総武高校
千葉県の一般高校の偏差値より少し高めで就職率と進学率共に安定している高校である。
誰もいない教室...いや部室に俺はただ椅子に座り小説を読んでいる。
時刻は4:30を回っている。
雪ノ下と由比ヶ浜が来る気配はない。
修学旅行が終わってからあの2人は部室に来ないままである。
つまり普段通り俺はボッチである。
机に置いてあったスマホが着信音が鳴る。
この音はSMSからだった。
スマホを手に画面を見るとSMSからのメールだった。
メールの内容は今日の飛行ルートの変更の内容であった。
俺がSMSと繋がったのは親父の葬式の時だった。
葬式にはSMS隊員7割が出席しその中に日本支部の社長が居た。
その社長 早乙女アルトは葬式終了直後、俺が1人になった所を見つけ接触してきたのだ。
一目見た時「髪長ッ」と心の中でツッコミを入れてしまった。
早乙女社長と親父の関係は上司と部下の関係で休日は飲みに行くほどの中だったらしい。
アルト社長は親父と通じて俺がバルキリーのパイロットになりたいと言う夢を知っていた。
あの人にスカウトされた。
親父が死んでバルキリー乗りの怖さを知った俺は戸惑った。
小町や母さんは絶対に反対される。
もし入ったとしても心配させてしまう。
俺はこの場で答えは出せなかった。
だから俺は早乙女社長に時間が欲しいと言い連絡先を交換した後あの場を去った。
覚悟を決めた時間はいたって短く1週間後だった。
親父が死んだ恐怖よりもバルキリー乗りの興味が大きかったのだ。
そこから俺は学校終わりにSMSの基地へ行き早乙女社長の下で訓練を行った。
俺はまだ中学生で義務教育を受けているため中学卒業するまで訓練した。
あの頃はキツかった。
周りから目が死んでいると言われるもそのせいかも知れない。
だがあの訓練があったからこそ総武高校に入学出来てテストは良い結果を出せていると俺は考える。
中学卒業し義務教育という鎖から解き放たれた俺は「アルバイト」という形でようやく念願のバルキリーのパイロットになり一般小隊に入属した。
最初の機体はVF-171ナイトメア 一般の可変戦闘機だった。
親父のようにVF-19みたいに自分専用機は直ぐに手に入らない。
正直言ってダサイ。
しかし次々と功績を挙げ半年で専用機をゲットした。
それが今のVF-25 陰神だ。
ブラックと灰色、そして機体の前先端に漢字で「陰神」と記されている。
コイツはナイトメアよりも小回りとスピードが速い。
陰神のお陰で俺1人で行う任務が多くなり、ついに戦術特殊航空部隊通称「ゴースト」に抜擢され88番機として1人仕事をこなしている。
ゴーストは単独行動を重視する部隊で各国の政府や大企業からの依頼が多い。
ボッチである俺にとってうってつけの部隊だ。
こうして思い出に浸っているうちに時計の針は5:00を回り夕日が少しずつ濃くなってゆく。
八幡「そろそろ...失礼しますか..」
俺は読んでいた小説のページにしおりを挟み閉じた。
その時、扉がガラガラと鳴らしながら開いた。
八幡「ん?」
顧問の平塚先生かと思い扉の方へ顔を向けるが全くの別人だった。
女子2人で1人は集会の時ステージでよく見る顔、3年の現生徒会長 城廻 めぐり。
文化祭で色々とお世話になった人である。
もう1人の女子は知らない。
ただわかるのは由比ヶ浜並みのぶりっ子である事だ。
何故ならわざと生徒会長の背後へ寄り周りを見渡しているからだ。
かと言って2人の顔立ちは美少女と言っていいほどである。
2人がここへ来た理由は平塚先生のススメで来たらしい。
とゆう事は何か相談or依頼だろう。
いろは「1年の一色 いろは...です」
もう1人の方の名前は一色 いろは 1年生でサッカー部のマネージャーをしている。
うん、コイツ葉山について行ったな。
どうやら彼女が悩みを持っている。
いろは「実はー.....」
内容はこうだ。
来月の生徒会役委員選挙で誰かが勝手に推薦人を集め一色を生徒会長に立候補しそうだ。
これは本人の意思ではないそうだが彼女たちが持ってきた推薦書にちゃんと一色の名前が書かれている。
彼女の話ぶりと内容からすると嫌がらせだとわかる。
当の本人は自覚しており本人を祭り上げた人物等は大体把握しているそうだ。
ここから俺の推測だが一色は男受けをする。
その代わり同性からは嫌われているタイプ。
そんな奴らが彼女にひと泡ふかせようと仲間をかき集め立候補させたのだろう。
これらの内容を聞いてから城廻先輩は俺に依頼を持ってきた。
「一色いろはを次の生徒会選挙に当選させないようにして欲しい」と。
俺は思わず手を顎に添えてしまった。
無理難題な以来である。
方法はいくつかあるがこれら全て一色の株を落とす事になる。
挙げ句の果て男性からも嫌われる始末になる。
八幡「選挙管理委員会に取り消しすればいいのでは?」
いろは「それが担当の先生に『いいとじゃないか!何事も経験だ!』って言われて....」
教師のモノマネをしながら話すコイツは何故かしら腹が立つ。
それはさて置き選挙管理委員会は駄目だとしたら現生徒会に立候補を取り消しをすればいい話だがよく考えると一色の株を下げてしまう事になる。
それに生徒会側は立候補を取り下げる程の権力はない。
でなければこんな所まで来ないはずだ。
めぐり「比企谷君...どう?出来るかしら?」
考え込んでいる俺に問いかける城廻先輩。
俺は言葉を返した。
八幡「....自分の考えでよければその依頼受けます」
いろは「ほっホントですかぁ⁉︎」
立ち上がり机に両手を乗せ身を乗り出す一色。
オーバーリアクション。
あざといいんだよ。
俺はさらに言葉を続ける。
八幡「しかしまだ考えが固まっていないので何とも言えませんが...」
めぐり「別に今ここで答えを出して欲しいわけじゃないからいいよ。でも君の考えがハッキリしたら彼女に伝えてちょうだい」
こうしてこの話は一度幕を閉じた。
そして此処からは少しだけ雑談タイムになった。
コミュ障の俺にとって地獄である。
ああ、正直早く帰りたい。
いろは「先輩って1人で部活やっているのですか?」
突然の彼女の質問にどう答えていいか分からなかった。
するとあの言葉がまた脳裏をよぎった。
『貴方のやり方嫌いだわ』
『人の事考えてよ!』
八幡「............」
今現在あの2人と仲が悪く部活は俺ひとりでやっている。
そこで俺ははぐらかす事にした。
八幡「普段は3人でやっているが2人は休みだ」
いろは「ふーん、そーですか」
上手く誤魔化せた。
だがコイツの返答がウザすぎる。
コイツ由比ヶ浜と同じにおいがするぞ。
この後、城廻先輩から何故この部に入ったのか、と聞かれ平塚先生に強制入部された事を答えたら一色に大爆笑された。
コイツ...依頼受けなければよかった。
腹を抱え一色を見てそう思った。
めぐり「ごめんなさい。この子こういう子だから」
庇うのはいい事ですが理由になってませんよ先輩。
八幡「...別にいいですよ、こういうのは慣れてますから」
葉山と関わりのある奴とは関わりたくないなぁ。
そう思いながら雑談は終了し城廻先輩と一色いろはは教室から出て行った。
少し時間を置いてから俺も鞄を手にして教室を出た。
学校から出た俺は自転車で駅に向かっている。
目的地はバイト先のSMS。
今日はバイトの日で護衛任務である。
千葉にのSMS基地は2つ存在している。
1つは成田空港の隣にありもう1つは東京湾側に存在する。
俺はゴーストなのでどちらも行き来している。
駅に着いた。
今回は成田SMS基地に行く。
前回の任務で成田SMS基地に陰神を収納したからだ。
SMS専用のパスをかざし改札口を出り成田行きの線へ歩き電車を待った。
川崎「....ひっ比企谷?」
不意に誰かが俺の後ろで俺の名を呼ぶ。
振り向くとそこにクラスメイトの川崎 咲がいた。
彼女もまたSMSの隊員でオペレーターの研修生である。
八幡「よお川崎、お前も研修か?」
川崎「あ、うん...比企谷は...任務なの?」
俺は首を縦に振った。
彼女は俺がSMSのバルキリー乗りと言うことは黙ってくれている。
『まもなく〇〇番線成田行き電車が参ります。黄色い線までお下がりください』
出会ったと同時に俺と彼女が乗る電車がやって来た。
俺の後に川崎が電車に入り後に続く。
電車の中は人混みは多少あるがそれほどではない。
俺はこれから数時間もパイロット席に座らなければならない。
だから立つ事にした。
すると俺の目の前に顔を赤くした川崎が立っている。
顔は別の方を向いていた。
八幡「....あの..川崎さん?何故俺の目の前にいるのですか?」
空いている席があるのに何故座らないんだ。
これじゃあ前が見づらいじゃないか。
川崎「別に、いっいいじゃない....!」
強い口調で睨みながら言う川崎。
ごめんなさい、許してください!
そうしているうちに電車は動き始めた。
俺はなるべく川崎を見ないように視界を別の所にやる。
しかし川崎がチラチラと俺の方を向いて来る。
なんか恥ずかしい。少し顔が赤くなった。
川崎がSMSに入ったのは俺が奉仕部に入った半ば頃の事。
小町が急に川崎の弟を連れてきて川崎のバイトを辞めて欲しいと依頼してきたとこから始まった。
川崎が働いていたバイト先はホテルの最上階にあるバーでありバーテンダーをやっていた。
彼女の家族は多く両親は共働き、大学進学を希望している為家計が苦しい状態だった。
雪ノ下と由比ヶ浜は色々と説得を試みるが駄目だった。
俺たち3人は諦める事にしたが俺は帰ったふりをしてもう一度彼女のところへ来た。
俺は彼女に2つ提案した1つはスカラシップという予備校がやっているキャンペーンで。
学校の構内推薦で選ばれた者が無償で予備校を受けれるというなかなか魅力的なものだった。
もう1つはSMSのアルバイト。
SMS のアルバイトは大きく3つ、オペレーター、整備士の補助、パイロットに分けられている。
この中で俺はオペレーターを勧めた。
研修日がこの3つの中よりも短く給料が社会人並みだからだ。
俺はその日提案しあの場を去った。
後日、川崎が俺の所へやってきた。
彼女はスカラシップではなくSMSに入る事にした。
彼女曰く、スカラシップは構内推薦で一か八か、確実に取れるわけじゃない。
だから安定しているSMSの方がいい、と。
驚いた。
あの時は俺はスカラシップだと思った。
こうして川崎はSMSに入隊したのだ。
余談だが提案した時、俺は他人行儀に話したせいか川崎は俺がSMS パイロットとは知らなかったらしい。
川崎に会いに来たら驚かれた。
川崎は現在オペレーター 研修生としている。
彼女の評判は真面目でいいと聞く。
だが川崎はSMSに入隊してよかったのか?
勧めた自分が言うのもおかしいが一応心配だった。
俺は川崎に問い始める。
八幡「なぁ川崎、お前本当にSMSでよかったのか?もっと別の方法があったかも知れないのに...」
真っ赤の顔から真剣な顔になった川崎は俺の方を向いた。
川崎「確かにアンタの言う通り別の方法があるかもしれない。けど私は自分の意思と家族の為にSMSに入った。今更引き返す訳には行かないしね。それに最近母さんが帰って来る時間が早くなって家族と一緒に出かける時間も増えたの。これって全部アンタとSMSのおかげなのよ?」
八幡「俺は....ただ紹介しただけだ」
川崎「そう、アンタの紹介で私は救われた。てか素直に受け取りなさいよ!」
八幡「.....」
俺は思わずだまってしまった。
今度は逆に川崎から問われた。
川崎「そうゆうアンタはなんでパイロットに?」
簡単な答えだ。
八幡「ガキの頃バルキリーに憧れてたんだよ」
そして親父に憧れた。
初めて親父にバルキリーに乗せてもらった頃を思い出し電車の窓から見える青い空を見つめた。
あれから5年の月日が経つ。
親父が死んだのはその1年後。
もし、親父が生きてたら今の俺をどう思うのだろうか?
親父の生死を考えると思わずつり革を強く握り締める。
川崎「..?.......ちょっと比企谷?」
俺の異変を感じたのか川崎は俺を呼んだ。
目を逸らして俺は川崎に視線を戻す。
八幡「すまん、考え事してた」
川崎「大丈夫?最近あの2人と仲悪いように見えるけど....」
呆れた口調でそうゆう川崎。
あの2人とは雪ノ下と由比ヶ浜だ。
川崎の言う通り実際そうである。
だが周りからそう簡単に見えてしまうものなのか?
またあの言葉が脳裏を過ぎった。
『貴方のやり方嫌いだわ』
『人の事考えてよ!』
あいつらを思い出すと毎度毎度あの言葉を思い出してしまう。
俺は思わずため息を吐いてしまった。
そんな姿を見て川崎の顔は心配そうな顔で此方を見る。
八幡「....心配すんな、部活でほんの少し食い違っただけだ」
川崎「そう....ならいいけど..」
俺は嘘をついた。
何故ならコイツに迷惑をかけたくないからだ。
これ以上あの2人の事を考えるのを辞めておこう。
川崎「それで今日の任務はなんなの?」
話は変わり今度は俺の仕事内容になった。
今回の任務は護衛任務で内容はこうだ。
レインボー部隊が搭乗している輸送機が燃料補給の為、日本の横浜米軍基地へやって来る。
俺は日本空域ギリギリの所で輸送機と合流し米軍基地までエスコートする役目である。
レインボー部隊とは世界各国の特殊部隊が集まり脅威に立ち向かう部隊組織である。
上官のシックスさんとは親父の知り合いでレインボー部隊のメンバー含め面識がある。
任務の内容を川崎に話すと
川崎「ゴースト部隊って凄いのね」
と言われた。
別にただ警護するだけであるから凄いとは思わなかった。
川崎「学校ではボッチでSMSではエリート部隊ねぇ」
八幡「....悪かったなボッチで」
川崎「だったらなんでみんなにSMSのパイロットだって言わないのよ?」
八幡「俺はボッチの方が楽で好きなんだよ....それに今更言ったって信用しないからな....」
学校祭の件で俺の評判は最悪と言っていいぐらい。
また思い出したくないが修学旅行の件もそうだ。
この状況で俺がSMSのバルキリー乗りだと口にすれば確実にイジメの的になる。
川崎「..ごめん!そんなつもりじゃ..」
八幡「別にいい、過ぎた事だ」
修学旅行は知らないが学校祭の俺の評判は川崎の耳に届いている。
申し訳なさそうに謝る川崎に過ぎた事だと言い許した。
かと言って俺は最初から言うつもりは一切ない。
『次は終点〜』
電車が終点の駅に着いた。
俺と川崎は降りて改札口を出た。
ここから徒歩5分で成田SMS基地に着く。
俺が先頭になってその後ろを追う川崎。
基地に着くまで彼女とは何も話さなかった。