やはりバルキリー乗りの俺は間違っているのか?   作:BenQ

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トゥイッチ達が総武高校の校内見学から1週間が経った。

あの3人は既に自国に帰っている。

AIF-V9の件はデータを収集してからアメリカへ返したそうだ。

データを取った事は勿論秘密裏であろう。

一色は生徒会長になる事を決意した。

そして何故か一色が昼飯について来るようになった。

俺こと比企谷八幡はいつも通りの生活を..........いやいつも通りではない。

小町とはもう殆ど喋らなくなった。

理由は毎日のように頭痛が走るようになったからだ。

ついでに言えばあの2人、雪ノ下と由比ヶ浜も思い出すと頭痛がする。

アイツらの顔を見るだけでもだ。

念のため病院に行ったのだが体に異常はないと言われた。

それでも頭痛がするはおかしいと思った俺は市販で売られている薬を1日に一回飲んでいる。

SMSの任務に支障がない様に栄養剤や栄養ドリンクを使ってバルキリーに乗っている始末だ。

お陰で一色が俺に生徒会長になる事を言いに来た時、一色に目がいつもより酷くいと言われた。

川崎にもだ。

だが不思議にもこいつらと飯を食う時は頭痛は一切しなかった。

 

 

 

 

SMS成田基地

 

 

 

授業が終わり放課後の俺は成田基地にやって来た。

川崎は今日は休みでここには居ない。

任務はないが今日は定期な訓練の日。

オートバランサーの制御装置の電源を切ったEXギアを装着して滑走路の周りを走ったり射撃や格闘訓練などをする。

オートバランサーを切ったEXギアを装着して走る訓練は訓練生の時からある。

何の目的から自分でもわからないがオートバランサーを切ったEXギアはただの鉄の塊、非常に重くなり俺たちパイロットが苦しませる訓練だ。

射撃や格闘訓練は護衛人物の護衛の為である。

SMSは「何でも屋」パイロットはバルキリーを使った任務以外警護任務などをする。

だが大抵の事は一般小隊の者が引き受けるから俺らゴーストには意味がない。

だがたまに依頼人のご指名で行くこともある。

 

 

 

パイロット専用更衣室

 

パイロットスーツに着替えている俺はある人を待っている。

EXギアを使う訓練にはバディがいる。

自分のオートバランサーを切ってくれる相手が必要だからだ。

 

原田「おー悪りぃ、会議が長引いちまった」

 

更衣室に早歩きで入り俺に謝り急いで自分のロッカーからパイロットスーツを着替える。

今回のバディは原田隊長。

俺が待っていた人物だ。

 

八幡「会議どうでしたか?」

 

原田「それが退屈でさぁ、尻が痒くなっちまうぐらいだ」

 

原田隊長が出席していた会議はゴーストの各小隊の隊長と部隊の分隊長と総隊長が出席する定例会義である。

会議では基本的にそれぞれの小隊に不備がないか案件を提案するだけで原田隊長は退屈していたと嫌な口調で述べた。

 

原田「....1つあったな」

 

原田隊長は目の色を変えた。

 

原田「部隊自体関係ないが武器商人の世界で武器や兵器の出回りが激しくなっている....」

 

最近武器の購入が激しくなっていると原田隊長は言った。

公式社ではなく武器商人達の元でだ。

武器商人は大量の武器や兵器を安く売り高く買い取るが商品(武器)が訳ありと言った当たり外れがある。

そんな武器商人達はゲリラや紛争に好まれている。

しかしその紛争やゲリラはそんなに悪化してはいない。

軍は純正品を公式社で購入している。

マフィアやギャングが買っている可能性はあるが兵器を買うほどの金はない。

だとしたら1つしかない。

テロだ。

 

八幡「テロ組織が動いていると?....」

 

原田「あまり動きを見せてないが十中八九そうだろう。その時は国の情報機関等は動いている。俺たちSMSが出る事はない」

 

そう言いながらパイロットスーツを着替える原田隊長。

情報が少ないがとっくにアメリカが動いているだろう。

着替え終わった原田隊長は行くぞ、と言い訓練用のEXギアがあるドッグへと向かった。

ドッグへ着き早速EXギアを装着した。

そしてオートバランサーを切る。

 

八幡「ぐっ...」

 

原田「ふっ」

 

EXギアは鉄の塊と化し重さに寄って体が重くなった。

 

原田「よし、行くぞ....」

 

八幡「了解....」

 

俺と原田隊長は体の筋肉を使ってEXギアを一歩一歩動かし滑走路50周の地獄のトレーニングが始まった。

 

 

 

 

3時間後

 

 

 

原田「よしッ.....終わった...」

 

八幡「は..はい.....はぁ....はぁ...」

 

ドッグの目の前で両手で両膝をつき肩で息をする俺。

俺達は汗をかいている。

日は沈み涼しい夜だが自分たちの体は灼熱されている。

今直ぐにこのEXギアにある体の熱と重さから解放されたい。

だから俺はEXギアを脱ぎにドッグへとまた足を運んだ

 

その後EXギアの訓練を終え俺と原田隊長はパイロット専用更衣室で汗を落としにシャワー浴びていた。

さらけ出したその俺の体の筋肉はパンパンになっていた。

特に太ももが。

でもこれはこれでいい訓練だ。

すると横から原田隊長に声を掛けられた。

 

原田「八幡....」

 

八幡「はい」

 

原田「お前....何があった」

 

八幡「....はい?」

 

俺は原田隊長が言っている事がわからなかった。

 

原田「惚けるな、訓練中お前の目はいつもより酷いぞ。まるで死人の様な目だぞ」

 

八幡「......」

 

原田隊長の言葉に思わず俺は口を閉ざした。

言えない。

何を言えばいいのかわからない。

自分自身何故こうなってしまったのかわからない。

例えわからないものがわかったとしても原田隊長に迷惑は掛けたくない。

そんな曖昧な事を考えている事数分後、またあの言葉が俺の頭を過ぎり頭痛を走らせた。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

薬の効果が切れたのか激しい頭痛に襲われた俺は左腕を前の壁に付け反対側の拳を強く握り耐えた。

 

原田「.....言いにくいなら別にいい、だが言う気があればいつでも相談してくれ..次の訓練に遅れるなよ..」

 

そう言い放ち原田隊長はシャワーの蛇口を閉めシャワールームから出た。

心臓が強く激しく跳ね上がる。

俺は熱い水に打たれ原田隊長がパイロット専用更衣室から消えるのを待ち近接格闘の訓練に参加した。

 

 

 

 

 

 

 

近接格闘の訓練が終わった。

正直身が入っていなかった。

何故なら

 

 

 

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

 

この言葉が悪夢の様に俺の頭の中で連鎖し激しい頭痛を引き起こすからだ。

バイト中では思い出したくなかった。

前まで直ぐに忘れる事ができるが今は出来ない。

薬は更衣室に置いてある。

そこまで程遠くはないが次の訓練に間に合わない。

最悪だ。

射撃は射撃専用ドッグで行う。

銃はアサルト、スナイパーライフル、ハンドガン、でカテゴリーは自分で選択できる。

俺はハンドガンのグロッグ17を手にして弾が入ったマガジンを挿入しセーフティーを解除し25メートル先の人型の鉄の的に照準を合わせトリガーに指をかける。

弾は実戦ではなくゴム弾で誤って人向けて撃っても死なないが威力は本物と同じで痛い。

トリガーを引くと弾は射出され的の方へと行く。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

それと同時にまたの言葉が俺の頭を遮り頭痛を起こす。

弾は的に当たらずと後ろへと逸れてしまった。

もう一度撃つと今度は的の隅に当たった。

あの言葉と頭痛で集中が出来ない。

俺は苛立ちを見せながらも銃を撃つ。

だが撃つたびにあの言葉が掘り起こされる。

苛立ちがピークになり撃つ速さが速くなり心臓も激しく打ち周りが聞こえなくなった。

マガジンを3つ使った。

弾は的に当たっているがバラバラ。

 

八幡「クソッ.....」

 

ストレスが蓄積された俺はグロッグ17からM4に構え3点バーストで的を撃ちまくった。

弾が切れると俺は直ぐにマガジンを抜き新しいマガジンに交換し撃ち始める。

だが撃ちまくってもあの言葉がまた襲いかかる。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

やめろ

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

いい加減にしてくれ!

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

俺が何をしたんだ!

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

ふざけるな!

 

再度マガジンを交換し再び的を見た時、

 

 

俺は目を見開きゾッとした。

的の前に雪ノ下と由比ヶ浜が立っていた。

幻覚が見えてしまった。

だが幻覚でも俺は心の中で2人に問う。

 

お前達は俺のやり方を否定するのか、と。

 

幻覚は喋らない。

だがこの言葉だけが伝わる。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

頭に血がのぼった。

 

 

八幡「クソッタレガァァァァァァ!」

 

3点バーストからフルバーストに切り替えしびれを切らした俺は的を狙い引き金を強く引いた。

M4は火を噴き大きな咆哮を上げる。

銃口から出る弾は一直線に的に向かう。

 

 

 

弾を使い切ったM4は銃口から煙が出ていた。

俺は構えるのやめ肩で息をする。

周りには排出された薬莢達が転がっていた。

幸いさっきの声は他の者達の発砲音でかき消されていた。

荒れた息を整えようと大きく息をした。

 

八幡「はぁ.....はぁ......がッ⁉︎」

 

だが頭痛がまた俺を襲った。

俺は足をつき頭を押さえてしまった。

 

教官「比企谷!」

 

それに気付いたのは上官だった。

教官が動き異変に気付いた隊員達は銃を撃つのをやめ此方を見る。

 

教官「大丈夫か?」

 

側に駆け寄る教官は膝をついて俺の顔を覗く。

膝を落とす程の頭痛に俺は大丈夫です、と言えなかった。

 

教官「顔色が悪いな....比企谷大尉、今日は上がれ銃の片付けは私がやる」

 

教官にそう言われ俺は訓練を辞めさせられた。

俺は了解、と小さく返事した後立ち上がり更衣室に向かった。

 

 

更衣室

 

 

更衣室で学校の制服に着替えた俺は薬を飲みベンチで座っていた。

前屈みになり両腕を両膝につける。

ついにSMSで支障が起きた。

幻覚が見えるようになってしまった。

訓練だから良かったがもしバルキリーに乗ってさっきのような事が発生したら最悪だ。

V-9を捕獲したときだってそうだ。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

あの時、あの言葉が俺の頭を過ぎり惑わせた。

手が少し震えた。

そんな事を考えているとベンチの横に置いたある端末から声が聞こえた。

 

BB『どうしました大尉?』

 

BBだ。

そしてこの端末はトゥイッチから貰ったBBと情報共有が出来る端末だ。

 

八幡「なんでもねぇよ......また頭痛が起きただけだ...」

 

BB『またですか、やはりもう一度医者に診せに行きましょう』

 

八幡「いいやまた同じ事言われるだろう」

 

BB『そうですか』

 

BBはもう一回病院に行く事を勧めるが俺は取り下げた。

しばらくして痛みも治った俺は荷物を持って家に帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車に揺られ目的地の駅に着いた俺は改札口を抜け駐輪場で自転車を出している。

腹が減った。

だが今日は一段と気分が悪く食べる気がしない。

だがグゥと腹がなる。

 

八幡「仕方ない、コンビニで何か買うか」

 

俺は自転車のハンドルに手を添え外へ出た。

幸いコンビニが近くにあるから歩きで向かう。

すると

 

葉山「....ヒキタニ..」

 

八幡「....あ?」

 

俺は部活帰りの葉山と出くわしてしまった。

今日に限って関わりたくない奴に話しかけられた俺は腹が立った。

最悪だ。

 

葉山「どうして君がここに?」

 

八幡「居て悪いのかよ....用事をすませて来たんだよ....」

 

葉山「そうか..」

 

アイツは偶然にも1人。

このパターンは絶対に「どこか話さないか?」と言って話す場所を設ける。

だから俺は自転車を引っ張りこの場から去ろうとした。

 

八幡「じゃあな....」

 

葉山「待てヒキタニ、話をしないか?」

 

八幡「生憎お前と話す事はない」

 

葉山「君になくても俺にはある」

 

全くコイツは。

心の中でイライラが収まらない。

無理に離そうとすると向こうは諦めない。

これ以上言い合う気がない俺は仕方がなくコイツに乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駅の近くの公園で俺と葉山はベンチに座り自販機で買った飲み物を片手に持っている。

俺はいつものマッ缶、葉山はコーラ。

コンビニでプロテインバーを買おうと思ったがマッ缶で十分胃の中が膨れた。

「ヒキタニいつもその甘いの飲んでいるよな」と葉山は言うが機嫌が悪い俺は言い返す気がなかった。

 

八幡「前立てはいい、早く話してくれて」

 

前立てはいいからさっさと話せ。

葉山は少し沈黙したが口を開いた。

 

葉山「はっきり言う、いつまでそうしているんだ」

 

八幡「何が?」

 

葉山「2人のことだよ」

 

葉山が指す2人は雪ノ下と由比ヶ浜。

コイツは上から目線でものを言い始めた。

 

葉山「修学旅行以来、結衣と雪ノ下は少し様子が変だった。君は川崎さんとつるむようになった。まるであの2人を裏切ったように」

 

裏切った。

この言葉に心臓が跳ね上がった。

 

八幡「裏切った?勝手なこと言うなアイツらが勝手に離れて行っただけだろうが」

 

勝手に人を罵倒して部活を無断欠席する。

これは事実だ。

それ以外何がある?

俺は鼻で笑い言い返した。

 

葉山「みんなで話していると結衣だけ暗い表情、雪ノ下は昔のようにまたー......」

 

八幡「俺には関係ない話だな」

 

次第に口調が強まる葉山に釘を打つかのように俺はヤツの言葉を遮った。

 

八幡「アイツらが勝手にああなって、勝手に部活を無断で欠席する。どこが関係ある?」

 

アイツらの事なんて知りたくもない。

知って何になる。

人の存在感、在り方、やり方、など人それぞれ違う。

なのに否定しボロクソ言った奴の状況など知りたくない。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

 

『人の気持ち考えてよ!』

 

またあの言葉が脳を駆け巡る。

頭痛はしていないが長居はしたくない。

 

八幡「兎に角俺はー.....」

 

そう言いながら俺は立ち上がろうとしたその時

 

葉山「いい加減にしろッ!」

 

怒声を上げ持っていたコーラを投げ捨て両手で俺の首元を掴んだ。

 

八幡「......ッ」

 

手に握っていたマッ缶から液体が零れ落ちる。

幸い液体がズボンに付着しなかった。

 

葉山「おかしいだろ!」

 

怒りを露わにし俺に怒声を浴びせる葉山の姿はまるで正義を気取る何も知らない無能な人間の姿だった。

 

葉山「2人の様子が変なのにヒキタニお前だけが平気でいるのはおかしいだろ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が平気でいるだと?

何を言ってやがる。

 

 

 

 

 

 

 

頭の中の何かが切れる。

そしてこの無能なクソ野郎の言葉に怒りが溢れ爆発し、左手に持っている飲みかけのマッ缶を握り潰した。

 

 

八幡「勝手に決めつけてるんじゃねぇよ無能が!」

 

葉山「!?」

 

片手で葉山の胸ぐらを掴みコイツを持ち上げ鋭い目で睨む。

 

葉山「グッ⁉︎」

 

地面から5センチ浮いている葉山は苦しい表情を見せる。

 

八幡「何が『お前は平気でいる』だと?人を罵倒して自分のやり方を否定されて俺は平気で居られるとでも思ったか⁉︎見方で決めつけるのも大概にしやがれ!」

 

葉山「!?!?!?」

 

八幡「修学旅行の時だってそうだ、お前は戸部の事しか考えず海老名さんの気持ちを知らないまま場を設けた!」

 

葉山「そんなッこ...と....は...」

 

まだ言うか。

痺れを切らした俺は葉山を片腕一本で軽く放り投げた。

地面に尻と手を付いた葉山は咳を混んだ。

 

八幡「じゃあ何故あの日、海老名さんは俺に話しかけて来た!何故俺は戸部の告白を邪魔して来た!」

 

言葉が次々と出てくる俺は怒りを曝け出す。

 

葉山「.......」

 

この質問に葉山は何も答えなかった。

沈黙を続けるコイツに怒りの熱が冷えた俺は舌打ちをかまし潰したマッ缶を捨てた。

 

八幡「だからお前は無能なんだ」

 

俺は自転車を持ってこの場を去った。

そしてこの場を去る前に

 

 

八幡「もう二度と俺に話しかけるな、それと俺はヒキタニじゃなくてヒキガヤだ」

 

と言い公園を出た。

すると思いもよらぬ人物と出くわした。

 

 

 

 

 

川崎だった。

 

 

 

 

 

川崎「比企谷......」

 

 


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