Re:ゼロから始めるグランドオーダー   作:タイガ原

7 / 26
第7話 「盾の少年と盾の少女」

 情報交換をする為に選ばれた場所は、学校だった。スバルの言うところによると、ここは穂村原学園と言うらしい。

 

 「特異点、レイシフト、人理修復、魔術王、魔神柱……お前、ホンットにすげえ冒険してきたんだな!?」

 

 それが、ざっくりとこちらの事情を話した際のスバルの反応だった。対して、向こうの事情を聞いたこちらの反応はと言えば──

 

『な、な、なんだってぇえ!? スバルくん、それってつまり、異世界召喚ってやつじゃないのかーい!?』

 

「異世界初見の俺みたいな反応だな……」

 

 ロマニの反応が最も大きかった。それにしても驚き過ぎなような気もする。藤丸はこの世界に『魔術』なるものが実際に存在すると知った時の方がよっぽど驚きだった。

 

「え、ええと、ドクター? 何故そんなに興奮してらっしゃるのか、よく分からないのですが……」

 

『だって異世界だぞぅ!? ……いや、そうか。マシュは〈そういうの〉はあんまり読まないか。そういうボクも、そこまで熱狂的って訳でもないんだけどね。それより、現代日本人の藤丸くんがあんまり驚いてないのが意外だな』

 

「えっ、いや、だって俺の境遇も似たようなとこあるし……」

 

『うーん、わかってもらえないか……そういうファンタジー的な〈異世界〉の存在って、魔術的にけっこう凄いことなんだけど……』

 

 ロマニに共感する人は少ない。魔術と『そういう文化』の両方に通じているのはロマニくらいのものだ。

 

「大将たちが何を話してんだかわッかんねェンだがよ、オットー兄ィはどうだ?」

 

「ざっくりとはわかりますよ。内容はぶっ飛びすぎてて理解が追いつきませんが。まあ、ここが大瀑布の向こう側であることは間違いなさそうです。……ナツキさんの大掛かりなドッキリとかでなければ、ですけど」

 

「大将の場合、それが割とありッそうだから困ンだよな」

 

「ですよねぇ……」

 

 謎の集団と話しているスバルの背を見やる。同郷、同年代の相手ということもあって、心なしか、どこか楽しそうに見える。

 

「で、何なンだ、あいつら」

 

「世界を救う為の旅の一団、らしいですよ。あなたを止められるだけあって、実力もかなりのものです」

 

「……へェ、すッげェじゃねえか」

 

 ガーフィールが眼を輝かせる。英雄譚を好む彼の事だ。あの一団は生きた英雄そのもの。ガーフィールの心も沸き立つというものだ。

 

「だから、さっきみたいなことはもうやめてくださいね。()()()()()()()()()()()()?」

 

「なンだよ、バレてたのか。盾使いとあっちゃァ、一度はやってみたかったンでな」

 

「でしょうね。ナツキさんもわかってて話を合わせてくれましたから、後で謝っておいてください」

 

 *

 

「それで? 彼らが異世界からの賓客──正確には、彼だけは出戻りか。それはわかったが、彼が聖杯戦争を知っている理由はまだ聞いていないのではないかね?」

 

 至極真っ当な正論がエミヤから藤丸に突き刺さる。そう言えばそうだった。話が弾んで脱線するのは藤丸のせいなのか、はたまたスバルのせいなのか。

 

「詳しいことは言えねえんだけど……千里眼みたいなもんだと思ってくれ。それで聖杯戦争を見たんだ」

 

「……ふむ。異世界由来の力、という訳か」

 

「まあ、そんなところだ」

 

 口からでまかせで誤魔化す。禁則が掛かっている以上、スバルは適当なことを言っておくしかない。幸い、カルデアの一行にとって異世界は未知の領域だ。いくらでも誤魔化しようがある。

 

「んで、さっき言った通り俺達は気付いたらこっちに迷い込んで来たんだけど、そっちはなんか目的があるんだろ? 俺達が帰る手掛かりになるかもしれねえし、手伝えることなら手伝うぜ」

 

『んー……ま、いっか! 巻き込むのは正直気が引けるけど、これだけ関わってしまったんだ。行動を共にした方がいいだろう』

 

 ダ・ヴィンチちゃんがスバルの提案を呑む。思惑としては、保護と監視、それと異世界への好奇心と言ったところだろうか。

 

『今回の目的(オーダー)は、ここ特異点Fで起こっているループ現象の原因究明と解決さ。観測領域が広がりすぎて観測機器に負荷がかかっていてね』

 

「ループ、現象……?」

 

『何か心当たりでも?』

 

「いや、その……」

 

 悪寒が背筋を伝う。心当たりしかなかった。どう考えてもそれはスバルによるもの。つまり、行動次第では彼らが敵に回る可能性もあるということ。

 

「そりゃちょっとシャレになんねえぞ……」

 

 ラインハルトを敵に回す程ではなかろうが、どっこいどっこいと言ったところ。勝ちの目が見えないことに違いはない。

 

「心当たりはあるっちゃある、けど今は……」

 

『語るべき時ではない、とか? あっはっは、どこぞの探偵みたいなことを言うなあ!』

 

「いや、言ったのダ・ヴィンチちゃんだよ?」

 

 あのキャスターの顔が脳裏に浮かぶ。第六特異点、アトラス院で彼の言った言葉が今も引っかかってはいるが、今はそんなことを気にしている暇はない。

 

「同行者の隠し事なんていつもの事だし、そんなに気にしなくてもいいよ」

 

「……そうなのか?」

 

「うん。それより異世界の話をもっと聞きたい。俺も、特異点の話とかするからさ」

 

 *

 

「いやぁ、やっぱすげえなあ、お前。世界を救うってなかなかできる事じゃないぜ」

 

「スバルだって凄いよ、エミリアって人を王にする為に頑張ってるんでしょ? 俺にはそっちは出来そうにないよ。『何かを為そうとする』のと『それを阻止する』のは、やっぱり別の能力だと思う」

 

「そういうもんか?」

 

「そういうもんじゃない?」

 

 *

 

「楽しッそうだなァ、大将」

 

「ですね。あの調子だとまだかかりそうです」

 

「……そうッかよォ、じゃァ、少し行ってくらァ」

 

「え、ちょっと!?」

 

 立ち上がり、ずんずんと歩いていく。その瞳は真っ直ぐに盾の少女を見据えている。

 

「なァ、マシュ……だとか言ッたか?」

 

「は、はい。どうかなさったのですか? え、と……ガーフィール、さん」

 

「その、なンだ……」

 

 空気が張りつめ、場に緊張が走る。黄金の虎と、清廉なる騎士を宿した少女が相対する。

 

「お、俺様の、師匠になっちゃァくれねェか!」

 

「……は、はい?」

 

 マシュが困惑の色を顔に示す。目の前で頭を下げる虎に、どう対応したものか、と慌てる。

 

「同じッ盾使いとして……!」

 

「なるほど。それは、盾だったのですね」

 

 マシュが、ガーフィールの腕に装着された金属具を見て、そう言う。だが、しかし。

 

「それが、盾……?」

 

「先輩、彼が盾だと言うのなら形状に関係なくそれは盾です。こればかりは、いくら先輩でも譲れません。盾とは心の有り様です」

 

 珍しくマシュが熱くなる。藤丸はその意気に圧され、口を閉じる。

 

「立ってください、ガーフィールさん。いえ、ガーフ君!」

 

「お、おォ……」

 

「私が教えられることなどほんの少しですが、それでも教えを請うというのなら!」

 

 マシュの意思が灼熱する。教えを請われるという、マシュにも珍しい体験が彼女を奮い立たせる。

 

「ガーフ君、盾のどこに峰があるのか、と言っていましたね?」

 

「あ、あァ」

 

「盾に峰があるわけではありません。心に峰があるのです、ガーフ君。盾とは心の有り様です。ですから、盾でも峰打ちが出来ます」

 

 よく分からない理屈だ。それでいて、何故か説得力に満ちている。

 

「盾での峰打ちの仕方を教えましょう。私に教えられるのはそれくらいのものです」

 

「よッくわッかんねェけど、おォ。やッてやろォじゃねェか」

 

 マシュとガーフィールが校舎の外へと出て行く。守りが薄くなるのは少しばかり不安だが、まあ他にも頼りになるサーヴァントが控えている。

 

 *

 

 教室の窓から、校庭で何やら峰打ちの練習に励むマシュとガーフィールが見える。

 

「なんか、すまねえな」

 

「気にしないで。マシュもイキイキしてるし」

 

 実際、あれ程イキイキしたマシュはあまり見られるものでは無い。それこそ、レオニダス二世を前にした時くらいのものだ。

 

「それはそうと、エミリアさんってどんな人なの?」

 

「なんだ、いきなりだな」

 

「スバルが王にしようと頑張ってるらしいから、ちょっと気になって」

 

「そうだな、エミリアたんは──」

 

 *

 

「それで──」

 

「ちょっと待ってまだ続けるの!?」

 

 物凄い熱量でエミリアと言う人について語るスバル。その内容にはノーコメントとして、それだけ彼がエミリアを想っているのはわかる。藤丸にとってのマシュのようなものだろうか。それならば、これだけの熱もあって然るべきというものだ。

 

「ちょっと気になったんだけど──そのエミリアって人、もしかしたらここに来る途中で見たかもしれない」

 

「は? え、エミリアも来てるのか…!?」

 

 動揺が顔に浮かぶ。彼にとってはあまり好ましくはない状況、と言うことだろうか。確かに、大事な人に危ない目にあって欲しくはない。マシュに守られてばかりなのも、本音を言えばどうにかしたい。

 

「エミヤ、どう思う?」

 

「彼の話を聞く限りでは、あの水晶に封じられていた女性でほぼ間違いないだろう。となれば──」

 

 彼女をあの水晶から解き放っても構わない、ということ。であれば、彼女を助け出さない訳には行かない。彼──スバルも、そのつもりのようだ。

 

「エミリアを助けたい。そっちの目的とは外れちまうかもしれねえが、どうか手を貸してほしい」

 

「もちろん! いいよね、ドクター?」

 

『そうだね。正直、手掛かりは現状それくらいしかない。多少の危険は覚悟しないと』

 

 エミヤやクー・フーリン、ダ・ヴィンチちゃんも異論はないようだ。マシュとガーフィールにも声を掛けて、すぐにでも助けに向かおう。

 

「よし、行こう! エミリアさんを助けに!」

「よし、行くぞ! エミリアを救いに!」

 




読者さんから「両作品の設定に矛盾している、ちょっと考えたら分かること」と貴重なご意見を頂いたのですが、私はちょっと考えてもじっくり考えてもわからなかったので、もし気付くことや疑問点などあれば、感想欄にて教えて下さると助かります。

それでは!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。