アリーナを銃弾と空気砲が入り乱れる。技術者達の対談が終わっても尚試合は継続されている。時に銃弾が、時に空気砲が、時に斬撃が両者のISを削るが一向にこれといった決定打が出ない。それもそのはず。お互いがお互いの強みを犠牲に相手の強みを封じている為である。
だが、だからといって互角と言われたらそれは違う。ゴールドと凰のSEが少しずつだが、離されて言ってる。やはりと言うべきか、地力の差で押され始めているのだ。
(チッやばいな、どんどん押され始めてきたな。目に見えないから対応が難しいのもあるが……その砲弾を連射させるあいつの集中力はおかしいだろ)
そう、凰は空気砲を”連射”させているのである。本来彼女のあの武装は、発表当初の説明ではこう言われていたのである。”単発式圧縮空気砲弾”と、確かに彼女は散弾を放つ事も出来るが、散弾を放つのと、連射させるのとでは用いる集中力の量が桁違いだからである。
(散弾は圧縮した空気を作った後砲身の口を大きくさせて撃てばそのまま圧縮した空気が散って散弾となる。
だけどそれが連射となれば話が違う。空気を圧縮する、ここまではいい。だが、連射という事はこれ以外にも最低でももう1つ同じ空間に砲弾を形成させなければいけない。空気を再チャージして作るか、その圧縮弾を分割しているかは分からないが”狭い密閉空間に圧縮した空気弾を複数個形成し続ける”。これだけでも頭がおかしいのにそれを併用しながら戦闘? 全くもってふざけてるよ、だから…………その集中力をせいぜい利用させてもらうよ。その為にはまずあの砲弾が分割式なのかチャージ式なのか確かめなきゃだな。まぁでも装甲の傷の度合いを見る限り、十中八九チャージ式で間違いないだろうな。もし分割式なら、序盤受けた傷よりも小さくないといけないのに対して、同等の大きさだ。これではおかしいからな、だからそろそろ使わせてもらうか)
そう結論つけたらゴールドはグレネードランチャーを展開、凰が撃った後に2発のスモークグレネードを発射。その後今まで防御に回していたコード付きのシールドに細工をした。
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(やっぱり使ってきたわね、スモークグレネード)
凰鈴音は煙に包まれながらもセンサーで相手を警戒していた。
(グレネードを2発撃ってきたからてっきり片方は音響爆弾かと思ったけどそれもスモーク……何をする気かしら。でも何が来てもいいように今の内に弾を用意してた方がいいわね)
それは普通の考えだった。何が来るかわからない状況だから迎撃出来るように準備をする。それは至って普通だが、それならスモークから出る事を最優先にするべきだった。確かにスモークから逃げる所を、上手く迎撃されてしまったら大ダメージは免れないかもしれない。だが、スモークの中で弾を用意する意味を凰は理解しきれてなかった。
(?! なにか接近してくる物体が2つ、センサーには合計3機映ってるから……この2つはシールド?! でもなんで今更!)
そう凰の予想は正しかった。ゴールドは4機の内2機のシールドを急激な速度で飛ばしたのである。だが、今まで防御に回していたシールドを急に攻撃に向かわせる事に疑問が出るがそれよりもまずは迎撃だ。
(ガトリング砲を打ってこないって事はソードによる近接攻撃、だけど真っ直ぐなだけの攻撃なんて私には通用しな、い゛ぃ!)
ガトリング砲が撃たれない為ソードによる近接だと凰は予想した。その予想は半分正解で半分不正解である。1機のシールドにはちゃんとソードがついている、ならもう片方の1機には何がついているだろうか? スモークが思いの外深く、それこそ数メートルあるかないかぐらいの距離ではないと目視出来なかった。そこで凰が目にしたのは”ロケットランチャーが装備されている”シールドであった。そこからロケットが発射、時限信管だったのか即座に爆破。それは音響爆弾であった。そんな事は全く予想だにしなかった凰はここでやっと集中力が乱れた。乱れてしまった。ここで思い出して欲しい、凰はシールドを迎撃する為に何を準備していた? それは多大な集中力を要する空気砲である、そして今その必要な集中力が乱れてしまった。圧縮空気砲は多大な集中力があって初めて存在するがそれが無くなればその後はどうなるか……それは火を見るより明らか。空気は装備内部で拡散し、暴発。辛うじて片方に集中するもそれをシールドの近接攻撃により破壊。凰の遠距離兵装は完全に無くなってしまった。
「ハァハァ……やってくれたわねあんた。良くもまぁ人が嫌がるような事をポンポンと思いつくわね」
「それは褒め言葉として貰っておくよ。そもそも俺とお前とじゃ機体スペックも操縦技術も俺が負けてるんだから、搦手で何とかするしかないだろ?」
と不敵な笑みを浮かべながらこの相手はほざきやがる。全くもって腹立たしい、けど何よりその作戦にまんまと引っかかった自分自身に腹が立つ。録画データを観ただけで相手の作戦を分かった気になってた自分が不甲斐ない。
「これで自慢の装備も無くなったんだ、こっからはこっちも思う存分やらせてもらうぜ」
「ハンッ龍砲だけが私の強さじゃない事教えて上げるわよ!」
(と言っても辛いのは確かよね……この試合では確かパーソナルロックが解除されていたはず。どうにかあいつの装備をぶんどって使えればまだ勝機はあるかもしれない)
パーソナルロックとはISが装備している武装を他人が使えないようにする為に自分、又は許可した相手にしか使わせない機能の事である。本来は解除されないのだが、こういった大会等では盛り上げる為にその機能を全面的に解除されるのだ。
凰がそんな事を考えていたら、アリーナ全域に衝撃が走った。