連邦軍人とフェイトくんの旅。   作:ばんどう

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18.決意

「相談事か」

 

 アミーナの家を出て、彼女と出会った教会前の広場に来るなり、アレンは尋ねた。

 対峙したフェイトが、思わず顔をしかめる。

 

「……ああ」

 

 言葉を濁すようにつぶやくと、微妙な沈黙が降りた。

 アレンは何も言わない。

 それは、フェイトが自分なりの考えをまとめるのを、待っているように見えた。

 

「……………………」

 

 ため息をついて、一拍置く。

 顔を上げたフェイトは、ペターニの街並みを見据えて、やがて意を決したように口を開いた。

 

「分からなくなったんだ……。アミーナの、あんな姿を見て」

 

「自分の意志が、か?」

 

「うん……。『ソフィアと笑顔で再会する』。その想いに嘘は無いけど……、でも、それを理由に逃げているような気がしたんだ。自分の、出来ることから。やらなくちゃいけないことから」

 

「それが、兵器を作ることだと?」

 

「だって僕が決断しなきゃ、シーハーツは!」

 

 拳を握り締める。

 目の前にあるのは、華やかで、けれどもアミーナのような少女を抱えた、美しい街だ。行きかう人々の表情は概ね晴れやかだが、それも硝子のような壁で隔てられた、束の間の平和に過ぎない。

 

「迷ってる時間がないんだ。カルサアでも、あのおじいさんが言ってた! アリアスが落ちれば、シーハーツは終わりだって! それに新兵器に変わる手立てが見つかったわけじゃない! だったらもう、やるしか……!」

 

 聖王都に着くまで。

 その猶予は、もう幾分もない。

 それでも全く新たな戦略が作れないなら、いっそ腹をくくるしかないのだ。

 

 ――アミーナを死なせないためには。

 

 嫌なのは今も同じだ。だがそれで、少なくともこの街は助かる。

 アリアスのような状態になれば、それこそ彼女は生きていけないだろう。

 唇を引き結んだフェイトは、それでもまだ、どこかで抗議を上げる自分を押し殺した。

 

(……アレンは、何て言うかな……)

 

 顔を上げれば、ちょうどアレンが口を開くところだった。

 

「俺が何故、兵器開発に反対なのか、分かるか?」

 

 アレンがぽつりとつぶやいた。フェイトと同じく街の喧騒を眺めながら、静かな表情を浮かべている。その様子を観察していても、相変わらず彼の真意は読めなかった。

 

「……え? いや……」

 

 歯切れ悪く、口ごもる。

 普通に考えればフェイトに人殺しをさせないため、もしくは以前言っていた、多くの人の自由を守るため、だろうか。だがアレンの不思議な面持ちは、それらとはまた、違う考えを持っているようにも見えた。

 

「剣は振る者の力で、紋章術は放つ者の精神力(こころ)で、人の生死を左右する。――だが、兵器はたった一つのボタンだ。……そこに加減は無い」

 

「……………………」

 

「仮に俺達の技術提供でこの戦争を勝ち抜けたとしても、知識は簡単に手に入る分、平和は長く続かないだろう。盗まれて――もしくは新たな技術を開発されて終わりだ。それは更なる戦禍となる。俺は軍人だ。だから、今まで多くの死を見てきた。……ハイダも、その一つ」

 

「っ!」

 

 思わず、息を呑む。

 『ハイダ』。

 そのたった一言が、フェイトにあの赤い星を、赤く炎に包まれた星を思い出させる。

 狂騒の中、フェイズガンを乱射して多くの観光客を殺し、両親と、ソフィアと離れ離れにさせた鮫の亜人たち(バンデーンの連中)を。

 きりきりと歯を噛み締める。許せないと。許さないと毒づく気持ちは、ともすれば腹の中で爆発しそうだった。

 ――どうしようもない黒い怒りで。

 

(あ……!)

 

 そこまで考えて、ふとフェイトはアレンを見た。

 彼に、強い感情は浮かんでいない。

 だがそういえば。

 

『ハイダで最も率先して死んだ人間は、銀河連邦の軍人だ』。

 

 救急ポッドを一つ残らず民間人に提供した彼等。輸送艦ヘルアの乗組員達の顔を思い出して、フェイトは震えた腕を握り締めた。

 

 ――アレンの知り合いも、居たのかもしれない。

 もしかすれば友人や、それより近しい人も。

 

 それでもフェイトと出会った時、彼は一度も連邦の様子を聞いて来なかった。どころか、終始、フェイトの身辺、特に母親に関する情報を伝えただけだ。

 フェイトを案じはしても、自らのことは口にしなかった。

 

「……………………」

 

 彼が軍人だからと。

 そう言ってしまえば、それまでのことだ。それでも『恐怖』以外の感情で震え始めた腕を、フェイトは止められなかった。

 

「……ごめん……!」

 

 声をしぼり出すように、つぶやく。

 一方的な暴力――兵器の恐ろしさは誰より、否、自分もまた知っていた筈なのに。

 アレンは静かに首を振った。

 

「……いや、すまない。そこまで気を遣わせるとは考えてなかった」

 

「……………………」

 

 聡いにも程がある。

 フェイトは唇を噛み締めて、硬く目をつむった。

 一呼吸。

 間を置いて、ゆっくりと目を開く。

 

「……アレン。この件、君に任せてもいいかな?」

 

 誰よりも痛みを知っている彼だからこそ。

 フェイトは表情を改めた。無責任と取られるかもしれないが、アレンほどの適任を、フェイトは思いつかなかった。

 対峙した、アレンの表情は動かない。

 フェイトは思わず固唾を飲んだ。

 

「鈍らの剣で、物を切るコツを知っているか?」

 

 つぶやくアレンに、フェイトは、え、と表情を固まらせた。

 数秒の間。

 ふ、と息を吐いて気を取り直したフェイトは、改めてアレンを見据えた。この問いかけの意味はどこにあるのだろう、と頭の端で考えながら。

 

「えっと……、気を高めて『斬る』ことだけに意識を集中させる、かな?」

 

 アレンは微かに頬を緩ませて、そうだ、と言った。それからペターニを()く人々を見やる。

 

「だが、この問いを実践できる者が、見える限りでいい。この町にどのぐらいいると思う?」

 

「それは……」

 

 アレンに続いて、つられるように視線を泳がせるフェイト。そのフェイトの横顔を一瞥し、アレンは自分の手元を見下ろす。左手には、ガストから譲り受けた『兼定』。その威力を、その脅威を手にした者として、まずやらねばならないこと。

 

 それは――物の本質を見極める事。

 

「兵器は、道具だ。加減は出来ない。使う相手も選ばない。……だが、それでも人が使う道具という点においては剣も兵器も、まったく同じ」

 

 そこで言葉を切ったアレンは、こちらに視線を向けるフェイトに向き直る。

 

「フェイト、お前は……鈍らで斬ってみせろ」

 

「!」

 

 思わず目を見開く。アレンは微笑っていた。

 不敵に、そして少しだけ不遜に。

 

「……それに。代案なら、既にお前は少しだけ果たしている」

 

「え……?」

 

「言っただろう? 兵器は容易く手に入る。――なら、その逆は?」

 

 問いかけてくるアレンに、何度か瞬きを返す。

 少し、頭を整理した。

 

(兵器の、逆……)

 

 劣勢に追い込まれているシーハーツ軍。その、そもそもの理由は――

 

「……兵力?」

 

「正解」

 

「お、おい! でも……それって……!」

 

 慌てて言葉を切る。途方もない時間がかかる提案のように思われた。だがアレンは淡々と話を続けてくる。

 

「考えても見てくれ。俺達はカルサア修練場に捕らわれた二人を救出できた。漆黒団長に見逃されたとはいえ、な。――それは、つまり?」

 

 フェイトは思わず顔をしかめる。

 もう一度、頭を整理する。しばらくしてはっと顔を上げたフェイトは、クレアの言葉を思い出していた。

 

 ――カルサア修練場は、アーリグリフ三軍の一部隊、重騎士団『漆黒』の拠点でもあります。

 

 身体が震える。自分がなした偉業に、今更ながら実感が伴った。

 眼前で、アレンが微笑う。

 

「そうだ。お前はすでにアーリグリフ三軍の一つ、漆黒の拠点を落とせる。条件さえ揃えばな」

 

 断言する彼に、ごく、と生唾を飲む。驚きのあまり、さ迷った視線が当てもなく方々に散った。くらくらする頭を押さえると、釘を刺すようなアレンの声が聞こえた。

 

「……そう考えることも出来るんだ。一個人の実力を上げるということは」

 

 え、とつぶやいて、フェイトが顔を上げる。すると目が合ったアレンは肩をすくめた。

 

「勿論。その成果を最大限に利用するのが一番難しい。だが、全体の実力を底上げするよりは、三軍の長とも戦える精鋭を作る方が、楽だろう?」

 

「いや、まあ……。それはそうかもしれないけど……」

 

 言いかけて、はた、とフェイトは言葉を切った。

 これは選択なのだ。

 兵器を作り、シーハーツに確実な勝利を呼ぶか。それとも腹をくくって真っ向からアーリグリフと戦うか、の。

 

「……………………」

 

 ソフィアと、笑顔で再会する――。

 その誓いを、意志をなす為の試練。

 フェイトは、ぐ、と拳を握り締めた。

 

「……確証は? 三軍の長よりも、強くなれるっていう」

 

 慎重に問いかける。するとアレンは、その慎重さに満足するように、ふ、と微笑った。

 

「一般人が漆黒の副団長を倒した。そして、こちらにはクラウストロ人と、未完成ながらもシーハーツ最高の才能と言われるクリムゾンブレイドまでいる」

 

「……………………」

 

「中でも、お前は一番成長が早い」

 

 確信した、アレンの瞳。

 それを見据えて、フェイトは、はは、と乾いた笑みを零した。

 そこまで太鼓判を押されれば十分だ。

 拳を緩める。表情筋だけで微笑うと、握った拳の重みが、ずしりと沈むような気がした。それを確認するよう目を閉じる。そして――、無言で頷いた。

 

「分かったよ。……僕は、僕を信じる!」

 

 アレンは小さく頷き返した後、広場の噴水のほうに視線を向けた。

 

「それで、構わないか?」

 

「……え?」

 

 首を傾げながわアレンの視線を追う。そこには、何とも言えない表情で腕を組むクリフの姿があった。

 

「……何だか、こうなるようお前に仕組まれた感があるが。まあ、仕方ねぇ。俺はそいつの指示に従うだけだからな」

 

「……クリフ……」

 

 きょとんとまたたくフェイトの後ろで、アレンが不敵な笑みを浮かべている。その見え見えの狙いを、しかし、クリフだからこそ跳ね除けることは出来なかった。

 苦そうに笑いながら、クリフがガントレットを弾く。

 

「へっ! ……たく、しゃあねぇな!」

 

 そのクリフに、こく、と頷いて、アレンは改めて、二人を見やった。

 

「それと。二人に見せておきたいものがあるんだ。ゼルファー指揮官には待たせて悪いが、ついてきてくれ」

 

「見せておきたいもの?」

 

 首を傾げる二人に、アレンはこくりと頷いた――……。

 

 

 

 ……………………

 ………………

 

 

 

 アミーナの家を出て、数分。

 町の西部にやってきたフェイトとクリフは、アレンの案内で高級ホテル、ドーアの扉の隣にある建物に足を運んだ。

 一見すると、煙突のある、何やら工場のような場所だ。

 

「アレン……。ここは一体何だ?」

 

「ともかく入ってくれ」

 

 クリフの尋ねを脇に退けて、アレンは扉を開け、二人を中へ導き入れる。

 従うと、まず大きなカウンターが二人の前に現れた。カウンターのうえには、無造作に紙片が乗っている。左に目をやれば三人がけのソファと大きな炉が、右手には作業場らしき広い部屋がある。

 その作業場の中に一人、少女が座っていた。

 

「あ、おかえり~」

 

 間延びしたような声音で言った彼女は、金髪碧眼の十二、三歳の少女だ。青い大きな帽子が印象的で、横髪が左右、均等に帽子から垂れている。

 服装もどこか変わっていて、作りからすると、ネルが用意したフェイトの服装に似ていた。白を基調にした青い大きな襟が付いた上着と、同じく青の半ズボン。年齢の所為か、それとも服装の所為か、どこか中性的な印象を与える少女だ。

 

「ただいま。……さっそく頑張ってるのか?」

 

 フェイトとクリフが様子を見守る中、アレンが少女に向かって歩き出す。

 彼女の前のテーブルの上には、鉄の塊がごろごろと転がっていた。

 

「まあね。それで? その人達が?」

 

「ああ」

 

 アレンが頷き、ここでようやくフェイト達を振り返った。少女を左手で示して、彼は口を開く。

 

「紹介しよう。彼女はメリル。この町で知り会った機械屋(メカニック)だ。――俺の通信機も、彼女に直してもらった」

 

「直してもらっただと?」

 

 問うクリフに、アレンは頷く。

 

「実は連邦用小型通信機(これ)はすでに八割近くの機能が停止していて、使い物にならなかったんだ。だから、この辺りで普及しているらしい電波に合わせて、送受信可能な通信機に改造してもらった」

 

「そ! このテレグラフを基に、ね」

 

 少女が取り出したのは、手の平サイズの、クリフやアレンが持っている通信機に比べれば少し大ぶりの箱だった。上半分に画面(モニター)を、下半分に入力ボタンを配置した簡易通信機だ。

 ――簡易と言ってもフェイト達基準の装備に比べれば、の話だが。

 

「よろしくね~。えっと……、青髪で大人しそうなのがフェイトさんで、金髪で背が高いのがクリフさん。よね?」

 

「え? うん……。そうだけど……」

 

 フェイトの視線がアレンを向く。アレンはメリルがいじっていた鉄塊を一つを手に取っていた。

 

「機械式小型爆弾か……」

 

「ええ。グリーテンじゃ一般的(メジャー)なものだけど、この辺じゃあまり見ないかもね。投擲したときの衝撃(インパクト)で電磁フィールドを発生させるの。――いわゆる電磁スタンボムね」

 

「威力の程は?」

 

「使ってみれば分かるんじゃない?」

 

 即答するメリルに、こく、と頷いて、アレンはフェイト達に向き直った。合点の行かない表情を浮かべながらも、中でもクリフが、表情を改めていた。

 

「それでお前が見せたいものってのは、そのボムのことか?」

 

「いや。……二人とも、この装置に見覚えはないか?」

 

 問いに問いで返したアレンは、作業場に置かれていた、メリルの背後にある高さ五十センチほどの箱をぽんと叩いた。所々、赤黒いペンキのような跡がついているが、それはクリフや、そしてヴァンガードに不時着した際、フェイトが使った覚えのある機器だ。

 正確には、搭載されていた機器。

 

「亜空間通信機!?」

 

 二人の目が見開かれた。

 

「俺が不時着したのは、パルミラ平原と聞いていたからな。昨日、ガストと一緒に運んで来たんだ」

 

「でもお前!」

 

 未開惑星保護条約は――!?

 と、メリルを一瞥しながら続きかけた言葉を、ぐ、と飲み込むクリフ。その彼に、やや苦笑して、アレンは軽く、肩をすくめた。

 

「残念ながら、小型(この)通信機同様、損傷が激しい。俺達の知識で直すよりも、本場の人間に手伝ってもらった方が素材を探す面でも効率的だからな」

 

(だから! バレたらどうすんだよ!)

 

 アレンの肩を握って極力抑えた声音でクリフが叫ぶ。

 仮にも連邦軍人が、誰よりも先に条約を破ってどうするんだと主張する彼に、アレンは淡白につぶやいた。

 

「問題ない。バレなければいいんだ」

 

「……いや、アレン?」

 

 きっぱりと答える彼に、フェイトも思わず首を傾げる。その戸惑う彼等を、面白そうに見て、アレンは微笑った。

 

「まずは生き延びる。条約も、命があってこそ成り立つものだ。それでもし咎められることになったら――」

 

「なったら?」

 

 思わず声を揃える二人が、不審そうにアレンを見る。目が合った彼の表情は、少しも迷いがなかった。

 

「その時は、逃げるしかないな」

 

「バックレかよ……」

 

 額を叩くクリフ。その彼に、こく、と頷きながら、

 

「多少、父には迷惑をかけることになるが、な」

 

 アレンは苦笑する。少しも悪びれた様子が無いのが、意外だった。

 ぽかん、と開いた口をそのままに、フェイトが、は、とメリルを見る。

 

「そ、それで……。これの修理はもう済んだの?」

 

 見たところ、一応、布か何かで拭いた跡はあるものの、赤いペンキか何かがこびりついている亜空間通信機。外見は汚いが、もしかすれば――……

 

「残念だけど、それはまだ。超長距離通信を可能にするための素材条件が、厳しすぎるのよね。……ホントにアレンが言うくらいのスペックが出せるの? コレ?」

 

「構造自体は君も理解している筈だ。ならば可能だろう?」

 

 問い返されて、メリルが困ったように、うぅむ、と唸る。工具セットを手にした彼女は、やがてテーブルに乗った鉄の塊をいじり始めた。

 考え事をする時の癖らしい。

 

「それは分かってるんだけどぉ……。どう考えても出力がねぇ~!」

 

「じゃあ、やっぱり直せないの?」

 

 深刻に表情を曇らせるフェイトに、メリルは首を横には振らない。

 

「現時点では、ね。アレンに教えてもらったから、大体の理論は把握してるつもりだけど……、私が知る限りの素材で代用するには、改良が必要ってこと」

 

「んで、その改良に、もうちょい時間がかかる、と。そういうことだな?」

 

「そう! 久しぶりに腕の鳴る仕事だもの! ワクワクするわ!」

 

 かちゃかちゃと音を鳴らすメリルの腕が、彼女の情動に合わせて小刻みに揺れる。その彼女を尻目に、フェイトは、そ、とアレンに耳打ちした。

 

(でも……、あんな小さな女の子で大丈夫なのか? 機械屋(メカニック)だって言ってたけど……)

 

(そいつは俺も疑問に思ってたところだ。……どうなんだ? その辺はよ?)

 

 小さな円陣を組んで、声が洩れないように顔を下げるフェイトとクリフ。その左、右を見渡して、アレンは小さく頷いた。

 

(問題ない。グリーテンの知識を持っているとは彼女から聞いていたが、俺達の機械知識をあそこまで理解するには、柔軟な発想と元々の深い見識が必要だ。その点、彼女は高く評価できる)

 

(理解出来てるっつぅ、その確証がどこから来たのか聞きてぇんだがな)

 

小型通信機(これ)を直して見せた。俺の言った理論を組み込んだ上で、この惑星に対応するよう改良して、な)

 

(……まあ、確かに)

 

 どこか呆然、とした二人の様子に、アレンが苦笑する。

 

「それじゃ、メリル。そろそろ俺達は戻る」

 

「ええ。任せておいて」

 

 かちゃかちゃと通信機をいじりながら、視線も上げずにメリルが言う。その彼女に頷いて、アレンは改めて、フェイト、クリフを見た。

 

「では行こう。あまり彼女を待たせても失礼だ」

 

「ああ」

 

 率直に言うアレンに頷いて、フェイトはメリルを一瞥する。

 

(あれが、もし直ったら――)

 

 そう考えると、自然、拳に力が入った。

 それは、一筋の細い光。だがそれでも、フェイトは心が晴れるのを感じながら、口元に浮いた微笑を隠すように、言った。

 

「戻ろう。ネルさんのところへ」

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