王国/心2某機関NO.2の姿で戦国BASARAにトリップさせられた女子の場合   作:藤 都斗

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 助けたい、と思ったものの、方法があるならそれに越した事は無い。

 という訳で、私は話の続きを促した。

 

「で、何?」

 

 さっさと吐けこの野郎。

 

 そんな事を考えながら立ち上がり、腕を組んで目の前のそいつを睨み付ける。

 すると、なんだか嬉しそうに、でもちょっと困ったように笑いながら、そいつは言った。

 

『お主に余の依り代、……つまり入れ物となって貰い、各地のパワースポット、まぁ……早い話アレじゃ。

 良い感じの霊的な力が強い場所を巡って神通力を溜めるんじゃ。ただ……』

 

「……ただ、何」

 

 途中で言い淀むそいつに、若干イラッとしながら、それでも続けるように促す。

 

『余はこの世界のパワースポットの場所解らん』

 

 

 なんだとこのやろう。

 

 

「……じゃあどうやってそのパワースポットとやらに行くのさ」

『神社的な場所巡れば手掛かりはあるんじゃね?』

 

 余りの軽さに苛立ちが募る。

 

 確かに助けたいって思ったのは私の一方的なものかもしれないが、だからって自分を蔑ろにしてないか、こいつ。

 

『ついで言うと、余が入るとお主の精神が崩壊する恐れがあるから、心は余が預かる事になる。

 早い話、あのゲームで言うノーバディ化じゃ。良かったね』

 

 良くねーわ。

 

 えっ、つまり私、心が無くなるの? 

 

 て事は、感情が消える? 

 悲しんだり怒ったり喜んだり楽しんだり出来ないって事!!? 

 

 一応簡単に説明すると、ノーバディというものは、心の強かった人が心を奪う魔物に襲われた結果に生まれる、魂の無い肉体だけの、なんとも不自然な存在だ。

 元の人格と記憶を引き継いだ、心が無い全く別の存在である。

 

 うわー、マンガみたい、とか、そんな呑気な事を考えてしまうが、だからこそ、そんな事出来ないと思われてるって事に気付いて、また舌打ちが出そうになったけど我慢した。

 

『まぁ、旅の間に余の入る事が出来る依り代を手に入れる事が出来れば

 お主からそれに移る事によって、お主に心を返す事が出来る』

 

「……成る程ね。了解……」

 

 そいつの説明に納得し、頷いたら、何故か驚いた顔で私を見ている事に気付いた。

 

『あれ、えっ? マジで余の事助けてくれる気? うそ?』

 

「うるさいな、それが最善でそれしか方法がないんでしょ、ならやるしかないじゃん」

『別に、そのままどこかに行ってくれても構わんのだぞ?』

 

「やかましい、黙って助けられろ」

『……お人好しって言われた事ない?』

「鬱陶しいからもう黙れ」

 

 イライラして乱暴な口調で返したら、そいつはなんだか分からないけど嬉しそうに、そして戸惑ったような顔で視線を右往左往させて、それから後ろ手を組みモジモジしながらチラチラっと私を見て口を開いた。

 

『まぁ? 余としてはさっさと死にたかったけど、巻き込んじゃったし? 

 一応出来る限りは手助けするつもり……なんだが、もう力残って無いし?』

 

 ……何が言いたいんだこいつ、鬱陶しいな、早く言えよ。

 

 そんな事を考えていると、ふと、そいつが咳払いをして、気を取り直したように真剣な眼差しを向けられた。

 

『まぁ、アレだ。余は力の温存の為にお主の中で眠る。滅多な事が無い限りお主に呼び掛けたりする事も無い』

 

「つまり、一人と変わらないって事?」

 

『そうじゃ。ついで言うと、お主に余が入ってる訳じゃ。

 確実に人間では居られぬだろう。半分神……てゆーか三分の一、神、みたいな?』

 

「うわぁ微妙」

 

『……まぁそんな所じゃの。本当にオッケー?』

 

 心配そうに、だけど軽いノリでの確認にため息が零れた。

 結構重大な内容な筈なのに、この人の思考とかノリが軽いからか、これから心が無くなるかもしれないっていうのに不思議と恐怖は無い。

 

 なにより背に腹は変えられないし、この世界何かとしんどそうだから、寧ろちょうどいいのかもしれない。

 それに、これがなんとかなれば、元の世界に帰る目処がたつのだから、やらないという選択肢は無かった。

 

 仕方ないと割り切るしかなさそうだ。

 

「まぁ、一応オッケー。……とりあえず私が元の世界に帰るまでは付き合ってくれんだよね?」

『うん。半分以上は寝てるけど、パワースポットに来た時と、力がお主を帰せるくらい溜まったら起きて知らせるから安心しろ』

 

「分かった」

 

 そう答えた後、そいつは私の唯一見えている隻眼へと真っ白い手伸ばしそっと隠した。

 

 私の視界が闇で何も見えなくなったその時、そこで、私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目が醒めた時、なんとも奇妙な感覚がした。

 世界が違って見えるとはこういう事なんだろうか。

 

 草の匂い、木々のざわめき、鳥の鳴き声、肌を撫でる心地良い筈の風

 

 少し前まで、凄く綺麗だと思っていたその全てに、何も思わない。

 

 記憶にある自分ならきっと昼寝でもしたいと感じるであろう風景だと言うのに、何も。

 

 ……これが心がないという事か、と納得すると共に、胸の中には内臓以外何も無いという事が理解出来た。

 

 若干、面白い、に近いような感覚だろうか。

 そんな気がした。

 悲しいとも楽しいとも思わないからきっと気の所為なんだろうけど。

 

 ……それに不思議に思ったりとかそういう感情も無い。

 

 ホントは悲しまなきゃいけないんだろうけど、胸の奥、どこか隅っこにあいつの気配がしたから、まぁ良いか、と考えた。

 

「気にしても仕方ないし……それよりもこれからどうするか……だよね」

 

 そんな独り言を呟いて、ふと、考えた。

 

 このままだと、口調が不自然だ。

 オカマとか言われたらこの身体の元になったキャラクターが可哀相な気がする。

 

 それ以前に、成人男性が女の子口調は駄目だろう。

 

 一番無難なのは、キャラクターになりきっておく事なんだが、どんなひとだっけ、シグバールって。

 

「あー……、一人称なんだっけ……? ……俺様だっけ?」

 

 記憶を頼りに、ひとつひとつ思い出していく。

 

 なんか、人をくったような感じで、飄々としてて、謎めいたオッサンだった。

 

「まぁ……適当で良いか……」

 

 全体的に男らしい動きで、オッサンがするような喋り方してれば、ある程度なんとかなるだろう。

 意識を失っていたからか、大の字で仰向けに倒れていた身体を、よっこらせと起き上がらせ、立ち上がる。

 

 やる事は決まってるんだから、とりあえずは移動しよう。

 

 そんな事は考えながらゆったりと歩き出した私は、なるべく内股にならないよう研究する。

 ドカドカ歩くのも違和感があるから、なるべく普通に。

 内股に歩くと股の間の異物感が物凄いので、それは早々に却下した。

 

 感情無いけどなんか気持ち悪い気がする。

 

 ……ていうか森の中だからか、なんか歩きにくい。

 道を歩いている訳じゃないから、当たり前なんだろうけど、足元が覚束無い。

 身長の高さに慣れてないから余計に歩きにくい。

 

 そこまで考えてふと、気付く。

 

 あ、この世界がBASARA外伝ってのは聞いたけど、どの辺なのか聞いてなかった、と。

 

 場所の把握は早い方が良い。

 ……まあとりあえず、今はこの森を出る事に専念しよう。

 出たらどこかに家とかあるだろうから、その辺の人に聞けばいいんだ。

 

 そう考えながら歩を進めた。

 木の根っこに足を引っ掛け、転けそうになりながらもとにかく進む。

 この格好の標準装備がブーツとロングコートで良かった。

 でないと身体中に草木が当たって切傷ならなんやらに塗れている筈だ。

 

 しかし、その間考えるのは今後の事だ。

 

 BASARA外伝って事は、うろ覚えだけど、松永なんとかってオッサンが居る筈。

 ……出来ればあんまり会いたくない気がする。

 

 悪役まっしぐらな厄介なオッサンだった気がするから。

 

 どうせなら幸村とか佐助とかに会ってみたい………………ような気がする。

 小十郎さんとかダテマサとか。

 

 ぼんやりと記憶の中の自分を思い出して考える。

 

 うん、きっとそう思う気がする。

 実際会えるかは別として。

 

 そう考えた時不意に、開けた場所に出た事に気付いた。

 

 

 視界に入った辺りの景色を見回してぼんやりと考える。

 

 

 うわー、戦ってこんなんなのか。

 

 あ、今あっちで首飛んだ。

 

 ……血飛沫ってあんな風に飛び出るんだ。

 

 

 特に何も思わないけど。

 

 

 ていうか、コレって何処と何処が戦をしているんだろう。

 

 

 血の匂いが鼻をつく。

 

 少し息を吸い込めば、様々な匂いが混ざっている事に気付いた。

 

 硝煙の匂い、肉の焼ける匂い、武器独特の鉄っぽい匂い、糞尿の匂い、汗の匂い。

 

 臭いとしか考えなかった。

 

 記憶の中のいつもの自分なら、きっと余りの悲惨さに泣きながら、胃の中の物が全部無くなるまで吐いている事だろう。

 

 一体何があったのか内側から飛び散った人間や、腕が無くなり慌てる人間。

 半分だけ焼け焦げた人間に、ピクリとも動かない血だらけの人間。

 

 心を預かって貰っていて、良かった気がする。

 

 

 こんな光景、私だったら耐える事が出来ないだろう。

 

 

 あいつはこういう事も考慮してくれていたのだろうか。

 

 そんな風に考えた時だった。

 

 

「何者だ貴様!!!」

 

 

 不意に自分の背後でそんな大声が聞こえた。

 そこでやっと自分の後ろに誰かが居る事に気付く。

 

「珍妙な恰好をしおって……名を名乗れ!!!」

 

 背後を見れば、その辺に転がってる動かなくなった兵と同じ、黄色っぽい鎧を着込んだ侍が私に向けて刀を突き付けて居た。

 

 死体の中に突っ立ってたから、私がこれをやったとでも思ったのかもしれない。

 妙に刃先が震えているから、多分だけど私に対して恐怖しているんだろう。

 

「……名乗って何か意味でもあるのか?」

 

 そう言って、試しに口の端を上げて笑ってみる。

 

 なんか少しぎこちなくなったが仕方ない。

 一瞬「笑う」という行動が解らなくなった。

 

 確か記憶ではこんな感じだった筈なんだが、まあいいや。

 

「何ィ……!? 生意気な……叩き斬ってくれる!!!」

 

 苦し紛れみたいにそう言ったその人は、私に向かって持っていた刀を振り降ろした。

 

 でも動きが大きくて行動が読めてしまったから、私は完全に振り降ろされる前に右方向へ移動した。

 

 流石は黒い機関のNo.2の身体、動きが素早い。

 右に動いたつもりが、行き過ぎてその人の背後まで移動してしまった。

 

「……なっ……!!?」

「残念だったな……アンタの攻撃は当たらないよ」

 

 やっぱり男言葉は慣れないから喋りにくいなぁ。

 そんな風にぼんやりと考えながら、ちょっとした仕返しのつもりで、その人の背中を勢い良く蹴った。

 

「ぅごぁ……っ!!!」

 

 途端、ブーツの底から何かが連続で砕けていくような妙な感触がして、その人がくぐもった声を発しながら背中から有り得ない形に折れ曲がった。

 

 そしてその状態で凄い勢いでふっ飛び、土煙を上げて転がりながら戦場を突っ切って、私から大分離れた所で止まった。

 

 これらから考えると、可能性は一つ。

 

「……もしかして……力加減間違えた?」

 

 良く考えれば、今の自分は黒い機関のNo.2の肉体だ。

 ラスボスの手前の手前くらいの敵だったような気がする。

 そりゃあ強いに決まってる。

 

 殺そうとした仕返しにその辺に転がすだけのつもりが、明らかにやり過ぎた。

 

 あの人絶対死んだだろうな。

 

 そういう考えに至った時、胸の奥で何かもやもやした物がズルリと音を立てて動いたような気がした。

 

 確認の為にと歩いてその侍に近寄れば、背中の途中から折れ曲がった不自然な形で、地面の上に転がっていた。

 勢いが良すぎて首の骨さえも折れてしまったのか、白目を向いた顔が口から内臓っぽい色んなものを出しながらごろりとこちらを向いている。

 

「……あーぁ、殺ッちゃったよ……」

 

 私はそう呟きながら、やっぱり何も思わないまま、動かなくなってしまった侍を無表情で見詰める。

 

 あの人もきっと様々な人生を生きて来ていて、家族も居て友達も兄弟も居ただろうに、なんとも呆気ない幕切れにしてしまった。

 

 かわいそうに、とだけ考えた。

 

 今、心が無くて良かったんじゃないかなぁ。

 

 でなければきっと私は壊れてしまっただろう。

 

 自責の念に駆られて、死のうとすらするかもしれない。

 だって私は、自他ともに認めるお人好しだ。

 

 感情、心が無い、っていうのは、こういう事なんだな、と考えながら侍から視線を外した。

 

「まあそんな事より……このまま此処に居たら他の兵にも気付かれるよねェ」

 

 今は静かな所に移動したかったが、やはり世の中そう簡単には行かないらしい。

 

「……さっさと移動すりゃ良かった」

 

 色々と考えている間に、辺りは侍で囲まれていた。

 

 ……ざっと見て、十数人程かな? 

 

 戦わないと殺されるんだろう。

 

 でも殺される訳には行かない

 

 私は帰らなきゃいけないから。

 

 ……なんでそう考えるのかっていうと、心が無くなる前に私がそう思っていたからだ。

 帰りたい。と。

 

 

「……武器がコレで良かったよ。

 返り血浴びなくて済む距離から殺れる」

 

 そんな風に呟きながら両手を広げ、腕ごと軽く振った。

 

 あいつの言った通り、専用のあの武器が出て来たので、何となくだが、少し、気分が良くなったような気がした。

 

 グリップが手に馴染んでいるなんとも言えない感触に、本当に自分の身体を変えられたんだなあ、と改めて考えた。

 

 白と紫色の不思議な形をした武器だ。

 何に似てるかって言うと、一番近いのはロザリオ、だろうか。

 ロザリオと銃を剣を足して、クナイの刃の部分だけ持ち手の向こうにグリップと繋げて設置した、みたいな、本当に例えるのが難しいデザインをしている。

 ちなみにこのクナイっぽい菱形からビーム光線みたいなのが出て、それを打ち出すみたいな感じらしい。

 

 らしい、っていうのは、現在、チャキっという銃みたいな音と共にそれが装填されたおかげで、ビーム出てたそれが一個減ったからだ。

 

 頭の中で、淡々とそんな事を考えつつ、ガンアローと呼ばれるそれを構えながら、その場で跳躍する。

 

 せめて、苦しまないように一発で殺そう。

 

 そんな考えの元、引鉄らしきそれを引いた。

 

 

 

 

 

 

 気が付けばいつの間にか終わっていて、少しだけ自分が驚いたような感覚に陥った。

 

 辺りに転がるのは死体ばかりで、自分はその真ん中に、無傷で返り血すら浴びずに立っている。

 

「あーぁ……やっちまったなー……私の……あ、間違えた、俺の中のあいつは大丈夫なのか?」

 

 ぼんやりと考えた事をそのまま口に出す。

 

 神様って普通は、こういった穢れを嫌うんじゃなかったっけ? 

 めっちゃ殺しちゃったんだけど大丈夫かな。

 

 まあ、やっちゃったものは仕方ない。

 

「後で滝にでも打たれて禊ぎしてみるか……?」

 

 特に意味は無いけれどまた口に出して呟いた。

 呟いてから、ちょっと考えた。

 

 うん、これは良い考えかもしれない。

 それにそういう場所ってパワースポットな場合が多いし。

 よし、そうしよう。

 

 

 

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