Re:ゼロから始めるグランドオーダー   作:タイガ原

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第5話 「邂逅と衝突」

「...む?」

 

「どうしたの?」

 

 ドクターロマンの指示に従い、特異点Fの探索を続けている中、エミヤが何かに気付き立ち止まった。

 

「妙なものを見つけた。私が先行して確認に向かうので、マスター達は後に続いてくれ」

 

『妙なもの? こっちでは観測できてないけど...』

 

「本当か? 多少距離があるとは言え、あれほどのものが観測に引っ掛からないはずはないと思うのだが」

 

『そう言われてもなあ...』

 

 ドクターからは頼りなく弱々しい声が返ってきた。エミヤが何を見つけたのかは分からないが、ともかく近くに行って確認してみないことには始まらない。

 

 エミヤが先行し、それに続く形でクー・フーリン。その後ろにアンリマユが続き、更にその後ろにはマシュが藤丸を抱えて続く。

 

 冬木の街を駆けるサーヴァントたち。赤い外套を脱ぎ髪を下ろしたアーチャー、半裸短髪のランサー、ボロ布を着たアヴェンジャー、そして可愛い後輩シールダー。

 

 マシュは左手で盾を持ち、右手で藤丸を支えている。藤丸は両腕でしがみついており、必然的に色々と距離が近くなる。

 

 マシュの豊かな胸は藤丸の脚に触れており、顔はマシュの髪が揺れる度に藤丸の頬に触れるほど近い。

 

 マシュの綺麗な瞳に意識が行く。整った鼻筋、白くて柔らかそうな頬、距離のせいか妙に艶っぽく見える唇に、心を奪われる。そして、その視線に気付いたマシュが頬を赤らめる。

 

「そ、その、先輩、そんなに見つめられると...」

 

 ──嗚呼、マシュが今日も可愛い。

 

「おいマスター、着いたぞ」

 

 クー・フーリン(ランサー)の声で、甘ったるい幻想(ユメ)から現実に引き戻される。

 

「嬢ちゃんとイチャイチャするのも結構だが、警戒は忘れるなよ?」

 

「...反省します」

 

 マシュの可愛さのあまり、熱に浮かされたように冷静さを欠いていたようだ。いけないいけない。今までの特異点でもあったことだが、いいかげんに直した方がいいかもしれない。何せ次は古代バビロニア、神代の領域に足を踏み込もうと言うのだから。

 

「ええと、それで、これが...」

 

「ああ、私が発見した〈妙なもの〉だ」

 

 目の前には地面に突き刺さった柱のような、あるいは地面から生えてきた樹のようにも見える、真っ赤で透き通った水晶(クリスタル)

 

『こちらも、映像で確認できたよ。ただ──』

 

「ただ、何?」

 

()()()()()()()()()()()()()。こっちの故障って訳でもなければ、それが単なる工芸品や建築の類でもないのは自明なんだけど』

 

 明らかに魔術関連のものであるのに、魔力反応が全くない──どういうことだ?

 

「だからこそ妙だと考えたのだが...何かわかるか?」

 

『うん。魔力の反応はないけど、その代わりに生命反応がある』

 

 生命反応と聞いて、まさかこの水晶が生きているのか──と思いかけたが、すぐに改める。その水晶の中心あたりに、女性がいるのがわかった。

 

 神秘的な雰囲気と、赤い水晶の中にあってもなお分かるほどの美しい銀髪。閉じられた瞼と睫毛が、その奥に秘め隠した瞳への探究心を掻き立てる。

 

 そして、銀色の髪から覗く尖った耳が、彼女が只人ではないことを示している。であれば、この魔性じみた美貌も頷ける。

 

 彼女は、この水晶に閉じ込められているのか。

 

「助けた方が...」

 

「待て、マスター。あれが危険なものであるから封印している、という可能性もある。あれがそうでないと断言出来ぬ以上、その提案には賛成しかねるな」

 

「...ごめん。軽率だった」

 

 軽率だったのと、あの美貌に()()()()()ということもあるだろう。マシュ至上主義の藤丸にとって、マシュに勝る女性などいないとは言え、藤丸の理性を揺るがすには十分だった。

 

『生命反応も至って安定しているからね。眠っているようなものだから、すぐに救出しなくちゃ命に関わる、なんてことも無い。焦る必要はないと思うよ?』

 

 ドクターの横で何かしらの作業をしているらしいダ・ヴィンチちゃんが、そう口を挟んだ。彼女...彼? も、かなりの美貌の持ち主の筈なのだが、あまり魅力を感じないのはその精神性によるものか。

 

『うーむ。やっぱり、それ以外におかしな所は見当たらないなあ。とりあえず、探索を続──』

 

「が、るァァアァ──!」

 

「!?」

 

 突然、どこからか獣の叫び声のようなものが聞こえた。いや、獣っぽくはあるものの、人の声だ。誰かが、恐らくはあのスケルトンと交戦している。

 

「先輩、今の声は...!」

 

「ああ。人の声だ! 助けに行こう!」

 

「...はい! マスター!」

 

 声のした方へと走っていくと、驚くべき光景が視界に入った。二人の男を守る、一人の男の姿だ。

 

『ヒュウ! 凄いぞ彼、たった一人であの数のエネミーを押し留めている! しかもあれはサーヴァントじゃない、生身の人間だ!』

 

「え...!? で、ですがやはり、後ろの二人を守りながらでは押し留めるのが精一杯のようです! 加勢に入ります、マスター、指示を!」

 

 マシュが信頼を寄せてくれていることを、素直に嬉しく思う。その信頼に応えられるだけのマスターに、自分はなれているだろうか。

 

「とりあえず...クー・フーリン! 投げる方のゲイボルクを集団のど真ん中にお願い! 敵を散らしてくれ!」

 

「おうよ!」

 

「令呪のサポートは?」

 

「必要ねえ! 行くぞ──『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』!」

 

 敵の心臓を確実に刺し貫く対人宝具ではなく、多くの敵を標的とする対軍宝具。呪いの朱槍はスケルトンの数を減らし、更に軍団を前と後ろとに二分する。

 

 前の軍団は未だ高密度で三人の男に襲いかかっているが、後ろの軍団は比較的バラバラに散っている。

 

「アンリとエミヤは後ろの軍団、散ってるやつを各個撃破、お願い!」

 

「了解した」

 

「ほいほいーっと」

 

 長距離狙撃と近接戦闘どちらも出来るエミヤ、高い敏捷のアンリマユ。特にアンリマユは、前の『残骸事件』の時に、多数の雑魚を相手取った経験がある。

 

「俺とマシュで前の軍団を後方から叩く! クー・フーリンは、後ろの軍団が前の軍団に合流しないよう、押し留めておいてくれ! ちょっと無茶かもだけど、お願い!」

 

「ハ! こんなもん、師匠のシゴキに比べりゃ無茶でもなんでもねえ! 任せとけマスター!」

 

 やはり彼は頼もしい。霊基がキャスターであってもランサーであっても、また若い姿やオルタであっても、彼の頼もしさは変わらない。

 

「マシュ、行くぞ!」

 

「はい! 突撃します!」

 

 マシュがスケルトンの背後へ突っ込んでいく。そして藤丸は、カルデアにいるサーヴァントの影を三体、召喚する。

 

 あまり広範囲の攻撃手段を持っているサーヴァントでは、あの三人を巻き込んでしまう可能性がある。規模が対軍以上の宝具を持たず、かつ多数の敵を相手取るだけの地力を持った英雄を。

 

「ビリー!」

 

 アーチャー、ビリー・ザ・キッド。

 

「書文先生!」

 

 ランサー、李書文。

 

「...沖田さん!」

 

 セイバー、沖田総司。

 

 皆、派手な攻撃こそ出来ぬものの、強力なサーヴァントだ。今の状況に合ったサーヴァントを選び取ったと言えよう。

 

「そぅらッ!」

 

 ビリーは得意の早撃ちで次々とスケルトンの頭蓋に銃弾を叩き込み、粉砕していく。その姿はさながら──否。早撃ちの代名詞たる彼を何に例えられよう。

 

呵呵(カカ)!」

 

 李書文は笑い声とともに敵を砕いてゆく。常に強敵との戦いを求める彼には、この戦いは物足りないかもしれない。眼前の敵を槍で貫き、背後から迫る敵には、槍から手を離し八極拳を喰らわせる。

 

「...ッ!」

 

 沖田総司は声も出さず、ただただ驚異的な速さでアサシンの如く敵を屠ってゆく。ぐっ、と踏み込み、一歩目で音を越える。二歩目で無間に至り、三歩目──絶刀。

 

 有り得ざる速さの突きは、三段でありながら同時に繰り出される対人魔剣。三つの突きはしかし同箇所に存在し、事象崩壊を引き起こした切っ先はあらゆるものを消し飛ばす。

 

「ありがとう、みんな。お疲れ様!」

 

 スケルトン達を倒し尽くし、視界が開けるとともに影のサーヴァントたちはカルデアへと退去していく。

 

 驚異的なのはあの男だ。こちらが半分削る間に、もう半分を単騎で片付けてしまっていた。

 

「オォ...てめェッが、親玉かァ──!」

 

「えっ、おい、ガーフィール!?」

 

 金髪の、虎のような少年が、マシュに肉薄する。

 

「くっ──!?」

 

 右の拳を咄嗟に盾で防ぐも、その膂力は圧倒的だ。強い振動が盾越しに伝わり、大きく後退させられる。発言から察するに、こちらがスケルトンの群れの後方から現れたため、敵の新手と勘違いしているらしい。

 

「先輩、どうしたら...」

 

「出来るだけ傷付けずに大人しくさせる!」

 

「ずいッぶん余裕かましてくれンじゃァねェか、あァ!?」

 

 再度拳が迫る。今度は咄嗟にではなく、盾を地面に固定、しっかりと踏み込んで盾を支える、完全な防御体勢だ。その拳を受け止め、微動だにしない。

 

「なァ──!?」

 

「了解しました、マスター! 峰打ちですね!」

 

「盾のどこに峰があるッてンだ、オォ!?」

 

 金色の虎が咆哮する。それだけで、非力な藤丸(マスター)は吹き飛ばされてしまいそうだ。

 

「く、先輩...!」

 

「盾に峰はないよね、普通」

 

「き、急に冷静にならないでください!」

 

 頬を染めるマシュは可愛いなあ──いや、マシュは頬を染めなくても可愛いに決まってるだろ──いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない。

 

 そうしている間にも、相手は次の攻撃に移ろうとしている。

 

 

「ま、待て待て! ガーフィール!」

 

「なンで止めンっだ、大将」

 

「その人たちは味方だ。気付いてなかったんだろうが、ガイコツの数減らすの、手伝ってくれてたんだよ」

 

 その言葉を聞いて、ガーフィールと呼ばれた少年は拳を下ろした。

 

「...すまねェ、頭に血ィが(のぼ)ッてた」

 

 ガーフィールはこちらに頭を下げた。さっきまでの勢いがまるで嘘のようだ。

 

「いやー、マジ助かった! サンキュな! ここが神戸だって事までは分かったんだが、なんで燃えてんのか、なんでガイコツが闊歩してんのか、ワケのわかんねえ事ばっかで...」

 

「いえ、助けになれたのなら何よりです。ですが、あの...神戸、ですか?」

 

「おう! 超人気ゲームの舞台、その元にもなった神戸大橋があったからな。すぐにわかったぜ」

 

「あの...確かに、神戸にはあの大橋とよく似た橋があると、データベースで閲覧した記憶がありますが...」

 

「え!? 嘘、マジで? 大恥じゃん俺ぇ! 穴があったら入りたいーっ!」

 

 彼はそう言って、顔を赤くして恥ずかしがる。

 

「え、じゃあちょっと待って? 神戸じゃないってんなら、ここはどこなんだ?」

 

「はい。ここは特異点F、日本の地方都市──フユキです」

 

「フユキ! あーあーなるほどぉ。ここってばフユキだったのか。フユキ、冬木、冬木──」

 

 そう、口の中で転がすように、あるいは咀嚼するように、何度か繰り返し、そして。

 

「──冬木ぃ!?」

 

 心底驚いたように、再びそれを口に出した。




今回呼び出したサーヴァントの影、三騎士をそれぞれ呼びたかったからあのメンツなんですけど、最適解は百貌さんでしたね?

ちなみにそれぞれの選定理由

ビリー︰二部一章
李先生︰八極拳
沖田︰新撰組的に乱戦は得意そう

あと、スバルが橋を見つけて「神戸だココ!」って思ってからガーフィールとオットーに合流し、今回に至るまでは考えてはいたのですが面白くなかったので全カットしました。描写外で何回か死んだと思います。

あ、感想とかください! いやマジで感想くれたら嬉しいです!
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