Re:ゼロから始めるグランドオーダー   作:タイガ原

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第13話 「さあばんと」

「スバル!」

「大将!」

 

 声を上げて、藤丸とガーフィールが駆け寄ってくる。それに続いて、マシュやサーヴァント達。最後方には、オットーを背負ったアヴェンジャー。

 

「スバル、あの人たちは?」

 

「協力関係。頼りになる奴らだよ。紹介したいから、とりあえず安全な場所に移動しよう」

 

 *

 

「つっても、道中に敵はいるよなぁ!」

 

 流石に見飽きてきたスケルトンの群れ。サーヴァントたちやガーフィールが薙ぎ払っているが──

 

「アイスブランド・アーツ!」

 

 そこに、今回からエミリアも参戦している。空中に出現した氷槌がスケルトンを吹き飛ばし、氷剣が切り裂き、氷槍が突き刺す。

 

 ガーフィールもそうだが、エミリアもサーヴァントに引けを取らない。

 

「とりゃ! うりゃうりゃ!」

 

 エミリア本人は至極真剣なのだが、どうにも気の抜ける掛け声。攻撃の激しさとの温度差で風邪を引きそうなくらい。

 

 スケルトンの数は凄い勢いで減っていく。また、戦力が増えたことで、マシュが藤丸を守ることに集中できている。

 

 そのおかげで、藤丸の呼ぶ『影』も攻撃に徹することができる。安定感は抜群になり、割と直ぐにスケルトンの群れを突破出来た。安全地帯、穂群原学園はすぐそこだ。

 

()っ……」

 

 藤丸は自分の手を見る。いつの間にか、手の甲に切り傷ができていた。戦闘時に石礫でも飛んできたのだろうか。

 

「怪我ァしてんッじゃァねえか。師匠のマスター、だったか?」

 

「うん。でもまあ、大したことないよ」

 

「『ゲバリエのサルモルサは水を吸って増える』ッてこともあらァ。見てやンよ」

 

「うん……なんて?」

 

 ガーフィールが藤丸の手の甲に自分の掌を重ねる。淡く暖かな光が、傷を癒す。ガーフィールが手をどかすと、そこには傷痕すら残っていなかった。

 

「おお。ありがとう、ガーフィール」

 

「大したこたァしてねェよ。……師匠のマスターだッから、大将……は大将がいるだろ。なら……大頭?」

 

「大頭かぁ、割と新鮮な感じ」

 

 言いながら、傷のあった箇所をさする。本当になんの痕も残っていない。ガーフィールが治癒の魔術を使えるとは、少し意外だった。

 

『ん? 今のは……』

 

「ドクター、どうかした?」

 

『いや、ちょっとね。もしかしたら、色々と分かるかもしれない』

 

 *

 

 穂群原学園、教室にて。

 

「改めて、エミリアです! よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします、エミリアさん。私はデミ・サーヴァントのマシュ・キリエライトです。こちらはマスターの藤丸立香」

 

「藤丸です。よろしく、エミリアさん」

 

 藤丸はエミリアを見る。水晶の中にいた時はわからなかった紫根の瞳と、銀鈴の声音。それから、表情や言葉の端々から感じられる、体つきとは不相応の幼さ。

 

 水晶の中の彼女は儚げな印象だったが、今はむしろ活発で力強い印象さえ受ける。もしもマシュに出会っていなかったら、惚れていたかもしれない。

 

 まあ、そんな『もしも』は論ずるだけ無駄だが。

 

「エミリアたん、わりと警戒してないね」

 

 助けられたからというのもあるだろうが、自分が王位候補者であるという自覚が固まってきたエミリアなら、多少は警戒してもいいと思ったのだが。

 

 オットーやガーフィールなんかは、出会ってすぐはそれなりに警戒していた。

 

「えっと……スバル達のお友達みたいだったから、いいかなって……ダメだった?」

 

 エミリアは両手の指を胸の前で合わせて小首を傾げ、申し訳なさそうに少しだけ上目遣いでスバルに視線を向けた。

 

「いやいやいやいや! 全然ダメじゃないよ、むしろいい! というかそのポーズ超可愛い! E・M・T! エミリアたん・マジ・天使!」

 

「ごめん、ちょっと何言ってるのか分からない」

 

 微笑ましいやり取りを交わすスバルとエミリア。それを見て、藤丸の中にふつふつと対抗心が湧いてくる。あんな惚気を目の前で見せつけられたのだ。こちらも見せつけてやらないと。

 

「マシュ! いつも可愛い頼れる後輩! M・M・M! マシュ・マジ・女神!」

 

「せ、先輩!? 急にそんなことを言われましても……その、カルデアには本物の女神様もいらっしゃいますし……あ、いえ、サーヴァントとなっている時点で『本物』ではないのですが……」

 

 頬を赤く染めるマシュ。いつも可愛いけど今はもっと可愛い。気にするところがちょっとズレてるのも可愛い。何だこの可愛さの塊は。

 

「あ、えっと、すみませんエミリアさん! サーヴァントの皆さんを紹介しますね!」

 

「ううん、いいの。気にしないで。ところで……その、さあばんと、って何のこと?」

 

「エミリアたん、サーヴァントってのは──」

 

 スバル、藤丸、マシュ、それから意図を過たず聞き取ってくれるオットーの四人がかりで、どうにかエミリアへの説明を終える。

 

「ふんふん。つまり、昔にすごーく頑張って認められた人を魔法で呼び出したのが、さあばんと?」

 

「魔法って言うと……ああいや、ざっくりそんな感じの理解でいいよ」

 

 だいたい理解できたエミリアに、わざわざ『魔法』と『魔術』の違いを指摘して水を差すようなことはしない。スバルも、それくらいは弁えている。

 

「ね、スバル。それって、ちょっと似てると思わない?」

 

「似てるって……あ、レイドか。確かに!」

 

 なぜ今まで思い浮かばなかったのか、と言うレベルだ。あそこに現れたレイドがサーヴァントだったという訳ではないだろうが、現象としては似たようなものだ。であれば──

 

「真名がわかれば、宝具や弱点もわかる……?」

 

 とはいえ、奴の真名に当たる『レイド・アストレア』は既に判明しているが、そもそも弱点らしい弱点が伝わっておらず、同時代を生きたシャウラでさえ、弱点など知らないという。

 

「いや、そうだ。それなら、過去を見りゃいい」

 

 レイド本人しか知らない弱点があるかもしれない。こう考えると、あの『死者の書』は、攻略の鍵として用意されたものであるとすら思えてくる。

 

「スバル、どうかした?」

 

 スバルが何やら考え込んでいたので、藤丸は気になって声を掛けた。あまり一人で抱え込みすぎるのは良くないと思って。

 

「あ、(わり)ぃ! 完全に今関係ないこと考えてた! や、ほんと何でもないから気にしないでくれ」

 

「何でもないならいいんだけど……」

 

 彼は一体、どれだけのことを一人で抱えているのだろう。人に言えない秘密が多くあって、あれでは息が詰まりそうだ。

 

「大将、今なんッか聞き逃せねェ単語があった気がすんだがよォ。──レイド?」

 

「それ、僕も気になりますね。『監視塔』で何があったんですか?」

 

「えっと……」

 

 掻い摘んで説明する。監視塔までの道筋、シャウラの正体、スバルとフリューゲルのなんやかんや、『試験』のこと。

 

「まあ、そんな感じで大変だった……いや、大変なんだよ。八方塞がりとまでは言わなくとも割とキツい感じ。武闘派内政官様がいればどうにかしてくれるんだろうなぁ、って場面がいっぱい」

 

「その状況で僕にどうしろって言うんですかねぇ!?」

 

「マジでマジで。オットーがいりゃそこまで大変にはなってない気がする。だから、俺が大変なのは一緒に来てくれなかったオットーのせいだな」

 

「理不尽すぎる!? 話し合いで決まった事じゃないですか!?」

 

 傍から見れば微笑ましく、当人からすれば胃が痛そうだ。気が置けない仲なのだろう、と言うのは見て取れる。

 

「……ところで、これからどうしようか」

 

『そのことなんだけど、色々とわかったことがある。とりあえず、話を聞いてくれるかい?』

 

 困っていたところに、ドクターからの通信。地獄に仏、渡りに船。なんであれ、できることがハッキリするなら願ってもなに。

 

『ただ、その前に確認したいことがある。──エミリア君とガーフィール君は、()()()()()?』

 

「……魔術師?」

 

 エミリアが首を傾げる。ガーフィールも同様だ。

 

『うーん、なんて言ったらいいかな。君たちはさっき、魔術を行使していたよね?』

 

「えと、魔法……のことでいいのかしら。その、魔術って」

 

『……世界が違えば魔術の体系も違う、か。まあ、それでいいよ』

 

 苦々しい顔で頷くドクター。藤丸もよくは知らないが、魔術世界において『魔法』とはかなり特殊なものらしい。

 

「使えるか使えないか、って話なら俺もオットーも使えるぞ。オットーはともかく、俺は体に無理させるからやらねぇけど」

 

『ふむ、なるほど。それで、その魔法には魔力が必要だよね?』

 

「それァそうッだァなァ」

 

 ガーフィールが、当然と言った様子で頷く。それを受けて、ドクターはなにかを確信したようだった。

 

『エミリア君が氷の魔術……魔法を使った時と、ガーフィール君が治癒の魔法を使った時、こちらでは魔力を観測できなかった』

 

「魔力が……観測できなかった?」

 

『うん。ただ、代わりに生命力の一部が励起したことが確認された。つまり、これが彼らの言う魔力だろう。こちらの魔術理論では生命力の一部としてしか認識されていない部分を利用して、神秘を行使している』

 

 話についていけない。スバルやオットー、マシュは理解した風だが、それ以外は全くもってわかっていないようだ。

 

『とは言っても、辿り着いている魔術師がいないとは言い切れない。秘匿されているだけかもしれない』

 

「ですが、現状は全く未知の魔術体系だと?」

 

『そういうことになる。こんなこと、魔術協会が知ったら色々とひっくり返るぞう……』

 

 全くもって理解は出来なかったために話には追いつけなかったが、藤丸は思い切って話を切り出す。

 

「で、ドクター。それが、これからの方針にどう関わってくるの?」

 

『そうだね、本題に入ろう。こちらは、その【生命力の一部】を、暫定的に【魔力】として設定した。その上で色々と解析をして、わかったことがある』

 

「……それは?」

 

『あの水晶も同じもので構成されている、ということさ。つまり、黒幕も彼らと同じ世界の者の可能性が高い』

 

 その言葉で、スバルたちに緊張が走る。

 

『それで、君たちが呼ばれたということは、それだけ君たちと縁の深い者だろう。あとは、あれだけ魔術……魔法を操れる者ということだけど、心当たりはあるかい?』

 

「大将、それァもしかすッと……」

 

「ロズワール……?」

 

 思い当たる節はあった。ロズワールならなにかを企んでいたとしても有り得る。だが、問題は方法だ。どうやってこちらの世界に来たのだろうか。

 

「……ダメだ。今は考えたってわからねえ。あいつだって決まったわけでもねえんだし。それで、俺たちはどうすればいいんだ?」

 

『少し調べたところ、その魔力の反応が特異点内にいくつもある事がわかった。同じように水晶に閉じ込められている人が複数いると思っていいだろう』

 

「じゃァ、やるこたァ変わんねェってこった」

 

『ああ。とりあえず、一番近い場所への道筋はこちらで指示しよう』

 

 一行はロマニの指示で、目的地へと向かう。その道中でエネミーに邪魔をされながらも、なんとか辿り着く。

 

 そこにあったのは、黒い水晶。そこには金髪を縦ロールにした幼女──

 

 ──ベアトリスが、囚われていた。

 

 




型月世界の魔力とリゼロ世界の魔力の関係をちょっと捻りましたが、全部僕の妄想なんで割とサラッと流してくれて構わないです。本筋にも絡んできませんし。
スバルが魔法を使える時点で、型月世界のものと別物なのは確か(当たり前)ですが、スバルやアルが魔法を使えている以上、地球人もその力を潜在的に備えているハズ、という考えからこうなりました。

あと、レイドとサーヴァントの関係が云々っていうのは、この「Re:ゼロから始めるグランドオーダー」では本当に関わってこないので安心してください。単にリゼロ本編との繋がりを意識しただけです。
「この件が全て終わって、元の緑部屋で目覚めたスバルは、ほとんどのことを覚えていなかったが、かすかに頭の片隅に残るものがあって……」みたいな。

『ゲバリエのサルモルサは水を吸って増える』、割と会心の出来です。全くわけがわからん。海藻か何かか?(リゼロ世界に海はない)

ちなみに、リゼロ本編のガーフィール慣用句で僕が一番好きなのは『アズラ鳥の鳴き声は鍋で煮える』です。スバルも「雉も鳴かずば、的なこと言われてんのかな」って言ってましたが、表現が迂遠な感じがすごく好きです。

というわけで、今回はこの辺で! 感想とか待ってます!
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