王国/心2某機関NO.2の姿で戦国BASARAにトリップさせられた女子の場合 作:藤 都斗
『……ギュイーン!』
突然、何か聞いた事のある音がして、思わず思考がフリーズして無言になった。
それでも確認しようと辺りを見回せば、何故か真横に機動戦士。
どう見ても、機動戦士だ。
斜め掛けにされたでっかい数珠みたいな物と、色が焦げ茶色で、鹿の角みたいなのが頭に付いてるのと、口元が人間でさえ無ければ、本当に某機動戦士にしか見えない。
いやいや、それより何でこいつ此処にいんの?
『……プシュー!』
……いやプシューじゃなくて。
なんでか知らんけど戦国最強、本多忠勝が私の横に居た。
「……えーと……なんか用ですか」
尋ねてみるものの、ウィーン、ガシャッ! 、という駆動音しか返ってこなかった。
……解らない。
「……もしかして、わた……いや、俺と闘いたいとか?」
『……プシュー!』
聞いてみたけどさっぱり解らない。
こんなんでよく戦国武将やれてるな、主である家康が通訳にでもなってるの?
あと一人称俺に慣れて無さすぎてめっちゃ噛みそう。
考えても仕方ない事を考えてしまっていると、不意に、素早い動きで背後に回られて、後ろから腰の辺りを腕ごと拘束されてしまった。
「……え、ちょっと待て、なんでそうなる」
焦りたいけど感情が無いからかあんまりうまく行かない。
でも、多分だけど、今、私はきっと混乱しているのだろう。
何せ考えがちっとも纏まらないんだから。
「あの、えーと、何する気だよ?」
『ギュイーン!』
尋ねた事の返事には機械音で返されてしまった。
…………あの……すいません全く解らないです。
とか考えている間に、ジェット噴射で浮き上がる巨体。
戦国時代でジェット噴射て、ホントにBASARAなんだなぁ、とかつい考えてしまった。
いや、機動戦士が居る時点でBASARAなんだけどさ。
ていうか、これからどこに連れて行かれるんだろう。
暫くの間凄いスピードを肌で感じながら流れていく景色を見ていれば、進行方向に金ぴかなちっさいのが見えた。
「……なんだ?」
一瞬何だか分からず隻眼を細めて確認すれば、そいつはこっちにブンブン手を振って
「忠勝!!! タダカーツ!!! 儂は此処だぞタダカーツ!!!」
とかワーワー騒いで居た。
あぁそうだよね、本多忠勝が居たら次は徳川家康だよね。
つー事は此処、三河かその辺りか。
『ブシュー……!』
機動戦士もとい、本多さんは私を小脇に抱えたまま蒸気音と共に地面へ降り立つ。
私はといえば、本多さんに両腕ごと腰を拘束されたままだから動く事もままならない。
とりあえずいい加減離して貰えないだろうか。
私行きたい所あるんですけども。
「何? 不審人物を見付けたから捕まえた?流石だな忠勝!!!」
『キュイーン……!』
いや……どう会話してんですか貴方達。
どうしよう、どう見ても機動戦士に独り言喋ってる痛い子にしか見えない。
まあ、実際問題なんも思わないんだけど、強いて言うなら、本多さんでっかいなー、くらいか。
「それでオメェ、何者だ? ……忠勝が連れて来るという事は強ぇんだろう?」
唐突に何の前フリもなく話し掛けられて、なんかちょっとどう反応を返せば良いか解らず一瞬だけ硬直してしまった。
「えーと……、まずは意味が解らないからとりあえず説明が欲しいな……、わ、俺はなんで拉致されたんだ?」
『ウィーン』
「……忠勝はお主の戦いを見て、余りに強いから放置するのは良くないと思ったと言っとるぞ」
……つまり強いから始末せずに連れて来たって事だろうか。
「さぁ、儂は答えたぞ、オメェも質問に答えろ」
「……あー。とりあえず自分でも良く解って無いんだよね。……俺は……えーと……ノーバディ?」
考えながら話したものの、自分でも自分が分からないんだから、現状どうしようもない。
そう考えていたら、徳川家康がなんか微妙そうな、変な顔してる事に気付いた。
まあ、解んないよね、仕方ない。
「つまり……、心が無いんだよ。わた……いや、俺は」
無表情でそう言ったらなんか驚いた顔をされた
「どういう意味だ?」
「記憶はあるけど、感情が無い。そーゆー意味だ」
「質問の答えになっとらんぞ?」
ん?
……あぁそういやそうだわ。
「……えーと……アレだ、心を取り戻す為に各地を放浪する旅人的な人?」
今の所の目的はパワースポットを巡り、ついでに心を取り戻すして、元の世界に帰る事だからこれでも間違いは無い。
「旅人だと言うならその奇妙な着物は何だ?」
「俺の心を持っていった奴の趣味だ」
間違っては無い。
だがしかし、徳川家康は訝しげに顔を歪めた。
「……怪しいな……、オメェ、どこかの国の間者じゃねぇだろうな」
「患者? 悪いけど別に俺は病院から抜け出した訳じゃない。
……まぁ精神科には一度見てもらった方が良いような気はするけど」
「……何言っとるか解らんが…………オメェ、忍とかじゃねぇのか?」
「シノビ? ……ならもっと動き易いカッコするよ」
なんか噛み合わない会話をしながらも、淡々と答える。
……うーん、感情が無いからうまく表情が出来ない。
言葉のニュアンスもほぼ棒読みになってしまう。
これはちょっと、誰かとコミュニケーション取る時に問題が発生してしまいそうだ。
表面だけでもなんとか人間らしくしなくちゃ。
人ってのは、誰かと違う存在に対して排他的になる傾向があるって、なんかで読んだ。
この辺は早急になんとかしなきゃならないんだけど、具体的な方法が考え付かない。
記憶の自分が女の子だから、オッサンがしそうな発言が分からない。
そんな風に別の事を考えて居たら、目の前に徳川家康が居た。
別に驚いたりはしないけど、距離近くない?
「オメェ……そんな話が信じて貰えると思ってるのか?」
「生憎と、期待や不安なんて感情も無い」
つまりは、信じないのが普通だよね、としか。
あと、やっぱり顔で近いよ、とか。
「オメェ、名は?」
不意に尋ねられて少し考えた。
……えーと、名前、……なまえ?
どうしようかな、この外見で私の本名はキツイもんがあるよね
女子の名前のオッサンはちょっと駄目だろう、そんな気がする
えーと、じゃあどうしようか
この外見の名前まんまっていうのは、本人がどこかに居る可能性も考えてナシだろう。
「わ、ンンン! ……俺はえーと、……ライグ! ライグだ」
名乗ろうとして、また私、って言いそうになったので咳払いしつつ、改めて適当に考えた名前を名乗る。
名前に特に意味は無い。
だけど、元のキャラクターが洋名なので、その縛りで適当に考えた。
そうじゃないと元の私が違和感を感じるだろうから。
これなら違和感は無い……と思いたい。
思えないから考えるだけなんだが、それは置いておこう。
「ライグ……? なんとも聞き慣れねぇ響きだな……」
まぁ……そりゃーそうでしょーね。
軽く頭を傾けながら、目の前の少年に声をかけた。
「……で?
アンタは俺をどうする気?」
視線はそのままに軽い調子で。
いい加減そろそろ降ろして貰えないだろうか、なんかちょっと身体痛くなって来たんですけど。
すると、徳川家康は暫く考える様子を見せた後、意を決したように話し始めた。
「……そうだな……、オメェがやったのは儂の敵方の奴らだ。
しかしオメェはかなり怪しい。という訳で身柄を拘束させて貰う」
「……はぁ。まぁそれは仕方ないですね」
なんせ、怪しさ以外自分にあるかどうか不明な程だ。
という訳で、なんかそんな感じに徳川軍に捕まる事になった。
ジェット噴射でも離さなかった手の中の武器は、流石に取り上げられたけど、その途端消えてしまって徳川さんが物凄く驚いていた。
私も驚きたかったけど心が無い今は無理だった。
原理はよく解らないがガンアローは私の中に収納されたらしい。
うん。
よくわからんけど、便利なんだろうね。
だがしかし、このままじゃその場で本多さんにフルボッコされそうだったので、手を振らなければ出てこないと言ったら両手を拘束された。
その間に、本多忠勝は戦へ戻って行った。
大変だね本多忠勝。
「えーと、とりあえずさ……本多忠勝がいるって事はアンタ徳川家康?」
本多忠勝が戦場に行って少しした頃、一応確認する為にと少年に尋ねるように声をかけた。
ゲームの通りなら間違いは無いだろうけど……まぁ一応の確認だ。
「おぅ! その通りだ! 儂は徳川家康、この世に平和を造る男だ!」
「成る程」
納得してから徳川さんを眺めた。
本多さんの時も考えたけど、私は本当にBASARAの世界にトリップしてしまったらしい。
心が無いから実感もクソも無いけど……まぁそれは今更仕方ないだろう。
つらつらと考えながら視線を戦場の方へと向ける。
不思議に思う、という事は無いんだが、元の私ならきっと気になるだろうから、と考えて口を開いた。
「で、コレ何処と戦ってんの?」
すると、徳川さんが驚いたような声音で聞き返して来た。
「なんだ? 知らんのか?」
「……歩いてたら突然巻き込まれたからな」
「そうか、これは松永軍が突然儂の領地に攻めて来たんだ。つまるところ防衛戦だな」
判明した事実に、うわ……、早速ちょっと前に会いたくないって考えた奴が居る……、とか思いそうだな、自分、と、他人事のように考えた。
嫌な気持ちの時の顔ってこんなんだっけ、と表情を取り繕ってみた。
「なんだライグとやら、嫌そうな顔をして。心が無ぇんじゃなかったのか?」
「……コレは過去の記憶からこういう時どんな顔するかを判断した表情だ」
ちゃんと嫌がってる顔になってたらしい。
良かった良かった。
全くそんなん思って無いけど、一応ってやつだ。
「何、大丈夫だ! 忠勝が居れば怖いもの無しだからな!!」
ゲームと同じように信じ切ってる徳川さんに、何とも言えず無言を返そうかと考えたが、記憶の中の私なら多分ほほえましく見てるか、げんなりしてるかどっちかな気がする事を考えて、改めて口を開いた。
「……戦国最強だもんねェ」
「あぁ! なんせ本多忠勝だからな!!!」
意味解らんけどまぁ良いや。
「……で? ……アンタは戦に行かないの……か?」
あ、やっべー今ナチュラルに女言葉喋る所だった。
超危なーい。
やっぱり元が女の子だから女言葉が標準装備されてる弊害だろうと推測出来る。
そんな私を放置して、徳川さんは自慢げに豪語した。
「忠勝が居れば大丈夫だ!!!」
「……あ、そう」
そんなんで良いんだろうか、まぁどうでも良いけど。
ぼんやりとそんな事を考えていたら、辺りに突如として轟音が鳴り響いた。
「なっ、何だ!? 忠勝!!! 一体何があったんだタダカーツ!!!」
視線を音のした方へ向ければ、ものの見事に門が吹き飛んでいて、松永らしき人物の後ろ姿を確認出来た。
どうでも良いけど此処って門の内側だよね?
なんであの人後ろ向いてんの? もしかしてカッコつけてんのかな。
辺りが騒然とする中、徳川さんは慌てた様子でワーワー騒ぎながらドタバタと本多さんの方へ走り去って行った。
「……あぁ、門の耐久度が持たなかったのね……」
あ、今とうとう素で女言葉喋っちゃった。
気の所為か、私の見張り役らしい横の兵士が、なんか変な顔していた。
気の所為じゃないね、変な顔してるわ。
いやー、ごめんね、私中身女の子だからさー、なんて言う訳にも言わず無言で通す。
その時だった。
「ふむ、見覚えのない者が居るようだね」
兵士と目を合わせない為に意味も無く視線を落としていたらなんか聞き覚えのある声がした。
えーと?
この声は、あのゲームならアクセル、某最後のファンタジーなら……レノ、一番有名なら、野原ひろし。
そうだ、野原ひろしだ。
確かめる為に顔を上げれば、そこにはあの、私があんまり会いたくないと思っていたあの人が居た。
松永、……えーとなんだっけ?
ごめん、忘れた。
そう考えた途端に、私の横に居た兵士が地に崩れ落ちる
私のすぐそば、目の前に鮮血が広がって、血の匂いが辺りに立ち込めた。
唐突に起こった目の前の蛮行に気を取られていたら、松永が更に近寄って来ているという事実を認識した。
「
片脚の膝を地に付けてしゃがみ込み、じっと顔を覗き込んでくる白髪混じりの黒髪の、服まで白黒なオッサン。
あー、記憶の中の自分ならこの声にキャーキャー言ってるんだけどな……。
まあ、そんな事言ったら自分の喉から出るこの声も、今考えると某声優さんな訳なんだからテンション上がってておかしく無かったんだけど、あの時は混乱してたからなあ。
今は心が無いので土台からして無理な話だ。
「……さて、卿は何を望む?」
なんだか不敵にそう言われた私は少し考えた。
……望む? のぞむ、ってなんだっけ。
一瞬、誰かの名前かと考えてしまったが、この場合はそうじゃないだろう。
そこまで考えて、あぁ、願いとか、そういう意味の方か、と気付く。
望み、望みねぇ。
いや、特に何も望まない、っていうか考え付かない。
あぁ、そういえば一つだけ有った。
「……死にたくはないな」
ぽつりと、呟くみたいな声が出た。
だって、今死んだら帰れない。
それは、私が望む事じゃ無い。
あの神様を助けて、元の世界に帰るのが、心があった時の願いだったから。