そんな君に   作:秋の月

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pixivの方に追い付いて来ました11話目、少し...迷走しました...。


五月編
11話 VS湘北工業の番長


ゴールデンウィークも終わり、テストに向けて授業が進む良く晴れた昼時、午前の授業も終え俺は久し振りに一人で過ごしたいと思い人通りが少ない弓道場近くの木陰で弁当のオカズをつつきながら涼んでいた。

そんな時、長身で緑色のスカートを長くし、髪を染めているかの様な風貌の女子生徒が慌てた様子で俺に近づいてきた。

 

「竜ヶ崎か?俺に何か用か?」

 

竜ヶ崎珠里椏、初めはただの不良かと思っていたが、人情深く弱いものを助けようとするイケメンだった。

よく喧嘩の仲裁をやっていたからか、いつの間にか尊敬されていた。俺は頭か何かなのか?

 

「先輩!大変ですよ!湘北工業の番長が先輩に決闘を

申し込むって!今それが不良共の間で広まっるん

すよ!先輩知ってますか!?」

 

湘北工業と言ったら四月中に問題起こしてた奴らの在籍している高校...。何故番長が出しゃばるのか...心当たりはあるが、何故面倒なことをしないとなのか...。

 

「いや、何一つ...。と言うより俺不良じゃないし」

 

「そうなんですか!?でも直々決闘を申し込みに

来ると思うんで気を付けて下さい!あ、いや!

先輩が弱いとは思ってないっす!」

 

面倒だが仕方ない...。面倒見の良い彼女が教えてくれたんだ。答えるのが先輩の義務だな。

 

―――

 

放課後、特に用事もない俺は帰りに商店街に寄ってから夕飯の食材でも買って帰ろうと思っていたが、やけに校門の前が騒がしい。気の弱い人は何だか怯えている感じで、近くに居た男性教師の顔は焦燥に駆られていた。

本当に何事?テロリストでも来たの?

なんて思いながら校門の方を見ると如何にも不良やってますって風貌の男子生徒三人と、その中でも頭一つ大きく、着崩してる学ランの上からでも分かる筋肉をお持ちの男子生徒が近くの生徒に威圧を掛けてる。

あれは生徒会の子?顔が怯えていて今にも泣きそうだ。

まさかアレが番長って呼ばれる男?なんか暗殺拳使いそうな風貌なんだけど、マジで俺に用あるの?

やだよ?殴り合いなんかしたくないよ?

 

「はーい、ちょっと退いてねー」

 

人混みを割いて一つの空間が出来ている場所に出る。

 

「あ?何だお前?」

 

「あ、危ない、ですよ」

 

「今にも泣きそうじゃないか。それに俺なら大丈夫だ。

ほら、他の人も下がって」

 

そう言うとみんな素直に身を引いた。やっぱり自分が可愛いもんな。それにこいつやばそうだし。

 

「何だお前は?雰囲気からして只者じゃ無さそうだが」

 

「雰囲気ってちゃんと使えるんだ」

 

「テメェ!番長になんて口聞くんだ!」

 

「いくら見た目が不良だからってよ!番長は学年首席の

頭をお持ちなんだよ!」

 

マジで?これ勉強出来る不良なの?なんで不良やってんの?他のスポーツとかすれば活躍出来るよね?何で?

 

「番長こいつですよ!聖櫻で女の子にちやほやされて

調子乗ってる奴は!」

 

ちやほやされてるって何だよ?俺は普通に過ごしているだけなんだが。

 

「ほう?こいつが...」

 

「それで...間抜けを鎖に繋いで連れて来て

どうしたんですか?うちの生徒を脅して」

 

『何!?』

 

「ほう?」

 

周りがザワザワしているが、気にする所では無いだろう。血が頭に上り殴りかかりそうになってる手下だが、鎖が取れれば一気に来るだろう。

 

「別にそこの犬共は俺を知ってるんだ。何もせずに

校門の前で待ってるとかしてれば良かったんじゃない

か?ちゃんとそこの犬は鎖で繋いどけよ飼い主さん」

 

「てめぇ...殺す」

 

「お前、番長が殺る前に殺すなよ!」

 

いや、別に負ける気ないし。鎖で繋がれていない言動だなぁ。しっかりしてくれよ...。

 

刃物や銃火器を取り出すわけでもなく、その不良は自分の拳一つで葬りに来た。取り敢えずそれを頬で受け止めると、周りから悲鳴が聞こえた。

 

「なんだ、口だけかよこのざk」

 

言い切る前に手刀を首に入れると糸が切れた操り人形の様に倒れた。

 

「な、何をしたんだテメェ!」

 

「何って...やられたから取り敢えず意識を刈り取った

だけだが...」

 

「くっ、この野郎「待て」番長!でも!」

 

「貴様、名前は?」

 

「和倉だ」

 

「和倉か、舎弟の不祥事済まなかった」

 

番長と呼ばれる男は謝罪の言葉を述べ、頭を下げた。

下げた?へ?

 

「ただ俺はこいつらに決闘してくれと言われてな

頼みに来た。別に俺は殴り合いは好きじゃないんだが」

 

いや好きじゃ無いのかよ。

 

「決闘と言っても卓球対決ってだけだ。負けてどうする

とか別に考えていない」

 

何故卓球なのか?えぇ...。

 

「あ、兄貴...何言って「元はお前らが変に女の穴を

追いかけてきたらこうなったんだろ」は、はいぃぃ!」

 

「寧ろ女の子の危機を救った和倉こそ男として

評価の高い存在だと思う」

 

あ、あれ?これ褒められてるの?

この番長、どっち側!?

 

「舎弟の不祥事は置いといて、純粋に卓球対決を

しよう。最初はサッカーと思ったが、貴様の試合を

見てこれは勝てないと思ってな」

 

この人サッカー見に来てたのか...気付かなかった。こんなにも濃い人。

 

「ここで出来るのであればやりたいのだが、無理なら

スポーツセンターとかいいと思う」

 

さっきから俺何にも言えていない...。状況に追い付けない...。

 

「ちょ、ちょっと待て!話が見えない...。

俺を殴り殺しに来たんじゃねぇのか!?」

 

「?何故悪い事していないお前を殺さなければ

ならない?確かに口は悪いが、こいつら言動からして

仕方ないとは思っているが」

 

あらやだ、この人普通にいい人だ。

 

「よくゲームセンターに行ってスロットやってるんだ。

番長って台何だが、そこに卓球対決があってな」

 

「り、理由はそこ?」

 

「そうだ。もしかして今日は無理そうか?」

 

「い、いや...大丈夫だが」

 

「そうか...すみません、この中に卓球部の方

いらっしゃいますか?」

 

ちゃんと許可を得に行くとか真面目かよ。

なんで番長...?

 

「は、はい...ど、どうぞお使い下さい!」

 

「見た目はあれだが、そんなに怖がらないで

頂きたい...。少し心に来るんだ...」

 

この人ルックスがコンプレックスに思ってる...?

 

「えぇと、鴫野、この人入れて大丈夫?」

 

「は、はい...見た目はあれですけど、悪い人じゃ

無さそうですし...」

 

「お心遣い感謝する」

 

そんな事があり、番長と気絶していない不良が、気絶した不良を引き摺りながら付いてくる。

 

「そう言えば殴られた所は大丈夫か?」

 

「えぇ...丈夫なので...」

 

この人なんで不良なんかやってるの?

 

―――

 

卓球対決と言っても、やるのは温泉卓球の様なものだ。

お互いに詳しいルールは知らず、授業でやった程度だ。

 

「まあ、七点先取が妥当だろう。サーブは交代で」

 

「じゃあそれでやりますか」

 

番長からのサーブだが、ここで殺しに来ることはなく、普通に玉を送る。特に曲がること無く真っ直ぐ打ってきた玉を打ち返す。ペンラケットを使っているが、テニスの要領でいいのか?

 

「決める...」

 

俺が居る所と逆に打たれ、返しそうと動くと、玉の速度だけ無駄に速く、点を決められてしまった。

 

「まずは一点」

 

慢心する姿も無く、落ち着いた様子でいる様子を見て、この試合は少しキツいと思った。

 

「こっちも負けませんよ」

 

こっちのサーブ、少しキツめに出し、コート端を狙うとこれを打ち返してくる。本当に初心者?

しかしこれはギリギリだったのか、ボールは高く上がった。それをスマッシュで打ち返すと流石にうまく反応出来なかったのか、ラケットに当たるとどこか飛んでいった。しかし当ててきたか...。

 

「俺も番長と呼ばれているんだ。喧嘩好きとは

思えないが、急に現れた奴に遅れを取るわけには

いかない。遠慮も要らぬ」

 

目と目が合うと、そこから火花を散らす様な雰囲気を作り出した。

 

―――

 

後日談、と言うか今回の落ち。

 

お互いに一歩も引かず、時間が過ぎて六対六の、後どちらかが一点を取れば勝ちの状態だった。お互い肩で息をしながら、残った気力で立ちながら、サーブを打つ。そこで同時に力尽きた。しかし俺のサーブは相手のコートを跳ね、そのまま俺の勝ちが決まった。もう立てない...。

 

そこから息を取り戻した俺らは良き友として、携帯のアドレスを交換した。

 

「しかし先輩、白熱した戦い...凄かったっす!」

 

「もう二度と体験したくないな...」

 

竜ヶ崎は興奮した様だったが、俺としてはもう懲り懲りだ。しばらくは卓球やりたくない。




番長さんは今後もたまに現れます。

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