連邦軍人とフェイトくんの旅。   作:ばんどう

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7.救出の理由

 鉱山の町、カルサア。

 ここは、戦争の最前線に位置するアーリグリフの町だ。

 戦時中だというのに、どこか長閑な空気に包まれた町は、広間を駆け回る子供達の笑い声や人々の活気で満ち溢れている。

 カルサアは、倒壊した家屋の残るアリアスとは比べ物にならない豊かさだった。

 とはいえ、のんびりしているのは市民だけ、というのがこの町の本質だろう。

 アレンは宿の窓から風雷基地を見下ろして、ネルに視線を戻した。

 

「どうして、助けになんか来たんだい……?」

 

 ファリンとタイネーブを安全な場所で寝かせた後。ネルはフェイト達に問いかけていた。

 

「どうしてって……」

 

 言いながら、フェイトは戸惑ったようにクリフ、アレンを見る。しかし数秒後には意見を募ろうとした自分を否定して小さく頭を振ると、ネルを見やって小さく笑った。

 

「見捨てられるわけないだろう?」

 

「……!」

 

 ネルがきょとんと瞬く。彼女もいろいろと反論を考えていたようだが、フェイトの率直な意見は、彼女が想定したどの言葉にも当てはまらなかったらしい。

 

「でも……!」

 

 気勢をそがれた彼女は、すぐに態勢を立て直した。ここで彼等の行動を認めてしまえば、これから先、同じような事があった時に彼等の安全を保障しきれなくなる。

 ゆえに彼女は思いつくまま反論しかけて、ふと、その自分を戒めた。

 首を振って、私情を殺し、なに食わぬ顔でフェイトに向き直る。

 

「いい、フェイト。私があんた達を助け出したのは、あんた達なら、聖王国シーハーツを救うことが出来ると考えたからだよ」

 

 諭すように、冷静に。

 ネルはフェイトを見据え、腕を組んだ。

 

「だからこそ私は、危険を冒してまでアーリグリフ城に侵入した。私一人を助けるために、あんた達が危険な目にあってしまったら、そもそも何の意味もないんだよ。たった一人の人間と国民全体の命。単純な計算だろ? どっちが大事かは子供でも分かるさ」

 

「人の命に重いも軽いもないだろう! もともと、そんな言葉に賛同する気もなかったけど、カルサア修練場でアレンに言われて気が付いたんだ。『生命』っていうのが、どれほど尊(おも)いものなのかを! なのに、助けることが出来るかもしれない命を見捨てるべきだなんて、絶対に間違ってる! 命の尊さは、計算なんかでは表せやしない!!」

 

 フェイトがネルを睨んだ。冷静に、まるでフェイトを観察するような視線を向けてくる彼女を。

 対峙した彼女は、冷めた表情で、呆れたように、疲れたように首を振った。

 

「確かに、理想はそうなのかも知れないさ……。けど、これは戦争だ! みんなを平等に救うことなんて誰にも出来やしない。私達は、少しでも多くの人を助けられるように動くしかないんだ」

 

 ネルは言い放つ。

 一分の、淀みなく。

 

(ネルさん……)

 

 それが、フェイトには腹立たしかった。

 修練場であれほど仲間のために激怒した彼女を、否定されたようだ。

 歯痒い気持ちで奥歯を噛むと、握った拳に、力がこもった。

 

「じゃあ聞くけど……。ネルさんは子供達にもそう教えるつもりなのかい? より多くの人を救うためになら、たとえ助けることが出来る人でも、見殺しにしろってさ……!」

 

「それは……」

 

 言葉に詰まるネルを、フェイトは畳み掛けようと口を開く。だがそのまえにクリフが割り入った。

 クリフを見上げると、苦笑するような表情がそこにある。

 

「まあまあ……。言いたいことは分かるぜ。二人ともな。そりゃ、理屈だけで言えばより多くの人間を助けられるように動くべきだろうさ。……けどよ、人の命を天秤にかけるのが正しいのかって言われると、俺にはどうも納得ができねぇ。こういうのは、そのときの状況と答える人間とによって、毎回正解が違うんだろうな。ま、いわば究極の選択ってヤツみたいなもんだ」

 

 場を和ませようと、クリフのどこか呑気な声が響き渡る。その気遣いに、フェイトは納得こそしていないものの、顔を伏せて唇を噛んだ。

 そのフェイトを、じっと見据えて

 

「納得なんか出来なくてもいいんだよ。そうするしか、道はないんだから……」

 

 ぽつりとつぶやいたネルが、颯爽と踵を返す。それが部屋を出る合図だった。フェイトは思わず、顔を強張らせた。

 このまま行かせてはならない。

 これから己の信念を実行するのなら、なおのこと。

 フェイトはネルを見据え、言った。

 

「ネルさん!」

 

 部屋を出ようとしたネルの、足が止まった。

 

「僕は、ネルさんだから理解(わか)ってほしいんだ! そうすればきっと、新兵器になんか頼らなくたって道は開ける!」

 

(…………フェイト……)

 

 小さくつぶやいたネルは、哀しげに瞼を伏せて、顔を俯けた。

 少なくとも、いま、それは――。

 その後に続く言葉を殺し、彼女はどこか遠くに視線をやる。息とも取れない、小さな溜息。すると、その彼女を労わるように、クリフが声をかけてきた。

 

「ともかく。お前が無事だってんで、俺もコイツも喜んでんだ。シランドまでは世話になるぜ?」

 

「…………ああ……」

 

 頷いた彼女は、フェイト達を振り返って、小さく微笑った。

 どこか、疲れた微笑みで。

 

 

 

 

 一連の会話が終わって、ようやく部屋に落ち着いたアレンは、膝から力が抜けると同時、その場に倒れこんだ。

 どっと鈍い音が立ち、頬を打ちはしたものの、幸いながら意識がある。

 歯を食いしばりながら、ベッドににじり寄ると、ほどけかけた包帯をゆっくりと剥がした。

 凍った脇腹が、姿を現す。皆には――特に敵には気付かれないよう、氷の紋章術で無理矢理血を固めていた。ヒーリングを使わなかったのは、少しでも体力に余裕が出来れば気絶すると自覚したためだ。

 アレンの身体が、動く時間もそう長くない。

 

(さすがに、そろそろ手を打つべきだな)

 

 苦笑する。先ほどの会話は、ほとんど聞こえていたが、加わるほどの余力がなかった。幸いネルもフェイトも会話に集中して、こちらの容態に気付かなかったようだが。

 

「……っ!」

 

 傷の具合をはかりながら、アレンは包帯を巻き直す。一応、ファリンとタイネーブを診る際に、消毒液と新しい包帯を拝借したため、簡単な処置は出来る。握力がほとんど無くなった所為で、傷口に消毒液を塗るだけでも手が震えて苦労した。この痙攣は、修練場で戦っていた時からずっと続いていたものだ。

 拳を握っていられたのは、それでも神経が繋がっていたから。

 それも、いま切れていた。

 

(……)

 

 包帯を巻き終えた所で、消毒液の瓶に蓋をしようとした手が、何度も空を掻いた。腕から先の感覚がないと知る。少し眠らなければ、ヒーリングどころか、この瓶を元に戻せるかどうかも分からない。

 今すぐ発つのならアレンの体はもたないが、明日の朝まで待ってくれるというのなら、少しは体力が回復する。それで何とかなるだろう。

 修練場でアルベルとの戦いを見送ったのは、これが理由の一つだ。

 それに――……。

 そう考えたところで、アレンは思考を停止した。瞬間。フェイズガンの銃口を扉に向ける。

 

 ――いつでも撃てる。

 

 反射的な臨戦態勢で、彼は引き金(トリガー)を絞る手を止めた。

 

「……なるほどな……」

 

 戸口に立っていたのは、思わせぶりに腕を組んだクリフだった。

 

「……ノックぐらい、するべきだと思うが?」

 

 苦笑しながら、銃口を下す。アレンの不遜な態度に、クリフは頭を掻いた。

 

「テメェが、んなタマかよ。……ったく! 修練場で妙な動きをすると思ったら、そういうことか」

 

 ため息を吐きながら、クリフは横目でアレンの脇腹を見た。既に傷口は新しい包帯で覆われている。だが、アレンの顔色は唇までもが白かった。

 相当、無理を重ねたようだ。

 険しい表情のクリフに、アレンは思わず苦笑した。

 

(やはり、彼だけは隠し通せないか……)

 

 そう胸中でつぶやいて、アレンは静かに、首を横に振る。

 

「緊急だったからな。仕方ない」

 

「アリアスを出た時から動ける傷じゃなかったんじゃねぇのか?」

 

 クリフが睨む。が。アレンは取り合わなかった。平静な様子で、首を横に振る。

 

「あの状況では、少しでも多くの情報が必要だった。それに傷がこの程度で済んだのは、あなた方の協力があってこそだ。……本当に、感謝している」

 

 改めて頭を下げてくるアレンを、クリフはため息混じりに見やった。

 

「俺が言ってんのは、そういうことじゃなくてだな――」

 

「傷の具合なら、自分が一番承知しているつもりだ。気遣いは有難いが、問題ない」

 

「……ったく」

 

 焼け石に水。

 どうやら、アレンは自分の身を労わる気はないらしい。

 困ったように頭を掻いて、クリフは踵を返す。肩越しに、アレンを睨みながら彼は言った。

 

「ともかく、今日のところはゆっくりしとけ。敵地とはいえ、一日ぐらい潜伏できねえわけじゃねえからな。フェイトとネル(あの二人)には、俺から言っといてやるよ」

 

「……すまない」

 

「まったくだ。じゃあな!」

 

 部屋から去っていくクリフを見届け、アレンはもう一度、包帯の下にある傷口に、視線を落とした。

 

「……………………」

 

 どうやら、これでもう一つの用件も済ませられそうだ。

 そう、胸中でつぶやきながら。

 アレンは静かに、窓の外を見下ろした。

 

 

 

 ……………………

 …………

 

 

 

「今日一日、カルサア(ここ)で待機?」

 

 宿屋のフロアに下りてくるなり、きっぱりと告げたクリフに、フェイトは目を丸くした。

 

「どうしたんだよ、いきなり? アレンの話じゃ、タイネーブさんとファリンさんの傷も、それほど深刻じゃないって……」

 

「それでも、一応休ませた方がいいに決まってんだろ? お前だって、いつまた倒れるやら――」

 

「それは……!」

 

 むっと反論しようとするフェイトを抑えて、クリフがネルを見る。腕を組んだ体勢で、考え込んでいる彼女は、無表情のままクリフを見返して、それから異論ないとばかりに首を横に振った。

 

「それじゃあ、アタシは部屋で休ませてもらうとしよう。――アンタ達も、くれぐれも目立つような行動は控えて」

 

「へいへい」

 

 大柄に頷くクリフに鋭い視線を送って、ネルは部屋に戻っていく。見送ったクリフが、さてと、とつぶやいて踵を返した。

 

「じゃ、明日まで自由行動だ。っても、騒ぎを起こすなって言われると、俺にゃ動くなってことと同じだけどな」

 

 それなりに楽しんで来い、とだけ残して、クリフもまた部屋に戻る。一人、置かれたようにフロアに残ったフェイトは、短いため息を吐いた。

 

(自由行動か……。タイネーブさんとファリンさんのこと、今までネルさんとアレンに任せきりだったし……。お見舞いくらい、行ってみようかな?)

 

 胸中でつぶやきながら、宿を出る。

 ネルの話によれば、宿の斜向かいに封魔師団の隠れ家があるとのことだ。宿を出て教わった通りに足を運ぶ。コンコンと適当なノックをしてから扉を開けると、焦げ茶色の短髪の青年が、こちらを振り返っていた。

 

「あなたは……」

 

 かすかに目を細めて、青年が窺うようにフェイトを見る。見た事のない顔だった。のっぺりとした起伏の少ない顔に、糸目ではないものの細めの双眸。どこかのんびりとした雰囲気はカルサアに馴染んでいる。派手な見た目が多いシーハーツの隠密にしては、あまりにも平凡な印象を受ける青年だ。

 思わず、家を間違えたと思ったフェイトは、反射的にその場を去ろうとして、慌てて自分を制した。

 

「す、すみません! 僕は……」

 

 一応、家間違いを謝ろうとして口を開閉させると、焦げ茶色の髪の青年は合点したように、ああ、と頷いた。こちらに歩み寄り、頭を下げてくる。

 

「あなたがフェイト様ですね。はじめまして」

 

 言われて、フェイトはハッと青年を見上げた。なんの特徴もない、と思ったが近寄られると意外に背が高いことに気づく。

 

「私はネル様の下で封魔師団『闇』の一員として働いているアストールと申します。以後、お見知りおきを……」

 

「アストール、さん?」

 

「はい。ネル様をお助けいただき、本当にありがとうございました」

 

 柔和な笑みを浮かべるアストールを前に、フェイトは、はぁ、と生返事を返した。

 理由は二つ。

 一つは、アストールが隠密などという不穏な職業をする人間には見えなかったこと。

 もう一つは、『二度と危険な真似をするな』とだけネルに釘を刺されていたからだ。

 彼女の部下ならてっきり、同じ事を言うと思った。それがまさか、礼を言われるとは。

 ぽかんとアストールを眺めていると、アストールはフェイトの考えを見透かしたようだった。

 

「あのお方の立場上、あなた方にはお礼を言いづらいのでしょうが。本心では心からの感謝をしているはずですよ」

 

「……そうだと、いいんだけど」

 

「ええ。それは確かなことだと思いますよ。……それに、ネル様のみならず、タイネーブとファリン、2人までも助けていただき、本当にありがとうございました。フェイト様には感謝の言葉もございません」

 

「そんな……。当然のことをしたまでだよ」

 

 照れ隠しに笑うと、アストールはなんとも言えない、複雑な笑みを浮かべた。

 どこか寂しい、哀しい表情だ。

 笑っているのに、そう見えた。

 

「アストールさん……?」

 

 その真意を測りかねて、フェイトは首を傾げる。アストールは社交的な、また最初に見せた柔和な笑みを浮かべて、その感情を拭い去った。

 

「それでフェイト様。この度はタイネーブとファリンの様子をお訪ねに?」

 

「うん、そうなんだ……。ずっとアレンやネルさんに任せっきりだったから……」

 

「アレン様……。ああ、あの方のことですね。何でも医術に覚えがあるとかで――。おかげでファリンもタイネーブも、大事に至らずに済んだのですよ」

 

「そうなの?」

 

「ええ。何分、処置が早かったものですから」

 

 言いながら、アストールは部屋の奥にある階段へ歩み寄る。フェイトを振り返った彼は、階段を右手で示して、にっこりと笑った。

 

「では、2人はこの上にいますので」

 

「分かった」

 

 階段を上がる。

 屋根裏部屋にはすでに、床をブラブラと歩く2人の姿があった。

 

「ふ、二人とも!?」

 

 驚いて眼を丸めた。こちらに気付いた二人が、ぱっと破顔する。

 

「あ、フェイトさん」

 

「もう起きて大丈夫なの!?」

 

 世間話でも始めるような、おっとりした口調のファリンに、フェイトはおろおろと視線を迷わせた。

 確かに、アストールからは大事に至らずに済んだ、といま聞いたが、クリフは二人の容態を考えてカルサアに留まるべき、と決定したのではなかったか。

 てっきり、自分が思っているより二人の傷は深いのだと思っていた。

 

「ええ。もう大丈夫ですぅ! ほら、この通りぃ」

 

 ファリンが元気に、右腕を曲げてみせる。力こぶを作っているようだが、残念ながら細い二の腕だった。傍らで、タイネーブが苦笑した。

 

「私もビックリなのです。まさか、これほどの医術をお持ちの方がグリーテンにいらっしゃったなんて」

 

 手当てしたばかりの包帯や湿布が痛々しいが、それでも修練場で見たときに比べれば、二人の容態は格段に良くなっている。

 こうして元気に、部屋を歩き回るぐらいには。

 

「そっか。アレンが――……って、あれ? そういえば、さっき、クリフがカルサアに泊まるって言った時、宿にいなかったような?」

 

「アレンさんが? ……おかしいですね。宿に戻るとおっしゃっていましたが……」

 

 首を捻るタイネーブに、フェイトも首を傾げながら、そう、とつぶやく。

 

(先にクリフから聞いて、部屋で休んでるのかな?)

 

「フェイトさん」

 

 思案顔を浮かべるフェイトに、タイネーブの声が重なる。顔を上げると、タイネーブの険しい視線と目が合った。

 何か、並々ならない決意を抱えているような、切羽詰った表情だ。

 

「何?」

 

 その真意を測ろうと、フェイトは声音を落とした。タイネーブが静かに頷く。

 

「実は……ネル様のことをお頼み申し上げるにあたって、貴方に言っておかねばならないことがあるんです」

 

「言っておかねばならないこと?」

 

 繰り返すと、タイネーブがまた頷いた。改まった彼女の表情は、ぴんと空気を張り詰めさせる。それを受けて、フェイトもまた表情を引き締めた。

 彼女は窓を見やって、ウォルター伯の屋敷の方に視線を貼りつけた。

 

「疾風団長、ヴォックスについてです。

 私は仮にも、こと戦うことだけに関しては、ネル様にすら匹敵するとまで言われています。ですがファリンと共に、囮としてグラナ丘陵に疾風を引き付けたとき、私はあの男と手合わせて、手も足も出なかった……。奴の強さはまさに化け物です。あの男が私と同じ人間だなんて、とても信じられません」

 

「……そんなに?」

 

「ええ」

 

 彼女は低い声のまま、フェイトに歩み寄った。

 

「私がこのようなことを言える立場にないことは分かっています。ですが、もし仮に、あの男とはち合うことがあれば――、迷わず逃げてください。貴方達の存在がなければ我々の勝利は有り得ない……。それに、ネル様も」

 

 そこで言葉を切った彼女は、フェイトをじっと見据える。懇願するような、祈るような眼差しだ。

 

「ネル様も、我々になくてはならない存在です。どうか、奴と出会った際には――」

 

「タイネーブさん……」

 

 深々と頭を下げるタイネーブに、フェイトはかける言葉が見つからなかった。

 彼女の気持ちがこもった言葉だと分かるから、半端に答えられない。

 

 ただ――……。

 

「そんな心配、いりませんよ。ネルさんには、絶対分かってもらわなくちゃならないことがあるからね」

 

「フェイトさん……!」

 

 嬉しそうに顔を上げるタイネーブに、フェイトは微笑った。それに、と語尾を付け足して、彼はタイネーブと、ファリンを順に見て、肩をすくめた。

 

「それに僕達には、クリフやアレンもついてるしね」

 

「ありがとうございますっ!」

 

「私からもぉ、よろしくお願いしますと言わせてもらいますね~!」

 

 深々と頭を下げるタイネーブと、にっこりと笑うファリン。その二人に笑い返して、フェイトは踵を返した。

 

「それじゃ、僕はそろそろ宿に戻るね」

 

「はい」

 

「お気をつけて~」

 

 見送る二人に別れを告げて、フェイトは階下へ足を運ぶ。

 アストール達の隠れ家を出ると、夕暮れが、ゆるゆると近づき始めていた――……。

 

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