連邦軍人とフェイトくんの旅。   作:ばんどう

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PA(プライベートアクション) アミーナの笑顔~フェイトの哀しみ~

 驚きとは、いつも突然にやってくるものである。

 たとえば――この時もそうだ。

 

 フェイトはシランド城の客室に向かうべく、歩を進めた。

 今日のクリエイター作業を終え、床に就く道すがら。

 

 フェイトは、栗色の髪を腰まで伸ばした、灰色の瞳の少女と再会した。

 

「フェイトさん?」

 

 ペターニで出会った時と同じ、蔓の花籠を提げて、彼女――アミーナ・レッフェルドが驚いたように瞬く。その彼女の傍らには、細身の温和そうな青年、ディオン・ランダースがいた。

 

「これはフェイトさんっ! 聞きましたよ、今回のご活躍! 無事にクロセル侯爵のご助力を、取り付けられたそうですねっ!」

 

「そうなの? ディオン?」

 

「ああ! しかも、相手はあの侯爵竜だ。フェイトさんじゃなかったら、アーリグリフの疾風でも捕えられない超大物竜なんだぞ!」

 

 人差し指を立てて、得意げに説明するディオンに、アミーナは、そうなんだ、と感心しながら頷いた。

 

 その二人の姿に、フェイトは無言で頷く。

 

 顎に手をやり、両腕を組んで、彼は温かい目で二人を見据えた。

 が。

 

「……あれ?」

 

 アミーナに違和感を覚えて、フェイトは首を傾げた。

 この少女はこんなにも、血色のいい肌をしていただろうか――?

 フェイトは要を得ずに瞬きながらも、アミーナに笑いかけた。

 

「今日は調子が良いみたいだね。アミーナ」

 

「え……?」

 

 アミーナが、きょとんと瞬く。ディオンも同じだ。二人とも目を丸くして、意外そうにフェイトを見返してきた。

 

「ん?」

 

 フェイトは首を傾げる。

 と。

 アミーナは小さく微笑って、口元に手を当てた。ディオンも同じく微笑う。

 

「……なんだ。まだ聞いてなかったんですか? フェイトさん」

 

「え? ――何を?」

 

 クスクス笑うディオンとアミーナに違和感を覚えながら、フェイトは折り合い悪く問いかける。

 すると、ようやく笑い終えたアミーナが、わずかに溜まった涙を指ですくいながら答えた。

 

「私。もう治ったんですよ?」

 

「――へ?」

 

「ロジャー君とアレンさんが、私の病気を治してくれたんです」

 

「てっきり一緒に行動していらっしゃるから、フェイトさんならご存知だと思ってましたよ。その節は、本当にどうもありがとうございます。――僕の事も含めて」

 

 にこりと笑うディオンに、アミーナも幸せそうに笑って頭を下げてくる。

 沈黙。

 

「なっっっ、んっ、だ、とっっっ!?」

 

 フェイトはカッと目を見開いて、左右を見渡した。見えるのはすべて、シランドの廊下。

 そこに――クリフ発見!

 

「クリフゥウウウウウウウ!」

 

 体当たり(チャージ)で接近した。ミラージュと仲良く話していたクラウストロ人が、完全な不意をつかれて、廊下の彼方に吹き飛んで行く。ドゴォッ、と轟音を立ててシランド城の壁に激突したクラウストロ人は、そのまま白目を剥いて、ぐったりと動かなくなった。フェイトはチッと舌打つ。そしてミラージュに向き直ると、キリリと表情を改めた。

 

「ミラージュさんっ!」

 

「は、はいっ!」

 

 思わず、ミラージュは委縮した。凄まじい鬼気だ。

 ディオンとアミーナが、互いの顔を見合わせる。フェイトは鬼の形相だった。

 

「ぁ~んの、連邦軍人とぉ、たぬき~……知りませんか……?」

 

「れ、連邦軍人……ですか?」

 

「ええ……! 金髪のォ~、悪魔のほうです……っっ!」

 

 ゴゴゴゴ、という異音が聞こえてきそうなくらいの圧迫感だ。

 ミラージュの目に、フェイトが炎を背負っているように見える。

 

(こ、これは……あまり深く関わらない方がよさそうですね……)

 

 ちらりとクリフを一瞥して、ミラージュは愛想笑いを浮かべると、ひらひらと手を振った。

 

「申し訳ありません。私はクリフと、明日の段取りについて話し合っていただけですから……」

 

「そ~ですか……! ありがとぉ~ございます……!」

 

 三白眼になったフェイトは、そう言い残すと疾駆と言える速さで廊下を駆けて行った。ミラージュが茫然と瞬きながら、ディオンとアミーナを見る。

 

「あの……フェイトさんに一体何が……?」

 

 不思議そうにこちらを見返す二人は、さあ? と、折り合い悪く首を傾げた。

 

 

 第二参考人、発見!

 

 フェイトは心の中で叫ぶと同時、忙しく書類整理をしているネルの肩を、がっ、と鷲掴んだ。

 

「ネルさぁああああんっっっ!」

 

「ぅわっ! ……な、なんだい! 騒々しいね……っ!」

 

 うたた寝していたのか、ネルはわたわたと両手を動かす。そんな彼女を睨み据え、フェイトは尋ねた。

 

「あの悪魔……どこにいるか、知りませんか?」

 

 沸々と沸き立つ怒りを抑える為、フェイトは努めて声音を落とす。すると、ネルは不思議そうに瞬いて――首を傾げた。

 

「アレンに何か用事かい?」

 

 問われて、そう言えば、と瞬いたフェイトは、訝しげな眼差しをネルに向けた。

 じ~ろじろと、ネルの頭の先からつま先までを舐めるように睨んで。

 

「…………アミーナのこと、ネルさん知ってました?」

 

「アミーナ?」

 

(やはりっ! ネルさんもっっ!)

 

 気づけば、ネルの執務机を、ダンッ、と殴りつけていた。ネルがその音に驚いて、びくりと震える。小さくなる彼女を、フェイトはやはり、鬼の形相で振り返った。

 

「野郎っ! 隠してたんですよ! 僕らがどれだけアミーナを心配していたか、知っていたくせにっっ! ……くっっっそぉおおおお! 僕を嘲笑いやがったな! あの悪魔めぇええええええ!」

 

「ちょ、ちょっと……! 一体どういうこと!? まったく話が見えないんだけど……」

 

「だからっ! アミーナの病気が治ってたんですよっ! 僕等の知らない間に! アレンの奴が治したんです!」

 

「――彼女(アミーナ)の病気が?」

 

 きょとんと瞬くネルに、フェイトは、ええっ! と力強く頷いた。

 ネルはさらに瞬く。

 

「それの……どこに怒る要素があるのさ?」

 

「馬鹿ぁああああ! シランドで再会した時っ、僕がどれだけ心配したと思ってるんですかっっっ! 大体、治せるなら治せるって! 治ったんなら治ったって! 僕に一言入れるのが筋じゃないですかぁああああ!」

 

「別にアンタ、アミーナの恋人でもなんでもないだろ」

 

「いや……でも、僕……かなり心配してたの、……分かるでしょ?」

 

 出鼻をくじかれ、ぱちりと瞬きながらフェイトは状況を整理する。

 ネルにも分かりやすいよう、順を追って。

 

「僕はわざわざさ。シランド城まで走って行ってさ、ディオン連れて来たんだよ? おまけにさ、アーリグリフに墜ちたイーグルを取り返そうとか言ったんだよっっ!?」

 

「だから?」

 

「いや、だかっ、……だか……だからさっ! 言えよあの野郎! じゃないか、やっぱり!」

 

「じゃあ、今聞いたんだからいいじゃないか。それも、元気になったアミーナとよろしくやってるディオンから聞けてさ」

 

「素直に、……感動できなかったんです」

 

 落ち込むフェイト。

 ネルはあくまで冷静だ。

 

「それはアンタの我がままじゃないか」

 

「我がままでもなんでもいいじゃないッスかぁ! アレンは僕にこそ言うべきだったんじゃないんッスか!? そうじゃないんですかぁ!? なんなんすか! アイツもう!」

 

 ネルは首を横に振ると、呆れ切った顔で、しっしと手を振った。

 

「あ……じゃあがんばって、アレン探すんだね」

 

「言われるまでもないっ! あんな素敵なアミーナの笑顔を、ディオンの優しくこぼれる笑みを! その光景を見て、感動できないというこの生殺しッ! この怒り、晴らさずでおくべきかぁああああ!」

 

 フェイトはそう言って、ネルの部屋から出て行った。

 

 

 

 標的(ターゲット)、確認!

 

「排除開始!」

 

「あ、フェイトにいちゃ――」

 

 ロジャーの言葉は最後まで続かなかった。

 大聖堂に飾られたアペリスの三女神を、ロジャーとアルフが見上げていた時だ。

 

「エリアルレイドっっ!」

 

 上空高く跳んだフェイトに、ロジャーは目を見張った。

 

「それデカブツのわ――ぶふゥうッ!?」

 

 口を台形にして、ロジャーが大聖堂の壁に叩きつけられる。

 黄金の闘気を纏ったフェイトは、スタッと華麗に着地した。

 

「え、何事?」

 

 アルフが瞬きながら、吹き飛ばされたロジャーとフェイトを見やる。だが、フェイトは答えず、無言でロジャーの下へと歩いて行った。

 白目剥いているロジャーの襟首をつかみ、フェイトは無理やり引き立たせると、

 

 ボゴォッ!

 

 無表情のまま、容赦ない右ストレートをロジャーの頬に叩きこんだ。

 

「――痛っ! 何するジャンよ! フェイト兄ちゃんッ!」

 

 気絶していたロジャーが目を覚ます。

 同時。

 

「何する……だと?」

 

「へ?」

 

 ロジャーの視界に飛び込んできたのは、鬼の形相。

 もう、フェイトとも言えないような、鬼の形相だった。

 

「それはこっちのセリフだ、タヌキ……! なぜ、アミーナの病気が回復したことを僕に言わない?」

 

「あれ? そういや~、フェイト兄ちゃんに言うの、忘れてたじゃんね? 悪ぃ悪ぃ兄ちゃん♪」

 

 ロジャーはニッと笑うと、尻尾をふりふりと揺らしながら、ひょい、と右手を挙げた。

 途端。

 フェイトは笑う。爽やかに。

 ロジャーを空中に放り投げ、

 

「おぉ~! 何するよ、兄ちゃん!」

 

「無限に行くよっ」

 

 ドガガガガガガガガガッ!

 

「ポグポグポグポグポグゥウッッ!」

 

 数十発を超える拳が、ロジャーの顔面に当たる。

 そして――、

 

「オラオラオラオラオラオラオラッ……バーストナックル!」

 

 フェイトの手に炎が宿り、

 

 ドガァアアアッッ!

 

 右ストレートがロジャーの腹に決まった。

 ロジャーは無残にもバウンドしながら、倒れ伏す。

 フェイトの拳から煙が立ち上る。彼は己の手を見下ろし、静かな表情でつぶやいた。

 

「悪は滅びた……。いや、一番肝心な奴が残っていたか……」

 

 颯爽と踵を返し、大聖堂を後にするフェイト。

 その背を見据えて、アルフは不思議そうに首を傾げた。

 

「いや。だから、どうしたんだよ?」

 

 信徒席にいたマリアが、深刻な面持ちで顎に手をやった。

 

「見よう見まねでクリフの技を真似るなんて、恐るべき身体能力だわ……! これがディストラクションの力だというの? 物理法則を破壊するとは聞いていたけど……ただのバカじゃ無かったわね……!」

 

「なぁ。これって幼児虐待? それとも動物虐待?」

 

 去って行ったフェイトの方角を見据えて、アルフはロジャーを片手に首を傾げた。

 同じくフェイトが去った方角を、マリアはただ無言で、眉間にしわを寄せて見据えていた。

 

 

「アルフ……兄ちゃん……アレ……ンにいちゃ、に……つたえるじゃんよ……! ふぇいと、にいちゃ……が」

 

「いや。もう手遅れじゃね? まあ、面白そうだから結末は見に行くけど」

 

 

 

 

 白露の庭園。

 

 そこに例の悪魔がいた。

 ちょうどアルベルと話していたのか、場をアルベルが去ろうとしたところだ。

 フェイトはゆっくりと、彼ら二人に近づいた。背に陽炎を負いながら。

 

「フェイト、俺に何か用か?」

 

 アレンが振り返る。

 フェイトの表情は窺いしれない。彼はうつむきがちに、静かにアレンに近づいていった。

 アレンは目を細める。

 

「なんだかよく分からないが、この鬼気……本物のようだな」

 

「?」

 

 アルベルは訝しげにフェイトとアレンを見る。その両者の間に交わされる、妙な空気を感じ取って。

 

「お、やってるね」

 

「来たのか阿呆」

 

「まあね」

 

 狂人の左脇には、ぐったりしたまま動かないロジャーが抱えられていた。まるで小荷物のように。

 

 

「いいだろう」

 

 アレンは兼定に手をかけ、引き抜いた。

 

「――全力で来い」

 

「フッ、言いたいことはそれだけか……? 味わわせてやるぞ、アレン。僕のあの、絶望と悲しみと、そして苦しみを。味わわせてやる」

 

 フェイトの背負った陽炎が、白い光へと変わる。額に浮かぶ紋章陣。

 それを見据え、アレンは目を見開いた。

 

「こ、この力は……!」

 

 ディストラクション。

 

(右っ!)

 

「リフレクトストライフ」

 

 

 ドゴォオオッッ!

 

 兼定で受けたアレンの体がズレる。

 

「ぐっ!? ――何っ!」

 

 痺れる己の腕を見るアレン。そしてフェイトに視線を戻した時、フェイトは目の前に居た。

 

「しま――っ!」

 

 バキィイイイッッ!

 

 右ストレート。

 アレンはなすすべもなく後方へ吹き飛んだ。

 受け身を取る。臨戦態勢になった彼は、鋭くフェイトを見据えた。

 

「フェイト……! 一体何がお前に、これほどの力をっ!?」

 

「立て、アレン。僕はこの程度でお前を許す気は無い」

 

 ゴキッ!

 メキッ!

 

 およそフェイトの細い指が奏でるとは思えない豪快な音を立てて、フェイトは拳を鳴らした。

 アレンはそんなフェイトの姿に何を感じ取ったのか、静かに兼定を構えた。

 

「いいだろう。お前の全力、見せてみろ!」

 

 活人剣。

 朱雀の炎を身にまとうアレンに呼応するように、フェイトの体からもディストラクションの白い光が強烈に輝き始める。

 

「アレン……。人にはやっていいことと、やっちゃいけないことがある。今度という今度は、僕も堪忍袋の緒が切れた……。この怒りと悲しみ、もはやお前の血をもって償うしかない」

 

 フェイトはゆっくりと首を横に振る。

 そして――構える。拳を。

 

「この兼定を相手に、素手で戦おうというのか。フェイト」

 

「お前だけは……この拳で倒さなきゃ意味が無いんだよ。人の心を分からない奴は、僕の魂の拳でね」

 

「無謀だな。兼定を侮っているのか?」

 

「フッ、侮る? そんな価値があるのかい? お前と、その鉄片(・・)に」

 

 カッとアレンの目が見開かれる。

 瞬間。

 いつもの如く、踏み込みすら見えぬアレンの斬線が振り抜かれる。その動きを追えたのはアルフだけだ。

 

 が。

 

 アレンの見据える視線の先に、フェイトはいない。

 

「!」

 

 紙一重でかわされたとアレンが悟ると同時に、リフレクトストライフがアレンの脇に決まっていた。

 

 ドゴォオオオッッ!

 

「が、っっ!」

 

 思わず空気の塊を吐きながら、アレンが地面をずって堪える。蒼瞳に光が宿った。

 

「朱雀疾風突き!」

 

 フェイトはそれをサイドステップで躱す。

 アレンは、打ち込む拍子を変えた。

 

「夢幻鏡面刹」

 

 ぴぴぴぴぴぴぴっ――!

 

 宙に網目模様の斬線が(はし)る。剛刀・兼定の凶悪な連続斬。

 アルベルはあまりに完成されたその斬線に目を見張った。

 

「何っ!?」

 

 そして――、

 以前は『クソ虫』と称せたはずの青髪の青年が、その斬線をすべて紙一重で避けている。

 その光景に、息を呑んだ。

 

 見切る、見切る見切る――!

 

 バックステップでアレンの斬線から逃れたフェイトは、ザっと着地した。全身から、血しぶきが舞う。

 

「剣風をどうにかしねえと、面倒だぜ。その兼定(カタナ)は」

 

 アルフの忠告もどこ吹く風と、フェイトは切り刻まれた自分の体を、無表情に見下ろすだけだ。

 

「弾けろ」

 

 無拍子で放つ、炎の炸裂弾。しかし、今回は違った。

 

 赤く輝く炎が、青白く光る球となって放たれた。

 

 この時、初めてアレンがサイドステップで避ける。アルフは口端をつり上げた。

 

「あいつが敵の攻撃から逃げるのは、久し振りだな」

 

 (かわ)された光弾は、アレンの夢幻鏡面刹によって切り裂かれた石畳に触れると、一瞬で石畳を消し飛ばした。

 

「なんだっ!? 今の技は!?」

 

「お前も見ただろ。俺と戦った時、妙な紋章をまとって来た。――あれだ」

 

「次は外さない。……喰らえっ!」

 

 再びショットガンボルトを放つフェイト。

 次の瞬間。兼定の刀身が青白く光る。

 一閃。

 無数の光弾が、兼定に切り裂かれ、消えていく。

 

「終わりだ、フェイト」

 

 アレンはさらに踏み込み、刃を振り下ろした。

 

 バシイィイイイイッッ!

 

 見事な白刃取り。

 アレンが目を見開く。

 かちかちと刃を震わせながら、兼定を白刃取ったフェイトが両手にディストラクションの光をまとわせる。額に――紋章が浮かんだ。

 

「この忌々しい鉄片。……今日こそへし折ってやる!」

 

「出来るものならやってみろ!」

 

 

 

「ハァアアアアアアアッッ!」

 

 

 女神と朱雀が睨み合う。

 壮絶な、風。熱。気。

 庭園の地面が、びきびきと音を立ててひび割れて行く。

 力と力の拮抗。

 十数秒。

 庭園の床が、抜けた。

 

 ドゴォオオッッ!

 

「え?」

 

 二人が瞬くのは同時。

 純粋な力比べを行っていた二人は、仲良く下の階へと落下した。

 

 ドガァアアンッッ!

 

 轟音を立てて、瓦礫と共に埋まるフェイトとアレン。

 その二人を、アルフは上から見下ろした。

 

「無事?」

 

 問いかけたが、返事が無い。ただ、瓦礫の合間から金髪と青髪が見えた。ぴくりとも動かないが、あの分だと大丈夫だろう。

 狂人は一つ頷いた。

 瞬間。

 

 ドガァアアンッ!

 

 のしかかる瓦礫を物ともせず、アレンが立ち上がった。さすがに数秒、彼も気絶したようだが。

 アレンは兼定の刀身を見据えると、真剣な面持ちでごくりと息をのんだ。

 

「…………どうやら、なんとも無いようだな……」

 

 眉間にしわを寄せながら、穴があくまで兼定をチェックする。あのディストラクションの能力は知っている。それだけに、綿密に調べた。

 アルフは肩をすくめた。

 

「第一声は刀の無事かよ」

 

「……こいつら、いつもこんな修行してやがんのか……!」

 

「あいつ、加減知らねえからな」

 

 驚くアルベルに答えながら、アルフは興味深そうにフェイトを見る。

 と。

 

「何やってるんだい! アンタ達ぃいいいい!」

 

 轟音を聞いて駆け付けたネルが、絶叫した。

 その傍らにはクラウストロ人が一人。ボキボキと拳を鳴らして笑っている。

 

「よぉ、フェイト。さっきはよくもやってくれたな?」

 

「フェイト兄ちゃん。気絶してたって許してやんねぇじゃんよ?」

 

 回復したロジャーも、やたら笑顔でフェイトに近寄る。

 

 そして――、

 

 クリフとロジャーによる逆襲は、ここから小一時間ほど続いた――……。

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