(さて、荷物も部屋に置いてきたし少し遅いが昼飯でも──ん?)
ゴールドは買い物を済ました後、食堂へ向かった所お世話になっている2人の先生を見かけた。昼時より少し過ぎた故か人も比較的少なく、その中で大人とはよく目立つのですぐ分かった。
(山田先生と織斑先生? 昼って言うには少し遅いけど……やっぱり昨日の事関連なんだろうな。折り行った話もあるだろうし少し離れた所にすわ──)
「あら? 野上君じゃないですか、野上君もお昼ですか?」
「どうだ、偶には一緒に食事でもどうだ野上よ」
「あっはい、そうですね。それでは御一緒させてもらいます」
(誘ってもらったって事は普通に大丈夫って事か、それにしても──)
「俺が言えた事じゃないですけど昼ごはん遅くないですか先生方……」
「まぁ、大人は色々あるからな。それに野上だってそうじゃないか、休日って事だから何処かにでも行ってたのか?」
「はい、ちょっと買い物に。それで気が付いたら昼過ぎになってたんですけどぶっちゃけここの食堂の方が外で食うよりも美味しいし、何よりタダなので。それともし宜しければこの後部屋に来て貰えますか? 内密に相談したい事があるので」
(話して大丈夫何だな?)
〈私はマスターの判断に委ねます、ですが二人だけの秘密が一日も経たずに消えるのは少し残念です……〉
(二人だけって、それはまた別の事で勘弁してくれ)
「む? そうか、分かった。それで先程買い物と言っていたが、早速何を買ったんだ?」
「本を少々、それからまぁ……これは後で話します」
「今じゃいかんのか?」
「今はダメです」
「そうか、それなら待つとする」
そうして三人は少し遅めの昼食を摂った後部屋に戻った。
「それで野上、内密に相談とは一体何の事だ? 人払いをする程だ、それ相応のトラブルが起こったのだろう?」
「えぇまぁ、トラブルって言えばトラブルになるんでしょうかね。とりあえず驚くと思うので心の準備の程を」
そう言うとゴールドは指輪──モルド・テンペスタを嵌めている方の手の甲を、二人に差し出すかのように見せる
「モルド、もうスピーカーで話してくれて構わない。とりあえず二人に挨拶してくれ」
《了解My master。意思疎通という面に関しては初めましてですね、モルド・テンペスタです。主従共々いつもお世話になっております、この度は博士より許可を頂いた為こうして大っぴらに会話が出来るようになりました。今後は私とも仲良くしてくれたらと思っております》
「…………」
「またか……またなのかァ」
指輪を赤い線をチカチカと光らせながら話すモルドに対し、いきなりの事で山田先生は呆然とし、織斑先生は何かを察してしまったか目元に手を当てながら天を仰ぎ始めた。
とりあえず何故こうなったか今までの経緯をモルドと一緒に二人には話した、すると──
「成程、確かにこの事が世に渡ればまた大騒ぎだな」
「はい、今迄眉唾物と言われていたISの魂。それが人工知能として確立されてると分かれば研究科目が増える事によって更にISの需要が上がってしまいます」
「篠ノ之束という人間の知名度もな、ただでさえどちらもバカみたいにあるのにこれ以上上げてどうするというのだアイツは……とりあえずこの話は私から上に報告する、野上はこの事については他言無用でいいな」
「はい」
「とりあえずこの話はこれで終わりにするとして、本当にモルド・テンペスタなんですよね? この音声の主は」
《山田先生、正式名称ではなく気軽にモルドちゃんとお呼びください。そしてその質問については肯定、その通りです。先程も言いました通り、私はこの春よりマスター野上ゴールドと共に空を翔けてきたIS。モルド・テンペスタのコアAIです》
「むぅ……そう説明されても中々に実感が湧きませんね、すいません」
《いえいえ、突然の事ですので整理がつかないのは仕方ありません。これから慣れていただけたら私は十分です》
「が、頑張ります!」
それからは今後のモルドについて話した。
先ずモルドの事は他言無用である事、基本的に会話は個人チャットを使う事、大まかにだがこの二点を言い渡された。
「さて……野上、相談したい事についてはこれで終わりだと思うが結局お前は今日何を買ったのだ?」
「あぁそのーそれはですね……」
ゴールドは多少いい淀みながらも”二つの紙袋”を持ってきてそれぞれを二人に差し出した。
「日頃お世話になってる人達に何かお返しをと思いまして、その……所謂ぷ、プレゼントです。受け取って貰えますか?」
その行動に二人は少し驚くも頬を綻ばせながら受け取った。
「ありがとうございます、野上君♪」
「ありがたく貰おう、それにしても山田先生はともかくとして私にもか」
「はい、織斑先生にも何かと感謝しているので。中身は山田先生の方がペンダントを、織斑先生はこういうのには興味が無いと思い実用性を込めて万年筆を買わせて頂きました」
「フッよく分かってるな」
「わぁ綺麗なルビーですねフフ、ありがとうございます」
(喜んでもらえて良かったな)
「さっきお世話になってる人達にと言っていたが、私達以外にも渡す予定はあるのか?」
「はい! 他には田島さんとセシリアに贈ろうかなと思っています」
「そうなんですか、お二人共きっと喜んでくれますよ」
「そうだったらいいかな、それじゃ早速行ってきます!」
そう言いながらゴールドは紙袋を持って部屋を出た。それを見送った千冬はふぅっと息を吐きながら呟いた。
「それにしてもお世話になってる人達にッか、周りを見渡せる余裕が出てきたと喜ぶべきか、自分への褒美をあげれてない事に心配すべきか悩ましいな」
「野上君はどう見ても嬉しそうでしたし、前者の方で大丈夫だと思いますよ先輩♪」
「あぁ、そうだな……それにしても生徒からこういった物を受け取るというのは一般的にセーフなのだろうか、特に山田先生は」
「ちゃ、ちゃんと公私を分ければ大丈夫だと思いますよ……多分、それに先輩もファンの方から貰ったりしますしそれと同じですよ」
「そういうものか」
プレゼントを貰い喜びと悩みが湧いてくる教師陣でした。
因みにセシリアにはティーカップのセット、田島さんには作業用の道具を入れるのを腰にまくホルスターのような奴をプレゼントしました。