護を突破できるかは怪しい。

 

 防御の面ではマシュが、攻撃の面ではガーフィールが、それぞれ勝っている。その相性の関係で、二人の戦いは千日手となる。

 

「ッらァ!」

 

 ガーフィールの攻撃。ただの攻撃ではマシュを後ずさらせることさえ難しい。だから、攻撃の度にマシュの足元の地面を操作する。

 

 目の前と相手の足元とに集中する。隆起に陥没、その場でより良い方を使い分け、バランスが崩れたところを叩いていく。

 

 それでも、防がれる。後退こそさせているものの、決定的な一打は訪れない。

 

 ガーフィールは前進しながら地面を操作し、そして()を盾に打ち込む。マシュは後退しながら、不安定な足場に対応しながら、攻撃を防ぐ。

 

「────」

 

 洗練されていく。研ぎ澄まされていく。無駄が削げ落ちていき、本当に重要なものが存在感を増してくる。

 

 一瞬。

 

 時間が止まるような、そんな錯覚があった。今この時に全てを叩き込むのだと、本能がそう告げた。

 

「──部分獣化!」

 

 腕が獣へと変じる。それまでのものとはまるで違う力を宿す、黄金の獣の腕。

 

「────!」

 

 マシュもまた同じく。不安定に変動し続ける足場に、適応しつつあった。

 

 法則性があったわけではない。単に、動く足場でもしっかりと盾を固定、構えをとれるように、という心構えの問題だ。

 

 ──()()()言っていないが、マシュがガーフィールに言った、『盾とは心のありよう』。まさにそういうことだ。

 

 ガーフィールの雰囲気が変わっていくのを見て、今までにないほどの攻撃が飛んでくることを覚悟する。動く足場に、それでも足を踏ん張る。

 

「ッらァァアア!」

 

「──っ!」

 

 獣化したガーフィールの右腕が、マシュの盾へ迫る。今までで最も強く、洗練された一撃。それを、マシュの盾は──防ぎきった。

 

 どちらも今の精一杯を出した。その結果、ガーフィールの攻撃を、僅かながらマシュの防御が上回った。

 

 堅固なる城壁を相手にしたような、強固な盾。その盾に自分の全力を防がれ、ガーフィールはその場に膝を落とす。

 

「がァあああアァァ! ちィッくしょォが!」

 

「ガーフくん!?」

 

「わァかってらァ。俺様の負けだ、負け。俺様の盾より、アンタの盾の方が強固だ(つよか)ったってこッたァな」

 

 悔しがりながら、どこか満足そうに。

 

「はい。私の勝利ですので──ガーフくん!」

 

「あ、あン?」

 

「──私の弟子になってもらいます!」

 

 その言葉に驚いたのは、ガーフィールだけではない。その場にいた多くの者が、多かれ少なかれ驚きを覚えた。

 

「私のことは師匠と呼んでください!」

 

「──し、師匠ッ!」

 

 マシュもガーフィールも、どちらも晴れやかな表情を浮かべている。前回と過程は違うが、同じところに落ち着いた。

 

 *

 

「とりあえず盾での峰打ちを──」

 

「あァ? 盾のどこに峰が──」

 

 前回と同じようなやり取りをしているのが聞こえてくる。スバルと藤丸は少し目を見合わせて、顔をほころばせる。

 

「……っと。気を抜いてばかりもいられねえな。もうすぐだ」

 

「そうだね。今度こそ……!」

 

 少し先に赤い水晶が見えてきている。あれが攻撃してくることもわかっているし、イレギュラーではあったが、水晶戦は既に一度突破している。

 

「私はこの辺りから狙撃に徹するとしよう。ナツキ・スバルとオットー・スーウェンの護衛も任せておけ」

 

「それは助かるが……大丈夫なのか?」

 

「三人分の攻撃を防ぐのは難しいでしょ。そっちにアンリを付けるよ」

 

「え、オレ?」

 

 いきなり名指しされたアンリマユが驚く。水晶破壊の攻撃に参加してくれるのはありがたいが、他のサーヴァントと比べると攻撃力の低さが目立つ。ならば、防御に徹して貰えれば自分ともう一人分くらいは守れるだろう。

 

「ったくよぉ、オレは三流以下だってのに」

 

「それでも、霊基の強化と拡張はめいっぱいしたんだから、中の下ぐらいはやれると思うんだけど」

 

 一時期は収穫した種火をアンリに最優先でつぎ込んでいたほどで、更には貴重な魔力リソース(せいはい)も惜しみなく使い、限界まで霊基を拡張した。

 

 自分のことを弱い弱いというアンリに対して、意地になっていた。後悔はそこまでしていないが、次からは同じようなことは二度としないと誓った。

 

 何より、他のサーヴァントに割くべきリソースを削ってまでやったことなので、しばらく周りからの目が痛かった。

 

「まあ、マスターの労力に、少しでも働きで返さなきゃいけませんからねぇ。そいつと同調するだけじゃあ全然割にあってないですし?」

 

 アンリは現在、スバルと同調している。スバルの『能力』をアンリのもつ『残滓』と共鳴させ、カルデア一行を彼の能力に便乗させている。

 

 謎が多いが、本来のアンリならそう簡単にできることではないらしい。彼に与えた多くの魔力リソースが、その補助をしているということだろう。

 

「なら、オレ達はあっちだ。行こうぜ、マスター」

 

「うん。頼りにしてるよ」

 

 至近距離に行くのは、マスターの藤丸とマシュ、クー・フーリンと、ガーフィールの四人だ。ちょうど四人づつ別れた形になる。

 

「おオッらァ!」

 

 一番初めに攻撃に移ったのは、ガーフィールだ。だがやはり、一度目と同じ。

 

「──あン?」

 

 中のエミリアを傷付けないようにと意識し過ぎたか、水晶には僅かに傷ができただけ。ガーフィールには前回の記憶はないのだから、水晶との戦いに関して、情報共有をすべきだったか。

 

『くるぞ! みんな、気を付けて!』

 

 赤い水晶が発光する。光線を放ってくる前兆だ。しかし、既に心構えは出来ている。

 

 そして次の瞬間、光線が放たれると同時に矢が水晶を襲う。放たれようとしていた光線を全て掻き消し、さらに大きなダメージを与えた。

 

「同じことは何度も出来ん! 今回だけと思え!」

 

「ありがとう、エミヤ!」

 

 攻撃をしてくるまでに準備ができる今だからこそできる芸当。しかし、これでいいスタートダッシュを切れた。

 

「みんな! ガーフィールを補助して!」

 

 藤丸が呼び出した『影』は、メディア、玉藻、諸葛孔明。補助や援護の得意なキャスター達だ。

 

 先程のマシュとの攻防で、ガーフィールの攻撃力は凡そ把握した。あの性能なら、『影』を攻撃に回すより、キャスターで補助した方が効果的だ。

 

「お? オォ……! 力が湧いて来やッがる!」

 

「思いっきり行ってください! ガーフくん!」

 

「オォ! やったらァ!」

 

 マシュの発破を受けて、ガーフィールは力強く踏み出す。その勢いのまま水晶を殴りつけると、大きくひび割れて破片が飛び散る。

 

 再生しようとするが、そこに追撃。ガーフィールだけでなく、もちろんマシュやクー・フーリンも攻撃する。

 

 その間に光線が彼らを襲うが、彼らは彼らでそれを防ぐ。マスターを狙う光線はマシュが打ち払う。スバルやオットーを狙う光線はエミヤとアンリマユが防いでいる。

 

「これッで、どォだァ!」

 

 連撃のシメに右拳を叩き込む。一際大きな音が響き、水晶が砕ける。確かな手応えを感じ、その拳を引っ込めようとするが──

 

『まだだ! ここからだぞ!』

 

 通信越しにドクターの声。そうだ。水晶戦は一定以上削ってからが本番。今の一瞬は再生が止まっているが、直ぐにこれまで以上のスピードで再生するはず。

 

『あ、あれ……?』

 

 一瞬の後、確かに修復は再開されたが、その早さは先程までと何ら変わりない。

 

『何も起こらない……?』

 

『そんなわけないだろう! 水晶内部の反応が強くなっている! 何かを仕掛けてくるぞ!』

 

 困惑顔のロマンを押し退けて、ダ・ヴィンチちゃんがこちらに警告を発する。

 

「先輩! 後ろに!」

 

「ありがとう!」

 

 宝具を展開する暇はない。それでもできる限り魔力を回し、マシュの防御力を強化する。

 

 光線の数が増えるか、太い光線になるか、あるいは光弾を散らしてくるか。そう思考を巡らせていたが、繰り出された攻撃はそのどれでもなかった。

 

 ──氷。

 

 氷の礫が射出される。まるで這うようにして地面が凍りつく。氷柱が空から降り注ぎ、あるいは地面から突き出してくる。

 

「がァ、こォのッ……! 『ケルケーリュはカラカプトスを二度見する』ッてェヤツだぜ、これァ……!」

 

「ごめん! 何が何なのか全くわかんない! マシュはわかる!?」

 

「すみません! 同じくわかりません!」

 

 攻撃が氷に変わるという、いきなりのことに落ち着きを失う。

 

 ケルケーリュとカラカプトスがなんだかわからないが、ざっくり、ものすごくざっくり言えば『びっくりした』とかそんな感じの意味だろうか。

 

「く……!」

 

 攻撃の手は止まない。光線とは比べ物にならない威力の氷を、光線と変わらない頻度で繰り出してくる。

 

「どうすれば……」

 

「なァに神妙な顔してやがンだ、師匠。俺様の師匠なんッだからよォ、どっしり構えててくれや」

 

 ガーフィールからマシュに向けられるのは、信頼の視線だ。これ以上ないほどの純粋な信頼を向けられている。こんな目を向けられて、奮い立たない訳にはいかない。

 

「そうです、私は──ガーフくんの師匠で、先輩のサーヴァントです! このくらい、なんてことありません!」

 

 それを自覚したことで、力が、勇気が溢れてくる。声を張り上げ、全身を鼓舞する。

 

「私に続いてください! 先輩! ガーフくん!」

 

 マシュは飛んでくる氷を弾きつつ、前方へ突っ込む。藤丸は魔術礼装・カルデア戦闘服によって強化された身体能力をフルに使って、どうにか後を追う。

 

 さらにその後ろから、ガーフィールが追従する。藤丸は、前と後ろの盾使いに守られている形だ。

 

「はぁっ!」

 

「オラァッ!」

 

 前から後ろから、時に地面や空中から襲い来る氷。それをマシュとガーフィールが蹴散らし、その勢いのまま水晶本体に近付いていく。

 

「──先輩!」

 

 突然くるりと後ろを向いたマシュが、盾を斜めに構えてしゃがんだ。マシュの顔を見ると、その目は真っ直ぐに藤丸と、その後ろのガーフィールを見据えていた。

 

 彼はそれが何を意味するのか、その一瞬で悟る。

 

「みんな! ガーフィールの道を開け!」

 

 赤い水晶を守るようにして聳える氷の壁。藤丸は『影』に指示を出し、孔明が的確に読み取った脆い部分に、メディアと玉藻が強力な火を放つ。

 

 氷壁に綻びが生じる。狙った場所が見事に崩れ落ち、人が一人通れるだけの穴が空く。

 

「ガーフくん──跳んでください!」

 

「ら、ァァァ──!」

 

 盾に足が掛かった瞬間、マシュは梃子(てこ)の要領でガーフィールを押し上げる。ガーフィールは脚に思いきり力を込めて、跳躍する。

 

 ガーフィールの身体は、『影』達の開けた穴を(あやま)たず通過する。

 

 そして、『影』の仕事はもう一つ。ガーフィールに対する、出来うる限りの補助、強化。彼は、地に足がついている間、強くなる。逆に言えば、空中などでは弱体化する。

 

 だから、それを補ってあまりある程の強化効果を。

 

「おォ、オラアァ!」

 

 氷の壁を抜け、眼下に見えるのはあの赤い水晶。ここからあそこまで()()()()()重みも乗せて、全力をぶつける。

 

「部分ッ獣化ァ──!」

 

 膨れ上がる右腕と、熱を帯びる思考。足場に支えられていないことに多少の不安感を感じないでもないが、今のガーフィールには些細なことだ。

 

 何やらよくわからないが誰かが助けてくれているらしい。自分以外の力を自分の中に感じる。何より、自分の後ろには師匠がいて、さらにその後ろには大将がいる。

 

 安心感という指標で言えば、ガーフィールにとっては地面に支えられるよりもさらに心強い。

 

「ここまでされッて、燃えねェ奴ァ居ねえだろォ!」

 

 渾身の一撃が、赤い水晶に突き刺さる。その瞬間、周りにあった氷壁や氷柱が、粉々に砕け散る。

 

 赤い水晶にも全体にヒビが入り──そして一瞬だけ、元の完全無傷な姿を取り戻し──光の粒子となって、エミリアに収束する。

 

「エミリア──!」

 

 大きな声がしたと思って振り返ると、そこには後方でエミヤに守られていたはずのスバルの姿が。

 

「すまないマスター。どうしてもと言うのでね。連れてきてしまった」

 

「……いや、いいよ」

 

 一目散にエミリアの元へと駆けるスバル。その必死な姿を見て、責める気など起きるはずもない。

 

 彼は自分と同じだ。自分の無力さに押しつぶされそうになって、それでも自分にできることはやらなくちゃと足掻いて。

 

 そして彼は、たとえ自分が何も出来なくても──彼女が目覚めた時、最初に見るのはどうか自分であって欲しいという、強い想い。

 

 自分と同じで、自分が持っていない強さを持っていて。そのために必死になれる彼。

 

 そんな彼に必死に頼まれてしまったなら、聞き入れてしまうのも仕方のないことだ。

 

 *

 

「ん、スバル……?」

 

「ああ、俺だ。助けに来たぜ、エミリア」

 

「ふふ。スバルは、私の騎士様だものね」

 

「あー……その、うん、改まって面と向かって言われると、照れるな」

 

 キリッとした顔を保てずに、頬が緩んでしまう。

 

「ありがと。すごーく、助かっちゃった」




プリコネのリゼロコラボ面白かったですね!!!(今更)
レム、エミリアともに天井行かずに引けたので勝者です

あと、この作品内でスバルがスケルトンを引き寄せたりしてますが、魔獣じゃないのに引き寄せられるのか? って言うのは割と疑問だったので、異世界かるてっとでワンデスアーミー引き寄せてて安心しました
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