――って、やっぱりお説教かな? By フェイト・テスタロッサ
初めての、機動六課の――フォワード達の休日。
新人達皆が楽しく出かけて行った時、シャスは何かを決意してなのはの前から、機動六課から居なくなってしまった。
どうして、と今考えてみても答えは出ない。
シャスは私やなのは達に何かを伝えようとしていたみたいだったケド――。
そんな事を考えながら、私――フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは一人の青年を探していた。黒髪に金と銀の瞳の――ゲヴェルという種族のカーマイン・フォルスマイヤーという青年を。
カーマインは――なのはに、シャスの何かを伝えたみたい。その時のお礼として、なのははカーマインに空戦魔法を教える約束をしたんだ。シャスと別れた後、二人で手分けして探していると――。
六課隊舎の敷地内にある沿岸に座って、黙々と誰かが刃物を手入れしている。抜いた刀を右手で持ち、拭い紙で、棟方(刃がついてない方)から、古い油を丁寧に拭きとっている。元々、彼の武器――レギンレイヴは、手入れを必要としない道具だけど、カーマインは貴重品に触れるように、あくまでも念入りに取り扱っているみたい。
魔導師が多いミッドチルダでは珍しい光景だ。
でも――私は、その光景を懐かしく思った。私の記憶の人物と違うのは、髪の色。想い出の人物は銀髪で、彼は黒髪。やっと――見つけた、カーマインだ。
かつてシャスがナイフを研いでいた場所で、同じ姿勢でカーマインは自分の――西洋剣の様な造りの刀を丹念に手入れしている。
一心不乱――今のカーマインは、外の世界の事に一切関心を持たず、一心不乱に刀の刃を拭き、打粉で刀身を軽くポンポンを打って、先の拭い紙とは別の拭い紙でその白い粉を拭っている。この操作を二、三回繰り返して油のくもりを完全に取り去ると、カーマインは銀色に光る刃を観照した――。
その光景は、刀をまるで道具ではなく魔導師のデバイスの様に扱っているように見えた――。私にも、バルディッシュがいるから分かる。何より、彼の記憶を見た私には納得してしまった。
(この刀は――俺に理想を貫かせてくれた。俺にレギンレイヴは捨てられない)
自分の命を削ってまで、不殺を貫くカーマインの姿は、ずっと私の中のなのはのイメージに重なっていた。
なのはも決して口には出さないものの、何らかの無茶を抱えている気がする。
それは、シャスが別れ際になのはへ言った
(アンタは自分を省みない)
という言葉からも、密かに読みとれたような気がした。
――シャスも、多分なのはについて何か思うところがある。
そう言えば、なのはが「カーマインはシャスのことを誰よりも理解していた」って話をしてた。もしかしたら――カーマインは、なのはについても何か思った事があるかも――。
私は、思い切ってカーマインに訊いてみることにした。
「ここに居たんだ」
「俺に何か?」
声をかけるとカーマインはその金と銀の瞳をこちらに向けて来る。なのはに似た強い意志を宿した瞳を――。
「邪魔してごめんね。ちょっとカーマインに聞きたい事があって……」
私がそう告げるとカーマインは微かに苦笑して頷いた。私はカーマインの隣に腰を下ろす――。ソコから見える景色は見慣れたはずのものなのに、懐かしい気がした。
「懐かしいな、シャスもね――ここでナイフを研いだりしてたんだよ」
「アルフが? なるほど、な」
私の言葉にカーマインは納得したように一つ笑った。小首を傾げる私に、カーマインは応えてくれた。
「この場所は、とても静かだ。自分自身を問いかけるには丁度いい」
「自分自身を――問いかける?」
カーマインは一つ笑って返してきた。
「あくまで俺の考え方だ」
そう一言ことわってから――話してくれた。
「――俺は、自分自身に問いかけるようにしている。この刀を振るうと決めた時から、自分自身を振り返る。自分は――不殺の斬戟を使うに値するか? 相手の信念に対し、闘うにふさわしい自分であるか、と」
刀を研ぐ彼の瞳は真剣そのもの。その瞳の奥にあるのは苦悩、だと思う。彼は――常に自分の在り方に疑問を感じているんだ――。情を重んじながら、情を無下にしてしまう自分自身に――。
悩んでも、考えても――変えられないと知りながら。それでも――。
「――シャスも、そんな事を考えてたのかな?」
あの時、シャスも何かに悩んで――ソレを自問自答しながら研いでいたのかな。私が何となく呟くと――
「俺は、彼じゃないから分からない。あくまで今のは俺の感想だよ」
笑いながらカーマインは応えてくれた。そして、研ぎ終わった――自分の左手に持つ刀を、その刃を見る。
そんな悩みを持つカーマインだからこそ、私は聞いてみた。シャスを六課に居る誰よりも理解し、私になのはに似ていると思わせた彼だから――。
「そう言えば――なのはのこと、どう思う?」
「藪から棒だな」
冷静に淡々と刀を鞘に戻しながら話すカーマインに私は、更に続ける。
「うん。でも君の持ってる、なのはの印象を知りたくて。――なのはのこと、どう思う?」
その言葉に、カーマインはその冷たい美貌を少し歪ませて――真剣に考え込み、なのはの印象を応えてくれた。表情の変化はほとんど無いが、真剣な口調で。
「一言で言えば、頑固者、かな?」
「……それは、そうだね」
宙を見ながら口を開くカーマインに、私も静かに頷く。彼は更に続けた。
「周りの心配を省みず、自分の決めたことを貫き通す。人のことをとやかく言う前に、少しは自分のこと見ろよ、とか」
「そうだよね!」
私は思わず両手を握って、強く頷いてしまう。そんな私を見て、カーマインは若干後方に身を退きながら、顔を僅かに歪めた。小首を傾げる私に、言いづらそうにカーマインは言った。
「――耳が痛くなるから、あんまり言いたくないんだが」
そこで、私もどうしてカーマインがそんな態度なのか見当がついた。
「……あ。カーマインも、そう言えばそういう気質だったね」
「分かってて言ったんじゃないのか? どんなイジメだよ、と思ったよ」
「自覚があるなら、治すべきだよ」
ため息混じりで返すカーマインに、思わず苦言してしまう。だって――自分の行動で周りの人がどれだけ心配するか、考えるべきなんだ。カーマインも、なのはも。
「それで治せりゃ苦労はないんだけどなぁ」
「真剣味が感じられません」
弱ったように宙を見据え――私から目を反らして、ぼやくカーマインに、私は腰に手をやり胸を張って告げた。
「――なのはさんの話だったよな?」
カーマインは、急に話をなのはに戻す。分かりやす過ぎる反応だけど、私もなのはについて聞きたい事があるから、笑みを堪えて、聞いてみた。
「ん? うん。――私ね、なのはが何か隠してるように思うの。なのははちょっと目を離すとすぐに無茶するから……。でも、なのはが何を隠してるのかは分からなくて――」
「それを俺に訊いてどうする?」
「カーマインなら分かるかな? って」
シャスの気持ちとか――想いとかも、分かったみたいだし――。と期待に瞳を輝かせて見つめてみると、彼は――これ以上ないほどに呆れて顔を歪めていた。
「俺はエスパーか……!」
言われてみると、御尤もなんだけど。――でも。
「……だって、“カーマインはシャスに近い”ってなのはが言ってたんだもの」
シャスも、なのはがムリしている事を見抜いていたようだった。だったら、シャスと同じ慧眼を持つカーマインなら――。
そんな私の様子に、カーマインは何かを感じ取ったのか。瞳を閉じ――瞑目してから、ゆっくりと形の良い唇を開いた。
「あくまで俺の――憶測だし、なのはさんとはそんなに喋ったわけでもないし。……ねぇ」
これまでの様に歯切れの良い話し方じゃ、無い。何か、話づらそうな様子に、思わず私は眉根を寄せてしまう。――もしかして。
「ただ、隠しごとがあるっていうのは、誰にでも大なり小なりあるんじゃないのか?」
カーマインは無表情に問いかけて来る、その額に冷や汗をかきながら。そんな彼に、私は思っていた事を告げてみた。
「でもね。なのはは隠しちゃいけないことまで隠すと思うの」
「耳が痛い……!」
途端、顔を歪めて耳を押さえ蹲るカーマイン。その時、私の頭の中に、彼がしてきた無茶な行動が浮かんできた。
「そうだよ、カーマイン! あの時、アステアやシーティア、ルイセ達がどれだけ悩んだと思ったか……!」
思わず詰る私に、カーマインは慌てた様子で話してきた。こちらに向けた両の手はパーで、降参と言っているようにも感じる。
「待て待て! なのはさん、なのはさんの話だよな!? ――そうだよな! なのはさん、無茶してるよな!!」
途中から真面目な表情――というか、必死に話題を背けようとしている姿を見て、私は――そう言えば、なのはも私が無茶しないでって言うとごまかしてたのを思い出した。
「…………やっぱり真剣味がない」
その時のなのはと、今のカーマインが重なり、思わず胸が寂しくなってしまう。どうして、この人達は私達の想いを分かってくれないんだろう――って。
「いや、あるある! 真剣だって今!」
そんな私の表情を見て、カーマインは焦った様子で告げて来た。その彼の表情も、なのはと重なってしまう。私は――カーマインの向こうに見えるなのはに、聞いてみる事にした。
「言いだしにくいものなのかなぁ……」
私の言葉に――カーマインは意外と真剣に応えてくれた。
「と、言うよりは、それで自分がやることを止められるのが嫌なんだよ。言い出したら止められるって、分かってるしな。それに自分を想ってくれる皆に心配をかけたくないってのもあるな。――自分で言ってて、耳が痛いや……」
最後に顔を歪めるカーマインに、聞いてみる。コレが―― 一番聞きたい事。
「……どうしたら、少しは楽になれるかなぁ?」
私を助けてくれたなのは。彼女の為なら――私は何だってできる。だから――。そんな私にカーマインは首を傾げた。
「楽になるってのが、どういう意味だかよく分からないんだが……?」
「カーマインの言ってた事って、全部自分で大事なことは抱え込んじゃうってことでしょ? 悩みとか、苦しさとか。それをどうやったら、少しは和らげてあげられるのかなって」
一人で抱え込まず、私も一緒に苦しんで生きたい。なのはが苦しい時、悲しい時――私は、何が出来るの?
「傍に居てあげればいい」
「それだけ?」
あまりにアッサリな一言に、私は思わずカーマインを見つめた。彼は――その強い眼差しを私に向けて、優しく笑った。
「ああ。――それで十分だ」
「他にやることは?」
傍に居て――他に、出来る事があるの? 思わず意気込んで、身を乗り出す私に。カーマインは首を横に振る。
「誰かが傍に居てくれるだけで、自分は一人じゃないって、思えるもんなんだよ」
「…………」
何かできると思ったのに。落ち込む私を諭すように、カーマインは静かに――力強い言葉を口にした。
「そうやって誰かが傍に居るだけで、見守っていてくれるだけで――。ただそれだけで見守られている人は力をもらえる」
「それじゃ割に合わないよ」
その答えに不満な私は思わず眉根を寄せて抗議する。すると、カーマインは困ったような表情を浮かべた。
「しょうがないだろ? なのはさん――あの人、俺によく似てるし。あんまり言うと自分の首をしめるんだ……」
やっぱり、言い訳……。自分のことにもつながるから言いたくないなんて……。不満げな私の表情を察して、カーマインは続ける。
「フェイトさんだって、記憶に有るだろ? 辛い時――悲しい時、ただ傍に居てくれるだけで、一緒に泣いてくれるだけで、救われた事」
「……傍にいる、か……」
カーマインの言葉に、私は使い魔のアルフを思い出した。辛い時、悲しい時――いつだって、アルフは傍に居てくれた。
確かに……。私は、アルフに救われていた。その事を――今更ながらに思い知る。そんな私を見て、カーマインは苦笑気味に言ってきた。
「でもさ、フェイトさん。なのはさんも大概だけど、アンタも大概だと思うよ?」
「私が?」
「――頑固者、ってところはね」
首を傾げた私に、間髪いれずに応えるカーマイン。
「カーマイン達ほどじゃありません」
私は、はっきりと応えてあげる。周囲に心配ばかりかけさせるこの人達に――。
「何故、俺が怒られてるんだ……!」
愕然とした表情で蹲るカーマイン。ソレを横目に見ながら、ほんの少しだけ、一瞬だけ口元に笑みを浮かべて――。
「……。(なんだろう……俺、この人苦手だ……!)」
弱り切った表情で、何かを目で伝えて来るカーマインに、再び私は表情を引き締めた。
「だって自覚してるのに、治さないんでしょ?」
「うん。まあ……俺のは、頑固じゃなくてわがままだけどな」
わがままな人って、頑固って意味じゃないかな? と思いながら――私は胸を大きく張り澄まして応える。
「それならなおさら、叱られて当然です」
「別に……、褒めてくれって言ってねえだろ」
――何となく、弱り切ったその表情が、なのはに似ていて。ますます笑ってしまう。
「だって、なんで怒られるんだって言うから」
「だからって、今、俺がやったわけじゃないだろ!」
私の言葉に冷静に見えた表情は、しどろもどろになりながらも必死に訴えかけてきた。でも――
「でも、前科はあるよ?」
「過去は過去、今は今だ」
「でも、治してないんでしょ?」
何とか言い返そうとしてくるカーマインに、私は事実を告げてみる。――すると、彼は明後日の方向を向いて呟いた。
「――――なのはさんには困ったもんだなぁ……!」
「そうやって話題を逸らすし」
ちょっと流石にそれでごまかせると思ってるのかな、と聞いてみると、カーマインは必死な表情で、告げて来た。
「フェイトさん、他に何か話題はないのか!?」
「……うーん。一番聞きたかったことが、それなんだよねぇ」
本当に余裕がないみたい。とりあえず、他の話題を考えてみるけど……。なのは以外のことは特に無いなぁ……。
「あ、そう……。ホントなのはさん、困った人ですねぇ」
「今、その言葉を聞くと、全部なのはがカーマインに聞こえるよ?」
小首を傾げながら問いかけるとカーマインは冷静に取りつくろった表情に滝の様な汗をかき始めた。その表情を見ながら、思う。
「だからきっと、ティピも蹴っちゃうんだろうなぁ」
これだけ周りの人が――心配してるのに、誤魔化して、無茶して、傷ついて――。
「なんでいつの間にか説教になってるんだ……!」
「あれ? 説教になってた?」
「……(……自覚なしか! まあ、とにかく終わって何よりだ)」
何となく、抗議めいた視線を送ってくるカーマイン。ソレに意味が分からず小首を傾げてみると、彼は私から目を反らした。
「傍に居る、か……」
カーマインの言った言葉を反響し、空を見上げる私。すると、私の横でカーマインが咳払いをして言った。
「真面目な話だが――。俺だったら、自分の大切な人の為に戦うことは苦でも何でもない。ただその人達の傍に居られれば。その人達が笑っていてくれれば、俺はそれでいい」
「でもさ。それって――肝心のカーマインが入ってないんだよね」
「大切な人達の笑顔が、傍で見ていられる――俺はそれで十分だ」
言い切るカーマインに、思わず問い返した。
「…………ねえ、もしも逆だったらどうする?」
「逆?」
「うん。あの時――もし、不殺の剣を使ってるのがカーマインじゃなくて、君のお姉さんのシーティアだったら。それで、シーティアがそのままほっといたら死んじゃうって分かったら、カーマインはどうする?」
不安げな私の視線を受け、カーマインはハッキリと応えた。
「ひっぱたいてでも止めるだろうな」
「そうなの!?」
思わず両拳を握って前のめりになってしまう。だって――意外だったから。自分の意志を相手に押し付けるのは、わがままで――正しくてもやるべきじゃないってカーマイン自身が言った事なのに。
「――あの時、もしもシーティアだったら俺が止めてる。そして――シーティアに変わって俺がヴェンツェルを倒す。アイツが残りの命を他の人達と一緒に暮らせるように、な」
笑っているカーマインの姿は、恐らく本気。そこには――彼女への想いが溢れていた。
「――そ、それじゃあそれからは?」
「そう言っても聞かねえんなら、羽交い締めにして、スマキにして地下室に放り込む――。とりあえず、シーティアが動けないようにするな」
淡々と恐ろしいコトを平然と口にする。目が完全に、本気だった――。私は、思わず顔を蒼褪めてしまう。
「……そ、そこまで!?」
「て言うか、そこまでしないと止まんねえし」
シレっと言い捨てるカーマイン。ソレに私は――感心していた。と同時に、落ち込む。
「……そっか。そこまでやっちゃわないといけないんだね……!」
「でも、なのはさんにそれを当てはめるのはどうかと思うぞ」
そんな私にカーマインは何かを口にしていたが、それよりもハッキリと分かった。例え力づくになったとしても――止めなくちゃいけない時があるんだって。
「ありがとう、カーマイン! 参考になったよ!」
「待て待て、ちょっと待て! 今のを参考にす・る・な!」
決意を新たにした私に、何故かカーマインは必死になって止めて来る。アドバイスだと思ったのに――。私は、ちょっと寂しそうにカーマインを見て抗議した。
「……真面目に答えてくれたんじゃないの?」
「真面目には答えたが、今のはシーティアを限定にして言ったんだ。大体、フェイトさんになのはさんをボコボコに出来るとは思わないぞ。――違うか?」
私はその言葉に、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受け、カッと目を見開いてしまった。
「――そっか。つまり私は、そういう所でもシャスに先を越されてたんだね……。むむむ……!」
「……ある意味そうなんだけど。勘違いが的を射ている分、余計にタチが悪いな。おい」
カーマインがぶつぶつと何かを言っているが、その間に――私は思考を巡らせる。
「う~ん。なのはをジッとさせる方法か~」
私は顎に手をやり、考え込む。思いつく限りの方法で言えば――。
「やっぱり紅茶に唐辛子からかな? ……うぅ、でも辛いからお砂糖? でも取り過ぎると体に悪いよね……う~~ん」
真剣に考え込む私に、カーマインは抗議めいた視線を送って来た。
「俺の一番最初の、傍にいて欲しいって奴は無視か、おい。あれが本命なんだけどな」
「傍にいるだけじゃ物足りないよ」
「だったら――その想いを思いっきりなのはさんにぶつけてみたらどうだよ? なのはさんなら、真剣に話したら、それなりに向き合ってくれるだろ? 俺と違って」
「カーマインはなのはの頑固さを知らないから言えるんだよ!」
困って眉根を寄せる私に、カーマインは冷静な表情で告げて来た。
「……うん。それで言い負かされてるようじゃ、まだまだだな」
「なのはを言い負かせるようになったら、勝てる?」
「て言うか、なのはさんって……打たれ弱そうだけどな」
「……でもね、カーマインみたいに違う話を持ってくるの」
「俺の時くらい押しが強かったら大丈夫」
「でもね! そういう時に限って、お仕事入っちゃうの!」
タイミングって言うのかな……。どうしても、大切な話をしようとすると――。と、カーマインが嘆息混じりに言ってくる。
「いや、俺正直……あの押しでどうして辞める気にならなかったのか、分からない。あれか? なのはさんが好き過ぎて、あんまり強く押せないとか――そういうオチか?」
「そんなこと…………、ないと思うけど」
「自覚なしかよ……」
眉根を寄せて考え、応える私にカーマインはがっくりと項垂れた顔を右手で覆った。
「うぅ~~ん。ともかく、訓練場に行こうか。カーマイン」
「ん? 訓練場? 何故、この話の流れで訓練場?」
キョトンとして問い返すカーマインに私も小首を傾げて問い返した。
「だって、なのはに飛行魔法教わるんでしょう?」
「え? もしかして、それで俺を探してたのか?」
「うん。ごめんね、長話しちゃって」
ちょっと話すだけのつもりが、大分長話になっちゃったことに詫びると――カーマインは力なく項垂れて言った。
「……前置き長ぇ! しかも、すげえ抉られるような前置きだった」
「私にとっては前置きじゃないもん!」
ムッとなって言い返してみる、が私の心配ごとを聞き流していたかのようなセリフに思わず、しょんぼりしてしまう。
「やっぱり真剣じゃない……」
そんな私に、カーマインは取り合わずさっさと立ち上がって言った。
「……もう好きにしてくれよ。訓練場、訓練場……」
「ウン……。案内するね」
笑顔で答えて前を歩く私は、ふと思い返したようにカーマインを振り返った。
「聞いてくれて、有難う。カーマイン」
「……。どういたしまして」
まだ表情の硬い彼にクスクス笑ってしまう。そんな私の背を見ながら、彼は何か別の事を考えているようだった。
「……(実際、アルフはそう言う意図があって戦ったみたいだしなぁ……。まあ、言ったら本人、すごく怒るだろうから言わないけど)」
こうして海岸が見える階段を後にする二人だった。
人の振り見て、我が振り直せという名言があるが……。自分に当てはまると物凄く抵抗を感じる言葉なんだと今日、気付きました。何故だろう……? つうか、完全に説教だよなコレ……。
By カーマイン