Re:ゼロから始めるグランドオーダー   作:タイガ原

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第25話 「裏」

 腸狩りの凶刃からスバル達を守った黄金の虎。言うまでもなく彼は我らがヒーロー、ゴージャス・タイガー。ガーフィール・ティンゼルだ。

 

「怪我ァねェか、大将」

 

「助かったぜ、ガーフィール! 無事だ!」

 

 再会を喜び合う二人。その横で、驚きで目を丸くしている少女が一人。

 

「え、ガーフ……?」

 

「あァ?」

 

 そこで、ガーフィールもその少女に気付く。想い人によく似た、けれど髪の色と目付きが違う、鬼の少女。

 

「大将? これァ、どうなってンだ?」

 

「スバルくん、いつの間にガーフとそんなに……いえ、『聖域』に……?」

 

 ガーフィールはスバルとレムを交互に、レムはガーフィールとスバルを交互に見て、生じた疑問をスバルにぶつける。

 

「えーと……悪い! その話は後でおいおいと、な。今はとりあえず、目の前の問題に向き合おう」

 

「はい! スバルくんがそう言うのなら!」

 

 レムはそう言うと、スバルを庇うように前へ出た。吹き飛んでいった『腸狩り』を警戒する。ガーフィールもそこへ続く。

 

 疑問も疑念も、スバルの言葉と比べれば優先度は下だ。そうでなくとも、今はまだ倒れていない『敵』に注力しなければならない。

 

「────ッ」

 

「ガーフ?」

 

「なんッでもねェ。そっくりだって思っただけだ」

 

 想い人とそれ以外を天秤にかけて、迷いなく想い人をとれる。想い人に対する姿勢は、姉妹でそっくりだ。

 

「姉様が振り向いてくれないからって、レムを狙わないでください。ダメですよ、レムにはスバルくんがいますから」

 

「なッ……誰がンなことするッかよォ! ……仮にそうだとして、大将が相手じゃ張り合うッ気も失せらァ」

 

「……本当に、色々あったんですね」

 

 ガーフィールがスバルに一定の信頼を置いているのは、その様子を見ればわかる。あの、意固地で意地っ張りなガーフが、だ。

 

「スバルくんは素敵です」

 

 想い人の魅力を再認識する。そして、彼女はひとつあることを心に決めた。多くの疑問はあるが、それをスバルに聞くようなことはしないと。

 

 きっと今は非常事態。それは『腸狩り』のみならず、この燃え続けている街がそう物語っている。貴重な時間を、レムへの説明で浪費して欲しくない。

 

 一言も発さずとも、彼がその目を向けてくれるなら。レムが彼のために動くのに必要なのはそれだけ。いや、それすらも必要ないのだ。

 

「レムが寝ている間に、何があったのかはわかりません。ですが、スバルくんはスバルくんです」

 

「レム……」

 

 寝ている間、とは言うが。レムとそれ以外で認識が大きく食い違っている。レムにとっては、せいぜいが数日程度。実際は、一年以上隔てていると言うのに。

 けれど、その認識の差を埋めるのも、今は後回しだ。

 

「それで、ガーフィール。あの『腸狩り』なんだが」

 

「アレも偽物ってことでいンだろォよ。軽かったかンな。『ヘシュメシュメの若白髪とホイホロの総白髪』ってヤツだ」

 

「それだけお前が強くなった、って線は?」

 

「そこまで自惚れァしねぇ。そうならいいッたァ思うけどよ」

 

 ほぼガーフィール単独で勝利した相手の、劣化コピー。負ける要素はない。

 

「それに、だ。俺様ァちぃとばかし先走っただけだッかんなァ。そろそろ来るぜ」

 

「来る?」

 

 ちらりとガーフィールが目線を向けた先。確かにそちらから、多くの足音が近付いてきていた。

 

「──スバル!」

 

 聞こえてきたのは、自分の名前を呼ぶ銀鈴の声音。その声の主はもちろん、彼女だ。

 

「エミリア! それに、藤丸とマシュ!」

 

 ガーフィールと合わせて、先程離れ離れになってしまったうちの四人と合流。しかし、二人ほど足りない。

 

「アーチャーとランサーは?」

 

「……はぐれた。まだ大丈夫だとは思うんだけど」

 

 藤丸は自身の令呪を撫でるように確認する。魔力の経路(パス)はまだ繋がっている。だが、空間を隔てているからなのか、微弱だ。

 

「そうか。いや、助かる! 戦力としては過剰だけど、それくらいの方が安心する!」

 

「────ふふ、そう。そうなのね」

 

 妖艶な笑みを浮かべ、立ち上がる女怪。傷は深いがそれを感じさせないほど平然としている。それどころか、その頬は紅潮してもいた。

 

「何度見ても気味ッが悪ィな、その面ァ」

 

「あら。どこかで会ったかしら?」

 

「俺様が初めて()()()のがてめェだ。忘れッたくても忘れられねェよ」

 

 何よりも、その姿。先程までのような、靄に包まれた影ではない。

 

 シャドウサーヴァントという化けの皮を剥いだことで、本物の『化け物』という中身が顔を出した、ということか。

 

「観念ッしろや。大将の言ってた『四方八方からソの国の歌が聞こえる』みてェなことッだぜ」

 

「面白いことを言う虎さんね。でも……」

 

 エルザは周囲を見渡す。彼我の戦力差を測れない彼女ではない。その差は明白、エルザに勝ちの目はない。

 

「本当に殺されちゃうかもしれないわね。……一人だったら、の話だけれど」

 

「だったらも何も、一人だろォが。それとも、『困った時にはカルルメリの酒瓶』みてェなことがあンのか?」

 

「言葉の意味はわからないけれど、そうね。ここに来ているのは私一人ではないの」

 

 地面が揺れる。地響きが聞こえる。その発生源、その音の主は巨大な魔獣、その足音だ。

 

「──お兄さん、こんな所で何してるのお?」

 

 岩豚(ワッグピッグ)と、それに乗るメィリィ。それが、向こう側の援軍だった。

 

 *

 

 視線の先に浮かぶ道化。それが、計り知れない規格外の──聖杯級の魔力を保有していると、肌で感じた。

 

 だが、どれほど強大であろうとも心臓を穿ち抜けばそれで終わり。幸い、ギリギリ宝具の射程範囲内だ。

 

「『刺し穿つ(ゲイ)』──」

 

「そう簡単に行くとは思わないことだーぁよ」

 

 その特性を知ってか知らずか。宝具の真名解放まであと一瞬、というところで道化が範囲外へと飛び去った。

 

「チッ」

 

 目標を見失う。しかし、飛んで行った方向は分かる。すぐに追いかけて、今度こそアレの心臓を抉り出す。

 

「待て!」

 

 走り出そうとしたクー・フーリンの肩が掴まれる。振り向くと、嫌味なやつの顔が目に入った。

 

「止めてくれるな、アーチャー。ここでアイツを追わなきゃ、意味が無くなる」

 

「無策で突っ込む気か!? どう考えても罠だろう!」

 

「だとしてもだ」

 

「ランサー! 君は……」

 

 アーチャーが強く諌めようとして、『それ』に気付く。

 

 ランサーの末端から、光が立ち上っていた。紛れもなく消滅の予兆であり、この霊基の限界を知らせている。

 

 余裕がなかった。悠長にしている暇はない。今この瞬間も、彼の霊基は崩壊しかかっている。それを、気合いと『戦闘続行』で押し止めているだけ。

 

「残り時間は少ない。当たって砕けろ、だ」

 

「無茶は……いや、言っても仕方がないな」

 

 策を練る暇さえない。それに、もう一度『穴』を開けようとしても、そこを狙い撃ちにされるのは明白だ。だから、二人揃ってこうするのが現状の最善。

 

 ──辿り着いた先は、城だった。

 

「どうする?」

 

「本来なら二手に分かれたいところだが、今は各個撃破される方が痛手だ」

 

 二人揃って、城の内部を進んでいく。先程感じた強い魔力を辿って、奥へ奥へと。

 

「……ここか」

 

 しばらく進んで、行き着いた。

 

 壁一枚、扉一枚を隔てた向こう側に、やつは居る。聖杯級の魔力、あるいは、聖杯そのものを保持しているであろうと思われる強大な魔力。

 

 意を決して、扉を開け放つ。

 

「ようこそ。魔城『パンデモニウム』にねーぇ」

 

 そこは、どうやら応接間のようだった。道化はそこの椅子に悠然と腰かけて、こちらへ歓迎の言葉を送った。

 

「──その心臓、貰い受ける」

 

 歓迎を素直に受けるつもりはない。その代わりに、心臓を。その命を貰い受ける。

 

「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)』──!」

 

 因果逆転の呪い。槍の軌跡は過たず、心臓へ狙いを定める。

 

「随分と、舐められたものだーぁね」

 

 しかし、道化の命を奪うには至らなかった。

 

「──アル・ゴーア」

 

 隙だらけになったランサーを、特大の炎弾が襲う。既に限界を迎えていたランサーの霊基は抑えをなくし、急速に崩壊していく。

 

「……ちっ」

 

 この一撃で、終わらせるつもりだった。だがそれは叶わず、焼き殺される。

 

「悪いな、先に戻ってるぜ、アーチャー……」

 

 カルデアに召喚されたサーヴァントにとって、特異点での消滅は死ではない。カルデアを擬似的な座として定め、帰る場所としている。

 

 だから、これは単に今回の特異点攻略にあたる戦力が減っただけ。しかし、その『だけ』が、今は痛い。

 

「……どうやって防いだ?」

 

「ちょっとした仕掛けだーぁよ。『剣聖』の剣撃を防ぎ切る程度のねーぇ」

 

 程度、などと白々しく言ってのける。剣聖はあちらの世界において最強の存在だと言う。エミリアやガーフィールと言った、サーヴァントに比肩しうる者達と比べても規格外らしい。

 話を聞くに、その剣撃は対軍・対城宝具の真名解放と同等の規模・威力であると思っていい。それを防ぎ切るとなれば、並の防御ではない。

 

「完全には、防げなかったけーぇれど」

 

 だが、どれほど強い防御であろうとそれを貫くのがゲイボルクだ。その証拠に、彼の胸からは多量の流血があった。

 

「この程度で止まる私ではない。ギリギリ、心臓には届いてないかーぁらね」

 

「……貴様は」

 

「うん?」

 

 この距離では、弓矢はほとんど意味をなさない。干将・莫耶を投影する。胸の前でそれを構え、視線は真っ直ぐに道化を捉えた。

 

「彼の言っていた人物像と一致する。ロズワール・L・メイザース辺境伯、で相違ないだろうか」

 

「間違ってはいないとーぉも。ただ、『今の私』に関して言うのなら、少し足りない」

 

 彼は、その首に巻かれた橙色の布を掴んだと思うと、懐から一枚のコインを取り出した。そして、言い放つ。

 

「私は──『粛清王』だ」

 

 その言葉とともに、右手の親指でコインを弾く。

 

「裏」

 

 コイントス。その意味を測りかねたエミヤだが、しかしロズワールが笑みを浮かべたことで警戒レベルを上げる。

 

「残念だったねーぇ」

 

「……なっ!?」

 

 エミヤの目の前に、二体の影が現れる。そのうち片方には見覚えがあり、もう片方も恐らく知っているものだった。

 

「数人がかりだった。偽物だった。それでも、『青き雷光』と『礼賛者』を下した君たちには賛辞を送ろう。だが、君一人ではどうかな?」

 

 ──自陣、『アーチャー』エミヤ。

 

 ──勝利条件、『粛清王』ロズワールの討伐。

 

 ──結果、『失敗』。




遅くなりました。いやー、アニメ2期すっごいですね。大兎のシーンとか、繰り返し見てたら気分悪くなりました。正直吐きそう(褒め言葉)。映像もさることながら、ゆっけ氏の演技がすごいよね。

そう言えば、『このファン』のリゼロコラボが決定したとか。嬉しいですね。リリース直後に始めたはいいもののしばらく放置してたので復帰しようとしたらなんか新しいこと増えててついていけなくなりそう。

ソシャゲ絡みだと、あとは『リゼロス』! 9月9日配信予定! 楽しみですね! ガーフィール推しの自分としては早いところ2期のキャラも実装して欲しいものです(気が早い)。
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