連邦軍人とフェイトくんの旅。   作:ばんどう

54 / 156
side phase2 妖精との再会

 ブルォウンッッ!

 

 バイク効果とでも言うべきなのか。

 ダグラスの森まで、ほんの十数分で辿り着いたロジャーは、まったく疲れ知らずに走り続けるバイクを見上げて、ほぅ、と感嘆の息を洩らした。

 

「兄ちゃん、こいつ……ちっとも疲れねぇんだなぁ!」

 

 しげしげとバイクを観察してみる。

 ロジャーのこれまでの経験から、どうやらこいつは疲れるどころか息切れすらせず、ずっと走り続けている。

 それが機械ゆえに、ということを理解出来ないにしても、ともかくこのバイクは「凄いのだ」と直感的に察したロジャーは、おぉ、と称えるようにバイクの装甲を叩く。

 傍らで、きょろきょろと辺りを窺っていたアレンが、不意にぴたりと視線を止めた。

 

「……居た」

 

「へ?」

 

 つぶやくアレンに、ロジャーが首を傾げながら顔を上げる。するとアレンは、森の奥をじ、と見据えて――、静かに微笑した。

 

(んん?)

 

 アレンの視線の後を追ってみると、明るいオレンジ色の髪をなびかせた妖精が、ふわりと飛んできた。

 白のフリルがついた紫色のドレスをまとった、ダグラスの森の妖精だ。

 

「あれ? アイツは……」

 

 その妖精に見覚えがあって、ロジャーがきょとんと瞬いた。木々の間をふんわりと飛んでいた妖精が、こちらに気付くなり、嬉しそうに破顔する。

 

「あぁ! 会いにきてくれたんだ!」

 

 弾むように言って、妖精はアレンを見つけるなり嬉しそうに飛び込んできた。その彼女を、そ、と左腕に留めて、アレンが問う。

 

「友達は出来たか?」

 

「……えっと……、それは、まだ……」

 

「そうか。焦る事はない……。ゆっくり作ればいいんだ」

 

「……うんっ!」

 

 妖精はどこまでも嬉しそうだ。目に見えて興奮している彼女は、少し目が潤んでいるようにも見える。

 と。

 二人の傍らに立ったロジャーは、一向に話がこちらに振られるそぶりがなかったので――、特に、妖精の方がロジャーの存在に気付いていないようだったので、ことさら大きく、こほんげほん、と咳払いをした。

 ――しかし。

 

「それでね! 是非あなたにも見て欲しい場所があるの♪」

 

 愛らしく笑う妖精は、やはりロジャーに視線を向けない。

 

「うぉっほん! おっほんっっ!」

 

「どうした?」

 

 わざとらしいまでのロジャーの演技を、アレンが不思議そうに見下ろしてくる。その隣で、アレンを見上げていた妖精が、ロジャーに気付いて、げ、と渋面を作った。

 

「よ! 久しぶり!」

 

 しゅたっ、と右手を上げて挨拶するロジャー。少し前まで幸せそうに笑んでいた妖精が、なし崩しに不機嫌に顔を歪めていった。

 

「ロジャー!? あなた、また凝りもせずにルシオとの男勝負とか言って、迷子になりにきたの!?」

 

 じろり、と上から下まで、ロジャーを睨み付けて、妖精は、ふん、と小さな背を反らす。

 それ自体は構わないのだが――、

 

「……迷子?」

 

 首を傾げるアレンの声に、ロジャーの顔が凍った。

 視界の端では、妖精が腰に手を当てて、叱るような素振りを見せている。すっかり『お姉さん』顔だ。こちらの気も知らずにぱたぱたと飛んでいる。

 ロジャーは冷汗が頬を流れるのを感じながら、ぶんぶんと首を横に振った。あたふたと両手足を振って、

 

「ち、違わぃ! オイラがそんな、格好悪いことするわけねぇだろ!? ……やい! 森の妖精! それはオイラとお前だけの秘密だって、あれほど言ったじゃんかよ! 約束を破る奴は最低なんだぞ!」

 

「お、お前って! 馴れ馴れしく呼んじゃダメ! 誤解されちゃうでしょロジャーの馬鹿!」

 

 両者が時間差でアレンを窺いながら声を張り上げ合う。その二人を交互に見やって、アレンが小さく頷いた。

 

「……つまり。二人は知り合いなんだな?」

 

「う、うん! そう! ただの知り合い! 良く森に迷い込んでくるから、私が面倒見てあげてるの!」

 

「んだとぉ!? オイラがいなきゃ、いっつもパペットゴーレムの連中にいじめられてるじゃんか! むしろそれを言うなら、オイラがお前の面倒見てやってるんじゃん!」

 

「なんですってぇ!?」

 

「んだよぉ!?」

 

 ぱたぱたと羽を羽ばたかせながら、手足をやきもきと動かす妖精に、ロジャーも全身から湯気を出さんばかりにぷんぷんと怒っている。

 その二人をなだめて、アレンは話を続けた。

 

「という事は、自己紹介の必要はないな。……すまないが、今回は君に道案内を頼みたい」

 

「道案内?」

 

 会いに来てくれたんじゃないの、と首を傾げる妖精に、アレンはすまなさそうに首を振った。

 

「……すまない。俺達はこの森の先にある遺跡――、サーフェリオの空中庭園という所に用があるんだ」

 

「おぅよ!」

 

 アレンの傍らで、ロジャーもこくと首を縦に振る。その二人を交互に見やって、妖精は残念そうに、そっか、とだけつぶやいた。

 目に見えて落ち込んだ彼女に、アレンはすまなさそうにしながらも、視線をダグラスの最奥――空中庭園があると言われている方角に向ける。大体の方角が分かっているのは、サーフェリオでロジャーから借り受けた、方位磁石のためだ。

 とはいえ、今回はロジャーが同伴しているため、道なき道を行くわけにもいかない。

 

「君は、空中庭園がどれぐらいの規模の遺跡か、知っているか?」

 

 森の妖精が心配そうに、アレンを見据えた。

 

「規模って、広さの事でしょう? ……私、森から出られないから、詳しいことは分からないけど、仲間の妖精から『あそこには凄い守人(ガーディアン)がいる』って聞いたことがあるわ」

 

守人(ガーディアン)……?」

 

 遺跡といえば仕掛けがあるのは当然だが、アレンは別の何かを考え込むように少しだけ目を細めた。

 妖精が続けた。

 

「お宝目当てなら、引き返した方がいいよ。……強欲な人間が、あの遺跡から帰ってこなくなった話なんて五萬とあるの。危ないわよ」

 

「心配すんなって! オイラ達はただ! えっと、……」

 

「メトークスだ」

 

「そう! 『めとーくす』っていう花を求めてここにやって来ただけだぜ! 言わば、アミーナ姉ちゃんのためじゃん!」

 

 ロジャーが胸をドンっと叩く。

 妖精はやはり不安そうな表情のまま、押し黙っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。