ゴールドは目を覚ますとひとの気配を感じ、そちらに顔を向ける。
「あ、野上君! 起きたのですね、気分等は平気ですか?」
「大丈夫ですよ、山田先生」
「あら、目を覚ましたのですね野上君」
「目を覚ましたのですねって、俺1回起きたじゃないですか。山田先生に伝えてないんですか?」
「伝えたわよ、でもそれだけ貴方達生徒を心配しているのよ。私達教師は、だからそこは甘んじて心配されて。とっくに凰さんは回復して戻ってるのですし」
「はぁ……ってもう9時?!」
「はいもう夜ですね。野上君、今食欲はありますか? あるのでしたこれから食堂に行きますので一緒に夕飯を食べませんか?」
「あーはい、お腹ぺこぺこです。シャマル先生ありがとうございました」
「出来ればもうここにお世話にならないようにしてくださいね」
「善処します……」
♢
(──気まずい、日頃無茶はしないで下さいって言われてたからなぁ。物凄く気まずい)
「野上君──」
「は、はい?!」
「本当に体は大丈夫なのですか? 何処かまだ痛むようでしたら先に部屋で待って頂いて、私が持っていきますけど……」
「だ、大丈夫です! 何処も全然痛みませんし、ほら!」
ゴールドはそう言うと腕を大袈裟に動かして見せた、それを見るや真耶も強ばっていた顔を少し緩める。
「そうですか……ですが不調が確認でき次第報告してくださいね?」
「はい、安心してくださいっと着きましたね」
「そうですね、じゃあ好きな物取っていつもの席で食べましょうか」
食堂には夜遅い事もあって生徒は居ないが仕事終わりの大人達が結構な人数居て、喧騒が響いている。
(こんなにも遅い時間なのにこんな人数、よく見ればほとんどゲッソリしてるな。やっぱり今日の事後処理が大変だったのだろうか。今日の、事……
大丈夫だ、もうあれは終わったんだ。もう安全なんだ、だから大丈夫。俺はもうダイジョウブ)
「野上君? ボーッとして大丈夫ですか?」
「?!」
その言葉にゴールドは自分が既にテーブルに着いてる事に気がつく。
「料理を取って座ったと思ったらずっと料理を見つめて……やはりまだ本調子じゃないのですか?」
「えっとー、そーですね。少しまだ疲れてるようです、ですがまぁ大丈夫な範囲です! さぁ、もう時間も時間ですのでさっさと食べちゃいますか」
「…………それもそうですね」
(あっぶねぇ……これ以上先生達に迷惑かけれねぇしな、ボロが出ねぇうちに今日は早く寝るか。それにしても──)
そこまで考えるたら視線を料理から”スプーンを持っている自分の手”に移した。
(これがバレない事を祈るか、早く収まってくれ──)
♢
食事を済ませたゴールドと真耶は部屋に戻ると2人は風呂に入ると寝支度を終わらせると不意に真耶が腕を拡げながら話しかけた。
「そう言えば野上君、少しお話があるのでこちらへ来てください」
「こちらと言うと……」
「もちろん私の腕の中です」
「いやいやいや、いきなりなんですか山田先生。余りの急展開に追いつけないんですけど」
「──手の震え」
「?!」
「更に注意力散漫と深い思考……野上君、貴方は残酷な迄に感性が普通で聡い。この学園に来る生徒は皆多かれ少なかれ”覚悟”を持っています、その覚悟と言うのはISという強大な力を扱うという覚悟です。ですが貴方と織斑君……彼は少し能天気な所があるのと、面識ある方が居るのでそこまで気負ってませんが貴方達は覚悟を決める前にここへ来ました。そして覚悟無い力をそれでも振りかざさなければいけない、ましてや今日は命懸け……人が”頼る”には充分過ぎる理由です。ですから、今は私を頼ってくれますか?」
そう言うと山田先生は優しく俺を抱きしめてくれた。
(あぁ、これだ。この人のこの”温もり”がきっと俺は──)
「ではお言葉に甘えて頼ります、少しの間このままでいいですか?」
「少しと言わず寝る迄こうしても良いのですよ?」
「そこまでされると流石に男として恥ずかしいので……”少し”だけ」
「分かりました」
そうして俺は山田先生を抱き返した、いつかこの人に──この優しい温もりをくれた人達に報いると誓いながら。