63.研究の真相
フェイトがディプロメンバーと折り合いをつけ、マリアとクリフとともにアクアエリーにやってくるとアレンに出迎えられた。ようやく正規の連邦軍服に袖を通した彼は几帳面な性格に珍しく服を着崩していたが理由は言わず、会議室までフェイトを案内した。
広い室内に、アルフとヴィスコム提督がいた。向かいの席に、父、ロキシ・ラインゴッドとソフィアが並んで座っている。
「父さん……!」
ロキシの顔を見るなり、神妙な面持ちになるフェイトに、ロキシは小さく頷き、視線で席に座るよう勧めた。会議室の円卓に全員が着いたのを見計らって、ロキシが口を開く。
「まずは現状を知って欲しい。その後に、お前たちに私が遺伝子操作を行った理由――それを話そう」
そう前置くと、ロキシはフェイトたちを見渡した。
みな緊張した面持ちだった。
後を引き受けるように、ヴィスコムが告げる。
「現在、本艦は惑星ストリームに向かっている」
「惑星ストリームに?」
マリアが眉をひそめた。ヴィスコムが頷く。
「そうだ。そこに博士の目的があるらしい。惑星ストリームまでは重力ワープで行ってもしばらく時間がかかる。それまでの間に現状を説明しておこう。特に、君たちに関してはずっとエリクールにいたんだ。状況がわからないだろうからな」
「ええ、よろしくお願いします」
フェイトは几帳面に一礼した。
ヴィスコムも礼を返す。そしてヴィスコムは、一同を見渡した。
「今、地球を含む銀河系に未曾有の事態が起こっている」
「それは、バンデーンやアールディオンとの戦争を指しているわけではないんですね?」
「ああ、その通りだ。君たちも強力なエネルギーの流れを確認しているだろう?」
「クラス3を超えるエネルギーでしょ」
即答するマリアに、ヴィスコムは頷いた。
「そうだ。あれは地球に向けられていた。幸いにも、我々の近くを通ったものは、エリクールから発生した、謎の超高エネルギー物質によって消滅したのだが。――あれは、実は四方から放たれたものだったんだ。残り三つのエネルギーは地球を直撃し、何とか惑星シールドで防いだものの、それでも地球にはかなりの被害が出た」
「惑星シールドで防ぎきれなかったんですか!?」
目を見開くフェイトに、ヴィスコムは重々しく頷き、続けた。
「ああ……。でだ。そのエネルギーだが、実は宣戦布告の意味を持つものだったのだ」
「宣戦布告? それほどの遠距離攻撃能力を持つ勢力とは一体どこなんです?」
フェイトは話の要が掴めなかった。
アレンと兼定という
注意深くヴィスコムを見ていると、彼は静かに、首を横に振った。
「今まで確認されていなかった新興勢力だよ。彼等は自らを神の執行者、『エクスキューショナー』と名乗っている。つまり、彼等は自分たちをその名の通り、処刑執行人であり、神の使いだと言っているんだ」
「神……ですか?」
ソフィアが不安げに言う。ロキシが無言のまま、目を細めた。
ヴィスコムの説明が続く。
「まあ、自らを神と名乗ることは、独裁国家にはよくあることだが……とにかく。彼等は通信で人間の科学は禁断の領域に達してしまったため、神の意志で滅ぶことが決定したと一方的に告げてきたのだ。――彼等の真意はともかく、その力は侮れないことは間違いない。少なくとも、我々以上の技術力を持っていると見ていいだろうな」
「抵抗するのが難しい、というわけだ?」
「ああ」
クリフの問いにヴィスコムは頷くと、傍らに座る女性を一瞥した。女性は、青みがかった翡翠の髪に、同じ色の瞳の、どこか冷たい印象を受ける妙齢の研究者だった。華奢な体を白衣に包み、きりりとした表情にどこか近寄りがたい雰囲気がある。
だが彼女は
彼女は高々と組んだ足を解き、右手を前に出した。
会議室の中央にあるテーブル上の球が像を結び、空間に三次元画面を展開させる。ホログラムだ。太陽を中心に周る蒼い球体と、その他の星々が映し出されていく。
ヴィスコムが言った。
「彼女はリオナ博士と言ってね。ムーンベースに常勤していた所を、我々が引っ張って来た」
提督からの紹介が終わると、彼女が説明を始めた。
「このホログラムに映し出された蒼い球体が地球だ。提督が先ほどおっしゃったように彼らの宣戦布告のエネルギー兵器の道筋をたどるとこうなる」
三次元画像のある一点から、四つの軌道を取って、光線が同時に放射状に広がったあと地球に辿り着いていくのが分かる。内、一つが途中で消失していた。この一つが、おそらくエリクールに向かってきたアレだ。
リオナは一同を見据え、言った。
「このエネルギー兵器は、我々の知らない空間を光速以上の速度で通過していった」
「知らない空間って?」
マリアが問う。
「言葉通りだ。亜空間でもなく、重力空間でもない未知の空間。この一点をとっても我々を超える技術力を有している。そして驚くべきことに、これは五万光年以上離れた、我々の探査範囲の及ばない場所から放たれている」
「五万光年以上!?」
リオナの説明に、フェイトが息を呑んだ。ヴィスコムが首を振る。
「ああ……我々もデータを見て愕然としたよ。観測官が何人か眼科に駆け込んだほどだ」
「艦隊は来ているの?」
「それも不明だ。少なくとも現時点では確認されていない。だが、宣戦布告されている以上、やがて来ると考えるべきだろうな。数にもよるが、これだけの技術力を持つ艦隊に攻め込まれたら、連邦も危ない」
「そんな……」
フェイトが視線を落とす。傍らで、クリフが声をひそめた。
「てことは、クラウストロも……。バンデーンやアールディオンですらヤバイってことだな」
「ああ。既に、アールディオンは壊滅状態だ。――これを見てくれ」
ヴィスコムがリオナを一瞥すると、彼女は会議室の三次元画像を天体のシミュレーション画像からある不思議な映像に変更した。
そこに映っていたのは、一体の翼を広げた生物だった。黒い生物だ。鮫のように尖った鼻先と牙。人間に似た、長く伸びた肢体。背中から生える翼は何対にもなっており、そのどれもが先の鋭い、重い刃物のようだ。
リオナは黒い生物を指し、言った。
「これの全長は、二十メートルほどと推測される。見た目は生物のようだが、宇宙空間を自在に移動することが可能だ。アールディオンが壊滅した時のデータを解析すると、『攻撃力』、『速力』、『防御力』。どれをとっても、連邦やアールディオンの戦艦の上を行っていた。……おそらくこれによって、アールディオンは壊滅に追いやられたと見られている」
神妙に押し黙る一同を見渡し、リオナは付け足した。
「こいつは集団で行動する。アールディオンに向かったモノを、ざっと数えるだけでも数十体、確認できた」
「そして、バンデーンは連邦の最終兵器と呼ばれるものの奪取を読み、利用しようとしたのだろう。彼らにとって連邦と協力するなど、屈辱以外のなにものでもないからな」
「それが……僕なんだね。父さん」
つぶやくフェイトに、ロキシは頷いた。
「そうだ。私は、二十年前の惑星ストリーム探索で全てを知った。そこにいるアレンくんも、当時の探索メンバーだ」
「え……?」
一同の視線が、アレンを向く。二十年前――宇宙歴七五二年といえば、フェイトがまだ生まれてすらいない。
視線を受けたアレンは、居心地悪そうに視線を逸らした。
ロキシが説明を続けた。
「惑星ストリームは知っての通り、タイムゲートがある謎の惑星だ。タイムゲートは、時間を行き来できる一種のタイムマシンのような存在。七五二年の調査では、そのタイムゲートを含む惑星ストリーム全域の探索を目的として行われた。研究員は、私、妻リョウコ、トレイター女史、エスティード博士」
「パパが?」
目を丸めるソフィアに、ロキシは頷いた。
「アレンくんは当時十一歳だったが、惑星探査隊の護衛隊員として我々に同行した」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ父さん! 十一歳で軍の仕事なんて――」
にわかには信じがたいと言いかけたフェイトを、ロキシは首を振って制した。
「フェイト。お前には縁のない話だが、彼の実家――ガード家は、言わば銀河連邦軍の中核を担う存在でね。アレンくんはガード家の次期後継者となるべく幼くして護衛任務を与えられていたらしいんだ。惑星ストリームの探索は、その謎の多さから機密性にも優れる。彼の父、リード将軍はその点において息子を送り出したと言っていたよ」
フェイトは無言でアレンを見た。数か月前まで話半分で父を送り出していた社交パーティ。そこで父が、どんな繋がりを軍と作っていたのか垣間見たような気がした。
「それじゃ、アレンは……」
言葉に詰まるフェイトを置いて、クリフが目を見開いた。
「二十年前の探査のときに十一歳だってんなら、アレンは今年、三十一になるって話か? 俺と五つ差!?」
まじまじとアレンを見る。ロキシの表情が曇った。
「それが不幸な事故でね。彼は我々の所為で、人とは違う、ズレた時間を生きることになったのだよ」
「ズレた時間?」
マリアが眉をひそめる。ロキシは頷いて、続けた。
「『タイムゲートは自分の意志を持っている』。そこまでは従来の研究で分かっていたのだが、我々は不注意で彼を――時の彼方へと追いやってしまったのだ」
「つまり、十二年後に?」
「そうだ。彼が帰って来たのは、七六四年。ちょうど、エクスペルで大々的なテロがあった年だな。
当時の我々はタイムゲートに呑み込まれた彼を助けるべく、決死の捜索と調査を続け、ある事実を突き止めた。『タイムゲートが紋章データに反応する』ということだ。
我々はそこから、ある特殊な紋章データを流し込むことで、タイムゲート自身の記録データを取得することが可能であることを知ったんだ。
結局、アレンくんを連れ戻す方法だけは分からず、十二年もの時間のズレを経験させてしまったのだが」
その点に関しては、何度謝っても謝りきれない、とロキシは言った。
アレンが首を横に振っている。
そして、
ロキシはそこで表情を険しくすると、自身が読み解いたタイムゲートの記録データについて語りはじめた。
「我々は、ゲートの記録から知ったのだよ。――FD人の存在を」
「FD……人?」
首を傾げるソフィアに、ロキシは頷いた。
「Four Dimension人……。我々を遙かに凌ぐ技術力を有し、時間を行き来できる人間のことだよ。研究を進めていくと、実は彼らこそ、我々の住むこの世界の創造主である可能性が出てきたのだ。我々が現在、普通に使用している紋章技術も、彼らの残した技術だったんだ。惑星ストリームのタイムゲートも、彼らの高度な紋章技術を使って生み出されたもの。我々は、タイムゲートを時間を旅するものと認識していたが、それは違った。タイムゲートは、FD人の世界であるFD空間への扉。時間旅行はFD空間の存在を我々に感知されないようにするプロテクトの結果、発生した事象だった。時間を行き来できるFD世界。そこを経由することで、タイムゲートは時間旅行が可能となったのだ」
ロキシは、そこで顔を上げた。
「そのことが分かったとき、我々研究者は沸き立ったよ。何しろ、今まで謎とされてきたタイムゲートのシステムを解明することが出来たことに加え、新たなる人類の存在を確認することが出来たんだから。……しかし。そのとき、ゲートが我々に警告してきたのだ――」
場の空気が緊張する。
ロキシは一同を見渡して、小さく頷いた。
〈覚悟せよ〉
タイムゲートは言った。
〈エターナルスフィアの科学は発達し過ぎてしまった。もはや見過ごすことはできない〉
「エターナルスフィア?」
ロキシが問いなおすと、タイムゲートは機械音声にも似た、低く、不気味な声で答えた。
冷たい印象を受ける、不気味な声で。
〈エターナルスフィアとは、貴様等人間の世界。紋章技術は創造主の技術。そしてその紋章技術を取り込んだ紋章遺伝学。これは禁断の科学である。人間は、愚かにも許されていない領域に踏み込んでしまった。過度に発達した人間の科学は、いずれ創造主に刃を向けるかも知れない。近い将来、創造主は執行者を以て人間を滅ぼすであろう〉
静寂が、会議室を満たしていた。
ロキシが、静寂を切るように言った。
「我々はゲートに尋ねた。『紋章遺伝学を放棄すれば、人間は滅びを免れるのか?』と。しかし、ゲートの答えは無情にも、否だった。一度手に入れたモノを、人間が手放すことは無い。後にまた、紋章遺伝に手を染める者が出るだろう、と。タイムゲートに『警告』では無く『宣告』をされた我々は、ムーンベースに帰り着き、選択を余儀なくされた。人知を超えた存在に滅びを宣告され、言葉通りの意味なら、アレン君が助かる見込みも、無いだろうと予測された。――そして我々は、抵抗する道を選んだのだ。滅びの運命など受け入れる事は出来ない。同じく滅ぶなら、せめて戦って滅ぼう。当時、あまりにも突拍子もない発見に、連邦上層部に報告することも出来なかった私たちは、そう決断した。だが、我々ではFD人に戦いを挑むことすらできない。このままでは、我々は彼等の世界に干渉することができないからだ。そこで私たちは紋章遺伝学の粋を集め、FD人に対抗する兵器を作る事に決めた」
「……それが、私たち」
つぶやくマリアに、ロキシは頷いた。
「忌わしいことに、次元に干渉するには強力な紋章力が必要だった。そして、それを可能とするには、人間を媒介とした兵器がいる。……つまり、生体兵器が」
「フェイトたちはFD空間に乗り込む為に作られたってことか……。破壊の力・ディストラクションで空間同士の間で生じる矛盾を破壊し、改変の力・アルティネイションでこちらの物理法則を顕現させる――ずいぶん大それた話になったもんだ」
両腕を組みながらつぶやくアルフに、ロキシは頷いた。
「そうだ。正確には、ディストラクションは、FD空間においても自己の周囲空間に、我々の世界の物理法則を適応させる能力なのだ。アルティネイションは、我々の世界に存在する物質のデータを任意に変換し、FD空間上に安定させる能力。――そして、ソフィア。君には、この世界とFD空間とを繋げる――コネクションの力を与えた。コネクションは空間同士を繋げ、FDへの道を開く」
「……えっ?」
ソフィアが息を呑む。
フェイトの顔が、強張った。
「……お前も、なのか?」
「そんな、私――」
ロキシが、静かに頷く。ソフィアは言葉にできず、ただ俯いた。
アルフが言う。
「で。FD空間に乗り込んで、創造主を倒す。アンタのシナリオは分かったが、それでこの世界が消失する可能性はないのか?」
「その計算は、すでにプロジェクトを実行する前に終わっているよ。――だが」
言葉を切ったロキシは、フェイト、ソフィア、マリアを見渡した。真摯な彼の眼差しが、三人を向く。
「私たちは、お前たちに遺伝子操作をした。それについて、許してもらおうとは思わない。……だがそれは、自分たちの未来は、自分たちで切り開いてほしかったからだ。自分で考え、納得して行動してほしい。たとえ、それが辛い戦いの道であっても、滅びの道であってもだ。――それが私たち親の、唯一の望み」
「父さん……」
「お前たちが神と戦わないと言うのであれば、私はそれを止める気はない。こんなことをしておいて何を今更と思うかもしれないが――、お前たちが抵抗を選ばなくとも、私たちはそれを受け入れよう。何故ならそれは、お前たちの意志だからだ」
フェイトは頷き返し、そしてわずかに、顔を俯けた。
目を閉じる。
数秒――……。
目を開けたフェイトは、マリアと、ソフィアを見渡し、言った。
「行くよ。僕たちは、惑星ストリームへ」
「フェイト……」
つぶやくロキシに、フェイトは頷く。
ヴィスコムが、ゆっくりと首を振った。
「『神』というだけでも、信じ難い事だと言うのに……」
「提督。今は真偽を確かめるより、事態に対処する方が先決かと」
「そうだな」
アレンの言葉に、ヴィスコムは苦笑しながらも頷いた。瞬間。反対側から、アルフが問いかけてくる。
「提督。ヘルメス長官の指令、――太陽系の護衛任務はどうします?」
ヴィスコムはまた苦笑した。
「……まったく。非常時になると真逆の意見を言う」
「それはこいつの仕業です」
指差し合う二人が、互いを意外そうに見ている。ヴィスコムは、こほんっ、と咳払いをすると、話題を打ち切った。傍らでリオナが、肩をすくめる。
――その時だった。
[ブリッジより提督]
オペレータの声に、アレン、アルフ、ヴィスコムの表情が引き締まった。
「何だ?」
ヴィスコムが応じる。オペレーターが、ややあって報告した。
[第九宇宙基地から通信が入りました]
「こちらのスクリーンで見る」
[了解しました]
球体のホログラムが、像を結ぶ。
ザザッ、と雑音が入り混じった、乱れた画像だった。
『提……、神の執行……と……乗る集……の……撃を受けています! 至急、応援……うわぁ……あれ……、……れは、艦し……ない! 神……いだ! 神は……当にいたの!』
ブツンッ、と音が切れた。
[通信、中断しました。連邦基地リンクによると、第九宇宙基地は……消滅してしまいます!]
「なんだと!?」
「第九宇宙基地……セクターα方面か!」
ヴィスコムと、アレンとアルフが顔を見合わせる。
[いかがいたしますか?]
「……」
[提督?]
黙すヴィスコムに、オペレータが問う。はっ、と顔を上げたヴィスコムは、表情を引き締めた。
「分かった。本艦はこのまま、惑星ストリームへのコースを維持するんだ」
「提督。命令違反ですよ?」
アルフが忠告する。ヴィスコムはフェイトたちを見、言った。
「彼等の行動が、銀河の命運を決するのだ。――それにアールディオンや、第九宇宙基地を一瞬で壊滅させるほどの相手。我が艦一隻でどうにかなる相手ではない。そうだろう? アルフ」
「ええ、まあ」
肩をすくめるアルフに、ヴィスコムは、ふ、と微笑った。反対側から、アレンが、カッ、と軍靴の踵を合わせて言う。
「提督。反省室に行く際は、私もお供します!」
「無用の気遣いだよ。アレン」
ヴィスコムが表情を凍らせた後、ゆっくりと目頭を揉む。
「今から気の重い話すんなってさ」
アルフがひらひらと手を振ると、彼を遮るように、こほんっ、とヴィスコムがさらに咳払いした。その二人を見て、アレンは目を丸くしたあと、小さく微笑った。
「そう言えば。ナツメはどうしたんだ?」
フェイトが問うと、アレンが、ああ、と答えた。
「あいつはエリクールに来た時の小型艇で、ジェネシス星系に帰った。ナツメはあれで、テトラジェネシスの人間だからな。いつも一緒とはいかない」
「寂しいことにね」
「……黙ってろ、アルフ」
微塵も寂しさを感じさせないアルフを振り返り、アレンが釘を刺す。フェイトは苦笑すると、ヴィスコムを見た。
「でも、本当にいいんですか? 僕らなら、ディプロで――」
「無理だ。あのような艦で敵の攻撃をかいくぐり、惑星ストリームまで行ける筈がないだろう? それにアルフにも言ったように、このアクアエリー一隻でどうにかなる敵では無い。それなら、君たちが危険を冒して、敵の本拠地に乗り込む必要も無いんだからな」
「提督……」
気遣わしげにヴィスコムを見るフェイトに、アレンが首を横に振った。
「すまない。本当なら、そのFD人とやらも、俺たち軍人が相手取るべきなんだ。だから、せめて――」
「なっちまったもんは仕方ねぇ。俺たちも出来るとこまでは協力するぜ。その道場破り」
アルフの比喩に、フェイトは思わず笑った。