連邦軍人とフェイトくんの旅。   作:ばんどう

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39.シランドへ

 アリアスに戻った一行は、作戦本部である領主の館へは行かず、近くの宿に顔を揃えていた。

 ネルが、そう提案したのである。

 

「……………………」

 

 そう広くない宿の一室で、暗い沈黙の中、口火を切ったのはアレンだった。

 

「すまなかった」

 

 一言。皆の前で頭を下げる彼に、ネルの表情が険しくなる。下唇を噛んだ彼女は、アレンを見据えて次の言葉を待った。

 

「皆も察した通り、先ほど戦ったあの銀髪の男は俺の知り合いだ。――仲間と言っていい」

 

「……っ」

 

 『仲間』。

 そう言い切るアレンに、フェイトの表情も険しくなる。だが。この場にいる誰よりも、鋭い眼差しを送るのはクリフだった。

 それが反銀河連邦(クォーク)としての反応か、それとも別の理由からなのかは、アレンには分からない。ゆえにアレンは、己の誠意を示すためにクリフの眼差しを受けたうえで続けた。

 

「俺にはアイツにどんな考えがあるのか、具体的なものは分からない。だが、一つだけ言えることは……」

 

 自分の知り得る、『アルフ・アトロシャス』という人物について。

 一同を見渡したアレンは、皆の表情が硬いのを確認して――、少しだけ寂しげに目を伏せた。ただ一瞬の間だけ。

 

「アイツは任務でここに来ている。恐らく連邦上層部(うえ)からの命令で。……それが何なのか、あなたには心当たりがあるんじゃないのか?」

 

 クリフを見る。クリフは難しい思案顔を浮かべた後、フェイト、アレンの順に視線を動かした。相手の表情を探るように。

 否、

 何か話そうとして、言葉で説明できない何かを、どう説明するか悩んでいるようだった。

 

「……まあな」

 

 答えたクリフは、ゆっくりと目を閉じた。

 

「……悪りぃが、ネル、ロジャー。それからタイネーブとファリンも。少し席を外してくれねえか?」

 

「……………………」

 

 クリフの提案に、ネルの視線が鋭くなる。

 猜疑と、抗議の目。

 そうなる原因を作ってしまった自分を詫びるように、クリフの代わりにアレンが、頭を下げた。

 

「すまない……。だが少なくともアイツは――アルフは『グリーテン』の任務を果たそうとしているだけだ。貴方々を巻き込んでおいて今更と思うだろうが、シーハーツに敵意は無い」

 

「……それを、信じろってのかい? アーリグリフと、漆黒と一緒に現れたあの男を!」

 

「信じてもらうしかない。……すまない」

 

 言って、じ、とネルを見るアレンに、ネルの鋭い眼差しが返ってくる。

 しばらくの間。

 ネルは不意に踵を返すと、無表情にタイネーブとファリン、それからロジャーに向き直った。

 

「行くよ」

 

 それだけ告げて、部屋を出て行く。

 

「ね、ネル様!?」

 

 その彼女に意外性を感じたのか、タイネーブが問い質すような声をかける。ネルはふと足を止めた。振り返らず、部屋の外に視線を置いた状態で、

 

「私は先にクレアに経過報告をしに行ってくる。……アレン。あんたにはカルサアでの成果についても話してもらわなきゃならないんだ。分かってるだろうね?」

 

「ああ」

 

「そう。……なら、いい」

 

 つぶやいて、ネルが颯爽と部屋を出て行く。その後を慌ててタイネーブとファリンが追った。珍しく最後尾となったロジャーが、不安げな眼差しをアレンに向けていた。

 

「……兄ちゃん……」

 

 ロジャーらしからぬ弱り切った声に、アレンが視線を向ける。アレンは複雑な表情だった。ロジャーは不安そうに尋ねた。

 

「兄ちゃんは……、敵、じゃねぇよな?」

 

 問われて。覚悟していたが、アレンは一瞬、喉を詰まらせた。

 あの時のアルフの選択が、恐らく連邦の最適解だと分かっているからこそ、アレンは即座に二の句を告げない。

 

 ――任務とはいえ、連邦軍人が無関係の人間を傷つけるなどあってはならないというのに。

 

 彼が、アルフが、合理的な手段以外を選ばない男と知っているからこそ。

 アレンは拳を握った。

 

「ああ」

 

 その言葉の危うさを、誰よりも知っていながら。

 アレンは敢えて、それを口にした。

 

「……俺は、約束を守る。この先何があろうと――、決してロジャー達の敵にはならない」

 

 力強く、そう。

 

「!」

 

 瞬間。先に部屋を出て行ったネルが顔を上げた。

 驚いたように、は、と。

 

「ネル様?」

 

 そのネルの反応に、会話を聞いていなかったタイネーブが、問いかける。だがネルは振り返らず、しばらく、じ、と足元を見つめて――、

 

 ………………

 

 それから一階に下りていった。

 代わりにこちらを見るロジャーの表情が、ぱぁ、と明るくなる。

 

「そっか! なら、許してやるじゃん!」

 

 言ったきり、ぴょんっ、とロジャーは高くジャンプして、上機嫌に部屋を出て行った。その彼等の背を見送って、クリフが苦笑するように肩をすくめてみせた。

 

「ったく。単純な奴だぜ」

 

「……それで」

 

 フェイトが言い置き、クリフ、アレンを順に見る。先ほど戦ったアレンの同僚という青年の話を把握するために。

 クリフはがしがしと頭を掻きながら、まだあれこれと考えている。観念したような眼差しが、フェイトに返ってきた。

 

「まあ、なんだ。俺が知ってる事はなんつーか……。口ではちょっと言い表しにくいことでな。お前がそれを、信憑性を持って聞けるかどうかも微妙なところだ」

 

「信憑性?」

 

「ああ。実際、アイツに会って話をしねぇと納得も理解も出来ねえはずだ。――前も言ったが、俺が説明しても意味がねぇ。だから、俺は反銀河連邦(クォーク)親分(リーダー)が来るまで、と話を先送りにしてきた」

 

「だから、そのリーダーに会えばって! 一体、なんなんだよ!? 会えば何が分かるって?」

 

 フェイトが苛立たしげに問いかける。クリフの煮え切らない態度に焦れてきたのだ。

 強烈な敵がフェイトの前に現れた。それも、フェイト自身の何かを知っているらしい相手と、今後も戦っていかねばならない。

 そんな状況が、フェイトの心を粟立たせる。

 耳を傾けていたアレンが、問いかけた。

 

「そのクォークのリーダーは、ラインゴッド博士と関係がある人物なのか?」

 

 唐突に。

 

「え……?」

 

 振り返ったフェイトが不思議そうにアレンを見る。アレンは構わず、クリフを観察して――、フェイトに視線を向けた。

 

「考えてもみろ。クリフの話を統括すると、バンデーンにロキシ・ラインゴッド博士はさらわれ、その時期を境に、クォークのリーダーがお前に接触を図った。つまり、ラインゴッドの血縁者を巡って、少なくとも二つの組織が動いたんだ」

 

「父さんが……」

 

「察するに、クォークのリーダーは以前からお前に会う機会をうかがっていたんじゃないか? クォークのリーダーが知っている、お前についての何かを伝えるために。博士がバンデーンにさらわれたあと、連邦やバンデーンよりも早く、ハイダから脱出したお前をクリフが発見できたのは、バンデーンの襲撃目的を予想していたからだろう。……何故予想できたのか? それは博士がさらわれる理由を、クォークのリーダーが知っていたからだ」

 

「バンデーンに、父さんがさらわれる理由を?」

 

「ああ。でなければ襲撃直後、遭難したお前をクリフが一週間もせずに発見するのはおかしい。事件当時、クォーク艦がハイダ近くの宙域にあったのでもない限り、な」

 

 言いながらもう一度、クリフを見るアレン。そのアレンの言い分に、フェイトは深刻に表情を歪め、合点できずに首を傾げた。

 

「だからって父さんと反銀河連邦(クォーク)のリーダーに何の関係が? ……あり得ないよ。だって父さんは銀河連邦の研究員で……、一体どんな関係が持てるっていうんだ?」

 

「それは分からない。だが、少なくともバンデーンの狙いにはフェイト、お前も含まれているはずだ」

 

「僕が?」

 

 フェイトがぐっと表情を固め己を指差すと、アレンは頷いた。横目にクリフを見る。

 

「反銀河連邦のリーダーが民間人のお前に個人的ではなく、クォークという組織を寄越してきたのは、それだけフェイトが一部の人間にとって重要な人物だからだ。……違うか?」

 

「出会ってから今まで、何も反銀河連邦(おれたち)について聞いて来ないと思ったら……。そこまで読んでやがったか」

 

 ふ、と失笑して、クリフはお手上げと言わんばかりに肩をすくめた。だが、表情を改めたときには、真剣な眼差しでアレンを慎重に見ている。

 

「だがなアレン。お前そこまで分かってんなら、どうしてフェイト(こいつ)について何も聞いて来なかった? バンデーンが狙う標的だってのに――」

 

「だからフェイト自身がある程度、事態に対処出来るよう彼を鍛えている。いざという時に選択肢が無いというのは、なるべく避けねばならないからな」

 

「いや、そうじゃなくてだな」

 

 頭を掻くクリフに、アレンは、愚問、とばかりに静かに微笑った。

 不敵に。

 他の者を寄せ付けぬ、絶対の自信を込めて。

 

「……彼自身が何者であるかは、俺にとっては大した問題じゃない。俺が気にすべき点。為さねばならない点は、いかな状況であっても民間人(フェイト)を守ることだ。敵がバンデーンなら尚のこと。俺は俺に出来ることをする。――軍人として。友人として」

 

「!」

 

 瞬間。クリフとフェイトが、目を見開いた。

 迷う事無く、フェイト自身、と言い切ったアレンの洞察力にクリフが、友として自分を守る、と言ったアレンの人柄にフェイトが、それぞれまったく別の理由で、しかし、同時に息を呑んだのだ。

 クリフの反応を受けたアレンが、失笑気味に微笑う。

 

「あれだけ無関係な人間を虐殺したバンデーンが、この星に来ると言うんだ。ただの民間人のフェイトを巡って、クォークの貴方、そして連邦軍人のアルフがいるこの星に。これでフェイトに何もないと言う方があり得ないだろう」

 

 そう言い置いて、アレンは静かにフェイトに向き直る。蒼瞳はいつにも増して深い感情を滲ませていた。

 

「フェイト。俺がこんな事を言うのはお門違いかもしれないが。俺も、クリフ自身を信じている。彼はお前の為に身体を張れる。恐らく任務ということを度外視しても、お前が思っている以上に、お前のことを考えている男だ。そのクリフが会えば分かると言うのなら、今は待とう」

 

「…………」

 

「自分が何者であるか、当事者のお前が気にするのは当然だ。だが、いずれ分かると言うなら、性急になる必要は無い。クォークが来るまで――、もしかしたらバンデーンが来るまで取っておけば良い」

 

「…………ああ……」

 

 静かに微笑うアレンに、フェイトはぎこちなく頷いた。

 アレンの言いたいことは分かる。おかげで、クリフが何も話さないことについても、ある程度の納得はできた。

 だが――、

 

(……それでも、バンデーンが僕を狙ってるだなんて……、非現実的すぎるだろ……? 僕は普通の、ただの一般人だっていうのに……)

 

 父親がさらわれた現実と、バンデーンの狙いが自分だという非現実が、どうしても理解に二の足を踏ませる。

 ―――それに。

 

(それにもし……。もし仮に、奴らの狙いが真実(ほんとうに)僕だったら……、ハイダは、ヘルアは僕の所為で……?)

 

 ハイダが炎に飲まれたのも。

 ヘルアの乗組員を犠牲にして、逃げなければならなかったのも。

 ――ソフィアと、別れることになったのも。

 

(ソフィアを……、皆をあんな目に遭わせたのは、僕の所為、なのか……?)

 

 考えると、ぞ、と背筋に寒気が走った。恐ろしいまでに、ぞわりと全身の毛穴が開く感覚に、フェイトは一瞬、身を強張らせた。

 

 ――そんな筈は無い。

 

 ささやく声が、思考に歯止めをかける。即座に歯を噛んだフェイトは、ぶんぶんと頭を二つ振って、思考を断ち切った。

 

「……………………」

 

 フェイトの様子を無言で、アレンは見ている。今、自分(アレン)が言った事に何も嘘は無い。

 無い、が――。

 

(この先、何が待っているか分からない。だが、その状況に陥った時、フェイトの精神(こころ)が折れない事を、俺は祈るしかない)

 

 彼の未来が過酷であろうことは、想像がついていた。恐らくそのとき、自分は力になれないことも。

 

 ――当事者では、ないのだから。

 

 アレンは静かにクリフの横顔を一瞥して、目を伏せた。

 

(ロキシ・ラインゴッド博士……。紋章遺伝学の銀河的権威……)

 

 バンデーンが狙う、博士の息子。

 その関連から導き出せる結論を、アレンは胸の奥に押し込める。

 誰にも気付かせぬように。

 ただ杞憂である事を願って。

 

 

 

 ……………………

 ………………

 

 

 

 ――アリアス作戦本部、領主の館にて。

 宿を出た後、その足でクレアの元に向かったネルは、ロジャーを置いて定時報告に来ていた。

 

「すまないね、クレア。後のこと、頼んだよ」

 

 ネルはいつものように報告を終わらせたあとクレアを労い、急ぐように席を立つ。頷くクレアが、真剣な眼差しをこちらに向けてきた。

 

「心配しないで。……シランドに戻るのね?」 

 

「ああ、極秘のはずの施術兵器……。サンダーアローのことがアーリグリフに筒抜けなんだ。早急に陛下に報告しておく必要がある。奴らも馬鹿じゃない……。きっと何かしら動いてくるはずだよ」

 

 言いながら、頭の隅ではアレンと同じ服をまとった――あの男のことを考えている。

 奴がどう動くのか。

 それによって戦況も変わる。さすがにアルフの事ばかりは、クレアに報告せざるを得なかった。

 ――アレンの信用を、一時落としてしまうことになるが。

 

(彼ならきっと、その辺は自分で何とかするさ……)

 

 心のどこかに、確信めいたものがあった。

 そのネルの沈黙を『悩み』と取った目の前の親友は、気遣わしげに声を落としてきた。

 

「その件なんだけれど、私の部下で一人行方知れずの者がいるのよ。あなたたちが戻って来てすぐにいなくなったわ。恐らく、彼がアーリグリフに情報を流していたのでしょうね……。残念だわ」

 

「そう……」

 

 ちらり、とこちらを伺ってくるクレアが、アレンとの関連性を指摘しているようだったが、ネルは取り合わなかった。

 

「そろそろ、決戦の時が近いのかもしれないね」

 

 ネルは扉を見やる。

 そうやってクレアの話題に乗らず、アレンへの信頼を態度で表すと、一瞬、む、とクレアの表情が固まったが、ネルは気付かなかった。

 

「……まったく、貴女は。えらく彼を信用してるのね……」

 

「まあね。……アレンはあの時、迷う事無く私達に加担してくれた。相手が自分の本来の仲間と理解した上で、自分の国でもないシーハーツのために。私がアレンの立場で、もしあの時、戦った男がクレアだったら……私はアレンのように動けたかわからない。私たちのような信頼関係があの二人にはなかったのだとしても、仲間に刃を向けるのは相当に覚悟がいる事だよ。……そう思うんだ」

 

 言った彼女の口許に宿るのは、クレアの知らない、力強い笑みだ。

 誰かを励ますためでも、己を奮い立たせるためでもない。この戦時中、少し前までクレアは一度も見たことの無かった笑み。どこか楽しげで、子供のように純粋なネルの眼差しは――以前、台地奪還の即日決行を言い始めた、あの無茶な夜を思い出させる。

 ネルはドがつくほど実直な人間だ。その彼女が作戦立案をしたなら、クレアは恐らくハラハラさせられることはあれ、度肝を抜かれたりはしない。事前相談と報告が、必ずあるためだ。

 ならばクレアですら全容を掴めない状況で、ネルが未来を期待するような、そんな表情にさせる無茶な作戦の首謀者といえば――

 

「……そう。それは何よりね」

 

 つぶやくクレアの声が、そっと落ちる。

 

「どうかしたかい? クレア?」

 

 表情を凍らせている親友を、ネルが不思議そうに尋ねてくる。クレアはふるふると首を横に振った。少しだけ愁いを帯びて。

 

「まあ、そこは追々、決着をつけていきましょう」

 

「……ああ?」

 

 合点のいっていないネルが、曖昧に返事をする。気にせず、クレアは続けた。

 

「それじゃ。私達も会議室で皆さんを待ちましょうか」

 

「ああ」

 

 いつもどおり、クレアがにっこりと笑うと、ネルが安心したように頷き、席を立つ。

 その背を見送って――、クレアは、そ、と目を閉じた。

 

「……アペリスの御加護がありますように」

 

 それはネルにか、自分にか。

 つぶやいたクレア自身にも分からなかったが――。

 

「少なくとも、そう簡単にネルはあげませんよ。アレンさん……」

 

 言ったクレアは、挑戦的に、ふふ、と微笑んだ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 カルサアでアレンが行なったウォルター老との会談は、思いの他うまくいっていた。

 アレンの提案した『和平』にウォルターは合議しなかったが、代わりに一時、風雷はシーハーツ軍との交戦を避けると口約してきたのだ。

 

 ――それもアストールの報告によれば、なかなか積極的な姿勢(かたち)で。

 

 この予想外の展開には、クレアも、そしてネルでさえも驚いた。

 

「一体、どんな手段()を使ったんだ? アレン」

 

「技術協力の話を持ちかけただけだ。寒冷地でも食糧を栽培するための」

 

 本人から報告を受けたとき、誰もが抱くクリフの疑問に、アレンは簡潔に答えた。

 曰く、ネルも知らなかったが、グリーテンには植物を強化させる技術が発展しており、その技術を使って寒さに強い植物を培養する、というのだ。

 これがうまく行けば、アーリグリフは雪山にも稲を植えられ、食糧難に喘ぐこともなくなるという。

 その話をどうやってウォルターに納得させたのか、ネルには分からないが、あの慎重な老人が動いた、ということは、それなりの証明をやってみせたのだろう。

 にわかには、信じがたいが。

 

 ――そうして

 

 シランドの女王に現状報告をしにいくことになったフェイト達は、アリアスでアレンと別れた。

 アーリグリフ軍の動向を気にしての、アレンとしては同僚の動きを配慮しての、提案だった。

 

「もしアルフがアーリグリフ側につけば、あいつを止められるのは俺しかいない。仮にもシーハーツ軍に余計な重荷を負わせた本人が、一番危険な場所(ここ)を離れるわけにはいかないだろう」

 

 と、いう言だった。

 一応の承諾と、何より、何故かクレアからの大賛成を受けて、アリアスを出たフェイト達は、これよりシランドに向かうこととなる。

 

 フェイト自身の事。

 シーハーツの戦況。

 

 道中に考えねばならないことは多い。

 アレンがいないだけで、シランドとはこんなに近い都市だったのか――。と誰もが思ったのは、その日、フェイト達だけの暗黙の了解となった。

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