王国/心2某機関NO.2の姿で戦国BASARAにトリップさせられた女子の場合   作:藤 都斗

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よん

 

 

 

 

「……ほう? それだけか? 随分と無欲なのだな、卿は。逃げたいとは思わないのかね」

 

「行く所なんて無い」

 

 不敵な笑みのままの随分と余裕のある問いかけに対して、特に表情を作らずに淡々と返したら、不意に立ち上がったその男に何故か、刀を突き付けられた。

 

 もう少し伸ばすだけで、私の首に突き刺さるだろう、という位置まで刃を向けられたけど、心が無いから別に怖いとも思わないし、突然の事なのに全く焦ったりもしなかった。

 

 元の私なら、私凄い! と自画自賛しているかもしれない。

 

 全く凄く無いんだけどね。

 

 ボーッと様子を見ていたけど、目の前の男、松永は微動だにしないまま、変わらぬ不敵な笑みのままに、どこか観察するように私を眺めていた。

 

 いつまでその刀、いや、剣? あれ、どっちだそれ、まあいいや、私に向けてるつもりなんだろう、この人。

 

「……アンタ……何がしたい?」

「ふむ、その口は死にたく無いと言うのに、抵抗しないのかね?」

 

 どこか怪訝そうな問いに、ふと気付く。

 

 そういや私もこの人の事知らんけど、この人も私の事知らんかったわ。

 

「なんかを試そうとしてるとこ悪いが、俺に恐怖という感情は無い。ついでにその他も全部」

 

 多分、私の覚悟というか、恐怖に耐える顔とかなんかそういうのを見たかったんだろうけど、いやー、申し訳無い。

 無表情でそう伝え、それから口の端を上げて笑みの表情を作る。

 やっぱり笑うのはまだ少し難しいらしく、ぎこちなくなってしまった。

 

 綺麗な笑顔をするにはもう少し時が掛かりそうだ。

 

 目の前の男は余裕のある堂々とした態度のまま、緩く首を傾げた。

 

「ほぅ? 実に興味深いな……」

「俺はアンタに興味無いです」

 

 真面目な顔を作り、キッパリと言い放つ。

 

 途端に突き付けられていた刀が下がったかと思いきや、左の頬に痛みが走った。

 どうやら、軽く皮一枚斬られてしまったらしい。

 じくじくとした地味な痛みに、元の私が言いそうな言葉が反射のようにぽつりと零れる。

 

「いて」

 

「痛いと言いながら表情は変わらぬか……」

 

 ふむ、と何かを思案するような仕草を見せながら、また私に刀を突き付けてくる松永を眺めながら、淡々と考えた。

 

 いやそりゃ仕方ないでしょ、心が無いんだもん。

 戸惑うとかそんなのも無いくらいなんだから。

 

 この人、話聞いてた? 

 

「興味深いな。どうだね、我が軍へ来ないかね?」

 

 

 は? 

 

 

「え、嫌だ」

 

 

 いつの間にか、冷静にだがキッパリと、そう返していた。

 

 いや、だってこの人の軍ってアレでしょ? 

 なんか良く解らないけど、冷酷な集団だよね? 

 

 しかも必然的に私、この野原ひろしボイスのこいつの部下になるよね? 

 

 やだ、面倒臭そうだから行きたくない、元の私ならそう思うだろう。

 ていうか、そう思ったからこそ即答したんじゃないだろうか、解らんけど。

 

 

「.それは残念だな。しかし、私は卿が欲しいのだよ」

 

 

 刀突き付けたままの状態で、この人は一体何を言い出すんだろうか。

 余りの突然さに、なんか混乱してるっぽい自分に気付く。

 

 考えが纏まらなかった。

 

 えーと? 

 ホント何だこの人

 

「……あー、えー、意味が解らないんだが.いきなり何言い出してんだお前」

 

 あ、なんか今度はうまく男言葉喋れた。やったね。

 

 そんなどうでもいい事を考えながら、目の前の男を眺める。

 

「うちの軍に卿を置きたいと言っているのだよ」

「お前相当の物好きだな」

 

 そんな会話をしている時だった。

 

『ギュィイーン!』

 

 そんな駆動音と共に、物凄い速さで本多忠勝がやって来た。

 私と松永の間は大分近かったが、そのちょうど真ん中辺りの足元より少し向こうに、本多さんのドリルみたいな槍が突き刺さる。

 ギャリギャリという音と共に地面をえぐられ、土煙が舞った。

 

「おっと……、邪魔が入ってしまったようだね。では一旦引くとしようか、また会おう」

 

 ドリルを避けるようにバックステップで後ろへ下がった松永は、不敵な笑みを浮かべたままそう言って、そのままスっと踵を返したかと思えば、私と本多さんに背を向け、それ以上は特に何もせずに、余裕たっぷりな足取りでスタスタと去って行った。

 

 え? なにしにきたの? 

 

 つい考えてしまったそんなツッコミは、自分の中にだけ置いておこうと思います。

 

 淡々と考えながら、戦う気の無い相手を追い掛けてまで戦おうとする脳筋じゃなかったらしい本多さんへと、視線を向ける。

 

「……あー、えーと……本多忠勝……お前なんでお前俺を助けたんだ?」

『プシュー』

 

 私のそんな問い掛けは、やっぱり駆動音で返されてしまった。

 

「ダメだ解らん」

 

「忠勝は、オメェが松永に殺されそうだったから来た訳では無ぇぞ!! 

 単にアイツを領地から追い出したかっただけだ!!!」

 

「あ、そう」

 

 ドカドカと歩いてくる徳川さんが通訳してくれたので、ようやく察する事が出来た。

 

 まあ、そりゃそうだよね、防衛戦だったらそうなるわ。

 

「……いかんいかん、忘れそうになってたけど俺今は捕虜だった」

「忘れてたのか!!? ……オメェ……図太いんだな……」

 

「だから言ったろ。俺心無いって」

「う、……そうだったな」

 

 なんか、ちょっとバツが悪そうな顔で目を逸らされて、私の話を信じた様子の徳川さんに、ぼんやりと考えた。

 

 ゲームとおんなじでいい人なんだな、と。

 

 あの中じゃ、使えないキャラクターランキング上位者だったけど。

 

 だって、弱かったし。

 

 本多さんでプレイするとよく分かるんだけど、すぐにどっかの国に攫われてるんだよね。

 

 だけどまあ、彼もまだ若いし、これからの成長に期待するしかない。

 とか考えていたら、徳川さんが唐突に口を開いた。

 

「まぁ良い! とりあえず帰るぞ!! ライグとやら! オメェも城へ連行する! 忠勝!!」

「え?」

『プシュー!』

 

 状況に着いて行けていない私を放置して、なんかよく解らないまま、また本多忠勝に担がれ、私はまたいつの間にか空を飛んでいた。

 

「……意味が解らない……」

 

 そんな感じで私は三河の……駄目だ知らないや。

 とにかく徳川家康の居城に連れて行かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、私は地下牢にぶち込まれた。

 

 まあ、捕虜なんだから当たり前だろう。

 寧ろ客人扱いされたら逆に驚く。

 

 驚くような心が無いので、そんな事出来ないんだが。

 

 壁を背もたれに座り込みながら辺りを観察する。

 

 湿っぽく、黴臭い空気が充満しているこの空間は、石造りで出来ているらしい。

 地面はそのまま茶色い土が剥き出しになっているが、端っこの方は苔むしているから、大分昔に作られたのかもしれない。

 地下である為か無駄に暗く、松明の灯りに照らされた此処は、なんていうか、元の私なら多分、不気味だと思うんじゃないだろうか。

 松明の燃える独特の匂いみたいな物は、多分立ち上がれば感じる事が出来るだろう。

 

 しかし、特にする事が無い。

 

 暇を持て余したので、改めて自分の姿を確認してみる事にする。

 

 両手を後ろに紐で拘束された状態で、よっこらせ、と立ち上がってみる。

 そのまま自分の身体を見下ろした。

 

 流石というか何て言うか、肩幅の割に腰が細いなこの身体。

 あった筈の胸も無いし、ホントに男の身体だなぁ、と淡々と考える。

 

「なんか悲しくなったような気がする 」

 

 何となくぽつりと、呟いた。

 

 記憶の中の自分なら若干凹んでいるだろう。

 そういえば最初の時は結構ショック受けてた気がする。

 

「まあ、んな事はどうでもいいか」

 

 改めて呟く事で、そんな考えは終わらせる事にした。

 何もかも全て今更なんだから仕方ない。

 

 さーてどうしようか、口調は大分慣れて来た。

 

 だが、両手は今も拘束されたままである。

 

 しかしこのままじゃアレですよ

 

 トイレどうしよう

 

「……すいまっせーん。……トイレ……じゃないか……えーと便所も違うか、厠行きたいんですけどー」

 

「あー? その辺に桶があるだろ、そこでしろ、そこで」

 

 私の問い掛けに、牢番らしい見張りの兵がさも面倒臭そうに告げる

 

 言われてみれば確かに視界の端に観葉植物が植えられてそうな大きさの桶が一つ。

 

 うん。

 

 入った時は何だこれと考えたけど特に気にしてなかったが、どうやらこの桶がトイレらしい。

 まあ、めちゃくちゃ不自然に置いてあるから何となくそんな気はしてた。

 

 牢屋に置いてあるんだから、まぁそりゃそうだよね。

 

 恥ずかしく思ったりなんてしないから大丈夫だろうけど、両手が塞がってたら上手く出来ない気しかしない。

 この身体になって初のトイレが桶、っていうのを抜きにしても、このコートを脱がないとズボン下げられないよね? 

 

 だって上から下までチャックついてるんだよ。

 ジッパーとも言うっけ。

 

 ていうか、後ろ手に拘束されてるんだからどうやったって垂れ流しになるよね? 

 いや、特になんも思わないけどさ、でも自分は人間らしくしなきゃならない訳で、なら普通は嫌がるよね、これ、っていう。

 

 まあ、そんな事をつらつらと考えてても尿意は待ってくれない訳で、とりあえず牢番さんに声を掛けた。

 

「なあ、せめてこの拘束解いてくれよ。

 勿体ないだろこんな珍しい服が汚れるの」

「んぁ? 、知るか.って言いてえとこだが.ホントに珍しい着物着てんな、てめぇ.チッ、仕方ねぇ、余計な真似すんなよ」

 

 よっぽど面倒だったのか、なんかホントに渋々といった様子で拘束を外してくれた。

 

 いやーすみませんね。

 なんて軽口を叩きながらコートのジッパーに手を掛け、ジーッと下げて、ふと気付いた。

 

 ……アレ……コートの下ズボンだけ? 

 

 脱ぐと半裸? 

 

 えー、どんな趣味してんの神様、どうなのコレ。

 いや、元のキャラクターがどんなインナー着てるか解らんかったのかもしれんが、それってどうなんだろう。

 

 そんな事を考えていたら、イライラしたらしい牢番さんに声を掛けられた。

 

「なんだよオッサン、さっさとしろよ」

「まぁ待て待て。この服面倒臭いんだよ」

 

 とか何とか言いながらとりあえずコートを脱ぐ。

 

 手袋も外してポケットに突っ込み、それから脱いだコートごとくるくるっと巻くように軽く畳んで、桶と反対の方の隅に置いた。

 

 その後の行動については、心が無くて良かったと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、牢の中で、しかも半裸で目が醒めた。

 

「あー、なんか首痛……」

 

 うつ伏せになってる身体を起き上がらせる事もせずに、小さく呟く。

 

 なんか妙な寝方でもしただろうか。

 

 そう考えてから昨日の記憶を探って何があったのかを思い出した。

 

 あぁ、そういえば昨夜遅くに尋問という名目の拷問を受けたわ。

 なんか、無駄に忠誠心が高い感じの、鬱陶しそうな侍に。

 

『家康様に近付くなど恐れ多いにも程がある!』とかも言われたからただ単に家康フリークなだけかもしれないけど……

 

 ……めっちゃ痛かったな。

 いや、今も痛いけどさ。

 

 でも、心が無いからそれだけなんだよね。

 

 あちこちから感じるじくじくとした痛みを認識しながらも、そのくらいしか考えなかった。

 

「……あ……背中も痛いなコレ」

 

 確かバッシバシ背中やら何やらを鞭っぽいヤツで叩かれた気がする。

 この痛みから考えると、皮どころか肉もえぐれてそうだな、と冷静に分析した。

 

 あんまり痛いから途中で気絶したのが幸いしたのか、拘束されずに牢屋に転がされていたらしい。

 両手は自由になっていた。

 ざっと見たとこ、爪を剥がれたりとかいう典型的な方はされてないし、痛い以外に支障はないようだ。

 

 

 あれ、これチャンスじゃね? 

 

 

 という訳で、兵士が交代したのを見計らってそーっと立ち上がり、両手を広げた。

 そのまま腕ごと軽く振るうと瞬時にあの武器が手の中に現れる。

 

 初めて使った時も考えたけど、体自体はこの武器に慣れているせいでか、物凄く何となく使い方が分かるのがなんとも言えない。

 何だか少し不思議な感じ、がしたような気がしたけど、気の所為だろう。

 

 それよりも……心が無くて良かった。

 もしあったのならこんな作戦など出来はしない。

 

 いつか心が戻った時、記憶の中の私なら、人の死というものに押し潰されるだろう。

 

 淡々と思考を重ねながら、誰にも聞こえない程度の音量でぼんやりと呟いた。

 

「……心なんて戻らない方が良いような気さえしてくるね……」

 

 そのまま武器を構え、見張りの兵士が気付かないうちに

 

 その兵士の頭に銃口を向けながら

 

 

 引鉄を引いた。

 

 

 パシュッ、という軽い音が響くと同時に、見張りの兵士が崩れ落ちる。

 暫くビクビクと動いていたが、すぐにピクリとも動かなくなった。

 

 のを確認してガンアローで牢の錠前を撃ち抜く。

 

 今度はピシュッという音がして、それが地面へ落下する音が聞こえた。

 

 この武器だと銃みたいな大きな破裂音はしないからこのくらいの音なら気付かれる事は無いだろう。

 

 だとしても、警備体制ザルじゃないかな、もしかして、見張り役一人しか居ない感じ? 

 

「……えーと……、さっき見張りが交代したばかりだから……暫くは来ない筈……だよね」

 

 もし居たら目の前で人が倒れたら気付くもんね。

 誰も来ないって事はそういう事だろう。

 そんな状況確認をしてからもう一度手を振る事で武器を消し、隅に置いていたコートを羽織る。

 ポケットの手袋もきちんと装着して、ジッパーをきちんと上まで上げた。

 

「さて……逃げ出しましょーかね」

 

 そんな風に呟いて、フードを被りながら牢の外へ出る。

 自分以外の捕虜は別の場所にでもいるのか、他の牢屋はカラだった。

 

 まあ、そんな事よりも脱出である。

 

 確か此処は地下だった。

 つまり上に向かわなければ出られない。

 

「もう少し落ち着いたら……今の私……じゃねーや、俺にはどういう力があるか、確認した方が良いなァ」

 

 人らしく振る舞う練習のつもりで呟きながら上へと向かう階段まで歩く。

 

 結果としてまた一人称間違えたけどまぁ良いや。

 

 なるべく足音を立てないように歩きながら、息を吸って、吐いた。

 

 とりあえず、なるべく殺さないように、あんまり人と会わないようにした方がいいだろう。

 

「殺し過ぎると、心が戻った時大変そうだもんな……」

 

 そう呟いて、私は武器は持たずに階段を上った。

 

 結構でかいから嵩張るんだもんあの武器。

 隠密行動には向いてないよ。

 

 そんな事を考えつつ、人に悟られないように隠れながら外を目指す。

 

 階段を上りきった先の出口付近には見張りの兵士が居たので手刀で昏倒させようとしたんだけど、力加減が難しくて、兵士の首の骨が折れてしまった結果、死体が増えました。

 

 まあ、仕方ないと割り切って、見つからない内にと歩き出す。

 そこからは、そんなに人は居なかったので影に姿を隠しながら移動した。

 

 こういう時でも緊張なんてしないのは有り難い気がする。

 

 ついでにコートが黒くて良かった。

 私が隠れてる真横を兵士が普通に通ってるけど気付かないもん

 

 まあとにかくそんな感じで進んでいた私は、恐らく外へ繋がっているだろう扉の前に陣取っている見張りの兵を、今度はさっきよりももっと力加減を頑張って手刀で昏倒させ、なんとか素早く脱出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 外に出ると真っ先に感じた朝の澄んだ空気に、どうやら少しだけ息苦しく感じていたのだと今更気付いた。

 

 でも、このまま此処に居てもまた捕まるだろうから、まだ誰にも気付かれていない今のうちにさっさと何処かへ行ってしまおう。

 

 そう考えて辺りを見回した。

 

 城らしき場所の敷地内の何処かではあるようだが、どうやら本丸とは離れているようだ。

 

 好都合である。

 

 これなら気付かれずに逃げる事が出来るだろう。

 

 私は無言で近くの塀に近付き跳躍した。

 

 とん、という軽い音を立てて上に乗れて、なんか、記憶の中の元の私がスゲー! とか言いそうだな、と考えた。

 

 まあ、どうでもいいか。

 

「とっとと退散しよ」

 

 そして私は地面に降り立とうと跳躍して

 

 予想外の出来事に少し固まった。

 

 

 何故か私は空中に立っていたのだ。

 

 

「……うーわ……人外……」

 

 

 そして不意に、元になったキャラクターの設定を思い出した。

 

 

「属性……確か空間だっけ。この人」

 

 あのゲームで戦った時、確かに空中に立ったり、逆さまで攻撃して来たりしてた記憶がある。

 

 て事は多分、無意識に自分に都合の良い空間とやらを足場として作ったんじゃなかろうか。

 

 

 どうやってやったか解んないけど。

 

 

 そして私は考える事を早々に諦めて、徳川の城から逃げ出した。

 

 

 

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