あの後俺と山田先生は格納庫に向かい、疲労困憊の中説明を聞きながらなんとか少し改修をした。山田先生自体、今日だけで改修を終わらす気は無かったらしい。改修を終わらす頃にはいい感じに日も暮れていて、飯時だったのでそのまま食堂に向かった。俺は技術研修生と書かれている紐付き名札を首から下げた。これは春期講習初日に貰った物である。来た日は夜遅かったから誰とも合わなかったがこの寮には当然2人目の男性操縦者の存在を知らない一般生徒達が沢山いる。そんな中男が堂々といるのは騒ぎになるから、《大手IS会社の息子が技術研修として来ている》というていを装っている。そうでもしなきゃ視線だけで蜂の巣だ(それでも十分蜂の巣にされそうな視線を感じる)。
俺は訓練で疲れていた為か物凄く肉の気分だったので、ガーリックステーキ定食にした。山田先生は天ぷらうどんである。……ここにない料理は無いのではと思い始めてる。
「「頂きます」」
うん今日も美味いなここの料理は。
「ごちそうさまでした。すいません山田先生俺先部屋に戻って風呂入ってていいですか?」
「いいですよ、今日は初めての訓練でしたもんね。湯船に浸かってしっかりと疲れをほぐしてくださいね」
と笑って返された。なんかこれだけで癒されるから本当、山田先生には敵わない。そう思いながら食器をかたして部屋に戻り体を洗った後湯船に浸かった。
「あ''〜生き返るぅぅ。はぁ気持ちいなぁ♪ 〜」
(あー本当に疲れたよ勉強も疲れるけど訓練はマジで疲れた。何回地面とぶつかったんだよ、後半はなんとかなったけどぶつからなくなったらなったで《今度は地面から〜m上で停止しましょう》っていや一応初心者ですからね俺?! はぁ…………なんで俺がこんな目に。……ってやばい!)
そう思ったが既に遅い。感じてる物を言葉にした事でそれが明確になってしまった。気分が落ちている時にマイナスなイメージを考えてしまえばそのまま考えはマイナス方面になってしまう。だからゴールドは普段そう感じたりはしても頭の中でわざとそう言葉にしないようにしてる。なぜならそうしてしまうと壊れてしまうからだ。今まで貯めてきた涙のダムがそのマイナスなイメージの悪循環によっていとも容易く壊れるからである。更にこの悪循環は途中で理由の分からない恐怖が舞い降りてくる。理由が分からないのに恐怖を感じる。それが更に悪循環に拍車をかける。気づけばゴールドは外に声が漏れないよう声を殺しながら泣いていた。小さい声を反響させながら泣いていた。自分は1人だからしっかりしようと自分に言いつけるように。これ以上あの人に迷惑がかからないように。必死にあの人にバレないように。今部屋にあの人が居ない事も忘れてしまうくらいの恐怖を感じながら、ゴールドは何年ぶりかの孤独の中、涙を流した。
しばらく泣いて漸く止まった。体は十分に暖まったし、もう寝ようと思い脱衣場に出て服を着てベッドに向かうと……そこにはいつの間にか帰っていた神妙な顔持ちな山田先生がベッドに座っていた。
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ゴールドが部屋に戻って3、4分したら山田真耶も食事を終えて部屋に向かっていた。
(野上君は凄いですね。1日目でまだまだ荒いとはいえ飛行の速度制限までやれるとは。このまま行けば本当にすごい選手になるかもですね。いやいや言ったことに自信が無かった訳じゃありませんよ、本当ですよ! って私は誰に言い訳してるんやら)
そう考えながら私は部屋に戻った。静かな事からまだ風呂なのかな? と思い風呂場の方に行き、《ただいま》と言おうとしたが……その瞬間に息が止まった。なぜなら音は小さいが中で誰かが泣いてるからだ。誰が? 決まってる野上君だ。では何故? そう考えたら直ぐに分かった。
(野上君はこのIS学園に来てから疲れたーやキツイといった事は言ってきたが、1度たりとも泣いていないのだ。今日彼は《初日に織斑先生から自身の身の危険性について聞いた》と言った。ならその事についてちゃんと理解してなくても大なり小なり恐怖を感じていたのではないか? それを私に心配させまいと気を使わせたのではないか? そして今日訓練終わりに私は彼に再度自身の身の危険性について話した、話してしまった。それによって恐怖が明確となり、彼の心の許容を超えてしまったのでは? もしそうなら私はなんて事をしてしまったのだろう。彼を守らんとして放った言葉が逆に傷つけてしまっては本末転倒では無いか。いやそれよりも今考えるべきは彼の心のケアだ。そうと決まればやる事をやるんだ山田真耶)
そう考えていたら風呂の扉が開いた。やるべき事は分かっている。やり遂げるんだ山田真耶。
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いつの間にか山田先生が帰っていたようだ。なんか神妙な顔してるけど何かあったのかな?
「おかえりなさい山田先生」
「野上君……少し話したい事があるのでこちらへ座って下さりませんか?」
「? えぇ分かりましたけど話ですか?」
話ってなんだ? と思いつつもゴールドは山田先生の隣に座った。
「率直に言います。野上君、風呂場で泣いていましたよね?」
「?! い、いえなんの事言ってるんですか。何か水音と聞き間違えたのでは?」
「いいえ聞き間違いなんかじゃありません。私は少し前に部屋に戻って来たのですが風呂場からは泣き声以外にも怖いという声も聞こえました。それに少し目が腫れてます。これで泣いてないなんて判断はできません」
「、いやーお恥ずかしながら少し訓練がきついもんだったんで泣いてしまいましたよ。あれもう少し何とかなりませんかねぇ」
「それも嘘ですね、野上君。もしそれが本当なら怖いでは無くキツイやもう嫌だといった言葉が出てきます。野上君、本当は自分が置かれている状況に怖くて泣いたのではないのですか? なら何故私にそんな嘘を言うんですか、そんなにも私が頼りないせ_
「それは違います!」
咄嗟に言った言葉があまりにも大きく、言われた先生も言った俺自身ビックリしている。だけどそれだけは、その言葉だけはこの人に向けて言っていい言葉ではなかったから。たとえそれがこの人自身だとしても。
「なら、何故ですか。何故本当の事を言ってくれなかったんですか」
「これ以上俺は先生方の負担になりたくありません。国の意向によって俺はこの学園に来ました。ですがそんな俺を先生方は快く受け入れてくれました。山田先生なんか他に仕事もあるだろうに俺の春期講習に付き合ってくれてます。普通急に入れられた仕事なら愚痴ぐらい漏らしていいのに、そんな事を思わせない明るい笑顔をいつも俺に向けてくれました。こんなにも俺は先生方に迷惑を掛けているのにこれ以上なんて……申し訳ありません」
俺は心の内を先生に出した。これは俺の本心だ。こんな事言ってしまえば気まづくもなるかもしれないが、言わないといけないと思った。言わないと更に負担を掛けてしまうと思ったからだ。
「そうですか野上君の考えは分かりました……ですがそれがどうしたんですか」
「え?」
「負担? 迷惑? 私はそんな事を微塵に思ってません。何故なら先生にとって生徒というものは大切であり導く存在だからです。貴方もその1人だからです。生徒が勉強について困ってる、なら講習を組んで分からない所一緒に無くそう。ISが上手く操縦出来ない、ならアドバイスや訓練メニューを一緒に見直そう。生徒が悩んでいるのなら、それに真摯に向き合おう。先生とはそういうものなんです。先生にとっては生徒はそれ程までに大事なんです。ですからもう私に迷惑だとか、負担だとか思わずに相談してください。私の持てる力最大限でこたえてみせます」
そういうと山田先生は俺を優しく腕で包んでくれた。それが物凄く暖かくて、優しくて、俺はまたしても涙を流してしまった。だがこれは先程の涙とは違う。生きてきた中で1度も流してこなかった。温もりの中での涙だ。
俺はしばらく泣いたら連続で泣いて疲れたせいか、そのまま瞼を落として眠ってしまった。だが今日はいつもよりよく寝れる、そう思った。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
どうでしたか、ゴールド君の本心は。自分的にはちゃんと不安定にかけたと思ったんですが不自然でしょうか?そこが不安ですね。ですが孤児で国の横暴でいきなり学校も変えられて命の危険があると思ったらこのぐらいなのではと思います。これからゴールド君は山田先生に限らず色んな先生にも相談できるようになります。(相談描写は難しいので各々の妄想でお願いします。)
それではこれにて第6話終わりです。次回は恐らく授業だと思います。長かった(遠い目)
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