連邦軍人とフェイトくんの旅。   作:ばんどう

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89.最終決戦

「ぉをっ!」

 

 クリムゾンヘイトが描く、鋭い連斬。風を巻いて、空間ごとなぎ倒さんばかりの二閃は空を切り、ルシファーの髪を二、三本さらった。

 直後。耳元に殺気が迫り義手で受け止める。流し切れず右に引き倒された。耳元から脳を貫く衝撃波が全身を揺るがす。三、四回転がってアルベルが距離を取る。受け身も取れぬようなヘマはしないが、平衡感覚が数秒狂っていた。

 口の中に鉄の味が広がる。

 

「レプリカごときの技に敗れるお前のそれで、私が倒せると思うのか? アルベル」

 

「気安く呼ぶんじゃねえ! クソ虫が! アレンの顔で出てきたことを後悔させてやる!」

 

「フン。些末なことを」

 

 文字通り、見下してくるルシファーに向け、アルベルは強制的に頭を振って取り戻した感覚を元に、刀を握りこんだ。

 

「ほざけっ!」

 

 踏み込もうとしたそのとき、ルシファーが消えていた。羽。左右に膨らんだ羽がくちばしのごとく鋭く尖り、襲い掛かってくる。

 咄嗟の受け太刀。両腕で、流し切れない。

 アルベルが呻き、吹き飛ばされる。

 やはり敵の攻撃は避ける以外にどうしようもないのだ。

 

「アルベル!」

 

 地面を掻きながらどうにか着地する。マリアの声に、じっとしていろと心の中で舌打った。そのとき、急に頭上が明るく照らされた。紺碧の宇宙を模した開発ルームが、まるで昼を迎えたように、蒼く澄んでいったのだ。

 見上げると、癒しの女神が舞い降りていた。

 豊かな栗色の髪を波打たせた、白い肌の少女神。彼女はまるで太陽のような眩い光を放ち、傷ついて倒れた仲間たちを、雪のように白くて丸い魔力球をしんしんと降らせて、癒していく。

 

 ――上級回復呪紋、フェアリーライト。

 

 ソフィアか、と確認する間もなく、ルシファーの拳が腹に突き刺さった。驚きの間に身体がくの字に折れ、呼吸の塊を吐く。一瞬、意識が遠のいた。

 耳の奥で骨が砕ける嫌な音がした。

 

 

 

「っ。戦況は! 一体……」

 

 ここで目を覚ましたネルは、目の前でうずくまるナツメを不思議そうに見た。涙を流し、四つん這いの態勢から動く気配もないナツメ。

 その隣では壮絶な剣戟音が聞こえてくる。ネルがそちらを見やると

 

 創造主と一対一で斬り合う、アルベルが居た。

 

 獣のような吼え声をあげ、血がばら撒かれているのも構わずに、雷のようなルシファーの槍撃を受け、流し、切り返し、斬り合うアルベル。そのすぐ直前に癒えたはずの額からはまた血が流れ、浅くない傷が全身に刻まれていく。明らかに立てる傷ではないものが高速につけられていく。それでも彼は退かない。急所を避け、刃傷に眼もくれず、刀を返す。

 刀と槍の応酬。

 

 蒼い光がアルベルにも注がれた。

 

 ヒーリング。

 またもソフィアの援護だ。

 

 アルベルの吼え声が一際大きくなった。クリムゾンヘイトに溜まっていく気。

 

 そのとき、ルシファーの槍が大きく空を斬った。風切り音。紙一重で躱したアルベルが、歯を食いしばりながらクリムゾンヘイトを握り込む。

 

(あれはアルフの――っ!)

 

 見切り。

 ネルが息を呑む間に、アルベルの足許が弾けた。

 

「くたばれぇっ!」

 

 アルベルの剣尖に宿る、疾風を巻いた強烈な突き。

 だが。

 完璧なタイミングで放たれたその刀は、あっさりと身をひるがえした神の槍に止められてしまった。

 

「……ちぃッ!」

 

 カウンターを取ってなお、ルシファーには隙がない。いつの間にか自分の正面にある眼を、アルベルは睨み据える。

 

(こいつに半端な攻撃は通じねぇ。だが、俺の吼竜破じゃ隙がデカ過ぎる!)

 

 地道に斬り合うしかない。たとえ分が悪くとも、アルベルが食らいつける分野はそこにしかないのだ。そう感じ、アルベルがラッシュで攻める。

 アルベルの剣のスピード、キレはアレン、アルフにも匹敵する。惜しむらくはそこに、強力な一撃がないことだ。アレンの袈裟がけ、アルフの無音の剣のような――打てば必ず勝てる斬撃が、アルベルにはない。

 その差がじりじりとアルベルを追い詰めていく。ヒーリングの援護を受けても。

 

 剣と槍がぶつかった瞬間、ルシファーは触手でアルベルの腕をつかむと顔面に足刀蹴りを浴びせた。

 

「ゴフッ!」

 

 飛ばされながらも、左手の鉄爪に赤黒い雷を生じさせ、追撃を防ぐため気功掌を放つ。視界の端でちらちらと虫のようなものが飛び回っていた。

 マリアのレディエーション・デバイスだ。

 だがルシファーは見向きもせずにユニットから放たれる光弾を弾き返している。

 

「破ぁあ!」

 

 アルベルが、鉄爪に溜めた気弾を放った。人の上半身を軽く呑みこむ強力な気弾。

 それを右手でつかみ取り、握りつぶすルシファー。

 その様を見て、アルベルが吐き捨てた。

 

「化け物がっ!」

 

「力の差を思い知るがいい」

 

 槍を下ろしたルシファーが、羽を一閃させてレディエーション・デバイスのユニットすべてを叩き切る。そしてことさらに、靴音を響かせてアルベルの方に歩いてきた。

 

「ぁ、ぁ……。そんな……こんなの、力が違いすぎる……!」

 

「まるで私たちを寄せ付けてない……。でも」

 

 息を呑むソフィアとマリアを尻目に、ルシファーが冷ややかな視線をアルベルに下ろしてくる。アルベルは自分がいまどのような顔をしているのか分からないが、心の裡は読みやすいらしい。

 

「ようやく、お前も理解できたようだな。このままでは、どうあっても私には敵わないと」

 

「黙れっ」

 

 ルシファーの言葉を掻き消さんとアルベルが打ち込む。銃声。光弾と刀がルシファーに上体逸らし(スイング)で躱され、槍を打ち返される。さらに発砲するマリア。ぶつかる光弾とルシファーの槍。だが、びくともしない薙ぎの衝撃波で、アルベルの痩身が容赦なく吹き飛ばされた。

 轟音。

 ルシファーの左手に蒼い紋章陣が宿る。

 と。

 急速に物質が結晶化していく音を立てて、アルベルの全身が紋章のなかに閉じ込められた。螺旋の塔にも浮遊している、紫色の結晶体だ。

 

「ぐあっ!」

 

 それは、アルベルの身体を締め付け、中空に固定する。

 

「アルベルっ!」

 

「アルベルさんっ!」

 

 マリアとソフィアが鋭く叫ぶ。

 ネルとロジャーも何事か叫んでルシファーに攻撃していた。だが、振り向きもせずに羽ですべて防がれる。

 ルシファーはアルベルを見、言った。

 

「どうせなら、レプリカの技で葬ってやろう」

 

「ぐ、ぉおお……!」

 

 足掻くアルベルの前に、金色の巨大な朱雀が現れた。――まごうことなき、アレンの朱雀だ。

 

「馬鹿なっ!?」

 

 ブレアが息を呑む。

 『エターナルスフィアで、こんなことが起きるはずがない』。

 システムの規格を完全に超える究極の一撃。そんなものが、たとえ開発者のルシファーであろうと放てるはずがない。

 意図的に作ったバグとしか言いようがなかった。

 

(意図的……?)

 

 ブレアが思考している間に、ルシファーが槍を上段に構える。

 

「さらばだ、アルベル」

 

 振り下ろす槍の矛先が弧を描き、金色に輝く斬線から朱雀と龍が鋭く吼えた。

 競合し、やがてひとつの巨大な金龍と化したそれが、フィールド全体を舐め溶かすように走る。その片鱗に触れるだけで、この場にあるすべてのものが例外なく消し去られるのだ。

 

「おぉっ!」

 

 アルベルの裡にある気が、一気に爆発した。間一髪、結晶を引きちぎって、紙一重で着地。ブレアの鋭い声が響いた。

 

「踏んでっ!」

 

 足許に白い紋章陣。咄嗟にアルベルが蹴りつける。見れば、他の皆も同じように白い紋章陣を踏みつけていた。

 

 金龍が、開発ルームを呑みこんで駆けていく。

 

 中空に浮いたルシファーは、眉を顰め、消し飛んだ床がゆっくりと再生するに従って姿を現した――アルベルたちを見下ろした。

 

「……意外にしぶとい」

 

 ブレアが放った白い紋章陣はテレポート。

 代弁者たちが使うムービングバグをエターナルスフィアの紋章にあてはめ、即席で発現させたものだ。

 中空に浮かんだモニターを叩くブレアの隣には、このテレポートを成功させた最大の功労者、ソフィアが立っていた。

 だが。

 

「くっ」

 

 金龍が走る軌道上に居たアルベルは、龍が起こす衝撃波だけで全身、立っても居られないほどにぼろぼろだった。

 ソフィアが初めての紋章で疲弊し、冷や汗を拭うその傍で、ネルが引きつった表情で鋭くヒーリングをアルベルにかける。

 しかしヒーリングを受けても、アルベルの息切れだけはどうにもならなくなっていた。

 

「弱っているようだな」

 

「ちぃっ!」

 

 悠然と構えるルシファーを見失う前に、双破斬で踏み込む。サイドステップで躱され、背中に強烈な肘打ちを叩き込まれた。轟音。透明な床が音を立ててひび割れ、クレーター状に凹んだ。その下を通る黄金の紋章陣のような金属片がばらばらと砕けて散り、アルベルの身体が、まるで瓦礫に沈みこんだようになった。立ち上る土煙。

 スモーク状の白い膜が、開発ルームの一帯を薄く曇らせる。

 

 

「破ぁあっ!」

 

 

 その瓦礫に埋もれる中で、アルベルは気功掌を放った。視界が煙で悪くなっており、アルベルの位置が分かりづらいために通常より躱しづらい。

 だが、煙の中で乱反射して飛んでくる気弾を、ルシファーは槍を一閃、広大に発生させた衝撃波ではじき返す。

 いや。

 上空から見てルシファーを起点に螺旋状に走った衝撃波から、空破斬のように直線的に走る風があった。

 紫色の衝撃波。

 ルシファーは狙って放っている。

 

「!」

 

 スモークで視界が利かないのはアルベルも同じだった。だが、これほど正確に場所を割り当てられたことに驚く間に、衝撃波がアルベルの右肩から左わき腹を深々と斬り刻む。

 呻くアルベル。

 その頃に、スモークが晴れてきていた。足音もなく忍び寄ったルシファーが、胸を抑えて動かないアルベルの傍で槍を掲げて

 

「絶望に打ちひしがれるがいい」

 

 消滅の槍――赤黒い雷をまとった、あの凶悪な矛先を振り下ろした。

 

 

「させないっ!」

 

「負けないでっ!」

 

 眩い光の盾が、ルシファーの槍を押し止める。甲高い音。そして、白い光――アルティネイションとコネクションだ。

 二つの特殊紋章が紡ぎだす壮絶な輝きが重なり、アルベルに降り注いでいく。

 

「むっ!?」

 

 その途端、アルベルの黒髪が揺らめいた。全身から煙のように立ち上っていく、アルベルの気功。急激に、急速に収縮していく気の塊。

 クリムゾンヘイトの刃が金色に輝くと、アルベルはそれを水平に構えて、

 

「破ぁああっ!」

 

 体の裡に流れ込んでくる強烈な紋章力を、解き放った。

 どぅっと鈍く風が同心円状に吹き荒れる。アルベルから発せられる白い煙が、徐々に色を成していき――金色に、焔の粉になって地面に散っていく。

 アルベルを中心に竜巻が起こった。クリムゾンヘイトが壮絶に、金色に輝いている。

 活人剣。

 身体能力を爆発的に押し上げる内気功だが、これは少し――常軌を逸していた。ルシファーが思わず、息を呑む。

 

「なんだと……っ!? アルベルに龍気は扱えないはず。なのに、なぜ」

 

 エターナルスフィアを創ったルシファーだけが知る、気功と紋章力の源泉となる力――龍気。

 その金色の光が、アルベルの全身から溢れている。揺らめくアルベルの黒髪。金色の光に照らされた肌が白く輝き、長い前髪の奥で唸る赤瞳が、まっすぐにルシファーを向いている。

 ルシファーは数秒の思考のあと、マリアとソフィアを見て、つぶやいた。

 

「――なるほど。足りない部分を補うのか、貴様らの紋章が」

 

「もう二度と、二度と貴方の好きにはさせないっ! 誰も消させたりなんかしないっ!」

 

 マリアのきつい眼差しの中に、わずかな涙が散っていた。

 ソフィアも追い詰められ、引きつったような顔で大きく頷いている。

 ――先にアルフが消える姿を見て、二人の特殊紋章が感情にリンクし、跳ね上がっているのだ。

 ルシファーはアルベルに視線を戻し、言った。

 

「まあいい。所詮は一時しのぎ。多少龍気を操ったところで、わずかに苦しむ時間が延びるだけだ」

 

 ルシファーの掌から、エリミートライフルのような光線が走る。

 クリフをして手も足も出ぬままに戦闘不能にした、あの強烈なレーザー弾だ。

 眩く三つ。

 二発躱したアルベルが、三発目をまともに腹に受けて吹き飛ぶ。

 たとえ特殊紋章による強化と活人剣を使えど、龍気はルシファーも扱える代物。相手など油断しなければ、そう簡単に埋められる実力差ではない。

 

「とはいえ、貴様らの能力をそのまま置いておくわけにはいかん。先に消えてもらうぞ」

 

 赤黒い雷をまとわせた消滅の槍を、マリアとソフィアに向ける。

 腹を抱えたアルベルが、目を瞠った。

 

(しまっ――!)

 

 引きつるソフィアと銃を打ちまくるマリア

 消滅の槍が振り落ち、赤黒い雷をまとった衝撃波が駆けた。

 そのときだ。

 衝撃波と交差するように――開発ルームの入り口、巨大な扉の方から走った野太い光の光線が、ルシファーの攻撃を遮った。

 

「!」

 

 目を丸くするルシファー。

 

「これは……!」

 

「フェイト!」

 

 嬉しそうにふり返るソフィアとマリア。

 アルベルも唸りながら、身を起こした。

 天まで届きそうな分厚い扉の向こうから、煙を上げるヴェインスレイを振り下ろした態勢のフェイトと、ガントレットを弾き合わせるクリフを。

 

「どうやら、こっちもずいぶん苦戦してるみたいだな」

 

 と苦笑するようにクリフ。

 フェイトはいつになく無表情に、ルシファーに問いかけた。

 

「……アルフをどうした」

 

 低く、淡々と。

 ルシファーをまっすぐに見据えながら。

 

「意外に早い到着だな。貴様らが来る前に、こいつらを始末する予定だったが……少々見くびっていたか」

 

「アルフをどうしたって聞いてんだ」

 

 チリッと空気が焦げるような音がした。

 ルシファーが鼻を鳴らした。

 

「――分かり切ったことを。管理に不都合なデータは、すべて消去する。例外はない」

 

「お前……っ!」

 

「レプリカを倒した程度で、いい気になるな」

 

 フェイトの眼が見開かれる。左手が震えるほど、固くヴェインスレイを握りこんだフェイトは、歯を食いしばったまま――ブレアを見ずに、言った。

 

 

「……ごめん、ブレアさん」

 

「え?」

 

「約束、守れそうにない」

 

「フェイト、くん……?」

 

 不思議そうなブレアを置いて、フェイトはヴェインスレイをまっすぐに掲げると、怒りに満ちた低い声音で吼えた。

 

 

「ルシファー! 僕はお前を許さないっ! アレンだけでなくアルフまでやりやがって……!」

 

「っ!」

 

 うずくまっていたナツメが、眼を見開いた。

 他の皆の表情も、凍りつく。

 時間が止まったかのような静けさの中で、ルシファーが槍を向け返した。

 

「馬鹿なことを! 仲間の消滅を嘆く必要も、怒りに狂う意味もお前たちにはない。お前たちはここで消え去るのだ! フェイトよ!」

 

「ルシファぁああ!」

 

 

 上段に構えたフェイトが、イセリアルブラストを放つ。野太い光線。昼のように明るくなる光の中から、天使の羽根がぱらぱらと舞い散る。

 ルシファーは半身切って回避していた。まだ照射されているイセリアルブラスト。だが、フェイトはダッシュで距離を詰めている。光線を撃っているのは、いつもフェイトの頭上に現れた幼い女神。

 それに目を丸くしたルシファーの背後に、フェイトがブレードリアクターを叩き込む。直撃し、後ろに弾き飛んだルシファー。彼の着地際に突進するフェイト。距離、五メートルほど。

 ルシファーは対して効いた風もなく背中の羽を床に突き刺した。途端。突進するフェイトの顎に、床から剣山のごとく生えた羽が直撃。後ろにのけぞった。――かつて執行者が使っていた、あの棘のような技だ。

 歯を食いしばってもう一歩踏み出しかけて、フェイトは後ろに下がった。さらに床から追い立ててくるルシファーの羽。

フェイトはバック転で躱しながら、下がっていく。

 それを悠然と見据え、ルシファーは槍に気を高めた。

 

「破っ!」

 

 一閃。振りおろしとともに放たれた吼竜破が、バック転で逃れていたフェイトを直撃し、フェイトが低く呻く。

 が。

 次の瞬間にはルシファーの背後に現れていた。――ストレイヤー・ヴォイド。テレポートはルシファーだけの特権ではない。

 すかさず放たれたリフレクトストライフを脇腹に受け、ルシファーの身体が後ろに跳ねた。

 にやりと笑うフェイト。

 だが、想像以上の派手なルシファーの後退は、助走に過ぎなかった。地面を蹴るや、ツバメのごとく向きを変え猛スピードで――まだ蹴りの態勢で宙に浮いているフェイトに、鋭い肘打ちを放ってくる。胸を直撃した。

 呻くフェイト。

 さらに振りかぶられる槍を、横から割り入ってきたアルベルが止める。

 

「うぉおおおっ!」

 

 高速に剣を交わし合うルシファーとアルベル。

 金色の気が散り、若干に押し負けるものの、そこにはアルベルの、相手に食らいつく激しい気性が拮抗を作っている。

 

「弾けろっ!」

 

 さらにフェイトがショットガンボルトをアルベルの反対側から乱発した。舌打ちするルシファー。鬱陶しそうに背中の羽を広げ、上段に構えた槍とともにフェイトとアルベルをなぎ倒す。

 ――だが。

 そのとき、アルベルとフェイトの足許にはブレアの作る白い転送紋章陣があった。

 空を掻くルシファーの槍と羽。

 

「いまだぁあっ!」

 

「ぉおおおっ!」

 

 フェイトとアルベルは鋭く叫ぶと、イセリアルブラストと吼竜破を相手に向けて叩き込んだ。

 

 光、風、轟音。

 

 そして朦々たる煙が立ち込めた。

 フェイトは口端をつり上げた。確かにその目で、イセリアルブラストと吼竜破が直撃するさまを捉えたためだ。

 

「どうだ! これで少しは――」

 

 言いかけて、フェイトは息を呑んだ。

 

「無傷かよ……」

 

 アルベルの絶望的な声。

 ルシファーは槍とともに振った羽とは対になる方の羽で、イセリアルブラストと吼竜破を受け止めていたのだ。その絶対防御の固さは、かつていかなる物理攻撃をも無効化させたメタトロンという邪悪なる十賢者を思わせる。

 

 一方のフェイトとアルベルは、ルシファーとの攻防でぼろぼろだ。

 仲間から、ヒーリングやグロース、プロテクションの支援を受けるものの、そう無尽蔵に戦っていられるわけでもない。

 アルベルが、忌々しげに舌打った。

 

「化け物が。こっちは体力が減ってるってのに、向こうがああも涼しい顔をしてやがるとは……!」

 

「Gutsだ、アルベルっ! ここでへこたれてる場合じゃあないっ」

 

「阿呆がっ! 誰にモノを言ってやがる! 青髪風情が調子に乗るんじゃねえっ!」

 

「――な、んだとぅっ!?」

 

 一瞬、驚いたように目を丸くしたフェイトが、意図的に口を歪めて軽く言い放った。だが眼だけが鋭い。

 頭は平常通り働いていても、心はいつもより激しく燃えているのだ。

 

「馬鹿やってんじゃないよっ、アンタたちっ!」

 

「ったく。アイツの顔が顔だけにどうしようもねえな……この状況は」

 

「言ってる場合、クリフ? 少なくとも、ルシファーのあの消滅の力を防ぐには、私とソフィアの紋章を完成させるための時間が必要なの。稼げる?」

 

 横目に皆を見るマリアに、ロジャーが張り切ってぴょんとひとつ、飛び跳ねた。

 

「おぅ、任せとけ! マリア姉ちゃん!」

 

「アタシたちじゃ、時間稼ぎも難しいだろうけど、フェイトたちの援護くらいはやってみせるさ」

 

「お願いします。あと少し、紋章構成の最後のところを完成させれば、フェイトたちの力になれるはずですから」

 

「頼んだぜ、マリア、ソフィア」

 

 クリフの言葉に、マリアとソフィアが鋭く頷いた。

 アルベルがクリフたちに向けて言う。

 

「半端な覚悟で挑むんじゃねえぞ、阿呆ども。奴はマジで強ぇ。俺とフェイトである程度、奴の足を止めてやる」

 

「皆っ! 援護を頼む!」

 

「おうっ!」

 

 フェイトの鋭い指示に、クリフたちが勢い良く応えた。

 

 それからはナツメを除いた全員で戦った。さすがの連携、フェイトとアルベルのコンビネーションを中心にした猛攻でルシファーに一撃で倒されることはなくなったものの、一行はいまだ劣勢をはねのけられない。

 そうして、しばらく。

 ミラージュたちが、ついに到着した。

 

「お待たせしました、みなさん」

 

「大丈夫だったっ!? フェイトちゃん、ソフィアちゃん、皆っ!」

 

「おぉっ、やっとるやっとる! 久しぶりの戦場で、血がたぎるわいっ!」

 

 ミラージュの後ろでスフレがケープを弾ませ、アドレーがカランコロンと下駄を鳴り響かせながらやってくる。

 さらにそこには、ムーンベースでエクスキューショナーとアンインストーラーの解析を行っていたロキシとリオナ、エリクールで施術兵器開発部の長に就いていたエレナまでもが、一緒だった。

 

「どうやら、戦況は思わしくないようだな」

 

「ですが、一応間に合ったようです。――アンカース、お前、そんなところでなにを」

 

 言いかけたリオナは、刀を抱いてすすり泣いているナツメを見て言葉を失った。

 視線を左右に振る。

 ――ここに居るはずの連邦軍人が、どちらもいない。

 そんな嫌な予感に、表情を凍らせながら。

 

「ともかく、いまなら間に合いそうね」

 

「うむ」

 

 眼鏡を押し上げながら、ロキシがエレナの言葉にうなずいた。

 ブレアがこれ以上ないほど眼を瞠る。

 

「エレナっ!? そんな、まさかっ!」

 

「お久しぶりね、ブレア。そして――ルシファーくん」

 

 微笑み混じりに視線をランドベルド兄妹に向けると、二人は似たような表情で固まっていた。

 ルシファーがわずかに、槍を下ろす。

 

「……まさか、こんなところで会うとはな。エレナ。不幸中の幸い、と言うべきなのか」

 

「勘違いしないで。私は、FD世界に戻る気はないわ」

 

「なにを言っている。お前がいるべき現実世界は、こちら側だ」

 

「いいえ。――私にとってはエターナルスフィアこそが、私が傷ついてでも生きていくための場所、現実。だからこうして彼らとともに来た」

 

「馬鹿を言うな! お前もブレア同様、プログラムの危険性を理解していないというのか!?」

 

 鋭いルシファーの叱責に、エレナは首を横に振った。

 

「そんなことはないわ。少なくとも、エターナルスフィアのことはあなたより、もっと肌身で感じてるつもり。……それに、FD世界とこちら側が交流なんか始めたら、喰われるのは間違いなくFDだとも思ってる」

 

「ならばなぜ私と敵対する。自らが生まれた世界を、現実を、お前はその手で破壊するというのか」

 

 ルシファーの瞳に、わずかに殺気が宿る。

 相変わらず、覚悟を決めた眼。ブレアと同じ選択肢を取るならば、この手にかけることをも視野に入れた、冷徹で強固な意志の光。

 エレナはそれを正面から見返して、口許を緩めた。

 

「そうね。あなたには、壊すことしかできないかも」

 

「……なに?」

 

「私は見つけたわ。エターナルスフィアとFD、この二つの世界を両立させる術。あなたが生んだ、自我の可能性によってね」

 

 エレナはゆったりとした着物の袖から、――いまの彼女の服装には似合わない、艶やかな長方形の機械を取り出した。フォルムはごつごつとしているが、一センチ厚くらいの薄いものだ。

 それを見たかつての製作者、ブレアが目を丸くした。

 

「それは……! 私が創った、アンインストーラー!?」

 

「そう。それをこちらの都合のいいように書き換えたものよ。プログラミングなんて久しぶりのことだから、ずいぶん苦労しちゃった」

 

 エレナが気恥ずかしそうに舌を出す。

 フェイトたちも要領を得ず、成り行きを見守っていた。ロキシがあとに続く。

 

「つまり、エレナ女史とリオナくんの助力を受けて、このプログラムにお前たち、フェイト、ソフィア、そしてトレイター嬢の、三つの特殊紋章を流し込めば、FD世界とこちらを繋ぐゲートをすべて消滅させられることが発覚したのだ」

 

「そして二つの世界の繋がりを完全に断つことで、互いに干渉できない、独立した存在にさせるって寸法よ。ただしこれの起動場所はFD世界でもエターナルスフィアでもない。ルシファーくん。キミのマザーコンピュータじゃないとダメってこと」

 

 ルシファーの背にあるパイプオルガンのような機械を見上げて、エレナが言い放った。

 ソフィアたちの表情が明るくなる。

 

「それじゃあ……!」

 

「私たちの世界が、消えずに済むんですね!」

 

 息を呑むマリアと声を弾ませるソフィア。彼女たちに向けて、エレナは軽くウインクした。

 

「つまりは、そういうこと」

 

「……馬鹿を言うな。そんなこと、認められるわけがない」

 

 ルシファーがわずかに目を細めて吐き捨てる。

 

 

「なんだと?」

 

「テメエ、まだ不服でもあんのか!」

 

「わがままも大概にしろってんだ! 父ちゃんに言いつけるぞ!」

 

 アルベル、クリフ、ロジャーが己の得物を手に臨戦態勢に入る。

 それをエレナが掌で制して、なかば苦笑しながら額をぺしりと叩いた。

 

「……さすがに。そういうとこ、気付くのが早いわね……。そのまま見逃してくれれば最高だったのに」

 

「どういうことです?」

 

 フェイトの問いに、エレナは肩をすくめるだけだった。 

 

「ちょっと、ね」

 

「戯言はそこまでにしておけ、エレナ。それほど複雑なプログラム、完全に操れる者はお前しかいまい。だが今のお前がそんなことをすれば、お前は老いることも死ぬこともないままにエターナルスフィアをさまよう存在となる!」

 

「!」

 

 フェイトが眼を瞠る後ろで、ソフィアが口許に手を当てて「そんな……っ」とつぶやいた。

 一同の視線がエレナに集中する。

 エレナはしばらく俯いたあと、小さく微笑った。

 

「……ありがと、ルシファーくん。たぶんFD人でそう言ってくれるのは、キミだけよ。私を忘れないでいてくれる、唯一の元の世界の人」

 

「寝惚けたことを言っている場合か! 私はエターナルスフィアの存在のために、現実世界の人間を見殺しにするわけにはいかん!

 エレナ。これ以上、お前の話を聞くつもりなどないっ!」

 

「うん。分かってる。

 でもね。特になんの感情もない、快楽を貪るだけだった空っぽの私が、こんなにも誰かに消えてほしくないと願えたのは、執行者たちに周りをめちゃくちゃにされてあんなに悔しかったのは――彼らがいたからよ。キミが創ってくれた世界に居られたから。

 だから私は、彼らとともに行く。たとえ終わりのない、果てのない道でも」

 

「お前が視たもの、感じたものは、すべてただの虚構に過ぎぬのだ!」

 

「それでもいいの、ルシファーくん。たとえ虚構でも、私はそこでいろんなものを得た。

 だからキミが相手でも、絶対にエターナルスフィアを壊させはしない。

 私のこの怒りは、私だけのもの。そして私は、彼らとともに生きると決めた。彼らには温かい心がある。FDにはない熱い思いがあるっ! これだけは否定させない。この心だけはあの世界で得られる、私たちだけのもの」

 

 その言葉に一瞬、ルシファーの表情が激しく歪んだ。

 

「貴、様……っ!」

 

「……エレナ。本気なの」

 

「もちろんよ、ブレア。最後に、あなたたちに会えてよかった」

 

「認められるものか……! 俺は、俺はそんなつもりでエターナルスフィアを創ったのではないっ!」

 

 エレナは少し、哀しそうに微笑った。

 

「――ごめんね」

 

 FD人で唯一、自我に目覚めたエレナは、初めてルシファーの苦悩を理解した。だが、ルシファーが生んだ虚構――エターナルスフィアのために、彼と共に歩む道は選ばない。

 

 エターナルスフィアで生まれた個性のために、彼女は自ら考え、エターナルスフィア存続の礎となる決意を固めたのだ。――二つの世界の干渉を、完全に断ち切るために。

 たった一人、個性を持ったFD人は、現実世界には戻らない。

 

「聞けぬ! 聞けぬ聞けぬッ! 以前のように消息が分からないままならともかく、ここでお前を見殺しにするわけにはいかんっ! たとえお前が望まぬとも、その仮初の肉体から精神を引き抜き現実世界の肉体に還すまで、お前を捨てるわけにはいかん!

 異論など、認めてなるものかっ!」

 

「……その言葉、もっと早く欲しかったな。私はね、もう私のことなんかどうなってもいいと思えるほど、エターナルスフィアを好きになってしまったの。

 私のこの身一つで助かるのなら、安いものよ。エターナルスフィアを壊させたりなんかしない。絶対に。そのために編んだプログラム。私はこれを起動させる。私の意志で」

 

「大言をっ! だがお前の願いは成就しない。俺は、この装置をお前たちには使わせん! 虚構に囚われ、(ほだ)されるなど……っ! そんなことのために命を投げ捨てるなど、認られるものか!」

 

「力づくで来い、というわけね。――フェイトくん」

 

 エレナの言葉に、フェイトは視線だけを返した。自分たちの世界のためとはいえ、これから世界に、自らの意志で捕らわれようとしているエレナに、視線で「本当にいいのか」と尋ねたのだ。

 エレナは小さく微笑んで、力強く頷いてくる。

 ならばフェイトも頷き返し、ヴェインスレイをその手に握った。

 

「やっぱり、ここまで来ると拳でやり合うしかねえってか!」

 

「ルシファー。どうあってもその装置、使わせてもらうぞっ!」

 

「ほざけぇっ!」

 

 ルシファーの羽が大きく左右に広がる。上空に飛ぶルシファー。その全身から黄金の焔が吹き荒れ、それが――羽にも伝わって巨人の手のようだった黒い触手が、金色の焔の翼に、朱雀の羽へと変化していく。

 ルシファーは地上にいるフェイトたちを見下ろしながら、言い放った。

 

 

「我が最強のプログラム、受けるがいい!」

 

「な、なんだっ!?」

 

 クリフの息を呑む声。

 開発ルームを揺るがさんばかりの朱雀の鳴き声が轟き、ルシファーが掲げた槍の矛先と、左右の焔の翼に、朱雀吼竜破の龍気を凝縮させた光の球が浮かび上がってくる。

 

「あんなもの――撃たれたら!」

 

「きゃあぁっ!」

 

 皆の顔色が蒼くなる中、突風にソフィアが悲鳴を上げた。

 ルシファーが浮かべた三つの光球が、見る間に大きく膨らんでいく。

 静寂に満ちているはずの宇宙――特殊空間全体に、金色の雷花がのたうち始めた。

 

「聞こえるだろう? 地獄の扉が開く音が!」

 

 

「まずい! こんなのっ――!」

 

「みんな! ルシファーくんを!」

 

 ブレアとエレナの悲鳴に近い声。

 フェイトは腹の底から吼え、額に浮かぶ破壊の紋章陣を――そのすべてを、アレンを破ったあの究極のイセリアルブラストを思い浮かべながら、放つ。そして後ろで彼と同じく己に放てる、最強技を準備している皆に向けて言い放った。

 

「行くぞぉお!」

 

 九人の勇者が、それぞれ応える。

 リオナが息を呑み、ロキシが渋い顔ながらも拳を握って見つめている。

 そして上空のルシファー。強大に膨らんだ三つの朱雀吼竜破の原型――光の球が、空一面をそれぞれ覆うような巨大な龍の顔に変貌する。巨大な龍の面が三つ、のしかかってくるような圧迫感。鋭く吼え下ろしてくると、壮絶な音による頭上からの威圧にびりびりと全身がこわばり、震えた。

 そしてついに、ルシファーが頭上に掲げた槍を中心に、その三つの金龍を

 

「消えろ!」

 

 振り下ろした。

 対してフェイトたちが――十人の力を一つにして、ルシファーを真っ向から迎え撃つ。

 光が乱反射を起こし、視界全てを白く染めるように鋭く弾けた。

 遠くで落雷が起きたような、低く長い爆音が響いていく。

 息を呑むフェイトたち。

 あまりの爆風、あまりの轟音、あまりに腕にのしかかってくるルシファーの技の重さに、あちらこちらで悲鳴が沸き起こる。

 

 それでも、

 マリアは蜂のようなユニットを通常の倍――八つ呼び起こして野太い光線、バーストエミッションを銃を両手で持ってぶれることなく打ち続け、

 

 ソフィアは特殊空間の宇宙(そら)から、無数の隕石の雨をルシファー目がけて降らせ、

 

 クリフとミラージュは、いままで研鑽に研鑽を重ねた気功術の奥義――マックスエクステンションを互いに支え合うように同時に放ち、

 

 ネルは己の持てる施力のすべて、それを光線状に束ねた封神醒雷破を、アルベルは十二体の龍をついに一つに重ね合わせ、龍気を見事に使いこなした黄金の吼竜破を雄々しい叫び声とともに、ロジャーは宇宙のどこかから呼び出した謎の物体を、まるで雪崩のように降らせるスターフォールを、ルシファー目がけて全力で打ち付ける。

 

 スフレとアドレーは後方支援だ。味方の攻撃力を跳ね上げる光の舞、シャイニングダンスを踊るスフレの傍らで、アドレーがグロースを筆頭に、ルシファーや他の皆が生む激しい衝撃波の反動を補助施術で和らげ、皆をサポートしていく。

 

 そしてフェイトが、両足を広げ、イセリアルブラストを限界の限界まで高めて、放った。

 

「う、ぉおおおおお!」

 

 ――それでも、まだ。

 それでもまだ、ルシファーの三連朱雀吼竜破に押されている。

 フェイトたちの顔が歪んだ。

 そこで、リオナも微力ながら紋章術での加勢をする。エレナは攻撃呪紋を覚えていない。

 だから残るは――

 

「アンカース!」

 

 うずくまっているナツメに、リオナが鋭く声をかける。

 フェイトもまた、最前線でイセリアルブラストを放ちながら、言い放った。

 

「甘えんな! ナツメ!」

 

「っ!」

 

 ナツメの顔が、わずかに上がる。

 

「お前の兄貴たちは、死ぬその寸前まで意地を通して戦ったんだ! その意志を継がなきゃならないお前が、そんな様でどうするんだっ!」

 

「ぅ、ぅぅ……っ!」

 

「お前が抱いてるその刀は、嘆きを受け止めるためにあるものじゃないっ! いつだって自分の力を信じて、自分が望んだ明日を迎えるために戦ってきた、強い奴らの魂を継いだ剣だ!」

 

 ――ナツメよ。

 ――ナツメ。

 

 フェイトに続いて、ナツメの左右の肩に宿った双頭竜が、声をかけてくる。

 ナツメの涙は止まらない。震える身体は、絶望から一歩も立ち直ってはいない。

 それでも――

 

 

「戦え! ナツメ!」

 

 

 フェイトの言葉に、ナツメの瞳に意志の光が宿った。

 

「ぅ、ぅう、うぁああああああ……!」

 

 ――行くぞ、ウルルン。

 ――誰に向かって言ってやがる!

 

 ナツメに合わせ、双頭竜が雄々しく啼く。

 フェイトたち全員の技がすべて凝縮されたその光の矢の中に、幼い紋章剣士の奥義も加わった。

 伝説の双頭竜――ギョロとウルルンの援護を受けてついに、ルシファーの三連朱雀と拮抗し始める。

 

「……」

 

 そのときだった。

 ルシファーの力が、不意に弱まったのだ。

 

「いまだぁっ!」

 

 フェイトが眼を見開くと同時、皆の心が一つになって――ついに、創造主ルシファーの技を、金色の三つの朱雀吼竜破を、彼の仮初の肉体を、光の彼方へと押しやっていった。

 

 

「ぐ、ぉおおああっ! 何かが、決定的に間違っている……っ、データなんだ……。相手はただの……! ぐぉおおおお……っ!」

 

 

 開発ルームの広大な空間に、ルシファーの悲鳴が響き渡った。

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