Re:ゼロから始めるグランドオーダー   作:タイガ原

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第6話 「禁則事項と在らざる手」

 スバルは、急に与えられた信じ難い情報を前に、それを脳内で整理することに必死になっていた。

 

「待て、冬木って、マジであの冬木?」

 

「『あの』が何を指すのかは分かりかねますが……はい。ここは冬木で間違いないはずです」

 

 大盾を携えた少女がそう答える。スバルとしては、確かに引っかかってはいたのだ──どこかで見たことがあるような、盾を持った少女。それから、彼女が後ろの少年を『マスター』と呼んだことも。

 

 そこまで考えて、スバルは別のことに気付く。

 

「その、後ろにいるのって……」

 

 後方の群れと交戦していた三人。スバルがガーフィールを諌めたあたりで、こちらに戻ってきていた。さして気に留めてはいなかったのだが、よくよく見れば気付くことがある。

 

 まず一人は、赤い外套こそなく、髪も下ろしているが、その特徴的な眉の形、見間違うはずもない。

 

 もう一人、青いタイツは全身を覆ってはおらず半裸で、短髪だが、何よりもその手に持つ(あか)い槍。

 

 最後の一人に至っては、見たことのある姿そのままだ。

 

「アーチャーに、ランサー!? アヴェンジャーまで!?」

 

 もうこの時点で、ここが冬木であることも、サーヴァントが実在することも疑ってはいない。コスプレという線もないではなかったが、コスプレイヤーがあれほどの戦闘力を持っているものか。

 

「えっと……エミヤ達のこと、知ってるの?」

 

「真名呼びなのか!? いや知ってるも何も、あの『Fate/stay』──」

 

 night、と続けようとして、それが不可能であることに気付く。世界が静止して──いや、静止しているのはスバル自身だ。

 

 ──どこからか、()が伸びてくる。

 

 その手は、スバルの肉体を容易くすり抜けて、その一番奥、どくんどくんと脈打つそれを。

 

 ──心臓を。

 

「──っ!?」

 

 現実へと回帰する。体が動く安堵、解放感。それでも、苦痛はなお残った。

 

「嘘、だろ……? 禁則事項が増えてんじゃねえか……」

 

「大丈夫ですか!? どこかお怪我でも……」

 

 盾の少女がこちらを心配して駆け寄ってくる。だが、それどころではない。

 

「問題ねえ。心臓を握り潰された気がしただけだ。それより、またあいつらが来る」

 

 ──かしゃん。かしゃん。

 

 スバルの『匂い』が強くなったからであろう。こちらへと向かってくる足音が、どんどんと増えてきている。

 

『気を付けてくれ、藤丸くん! スケルトンの数はさっきほどじゃないけど、シャドウサーヴァントが複数体いるぞ!』

 

「了解! 迎撃だ、マシュ! みんな!」

 

「はい! 戦闘準備、完了。行けます!」

 

 少年の掛け声とともに、盾の少女とサーヴァント達が駆けてゆく。

 

「ガーフィール! お前も……」

 

「おォよ、言われッなくてもやッてやらァ」

 

 *

 

 そして藤丸は──三体の影を召喚する。

 

「百貌さん!」

 

 ──アサシン、百貌のハサン・サッバーハ。

 

「アヴィケブロン!」

 

 ──キャスター、アヴィケブロン。

 

「ゴールデン!」

 

 ──バーサーカー、坂田金時。

 

 皆、対多数を相手にするのに長けたサーヴァントたち。スケルトンの群れを前に、その力を(ふる)う。

 

 百貌のハサンは、その数を利用してスケルトンを各個撃破して行く。ただ、人格によって差があるようで、『怪腕のゴズール』『迅速のマクール』などは上手くやっているようだが、『基底のザイード』あたりは微妙だ。敵の攻撃を躱すことばかりに集中しないで欲しい。

 

 アヴィケブロンの作った即席のゴーレムは、敵を撃破しては自壊してゆく。それでもその力は凄まじく、頼もしい。

 

「……ふむ。やはり即席ではこんなものか」

 

 金時(ゴールデン)は、見ていて爽快だ。まるで無双系ゲームの如く、その(マサカリ)──黄金喰い(ゴールデンイーター)で敵を薙ぎ払ってゆく。

 

「ゴールデン……タイフーン!!」

 

 エミヤ、クー・フーリン、アンリマユ、マシュ。そして、ガーフィールがそれぞれスケルトンを倒して、数が少なくなってきている。そろそろ後ろのシャドウサーヴァントが出張ってくる頃合い。

 

 それを見て、藤丸は魔術礼装に魔力を通す。

 

礼装起動(プラグ・セット)──『オーダーチェンジ』!」

 

 魔術礼装、カルデア戦闘服の機能の一つ──オーダーチェンジ。指定は百貌のハサン。令呪による転移とはまた違う、対象がサーヴァントの『影』であるからこそ可能となる、強制的な撤退と召喚の同時行使。

 

「ドレイク船長!」

 

 ──ライダー、フランシス・ドレイク。

 

「いける?」

 

「もちろんさね」

 

「よし。みんな、射線から退避!」

 

 ドレイクの正面、数騎のシャドウサーヴァントとの間にいるサーヴァント達を避難させる。

 

「それで──令呪を以て命ずる、ライダー! 宝具、『黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)』を解放せよ!」

 

「あいよ!」

 

 令呪による命令に、快活な声が返ってくる。

 

「う、ぐっ……!」

 

 令呪を使ったことで、身体中の魔術回路を走る魔力。そして、それに伴う痛み。慣れてきてはいるが、痛みがなくなる訳では無い。

 

 現れる黄金の鹿号(ゴールデンハインド)。そして展開される、()()()()()たち。

 

 ワイルドハント(嵐の化身)たるドレイクの号令に応え、船団は一斉砲撃。令呪の後押し(バックアップ)によるブーストを受けた、その圧倒的火力で敵を殲滅する。

 

 残るは深手を負ったシャドウサーヴァントのみ。それも、エミヤ達やガーフィールがトドメを刺した。

 

「シャドウサーヴァントって、普通のサーヴァントと同じように、神秘のない攻撃は効かないはずだよね?」

 

 単純に疑問に思った藤丸はドクターに問い掛ける。

 

『うん。魔力反応こそ無いけど、彼も何らかの神秘を行使しているんだろう。あるいは、彼自身が神秘の塊なのかもだ』

 

 ドクターの言葉を受けて、ガーフィールの戦闘を思い出す。拳法を修めているという風ではなく、純粋に力強かった。魔術による身体強化でもないらしいとくれば、彼自身が神秘である、ということは納得できる。

 

「ともあれ、これで戦闘終了だ」

 

 *

 

「紹介が遅れて申し訳ねえ! 俺の名前はナツキ・スバル! 万物不当の一文無しにして、天地未踏の異世界帰り! ってことで、ヨロシク!」

 

「ええっと……?」

 

『ふむふむ。興味深いね』

 

「興味深いって……何が?」

 

 通信の向こうから、ダ・ヴィンチちゃんが話し掛けて来た。かの天才が興味を示すからには、なにか意味があるのだろう。

 

『異世界、それに、〈万物不当〉や〈天地未踏〉といった耳慣れない言葉。細かくはあるが、私たちの世界との相違点と……』

 

「やめて!? 俺の適当な発言を真面目に考察しないで!? そんな言葉ねえから!」

 

「ダ・ヴィンチちゃん? わかっててからかったでしょ……」

 

『さあ、それはどうだろう?』

 

 にっこりと、あるいは、にやりとしているようにも取れる笑顔。初対面からそんな対応をされると、藤丸としても困る。

 

「しっかし……」

 

『どうかしたかい?』

 

「いいや、なんでもねぇ。ある奴にちょっとばかし声が似てて、あんまり嬉しくない記憶を思い出しちまうってだけ」

 

『ふうん?』

 

 スバルの言葉にダ・ヴィンチちゃんはほんの少し疑問を浮かべるも、そこまで興味が湧かなかったのかそれ以上は詮索しなかった。

 

「えっと、オットー・スーウェンと申します。以後、お見知り置きを」

 

「あ、これはこれはご丁寧に」

 

 灰色の髪をした、どこか頼りなさげな青年だ。見た目から、どこか苦労人らしき雰囲気を感じる。ロビンフッドから不真面目さを抜いたらこんな感じかもしれない。

 

「俺様ァ、ガーフィール・ティンゼルだ。さっきは……」

 

「もう済んだことだし、気にしないで」

 

 ガーフィール・ティンゼル──彼の凄まじい強さは既に()の当たりにした。彼から受ける印象は、若くて落ち着きのないベオウルフ、といったところか。

 

「デミ・サーヴァントのマシュ・キリエライトと申します。こちらは、マスターの──」

 

「藤丸立香です。よろしく」

 

 カルデアを代表し、マスターである藤丸と、そのサーヴァントであるマシュが自己紹介。ぺこりと頭を下げ、その後で三人の顔を見やる。うち二人、オットーとガーフィールはまだ気を許していないようだ。

 

「デミ……? ところで、アーチャー達のマスターは来てないのか?」

 

「……うん? エミヤ達のマスターなら俺だけど」

 

「はぁ!? 普通サーヴァントは一人一騎じゃ……」

 

 彼は目を丸くして声を荒げる。そう言われても、藤丸からすればサーヴァントが一人一騎というのは、むしろ特殊事例だ。それこそ、孔明──を宿した、ロード・エルメロイⅡ世と共に行った1994年の冬木くらいのものだ。

 

「あ、いや、でも〈だがここに例外が存在する〉ってのはよくあることだしな……」

 

「あの、すみません。スバルさん、でよろしいでしょうか」

 

「え? ああ。菜月(ナツキ)が苗字で(スバル)が名前。好きに呼んでくれ」

 

 ブツブツと独り言を言う彼にマシュが話を切り出す。名前からして、彼も藤丸と同じく日本人のようだ。それはともかく、マシュはスバルに何か聞きたいことがあるようだ。

 

「では、スバルさん。サーヴァントをご存知のようでした。それから、フェイト、との発言。スバルさんは……私たちの、カルデアの英霊召喚システム〈フェイト〉のことを知っているのですか?」

 

「カル、デア……? いや、俺は()()()()を知ってる、ってだけだ」

 

 スバルは、慎重に言葉を選ぶ。今回新しく追加された禁句(タブー)に抵触しないようにするためだ。

 

 この禁句について、ある程度予測はついている。今までに発した言葉のうち、『Fate/stay night』だけが引っかかった。それ以外は全てセーフ。これを踏まえて考えれば、自ずと答えは見えてくる。

 

 要は、この世界──Fate世界、あるいは型月世界(ナスバース)について、それを虚構(フィクション)であるとする発言、いわゆる『メタ発言』となりうるものに規制がかかっている、と推測できる。

 

「聖杯戦争……それは、過去に一度冬木(ここ)で行われたという?」

 

「……一度? いや、俺が知ってるのは、過去に五回あったうちの、第四次と第五次の聖杯戦争だ」

 

 正直、この辺りの発言はスレスレだ。あまり詳しすぎると、禁句と判断されかねない。

 

「過去に五回……? それって……」

 

「……はい。ロード・エルメロイⅡ世さんと共に行った、1994年の冬木。あれが、五回のうちの四度目だったかと」

 

 この男、どうにも巻き込まれたただの一般人、という訳ではないようだ。どうにも底が知れない。

 

「ナツキ・スバル、あなたは一体……」

 

『はいはいまあまあ、その辺で。立ち話もなんだし、腰を落ち着けるところ……は、あるか微妙かな? 学校あたりは少しは落ち着けそうだけど、ともかく話の続きは屋内で。あんまり外で立ち止まってると、敵に囲まれるよ?』

 

 とまあ、ダ・ヴィンチちゃんの助言で、話し合いは一旦中断することになったのだった。




スバルがエミヤをエミヤと判断したのが眉毛の形だってところ、笑いどころさんです。

藤丸のセリフですが、ほとんど二つに区切れるようになってます。選択肢の上と下に分かれるようなイメージ。

今回藤丸が呼んだ影は四騎士です。

オーダーチェンジの効果はゲーム内効果から考えてでっち上げました。この辺はかなり適当なのでつっこまれたらなんも言えない。公式設定が何も言わないのでどうしようもない。

あと「礼装起動」、漫画版のルビかっこよかったのでそのまま使いました。

あと、2部行ってないのにアヴィケブロン先生がいますが、これはこのカルデアの藤丸は人理修復前にアポイベ(インヘリタンスオブグローリー)を経験したマスターです。ゲームの進行度によってジーク君のセリフが「シャドウ・ボーダーで~」と「カルデアで~」と変化するので、どっちでもいいと解釈しました。

故に、このカルデアにはケイローン先生やアキレウス、ジーク君もいます。アタランテさんはカリュドーンの皮の使い方を知っています。アヴィケブロン先生もいる。

そういうことでお願いします。同じくセリフ差分がある今年のバレンタインイベントですが、こちらはさすがに経験してないマスターなので、紫式部はいません。

今回もお楽しみ頂けましたでしょうか! 感想待ってます! 正直評価ポイントも嬉しいけど感想の方が嬉しい! 感想待ってます! 感想乞食です! ください!
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