連邦軍人とフェイトくんの旅。   作:ばんどう

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フェ「久しぶりに思い切り頑張ろう? バルディッシュ」
シグ「フフ……。レヴァンティンよ、いくぞ!」
ヴィ「……おい、なのは。あの二人、ちょっと張りきり過ぎじゃねえか?」
なの「えっと……! ぜ、全力全開!!」


休暇イベント2 複数対一ってのは騎士というか人としてないだろう?

 機動六課の訓練場。今回は森林のステージを選択されているフィールドに、フェイトに案内されてカーマインが来ると、その場には高町なのは以外にも、人がいた。

 スターズ副隊長ヴィータとライトニングの副隊長シグナムの二人。更にアステアとティピも居た。

 

「これは一体、どういうことだ?」

 

 集まった面子はどう考えても、空戦魔法を教えてくれるだけにしては――仰々し過ぎる、とカーマインはなのはに視線を向けた。

 

「空を飛ぶ魔法を教えてくれるんじゃなかったのか?」

 

 カーマインの瞳を彼女は真っ直ぐに見返してきた、その身に纏っているのは、魔導師のバリアジャケット。他の副隊長二人も騎士甲冑に身を包んでいる。

 

「その通りだよ、でも……どうしてもカーマイン。君とは戦ってみたいの」

 

「な、なんでそんな急に?」

 

 言い放たれた言葉に、カーマインはキョトンとした表情で問い返す。――と、なのはの隣で静かに佇んでいたシグナムが声をかけてきた。

 

「急にでは無い、カーマイン殿。私は――貴方の記憶を見た。ここにいるテスタロッサもだ。だからこそ貴方の強さを、直接知りたいと思った」

 

 バルディッシュを掲げ、フェイト・テスタロッサもバリアジャケットに身を包む。そして――その深紅の瞳でカーマインを見据えて来た。

 

「カーマイン。君の、その強さは本物。だから――今の私が、君相手にどれだけ戦えるのか、知りたい……!」

 

 紅いゴシックドレスに身を包み、グラーフアイゼンを握りしめるヴィータ。

 

「ここにいる皆で話し合ったんだ……! 私となのはは、アルフにこっぴどくやられた。あの時、なのはを助けることばかり考えて、敵の動きを見ちゃいなかったのはアルフの言う通りだ――。だけど、私達はもっと強くならなくちゃいけないんだ! 仲間を守る事が枷だなんて認めるわけには、行かねえ……!」

 

 白いバリアジャケットに身を包み、レイジングハートを構えるなのは。

 

「そしてあの時、シャスを止めるのに何が足りなかったのか知る為に。――カーマイン君、勝負!」

 

 彼女達の尋常ならない気合いを感じて取り、カーマインはこめかみに冷や汗を一筋かく。

 

「な、なんでそんな流れなんだ……! 何か勘違いしていないか? 俺は別に、そんな強いわけじゃ……」

 

「君は強いよ。たぶん――私達が知る、どんな人よりも」

 

「そ、それは買いかぶりじゃあ……!」

 

 なのはの言葉に、カーマインは弱々しいながらも割と本気の拒絶をしてみる。しかし

 

「どんな人よりも、かどうかは知らないが、それを知る為にも剣を交えてもらおう」

 

 シグナムが静かに己のデバイス・レヴァンティンを抜き放つ。ソレゾレ武器を構える隊長副隊長陣に対し、アステアがあきれ顔で告げた。

 

「ただ戦いたいだけじゃないのか? 貴様ら」

 

「そもそも四対一って……。ちょっとキツくないか!?」

 

 その言葉にカーマインが割と必死の様子で続ける。

 

「何言ってんのよ、アンタ達! なのはさん達は能力制御されてるんでしょ? だったら、それくらいのハンデあげなさいよ!」

 

 ソレをにべも無くあしらったのは、カーマイン達と付き合いの長い妖精――ティピだった。アステアが驚愕の表情で問い返す。

 

「ハ、ハンデだと……? そもそも、“アンタ達”って……まさか俺もか!?」

 

 その言葉にヴィータが声を上げる。

 

「当たり前じゃねえか! 陸士107部隊を襲ったゲヴェルって奴の実力を私達も肌で感じなきゃいけねえ」

 

 隣に立つフェイトがバルディッシュのザンバ-フォームを正眼に構える。

 

「どんな理不尽にも立ち向かう為にも」

 

 シグナムが、レヴァンティンの刀身に炎を宿す。

 

「私達の信念、貫き通す為に」

 

 そして――なのはが、レイジングハート・エクセリオンを両手で持ち、カーマイン達に向ける。

 

「全力全開で――行くよ!」

 

 

 余りにもやる気満々な隊長陣に、カーマインは最後の抵抗を試みた。

 

「きょ、拒否権とか……ないのか?」

 

「いつまでゴチャゴチャと言ってんのよ! なのはさん達がここまで言ってんだから、男のアンタ達が覚悟決めなくてどうすんの!」

 

「し、しかし……」

 

 ティピの言葉にも、何とか返そうとするカーマイン。その横でアステアが嘲笑し、なのは達を見据えた。

 

「フッ! そもそもだ。なんで俺達がこんな座興をせにゃならんのだ。模擬戦なら、自分達だけでやればいいだろうが」

 

 その言葉に、ティピの額に四つ角の血管が浮き出た。

 

「ティーピーちゃぁあ~~ん!」

 

 ソレをカーマインとアステアは同時に気付く。しかし、時は既に遅かった。

 

「しまっ!」

 

「よせ――」

 

 抗議、というより懇願と言った感じの二人の言葉が発せられるよりも早く、小さな影が二人の顔面に急降下した。

 

「キィイーーーーック・クロォーースッ!!」

 

 ドゴォウッ バキィッ 思い切り仰け反る二人の美貌の青年。

 

「ぐはっ!」

 

「がはぁっ!」

 

 そんな二人をにんまりと眺めてティピは両拳を腰に当て、問いかける。

 

「やる気になった?」

 

 愛らしいしぐさとは裏腹の強烈な蹴りに、涙目になりながら、カーマインは頷いてなのは達に向き直った。

 

「……っ、っっ……! やればいいんだろ! やれば!」

 

「お~のれぇえっ!」

 

 隣で蹲るアステアも見栄を張って立ち上がり、なのは達を睨みつける。やる気になった二人を見て、なのははティピにニコッと微笑みかけた。

 

「ありがとう、ティピちゃん」

 

「えへへ☆ なのはさん達にはお世話になったんだもん。これくらい朝飯前よ!!」

 

 ティピも元気よく、なのはに笑顔で返す。

 

 ヴィータは静かに、カーマインとアステアを見比べながら、告げた。棒っきれ一本で勝負を挑んできた蒼い髪の青年を思い返しながら。

 

「にしてもフェイトと違って、こいつら……強いくせにえらい腰抜けだな」

 

「腰抜け、だと?」

 

 その言葉に、アステアがピクリと片眉を上げて不快気に睨みつける。隣のカーマインが思わず首を傾げる程に大人げない、反応だった。

 

「お、おい……アステア?」

 

  アステアは自分を止めようとするカーマインを無視して、ヴィータの前に歩み寄ると、彼女を帽子の上から見下ろし、吐き捨てる。

 

「チビが! いい気になるな」

 

「テッ、テメエ! 誰がチビだ!」

 

 アステアの大人げない言葉に、愛らしい眉毛をつり上げ、ヴィータもムキになって反論する。その反応にアステアは冷笑を口元に浮かべた。

 

「チビじゃなきゃガキだな」

 

「私を子供扱いしようってのか? 上等じゃねえか!」

 

「―――そうやって、いちいちムキになるところがガキだってんだよ」

 

「上等だ! ぶっ飛ばしてやらぁっ! 行くぞ、アイゼンっ!」

 

 グラーフアイゼンを握りしめるヴィータに、アステアも静かに己の右手に刀を生み出す。蒼い魔力の光を集めて生み出した――魔法の方術で生み出された刀。魔方剣を。

 

「フン、アホが。中途半端に力を持った奴は早死にするってことを教えてやる。この俺の、ドッペルゲンガーでな!」

 

 吐き捨てて、アステアも正眼に己の刀を構える。

 

 

 マシンガンのように繰り出された二人の会話を見て、カーマインが静かに首を横に振った。

 

「モノの見事に挑発に乗ってじゃねえか、お前も」

 

「しょうがないわね、所詮アステアだもん」

 

 ティピがその傍らで、肩をすくめてみせる。

 

 

「よし、ならばヴォルケンリッターとして、久しぶりに本気で相手をさせてもらおう! 救世の左腕」

 

 シグナムの言葉に、アステアがヴィータとの睨みあいを一時中断し、顔を向ける。その時の彼の表情は本気で、キョトンとしているようだった。

 

「な、なに……!? ……本当に二対一なのか? 騎士としてどうなんだ、おい?」

 

「遠慮なく、全力でいかせてもらうぞ」

 

「ちょ……!」

 

 聞く耳を持たないシグナムに思わず止めようとするアステア。だが――その耳に、ヴィータの声が届いた。

 

「へっへ~ん、覚悟しろよ。ウチのシグナム(リーダー)は手加減ってのを知らねえからよぉ!」

 

「……上等だ。いい気になるなよ、チビが!」

 

 アステアの態度が一変、一気に不遜なモノへと変化した。

 

 

「……意外に気が合ってるのかもな」

 

「アハハハ~☆ 面白くなってきたわね!」

 

 カーマイン、ティピともにアステアとヴォルケンリッター達の会話をのんびりと見ている。と、そんな二人にモニター室から声が届いた。

 

『それでは、始めてください! 審判はこのリィンが務めさせていただきます』

 

『モニターはこっちで監修してるから、思いっきりやってくれてかまへんで♪』

 

 真剣な表情で告げて来るリィンフォースとどこか楽しんでいるはやて部隊長の顔を見比べ、カーマインは絶句した。

 

「お、思い切りって……」

 

 そんなカーマインになのはが声をかけて来た。

 

「全力全開ってことだよ、カーマイン君」

 

「だ、だから二対一ってのが、そもそも、おかしくないかっ!?」

 

 この期に及んでも、まだ抗議する気があるらしいカーマインをティピがバッサリと切り捨てた。

 

「“救世の騎士は二人分の働きをする“くらいのことは言ってみなさいよ、アンタも!」

 

「……っ! 他人事だと思いやがって。――分かったよ。その代わり、やるからには本気でいかせてもらうぜ」

 

 カーマインが覚悟を決め、左手の拳を掲げる。その中指に嵌まった黄金の指輪が光の粒子と成り、一振りの鞘に入った刀へと変化した。西洋剣風の黄金の鍔を持ち、東洋の刀独特の反りのある片刃の剣――レギンレイヴ。ソレを腰の剣帯に吊り下げる。

 

「うん。そうじゃないと意味がないから」

 

「カーマイン、君の剣。見せてもらうよ」

 

 なのはが力強く頷き、フェイトがその瞳に闘志を宿して宣言する。

 

「……ったく」

 

 カーマインは何度目になるか分からない溜め息を吐くと、左手で鞘を持ち、右手で剣の柄を触るようにして腰だめに構える。

 

(やっぱり――恭也お兄ちゃんに似てる)

 

 なのははその構えが居合抜きであることに気付いた。同時に――カーマインに改めて、自身の兄を思い浮かべ重ねてしまう。強くて――優しくて、だからこそ誰よりも自分に厳しい兄を。

 

 

『始めっ!』

 

 森のステージにロングアーチからのリィンの声がスピーカー越しに鳴り響いた。

 こうして――、カーマイン対なのは、フェイト。アステア対シグナム、ヴィータの構図が出来上がったのだった。

 

 

―カーマインvsなのは、フェイトSIDE―

 なのはは静かに意識を集中させ、カーマインを見据える。フェイトとは長い年月ともに闘った相棒。彼女と組んで負ける事など、そうそうはない。

 

(だけど――。目の前に居るのは、あのシャスを正面から打ち負かした剣士。気を引き締めないと、駄目だよね……!)

 

 フェイトを見ると彼女もこちらを肩越しに見返し、頷いてきた。仕掛けるのは――フェイト。ソニックムーブやブリッツアクションと言った高速移動で距離を一気に詰め――切りかかる。

 対峙するカーマインも、同時――縮地法と共に交差法での神速抜刀。ギィンッ 黄金の刃と銀色の刀身が激しくぶつかり合う。そのまま、両者音速を越えるスピードで移動しながらの斬戟を繰り出し合う。

 

(――ソニックムーブに平然と付いてくる……! ソレだけじゃない、フェイトちゃんの高速斬戟を見ると同時に反応してる)

 

 凄まじいスピードと剣の応酬はやがて――ガィンッ フェイトが後方に下げられる形で、治まる。右手の刀を無造作に脇に持ち、腰を落として斜に構えるカーマイン。

 

「――強いね、カーマイン。流石、救世主」

 

「……フェイトさん、アンタもしかして戦闘好きか?」

 

 口元を緩ませ、楽しそうなフェイトに、カーマインは無表情ながらもやや呆れた様な視線を送る。ソレにフェイトはニコッとだけ笑うと、同時に両手で持つ大剣を大きく振りかぶって一足跳びで距離を詰めて来る。

 対するカーマインは静かに右手一本で刀を頭上に掲げ、唐竹の一閃。ギィンッ 壮絶な火花が散り、空間がハッキリと斬られたのが分かる一閃。ギィンッ 鍔迫り合いになるとフェイトの方がパワーが上なのか、押し返されるカーマイン。

 

「右手一本じゃ、私の剣を止められないよ――カーマイン!」

 

 ギィンッ 後方へ弾かれる前に、自らバックステップして躱すカーマイン。その着地点に、なのはの12発の魔力弾が放たれた。ズドドドォンッ 続けざまに炸裂する光の球。ソレ等を網の目を縫うように一気に駆け抜けて来る――。

 

(シャスと同じ――! 安全地帯を見つけて一気に駆け抜けて来る!! 違いは――シャスはある程度相手の動きを見て、予測して動いてるけど、カーマイン君のは勘だ……!!)

 

 見ると同時に反応する身体能力もあるが、カーマインの恐ろしさは危険と安全の線引きを嗅覚で嗅ぎ分けるところだ。野性的な勘。天性の動き。そして――自分の行動を信じる覚悟。

 なのはに斬りつける前にフェイトが間に割って入り、剣を止める。ギィンッと同時――カーマインの左手が魔力の光を放っていた。

 

「――魔法!?」

 

「俺の世界の、な」

 

 なのはが杖を構えるのと、カーマインが魔法の矢弾を放つのは同時。咄嗟に魔力の盾を創り出し、矢弾を弾くなのは。フェイトはなのはに攻撃を絞らせないようにカーマインに斬りかかる。

 フェイトの中距離からの高速移動からの斬戟。中・遠距離からのなのはの魔力砲。どちらも申し分のない攻撃力と緻密性だ。ギィンッ 高速移動と共にヒットアンドアウェイの戦法を取るフェイト。その間隙を縫ってのなのはの正確無比な魔力砲。

 そのコンビネーションは、確実にカーマインを追いこんでいた。

 

「――チィ!!」

 

 カーマインは舌打ちと共に、右手の刀を横に一閃。炎を纏った魔法剣が、切りつけながらも距離を取るフェイトに一直線に放たれる。

 

「……!!」

 

 ズドォウッ 大剣を咄嗟に顔面の前に構えて受け、横に流す。バシィッ その眼前にカーマインが縮地法で迫る。ガキィッ 大剣で受けて立つフェイト。足を止めての高速斬戟の打ち合い。細腕で自分の胴体よりも太い光の大剣を軽々と振り回すフェイトに対し、カーマインも右手一本での斬戟を返していく。

 両者、高次元で剣術がかみ合っている。そのカーマインの後方へ、フラッシュムーブで高速移動したなのは。

 

「――!!」

 

 カーマインが気配に後方を気にした瞬間、フェイトの一閃が放たれた。ガィィインッ 咄嗟に刀で受けながら、距離を取るカーマインに、なのは、フェイトの同時魔法攻撃が放たれた。

 

「エクセリオン――バスタァアー!!」

 

「トライデント……スマッシャァー!!」

 

 桃色と黄金の魔力砲が放たれる。

 

(――ヤバい!!)

 

 カーマインが咄嗟に思った瞬間、二つの魔力砲がぶつかり、大爆発を起こした。

 

「――へえ……! 凄いわね、カーマインの奴何も出来ずに、やられちゃった……!!」

 

 ティピがキョトンとしながら、なのはとフェイトの二人を見る。

 

 土煙を上げる着弾点に、なのはは静かに左手のレイジングハートを構えた。隣のフェイトも大剣を正眼に構え直す。なのはが土煙に現れた人影に叫んだ。

 

「――まだ!」

 

 土煙の中から、カーマインが静かに歩いて現れた。

 

「今のは、ヤバかった……! 咄嗟にレギンレイヴを利き腕に持ち替えてなかったら、直撃してた」

 

 二つの魔力砲がぶつかり合う瞬間、カーマインも左手に刀を持ち換えて神速の十字斬の唐竹で前に迫るなのはの魔力砲を、横薙ぎでフェイトの魔力砲を切って捨てたのだ。

 

「――ようやく、本気ってコト? カーマイン君」

 

「左利き、か……。本当によく似てるね、なのはに」

 

 自分達の同時アタックを完全に防がれたと言うのに、なのはもフェイトもまだまだ余裕そうだ。というより、カーマインなら防いで当たり前だと思われていたと言う事か。

 

「……なるほど。加減はいらないみたいだな」

 

 左手に刀を持ち斜に構え、カーマインは今一度、気合いを入れ直した。その口元にアルフとの戦いを彷彿とさせる不敵な笑みを湛えて。

 

 

―アステア対シグナム、ヴィータSIDE―

 アステアは刀を正眼に構える。

 対峙するヴィータが強大なハンマーを振り回しながら振り下ろしてきた。同時――アステアの刀が強大な魔力に包まれ青白い棍棒のような光の大剣に変化した。ソレはヴィータのアイゼンとまったく同じ軌道で振り下ろされる。炸裂する魔力はグラーフアイゼンの鉄の質量と同等。

 

(――何!?)

 

 ガキィインッ 全く互角の威力。振り下ろしのスピードも姿勢も、鏡に映ったかのように同じだった。

 

(――私の一撃を、正面から防いだってのか? 全く同じ唐竹で?)

 

 ショック状態に一瞬陥ったヴィータを、アステアがそのまま力任せに横薙ぎで後方へ弾き飛ばした。まるで――ヴィータがアイゼンを振り回すときの様に――。

 

「うわああ!!」

 

 後方へ弾き飛ばされたヴィータを脇にやり、シグナムが斬りかかってくる。アステアは氷の様な金と銀の瞳をシグナムに向けた。

 高速斬戟を放つシグナム。唐竹、横薙ぎ、袈裟がけの三連斬戟は、しかし――アステアの刀に全て相殺された。威力も――スピードも、剣を放つタイミングまで、全く同じ。

 

「――コレは……!?」

 

 明らかに、先ほどのヴィータの様な力任せの斬戟ではなく、まるで――自分自身を相手にしているかのような剣。癖もスピードも、パワーも全く同じ。驚きながらも、シグナムは剣を弾いて後方へ下がる。と、アステアも全く同じ動きで、シグナムの剣を弾いて後方へ下がった。

 

(――いや。ヴィータに放った先の一撃も、ヴィータがよく使う攻撃方法だった。唐竹を振り下ろし、ソレを止められた場合――即座に横薙ぎへと移行する)

 

「――どうした、ドッペルゲンガーを見た事が無いのか? ヴォルケンズ」

 

 アステアは氷の様に冷たい金と銀の瞳を向けて笑う。冷笑はまるで――氷を背中に押し付けられているかのようだった。

 

「自分とそっくりな姿をした――見た者は死ぬという、死神の名だな」

 

 シグナムの言葉に、アステアは冷ややかな笑いを強くして見せた。ヴィータがその横で頭を振りながら起き上がって来た。

 

「なるほど……。アタシも油断してたって訳か……! 完全に舐めてたぜ」

 

 ――アルフの時と言い、コイツ等は自分の力を弱くみせているんだ。油断させるように、こっちが慢心した隙を突いて一気に攻めて来る。

 自分を戦闘不能に追いやった狂人を思い起こし、その男とは違った寒気を与える金と銀の瞳の氷の様な青年を見据える。

 

「シグナム、同時攻撃なら――」

 

 そう。二人同時なら、どちらの攻撃を真似たとしても防がれることはない。そう言おうとして、ヴィータは眉をしかめた。

 

「フ……フフ」

 

 シグナムが――とてつもなく上機嫌で笑っていたのだ。

 

「……おいチビ。ソイツ、どうした?」

 

 アステアが若干引き気味に聞いてきた。ヴィータも眉根を寄せて告げる。

 

「てめえ……火を付けやがったな」

 

「……何?」

 

 シグナムは正眼に構えて剣に炎を宿す。そして――不敵に言い放った。

 

「――コレは、素晴らしい。自分自身と戦えるとは、な」

 

「……貴様」

 

 アステアが目を見開く。達人であればある程、自分の動きを真似されれば焦り、リズムを狂わせ、やがて倒されるモノだ。このドッペルゲンガーにはそうするに十分過ぎる効力がある。しかし――例外が存在する。

 

「バトルマニアだぜ、ウチのリーダーは」

 

「……そう言う事か。右腕に似ていると思ったが、性格だけではない。……感性も似ているようだ。ドッペルゲンガーを恐れない奴だと気付くべきだった」

 

 アステアは一人ポツリと呟くと、静かにシグナムを見据える。隣のヴィータは、あきれ顔で彼女を見据えていた。

 

「――行くぞ、アステア。どこまで、私の剣を真似られる!?」

 

「……よかろう。貴様の闘志を根こそぎ断ち切ってやる」

 

 燃えたぎるシグナムに対し、アステアは氷のような表情で答える。両者、同時に己の刀を大きく振りかぶった。アステアの刀の刃に炎が宿る。同時の袈裟がけは、炎も入れての相殺。

 

「何……!? シグナムの炎も真似られるのか!?」

 

 ヴィータが驚きの表情で声を上げるが、アステアは淡々と告げるだけだ。

 

「我が名はアステア。俺の前に立つ者は――“死”あるのみだ」

 

 ヴィータも静かにグラーフアイゼンを構え直した。

 

 

 

 ロングアーチのモニター室で、はやてとリィン他事務員達が見据えていた。

 

「コレが――ゲヴェル、か。本当になのはちゃん達と互角に戦えるみたいや」

 

「カーマインさんの強さはモニターや記憶で見せて貰っていましたが。改めてみても、凄い戦闘センスです」

 

 リィンの言葉にシャーリー達がポカンとした表情で見ている。

 

「ウソ……! ホントになのはさんやフェイトさん達を相手に、闘えてる」

 

 グリフィスが頭を掻きながら、呟いた。

 

「フェイト・ラインゴットさんやアルフ・アトロシャスさん以外に、こんな人達が居るなんて――。コレが異世界、か」

 

 改めて、時空管理局の使命というのが困難である事を自覚する。なのはやフェイト達は管理局内でもトップクラスの実力者だ。ソレを――制御されているとは言え、複数同時に相手取れる。そんな存在が、異世界には居る。

 

「……グリフィスさん?」

 

 ルキアがキョトンとした表情で彼を見る。ソレを首を横に振って苦笑と共に返すグリフィス。

 

(グリフィス君がそう思うんも無理ない……。コレが――ゲヴェル)

 

 圧倒的な身体能力とソコから放たれる多彩な動き。シグナム達で無ければ、あっという間に倒されていただろう……。

 

「凄いです、アステアさん!! シグナムを相手に、全くの互角なんて……!!」

 

 どうもアステアに対して思い入れがあるらしいリィンに小首を傾げながら、改めてモニターに集中しようとするはやて。

 眉根を寄せてモニターを見つめる彼女の下に、しばらくして休暇を過ごしている筈のエリオから通信が入った。




カー「……本気で容赦無しかよ」
アス「鬼か、あいつ等」
ティピ「あ~。面白かった!!」
カー&アス「ふざけんなぁあああ!!!!」
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