そんな君に   作:秋の月

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気付いたらこの作品投稿してから1年経ったんですね。pixivの投稿日を確認して驚きました。今年は就活があるので投稿頻度は更に下がるかもしれません。現にそれが表れています。それでも読んでくれている方がいて私は嬉しい限りです。


20話 バンド

ニューロンと言ったら、情報処理と情報伝達に特化した神経細胞が思い浮かぶと思う。何故唐突にそんな話題を取り出したかと言うと...。

 

「みんなー!盛り上がってるぅー!?」

 

『イエェェーーイ!!!』

 

ステージのバンドのライブを聴き、熱気が高まる講堂。そしてステージに立つ彼女らのバンド名に、その単語が入っているからだ。因みに正式名称、にゅーろん★くりぃむそふと。とても頭が悪そうでいて、如何にも女子高生っぽいバンド名だとバンドメンバーの風町に言われてから思っている。が、ライブ自体の出来や盛り上がりが良く(聖櫻生が盛り上がりやすいと言うのも手伝って)俺も柄に無くはしゃいでいた。ライブ自体参加した事が無く、バンドもイマイチ知識不足だ。そんな人や、あまり目立たない様な生徒も盛り上がっている辺り、良いなと思ったのは俺だけではないらしい。自分だけはしゃいでいたとするならばそれは恥ずかしいからな。「作詞してみたから読んで」と風町に言われたのが二週間くらい前の話なのだが、そんな短い期間で自分たちのものにしたのだから、そんな彼女達の努力は凄まじいものだろう。もしかしたら彼女達の持つ才能や、どこかから働きかけた謎の力が働いたのかもしれない。が、努力には劣るだろう。彼女達の顔は「頑張った」「やりきった」と言った実に満足そうな表情だ。見ているこっちも嬉しく思う。次回もあるとするならば、今度は自分から足を運んでみよう。良いものが観れた。ステージの上で一生懸命に話を繋いでいる彼女達が話を終え、今日の彼女たちのライブは終了。俺は...いや、俺達か。俺達は彼女達の頑張りとこれからを讃え、盛大に拍手をエールを送る。お疲れ様。

 

「和倉先輩」

 

「ん?」

 

隣にいた葉月が俺に声をかける。その目は幼馴染みの勇姿を見てなのか、輝いていた。

 

「モモたち...輝いてましたね」

 

「...あぁ」

 

「かっこよかったですよね」

 

「あぁ」

 

口を開いても感嘆の言葉しか出ない。語彙力が消えそうだぜ...。

 

「他のバンド見ていきます?」

 

「んー...折角だからな」

 

昨今のガールズバンドブームと言うのは凄まじく、ガールズバンドの頂点を競うイベントまで開催されるほどだ。ボーイズバンドも也を潜めた訳では無いが一世代前と比べるとかなり減っているように思える。自分が知らないだけでもしかしたら地元を中心に活動している名無しのグループもいるかもしれないけど。

 

「このグループのボーカル歌すっごく上手いですね!」

 

「…最近注目されているボーカルらしいからな」

 

孤高の歌姫とか言われているらしいが…ステージ上の彼女…彼女たちと言うべきか。どこか楽しそうだ。

 

「モモたちも負けてられませんね!」

 

「…そうだな」

 

…しかし、聖櫻の中で開かれるライブなのに外部のグループが締めに入るってどうなのだろうか。

 

―――

 

「和倉くん見ててくれた?」

 

「風町たちの楽しそうな演奏はしっかり見てたぞ。練習キツかっただろ」

 

「流石にね…でも成功して良かったよぉ〜」

 

「良い演奏だった。流石に上手さが一番とは言えないが…一番楽しそうに演奏してたな」

 

決してお世辞では無いし、言うつもりも無い。上辺だけの賞賛に意味は無い。彼女たちにそれが出来ない辺り…まあ、それほどの仲と言うのか。

 

「締めのグループ上手だったからね…私たちもあんな感じで出来ればなぁ…」

 

うーん…それは違うような…。

 

「あれは女子高生らしいと言うよりも…もっと高みを目指すって言うプロ意識が高いと思うぞ。だからにゅーろんはにゅーろんらしい演奏で良いと思うぞ」

 

「いい事言うじゃないか君」

 

「まあな」

 

確か黒川だっけな。黒川の雰囲気はプロを意識している様にも見えるが…こう言うノリが好きなのかもしれないな。

 

「で、楽しかったか?」

 

『うん!(あぁ!)』

 

「なら良かった。それなら宴でも開くか。安心しろ、金なら出す」

 

「おっ!和倉君太っ腹!ゴチになるがや!」

 

「やっぱ君って良い奴だね」

 

「あはは…ならサイゼだね」

 

「安いのに美味しいですからね〜」

 

「先輩ありがとうございます!」

 

「えっ、先輩お金大丈夫なんですか?」

 

「バイトして使ってない金があるから問題ない」

 

今月は遠出もして先月よりは使っているけど…今まで使わなかった分が余裕であるし、何より頑張った彼女たちに褒美の一つや二つ上げるのが条理ってことよ。

 

「ゆずちゃんも来なよ!」

 

「えっ…でも…」

 

「なんなら俺は財布だけ渡して後は女子会とでも『それは駄目』えぇ…」

 

「…和倉そう言うのは良くないよ?」

 

「…そういうものなの?」

 

褒美を上げるとは言ったが俺は必要なのか?

 

―――

 

「「結局来てしまった…」」

 

俺と葉月がそう呟く横でにゅーろんの面子は何食べようかなと楽しそうにメニューを眺めていた。俺は既に食うものが決まっているから適当に間違い探しをやっている。ここの間違い探しは最後の一つが全然見つからなくて「十個間違いがあるのが間違い」なんて結論を付けたりする。それほど難しいのだ。見つからな過ぎて「製作者出てこい!」となってる。そしてふとした時に見つけるのだからタチが悪い。

 

「私はミートソースかな」

 

「ミラノ風ドリア」

 

「私もミートソースで」

 

「私はマルゲリータでお願いします!」

 

「ハンバーグ!ライスもつけるがや」

 

「…私も良いんですか?」

 

「一人だけ出さないのもあれだからな」

 

「そ、それじゃあお言葉に甘えて…ペペロンチーノで」

 

「決まったな」

 

「あれ?先輩はメニュー見てないんですけど…食べないんですか?」

 

「食べるぞ、ミラノ風ドリア。食う奴は限られるから大体は覚えてるんだ」

 

『えぇ…』

 

何度か通ったら覚えないの?そう…。

 

「じゃああとはドリンクバーだな」

 

店員を呼びメニューを伝えると何人か席で待ちドリンクバーに行かせた。俺は後半組で、理由が『後で乾杯の音頭を取るから』だそうだ。…普段そんな事しないから持ってきたらすぐ飲んじまうんだよなぁ…よくわかってらっしゃる。

 

「にゅーろん結成したって和倉くんに報告した時もここに来たよね」

 

「そういやそうだったな。あれから一ヶ月くらいしか経ってないんだな…なんだか長く感じたような…」

 

あっと言う間に過ぎたなら分かるが…なんだか一ヶ月とは思えない長い時間が過ぎている感覚がするな…。多く見積って1年くらい?

 

「私はあっと言う間だったな。楽しい事してるとすぐ時間が経つのかな?」

 

「…そうかもな」

 

俺も楽しいなと感じて生きていたけど、退屈だったらもっと長く感じたか、逆に早くなるかもしれない。

 

「これからも楽しい演奏届けるから、また来てくれたら嬉しいな!」

 

「これは音源さ。良かったら家でも聴いてくれ」

 

「何度でも来るし、何度でも聴く。頑張れ!」

 

学生バンドの多くは自己満足だろう。彼女たちも悪いがその部類に入ると思う。技術も努力も感じられないバンドなら人気も上がらず、そのまま空中分裂するのが見えている。

 

だが彼女達は自分達が楽しんでいる…技術はまだまだかもしれない。努力は人一倍にしただろう。そして気持ちが伝わる演奏…その演奏が観ている人の心を掴んだのかもな。

 

俺も気付いたら掴まれていた。もう逃げられないだろう。

 

だから俺は応援する。彼女達のこれからを祈って――

 

 




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