「全力で来い。後の面倒はきっちり見てやる」
「言ってくれんじゃねぇか、アレン!」
不遜なアレンの態度に、クリフはガントレットを弾き、ミラージュを仰いだ。
「いくぞ! ミラージュ!」
「了解です、クリフ」
クラウストロコンビが瞬時、走り出す。アレンは動かない。意味深に微笑う彼に、クリフは尊大に言い放った。
「叩き潰すぜっ!」
オーバースローイングで高めた気を地面に叩きつける――マイト・ハンマーの炎が、アレンに向かって爆ぜた。それを皮切りに、ミラージュ、フェイト、ネル、ロジャーが一斉に動く。
「バーストナックル!」
ズドオオゥッ!
アレンの拳の炎が、マイト・ハンマーを打ち破る。強烈な炎の槍は攻撃線状にいたネルをも襲い、彼女は舌打ちと同時、左に跳んで炎を躱した。
「ハァッ!」
そこにフェイトが身体を縮め、猛然と突き込む。狙いはアレンの左脇腹。剣尖が軍服に触れる寸前、アレンの裏拳がブロードソードを叩き落とした。
(ちっ!)
胸中で舌打つ。同時、アレンが抜刀し、ガラ空きになったフェイトの首を狙う。
――そこを、
「クレセントローカス!」
ミラージュの蹴りが走る。
その日も、彼らの地獄は続いていた。
シーハーツ兵たちが行っている実科訓練など比ではない、本物の地獄の時間が。
フェイトくん修行編part4 究極の武器
数刻もすると、いつも通り、立っている者がフェイト以外に居ない。
彼は倒れ伏した仲間達を静かな瞳で見つめ、す、と悪魔の連邦軍人を睨んだ。
「流石だよ……。ならば僕も使わざるを得ない。この日の為にコツコツと稼いで作り上げた、究極の武器を!」
言って、彼がさっそうと取りだしたのは――輝かしいほどの光沢を放つ、鉄パイプ。
「何だそりゃぁああああ!」
クリフは声を限りに叫んだ。
「フェイト兄ちゃん……オイラのおやつを買わずに、そんなもん鍛えてたんか……?」
「アンタ……、最近路銀が少ないと思ったら、アンタの仕業かい」
ロジャーとネルの瞳が、殺気で暗くなる。フェイトはそんな事には構わず、くるりと振り返って、ビッと親指で自分を指差した。
「オーナーと呼んでくれっ! その筋では、僕は多くのクリエイターと契約してるんだっ!」
爽やかな営業スマイルと共に、フェイトは鉄パイプを構えると、アレンに向き直った。
「そして今こそ見せよう! 多くのクリエイターを集めて作り上げた究極武器、鉄パイプの力を!」
「テメエがレプリケーターで剣作る前に持ち合わせてた、ただの鉄パイプじゃねぇかぁあああ!」
「アンタ、その棒っ切れで、どうするつもりだい?」
「いいから見ていろぉおおお!」
改造された鉄パイプに、フェイトの気と紋章が宿る。
黄金に輝くパイプを手に、フェイトは鋭く踏み込んだ。
「つぇりゃぁあああああ!」
カァアアンッ……!
陽光を浴びて、鉄パイプが美しく輝く。
が。
ズバ――――
カラン、カランカラン……
迎え撃つ兼定に、呆気なく切り裂かれた。
ぶしゅっ……!
フェイトの胸に袈裟状の傷が出来る。――彼は、穏やかに笑った。
「フッ……。まだ究極武器には遠かっ……た……」
「アホぉおおお!」
「ネル、フェイトさんは何をしたかったのですか?」
「聞くんじゃないよ、馬鹿の事は。タイネーブ、ファリン、本気で行くよ。あの馬鹿の分まできっちり決めないとね」
据わった目をしたネルが、短刀を構える。
一方のアレンは、兼定を見、こくりと満足げに頷いた。
「よし。とりあえずフェイトに限ってだが、致命傷を避ける一撃が出来るようになったぞ、兼定……! あとはこれを、全員に出来るようになるだけだ。――今の感触を、忘れないようにしないとな」
「テメエはまったく加減なんぞしてねえだろうがぁあああああ!」
「どの口がほざいてんだい! どの口がっ!」
――彼らの死闘は今日も続く……。