――フェイト君達のおかげで、こちらは大丈夫よ! ヴィータちゃん!!
シャマルから通信をもらうや否や、ヴィータは小さく頷いた。グラーフアイゼンを薙ぎ、小型のⅠ型ガジェットを粉砕する。有人操作に切り替わったようなガジェットの動きは鋭く、手こずりはしたものの、一機ずつ集中すれば、ヴィータの敵ではない。
――少なくとも、ガジェットの方
「ヘッ、やるじゃねえか! つう事は、後はアタシ達とアトロシャスの所だけだな!!」
ティアナとスバル、エリオとキャロの所も、今し方ガジェットと召喚獣の殲滅に成功したとの通信があった。横目に
「さっさと、片づけてやる……と言いたいところだが、手ごわいんだよね。この甲冑」
誇張でも何でもなく、黒騎士は強敵だった。一体の実力は、
コンビネーションに、隙が無い。
ヴィータは口端をつり上げた。
「こんな時こそ、アタシに見せた意地の張り時だろうが!」
「――いいだろう、NO FAN,NO SO!!」
「その意気だ!!」
黒騎士が周囲からフェイトとヴィータに襲いかかってきた。ヴィータとフェイトは同時に上に跳躍し、騎士達の一撃をやり過ごした後、頭上から鉄パイプとハンマーを振り下ろす。
ギィンッ!
紙一重の所で剣にて捌かれる。
「ぬな!? 僕のエリアルが!?」
「コイツ等!!」
二人は同時に着地する。敵は徐々に、こちらの動きを覚え始めていた。まるで百戦を生き延びた猛者の如く、見る間に動きが洗練されて行く。黒騎士の一体はヴィータのハンマーを受け止めると、別の一体が上段から剣を振り下ろしてきた。
「クッ!!」
ヴィータは咄嗟にアイゼンの柄を頭上に構え、止める。
が。
(――な……!?)
ヴィータは目を見開いた。完全に受け止めた黒騎士の剣。なのに、黒騎士はヴィータの胴を
斬っ!
「、くそっ!」
腹から流れる血を握りしめて、ヴィータが毒づく。
「――!?」
「チ、アタシとした事が……!」
ヴィータは止血不能と見るや、流れる血をそのままに騎士の追撃を迎え撃とうとグラーフアイゼンを握りしめる。だが、騎士の一撃が放たれるより先に、凄まじい
ドゴォ――ッ!
轟音を立てて、黒騎士が地面に転がる。
「……フェイト!」
ヴィータはぽかんと目を丸めた。吹き飛ばされた黒騎士は、あまりの衝撃にしばらくの間、動けない。
目許に影を落とした
「ヒーリング!」
蒼白の光が
「コレは……癒しの魔法……! フェイト、お前」
「――ヴィータちゃん、少し退がっていてくれるかい」
ミッド式でもベルカ式でも無い回復魔法にヴィータが驚いていると、
(何だ、コイツ……!? 本当に、フェイトなのか……!?)
ヴィータは息を呑む。青年の全身から放たれる威圧感は、ヴィータをして警戒するほど強烈なものだった。静かに立ち尽くしているだけなのに、
声の
「可愛い女の子に対して、全く無慈悲な一撃だな。久し振りに、本気で怒ったぞ」
言い放つフェイトの声は、低いが穏やかなものだった。しかしヴィータの掌には、いつの間にか冷汗が滲んでいる。静かだが、感じる――青年の強烈な
「かかって来い――。僕とお前らとの格の違いを教えてやるよ」
一体目が体当たり。二体目が一体目の肩を踏み台にしての跳躍からの振り下ろし。三体目が一体目の影に隠れてのすれ違いざまの胴薙ぎを一閃。
後ろにヴィータが居るフェイトは、まず一体目の肩を飛び越えた2体目の一撃をあっさりと鉄パイプで横に流す。フェイトの側面に着地した2体目を庇うような一体目の体当たりが迫る。
鋭く風を切る一体目の体当たりをフェイトはサイドステップで軽く避け、その前に飛んできた横薙ぎを着地と同時に鉄パイプを下から振り上げて、剣を撥ね上げた。間髪入れずに放ったフェイトの右蹴りが、ドゴォッと轟音を立てて黒騎士の顔面に入り、3体目が後方へ弾き飛ぶ。一体目は体当たりの勢いのまま後方に抜けたため、フェイトとの距離は必然的に空いた。
横に剣撃を流された2体目が、斬りかかってきた。右袈裟がけを左に避け、フェイトはそのままの勢いで、鉄パイプを横に薙ぎ、兜の横面にぶち当て、3体目が吹き飛んだ所へ、弾き飛ばす。
横薙ぎを払った姿勢のフェイトの後ろから、1体目が剣を腰の位置に構え、体当たり気味に突きを繰り出してきた。
「フェイト!」
援護しようとするヴィータよりも早く、フェイトは既に剣の間合いからサイドステップで避けている。
「リフレクトストライフ!」
「……な!?」
黄金の気を孕んだ蹴りが数か所、甲冑に当たり、後方へ弾け飛ぶ。轟音を立てて地面に叩きつけられた場所は、他の騎士達と縦に一直線に並んだ場所。
騎士達は同時に剣を正面に構え、突き出す。その切っ先に魔力が集中して行き、やがてソレは雷を放つ球へと変化した。と同時、周りに浮遊していたガジェットもいつの間にか騎士達の後方に回り、光線を放つ準備をしている。
「……」
フェイトは静かに鉄パイプを正眼に構え、瞳を閉じる。両手の甲と額に白い光が紋章を描き、フェイトの背には蒼い髪の翼を生やした少女が現れる。
「な、何だ……!? こりゃ……!」
少女神とフェイトの瞳が見開かれるのは、――同時。
「――コレに耐えられるものなら、耐えてみろ!」
ばさっ、……!
蒼く光る翼がフェイトの背に生じ、彼は宙に羽ばたくと、全ての力が凝縮された鉄の棒――今や、青く輝く光と化している棒――を振り下ろした。
同時、騎士達からも雷が、ガジェットからは光が放たれる。
「イセリアルブラスト!」
フェイトと騎士達の中央で、両者の光がぶつかり合う。力の押し合いは一瞬でカタが付く。一気にフェイトの光が騎士やガジェットを飲み込み、辺り一面を包み込んでいった。
「この魔力――まさか!」
ヴィータは背中がぞくりと震えるのを感じながら、息を呑んだ。
――どうも、Sランク以上みたいなんよ。
はやての言葉が脳裏によみがえる。
「これが――フェイトの本当の力……!」
「これぞ真・フェイト!」
そう言いきって、パチリとウインクする。先程のカリスマ、
ヴィータは思いがけず、肩透かしを喰らった。
××××
「素晴らしい……! コレが、万物を破壊し尽くす『力』!」
『ドクター』の異名を持つ広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティはモニターを見据えて興奮に胸を高鳴らせていた。
二度目のイセリアル・ブラスト。
先日の計測機よりも更に大型のものを以てしてもドクターの
――測定不能、と。
[ドクター……。いくらなんでも、これは――]
通信越しに、
ドクター、ジェイル・スカリエッティの脳裏には、ある男の研究が浮かんでいる。広域次元犯罪者として、幾多の世界を飛び回った彼は、聞いた事があるのだ。
このミッドチルダ――『時空管理局』と交流がある事を、決して知られてはならない強大な組織。
『銀河連邦』。
そこで銀河的権威として崇められている、一人の男の研究を。
「破壊の力、ディストラクション。……まさかこれほどの完成度とはね」
初めて
「ふふっ……、まさかまさか!」
ドクター・スカリエッティの専門分野は、生命操作と生体改造だ。
そして、フェイトの父――ロキシ・ラインゴッドは、銀河系の1/3を掌握する一大勢力、銀河連邦において、紋章
その研究成果は、今見た通り。
「楽しみだよ……、ラインゴッド博士!」
スカリエッティはモニタに張りつき、狂った哄笑を上げ続けた。
ロキシの傑作と己の傑作。
どちらがより優れたものなのか――。
めぐり合う筈のなかった両者の逢瀬に、スカリエッティの心は躍っていた。
××××
「……あ」
ヴィータは、その威力に息を呑んだ。ディストラクションは、ミッド式魔法やベルカ式魔法のように、消滅させる対象を選ばない。彼の後ろにあるのは、だだっ広い空間だけだ。抉れた大地と、薙ぎ払われた木々。それらはイセリアル・ブラストの名残を分かりやすく示すように、ぽっかりと巨大な穴を開けている。
「ヴィータちゃあああああん!」
「へ?」
「な、何だよ!?」
「ごめんよ! ごめんよぉおお!! 僕が油断したから、怪我させちゃって! 痛かったろう!? さあ、シャマル先生に診せに行こう!」
有無を言わさずヴィータを抱え上げる
「だ、大丈夫だよ! お前がさっき治してくれたじゃねえか!」
「馬鹿あ! 何か
「大丈夫だって言ってんだろうが!」
ヴィータの主張など何のその、「バニ神の加護を得しフェイト」はヴィータを抱いて、ドキューンッと轟音を立てながらシャマルの下へと駆けて行くのであった。
フェイト
「第七回!」
ティピ
「ティピとぉ~」
フェイト
「フェイトがぁ~」
ティピ&フェイト
「行く~!!」
ティピ
「なんだかんだ言って、第十話まで来たね。フェイト」
フェイト
「今回は、僕の本気を見せつけた回だったよね」
ティピ
「よっ! やっと主人公!」
フェイト
「まあね☆ ――ってちょっと! 『やっと』って余計なんだけど!」
ティピ
「でも、ま。アンタががんばった分、2Pのアンタが足を引っ張りまくってるんだけどね」
フェイト
「しょうがないじゃないか。2Pのレヴァンテインは狂気の沙汰だって言ってるだろ」
ティピ
「それでも2Pフェイトが、真・フェイトになると一番強かったりするのよね?」
フェイト
「滅多になんないけどね☆」
ティピ
「と、まあグダグダな話はこれくらいにして! 今回のゲストを紹介したいと思いま~す!」
フェイト
「機動六課期待のホープ! 背はちっちゃいけど僕の知ってるどのチビッ子よりも純真で頼りがいのある少年! ぶっちゃけ主人公じゃね!? エリオ・モンディアルぅうううう~~!」
ティピ
「わぁ~! すごい独断と偏見の塊の紹介だよねぇ~! なのはさんやフェイトさんの時とは大違いだぁ~!」
フェイト
「ありゃ、あん時だけ『台本』あったんだよ!!」
エリオ
「えっと……よろしくお願いします。フェイトさん、ティピさん」
フェイト
「よく来たな! エリオ! いやいや畏まるコトはないよ。まま、座って座って」
ティピ
「なんて言うかさ。エリオって私達の仲間にいるエリオットと同じで、子供っぽくないわよね~。あんまり」
エリオ
「そ、そうですか……?」
ティピ
「なんて言うか~……。お行儀が良過ぎるのよねエリオットのはさ、お父さんとお母さんの教育の賜物って感じがしたけど、アンタは何て言うか、自分で言葉を選んで喋ってるって感じよね」
エリオ
「そ、そうなんですか?」
ティピ
「子どもなんだからさ、もっとくだけた喋り方しなさいよぉ! エリオットなんかよりずっと小っちゃいんだから、アンタ」
フェイト
「ティピちゃん。エリオを君の所の『腹黒』と一緒にしないでもらえるかい。あんなね、脱獄王なんかね、正直足許にも及ばないぐらいエリオは良い子なんだよ!」
ティピ
「コイツ、珍しく人に褒められてるから、調子乗っちゃってるよ」
フェイト
「なんだよ!? エリオが良い子であることに、変わりはないだろ!?」
ティピ
「だから子供っぽくないって言ってんのよ!」
フェイト
「いいじゃないか! 別に! しっかりした子なんだよ! 大体、キャロと喋る時は普通だろ!?」
ティピ
「だから、その喋り方を私達にもしろって言ってんのよ!」
フェイト
「目上の人への敬意でしょうが!? 何の問題があるんですか!!?」
ティピ
「だ~か~らぁ~!」
エリオ
「……ごめんなさい。僕の所為で、お二人がケンカしちゃうなんて……」
エリオは顔を俯けて、しくしくと泣き始めた。
フェイト
「…………ティピちゃん」
ティピ
「ごめん、エリオ……。アタシが悪かったわ」
フェイト
「しっかり見えてたって、エリオだって子どもなんだから。気にするようなこと言っちゃダメだ!」
ティピ
「珍しく正論を言われた……」
フェイト
「と、言う訳で! 今回は、エリオに僕から質問していいかな?」
エリオ
「はい! 答えられる事だったら、どんな事だって答えます!」
フェイト
「ありがとう。それじゃ、聞くんだけど――エリオって空戦? それとも陸戦?」
エリオ
「陸戦です。僕は飛行魔法、使えませんから」
フェイト
「そうなんだよね。でもさ、ストラーダっていう槍のデバイス? あれ使ったら、空飛べるでしょ? エリオ。まあ、そんなこと言ったらスバルだって――ねぇ? って感じだけど」
ティピ
「ぶっちゃけさ。陸戦と空戦の違いってなんなの?」
エリオ
「空戦魔導師の方々は、デバイスの力を借りなくとも空を自由に飛ぶ事が出来ます。それに比べ、僕やスバルさんは、デバイスの特性をよく理解して、ちゃんと制御した形でなければ、空での身動きが取れません。特に僕は、ストラーダの進行方向を急に変えることは出来ませんから、空戦魔導師のフェイトさん達に比べれば、空での行動に制限があるんです」
フェイト
「空が飛べるから空戦魔導師ってわけじゃないんだね」
エリオ
「はい。空戦魔導師の方は、空を自由に飛べるだけではなく、更に加速魔法を使って、瞬発力を生かした攻撃行動も可能ですから」
フェイト
「なるほどぉ~。いやぁ、こっちに来ていろいろと勉強させられてるよな。僕達」
ティピ
「人が空を飛ぶなんて、正直有り得ない話だもんね」
フェイト
「無重力でもないのにね~! ……惜しい! 僕が家から重力制御装置を持って来れたら、エリオ達にも僕の華麗なる空戦を見せてあげられたの――」
ティピ
「ティピちゃ~んっ! キィック!!」
ドゴォッ!!
フェイト
「座談会初っ!?」
フェイトはエリオを見据えたまま、ロケットランチャーのように水平に壁に向かって飛んで行った。
ティピ
「正確には、この作品初のティピちゃんキックです」
エリオ
「だ、大丈夫ですか!? フェイトさん!! 顔が思い切りねじれてましたよ!!?」
フェイト
「No FAN,No SO! の精神なら大丈夫!! ――と言いたいところだが、足に来た!! ……た、立てねぇ……!!」
ティピ
「ん? アンタ、何言おうとしてんのよ? 面倒くさくなるから、そういう連邦の発言はやめなさいよ」
フェイト
「オラクル空間は何でもありじゃないのかよ!?」
ティピ
「な~んで私が、フェイトさんやなのはさんの話を途中で切ったと思ってんのよ! この場にアルフが居たら、アイアンクローだからね!」
フェイト
「やぁ~やぁ~?(あれ? でもそれ言ったら、『連邦』ってモロ言っちゃダメなんじゃ)」
ティピ
「突っ込まれなきゃ大丈夫よ」
フェイト
「心を読むだと!?」
エリオ
「お二人は本当に仲が良いんですね」
ティピ
「エリオ。もうちょっと人生経験豊富にした方がいいんじゃない?」
フェイト
「何を言う。ある意味、僕とティピちゃんはバッチリの相性だろう!」
ティピ
「と、まあこんな感じでコーナーも慣れて来たコトだしぃ~! 次は……キャロを呼んでみま~す!」
フェイト
「そう言えばさ、エリオ。キャロちゃんとは仲良くやってるかい?」
エリオ
「はい! 仲良いですよ!」
エリオは屈託の無い笑顔だった。これ以上ないほど。
フェイト
「……………………(゜д゜)」
ティピ
「……ねぇ、なんでこうリリカルなのはの登場人物って……こうなのかしら」
フェイト
「泣くもんか! だって男の子だから!!」
ティピ
「第七回! ティピとぉ~!」
フェイト
「フェイトが」
ティピ&フェイト&エリオ
「行く!!」
エリオ
「でした!」
フェイト
「息ぴったりだったね! エリオ!!」
エリオ
「登場キャラクターの中で、初めてタイトルコール読ませて頂きましたね」
ティピ
「ホンット! フェイトはエリオに甘いわねぇ~」
フェイト
「フェイトはどっちも甘いんだよ」