王国/心2某機関NO.2の姿で戦国BASARAにトリップさせられた女子の場合 作:藤 都斗
「でさー、見てたら本多忠勝に拉致されてるし、そのまま素直に捕まってるし……あ、そこでアンタの名前とか事情聞いたんだよ。
で、松永久秀には刀向けられて、それからまたそのまま本多忠勝に連れて行かれて、牢屋に入れられても拷問されても平気だし……。
次の日には何の前触れも無く人殺すしで俺様ビックリしちゃった」
「……ほー……」
「その上空中走るわ、いきなりこんな寒い日に水浴び始めたかと思ったら固まってるわ、上がったかと思ったらビチョビチョのまま着物着ようとするわ……何がしたいのアンタ」
つまりこの人、ガチで最初から今までずっと居て、俺を監視してたらしい。
何がしたいのっていうそのセリフそっくりそのままお返しされてもおかしくないけど、気付いてるんだろうかこの人。
「様子見てたら心が無いっての、あながち嘘じゃ無さそうだねぇ。
こんな傷残るくらい拷問受けてたのに」
「恐怖も無いからな」
他に答えようがないので、特に何も考えずにそう答える。
「そうみたいだねェ」
「しかし覗きとは趣味が悪いな、オッサンの水浴びとか、拷問でいたぶられてんのとか見て楽しかったか?」
「意外と」
どういうことなの。
「何でだ」
「普段誰かを虐めて愉しんでそうな奴がめちゃめちゃ虐められてたらなんかヨくない?」
知らんよそんなの。
つーか良くないよ別に。
あ、なるほどこれがSか。
……いや、うん、まぁ良いやどうでも。
「……で? お前は俺をどうしたいんだ?」
「それにしてもアンタ腰細くない? いい身体してるね、っと、よし、完了」
「え、無視?」
放置してたらどうやら頭を拭かれ終わったらしい。
ていうか私今微妙にセクハラ言われなかった? 気のせい?
そんなんでも記憶の中の自分なら“私あの佐助に頭拭かれてるよ! ”とか悶えそうだけど、心無いからなんか良かった気がする。
まあ、何もかもがどうでもいいのが現状なんだけども。
「……お前もしかして暇人?」
「えー? 全然暇じゃないよ。今だって任務中だもん」
「ならさっさと任務に戻れよ。こんなオッサンの世話焼いてないでさ」
「俺様の任務はアンタを甲斐まで連れていく事なんだよね」
「はぁ」
余りの意味の解らなさに、かなり薄いリアクションしか出来なかった。
まって、どういうことなの。
「実はさー、最初はただの徳川軍の偵察だったんだけどねー、途中でアンタ現れてさァ、ずっと見てたら何処にも属してないみたいだし?
うちの軍にどうかなーって文送ったら連れてこいって返事が返って来たんだよね」
何考えてんだ武田信玄。
もしくは真田幸村。
いや、真田幸村は何も考えて無さそうだな、じゃあやっぱり武田信玄か? 知らんけど。
「……あー……とりあえず、お前誰」
「おっと忘れてた。俺様人呼んで猿飛佐助! 宜しくね~」
うん、ゲームで知ってる。
だがしかし、一応知らん振りしとかないとダメだろう。
という訳で、
「猿飛ィ? 聞いた事ねーなァ」
わざとらしーく答えて見せながら振り向いたんだけど、……心が無いせいかなんか微妙になった気がする。
「アレ? そう? まぁ忍だしね俺様。てゆーかオッサン変な顔~」
「……忍って普通自分の正体とか隠すもんじゃねーの?
つーか変な顔言うな。慣れてないんだよ大目に見ろ」
なるべく棒読みにならないように言葉を紡ぎながら、佐助を見ていた顔を景色へと戻す。
「慣れてない……ねぇ……。でもライグの旦那、最初アンタが現れた時、そんなんじゃなかったよね?」
不意を突かれるみたいな問いに、少しだけ驚いたような、なんかそんな感覚に陥った。
「まぁ……な。気絶した時にあの白い奴に心を持ってかれたから」
「そういえばあの白いのって何? 何処に行ったの?」
「あぁ、なんか知らんが神らしいよ。んで今は俺の中で寝てる」
一応ホントの事だけど彼は多分信じないだろう。
だけど、他にやりようも無いので簡単に説明する事にした。
だけど、また予想外の事が起きた。
「成る程ね」
なんか、納得されてしまった。
「……え……えーと、俺は別に良いんだが……、……信じるの?」
「だってアンタ先刻水の中に突っ立ってる時青く光ってたし、空中走ってたもん」
空中はともかく、どうやら俺、光ってたらしい。
そういえば神から、三分の一神化するって言われたような記憶がある。
なるほど、だとすれば神通力とかいうのの回復中に光ったりもするのかもしれない。知らんけど。
そんな事を考えていたら、ついでとばかりに爆弾発言が投下された。
「それに、今はアンタから人間の気配しないしね」
え?
「マジで?」
「マジで」
あらまぁ、俺いつの間に人外の気配を発するようになっちゃったの……?
三分の二は人間な筈なんだけど、心が無いからなんだろうか。
十中八九そのせいだろうから特に気にならないけど。
その時、ふと気付いた。
なんか俺、いつの間にか心の中の一人称まで私から俺、に変わってるくない?
ここまで来れば、シグな口調まで後少しって所だろうか。やったね。
そんなどうでもいい事をぼんやり考えていたら、物凄く唐突に、髪を纏めて引っ張られた。
「え? 何」
「ん? ついでだから髪を結っておこうかな、と」
「いや、自分でやrいだだだだだだ」
その位は出来るからと拒否しようとしたら、なんか知らんけど背中の一番酷い傷を掌でワッシワシ擦られた。
普通にかなり痛いんですけど何してんですかアンタ。
「まぁまぁ、良いから大人しくしてなって。傷薬もついでに塗っとくからさ」
「もしかして、今、傷薬塗ったの? 何の前フリもなく突然? なんか、スゲー痛いんですけど、コレ、何? カラシ的なもの?」
ヤバイめっちゃ痛い
マジでめっちゃ痛い
自然と顔が苦痛に歪むんですけどホントに傷薬かコレ
「何言ってんのライグの旦那。忍愛用の傷薬だよ? すっごい効くんだからね、滲みるけど」
滲みるなんてモンじゃねーよ、通り越して激痛だよ!
「ちょ……! マジで痛いんですけどっ!」
「あらあら、アンタ男だろ? 我慢しなよそれくらい。まぁ俺様はそーゆーアンタ見てるの凄い愉しいけど」
いやあらあらゆーとる場合か。
え? 何ドS?
いやゲームで見てた時Sっぽい人だなとは思ってたけどドが付くSだとは思わなかったよ俺。
「はい完了」
気が付けば髪はきちんと括られていた。
うん、なんなんだろうこの状況。
意味が解らないので着いていけない。
それより何よりすっげ背中痛い。
「……あのさ」
「何? ライグの旦那」
「お前何がしたいの?」
「アンタの中に神が居るなら丁重に扱うのが普通でしょ」
そうかも知れんがコレのどの辺が丁重?
「まぁ、アンタ生き神な訳だし? 味方に付けたらうちの軍も士気上がるじゃん。はい両手上げてー」
いや何この子供扱い。
仕方がないので言われるがまま軽く両手を上げたら、何故か手早く包帯が巻かれて行く不可思議な現実と遭遇した。
手際良いなー、とどうでもいい事を考えてしまうけど、これってもしかして現実逃避なのかしら。知らんけど。
「軍? …………えーと……甲斐って事は……俺もしかして武田軍に連れてかれそうになってんの?」
そんな中、とりあえず浮かんだ疑問を、確認の為に尋ねてみる。
「お、察しが良いね。その通りだよ~」
わあい当たったー。
拒否りたーい。
いや、特に何も思わんけどそれよりも、そこはかとなくやってくる、なんか知らんけど嫌な予感みたいな、それが気になる。
だってコイツ、表情はニコニコしてんのに目だけが全然笑ってないんだもん。
任務と、少しの興味だけの為に行動してるんだろう事が容易に想像つく。
キャラクターだからかなんなのか、異質だ。
まぁ、そんな事言い始めたら実際には俺が一番異質なんだが、それは今は置いとこう。
何たって姿は他作品のワイルドダンディ様だし、中身は現代っ子なゲーマーとなんかオタクな神だし。
とか思ってたら岩場に置いてた筈のコートを手渡された。
「よし、んじゃさっさとソレ着て行こうよ」
「いや……だから何でだよ」
促されて、とりあえずコートに体を通しながら尋ね返す。
「俺心無いんだよ? 解ってんの? 裏切るかもしれないじゃん。連れてってどうすんだよ」
「えー仕方ないじゃん。うちの大将が連れてこいって言ってんだもん」
いや、一体どんな報告したらこんな不審人物連れて来いってなるのか小一時間問い詰めたい。
別にどうでもいいけどさー、人間らしいリアクションってこんなだっけ? 難しいわー。
「……で? お前自身は何考えてんだよ?」
「何って……世話の焼きがいがあるオッサンだなーとか、色んな意味で面白いなーとか」
えぇえ……つまりどういうことなの.
今なんか凄い無表情になっちゃった自分。
「ま、良いじゃん? どうでも」
ニコッとイケメンスマイルで返されてしまって、何も言い返せなくなってしまった。
良くはない筈なんだが、まぁ気にしてもしょうがない気はする。
「大丈夫大丈夫! もしもの時はさっくり殺すし!」
「……あ、そう」
警戒してるんなら別に良いか。
いやこれも良くはないんだけど、でも別に何も思わないからまァ良いや。
「んじゃ、ちょっくら失礼するよ旦那」
「あ?」
コートのジッパーを上近くまで上げた時にそんな声が掛かり、思わず振り返った途端、
口の中に何かが飛び込んで来たと思ったらさらに水まで流れ込んで来て、その上顎と口と鼻を押さえられ上を向かされた。
必然的にその何かを飲み込む事になり軽く固まる。
っていうか、水が気管に入ってむせ返った。
「っゲホッげほッ、……ちょ……! いきなり何すん……ゲッホゲッホ!」
「え? 何? 口移しが良かった?」
「げほっ、え? お前そっちの人?」
「冗談でーす」
目が笑ってないから冗談か本気か解らんのですがそれは。
「けほっ……で、何飲ませた」
「もうすぐ解るよ~」
まって、そんなすぐ効き目が解るようなもん飲ませたの? やだこわいこの人。
全く怖いとか思ってないけど反射みたいに考えていたら、なんか手足がだんだんピリピリして来た事で気付いた。
手足が痺れる、って事はアレか?
よく漫画や小説で出て来て主人公が盛られたりする、あの、アレじゃないですかね。
「うわー、俺痺れ薬? とか人生初の経験」
「お? マジで? 良かったじゃん」
いやこれが絶対良い事じゃないのは子供でも分かると思うよ俺。
「お? おおおおお……?」
呑気に色々と考えている間に体が動かなくなって来た。
「よし、効いて来たね。んじゃ行こうか」
足に力が入らなくなり、あー、コレ倒れるなぁとか思った途端、ひょいと俵担ぎされる俺。
俗に言うお米様抱っこである。
わーいこれも人生初ー。嬉しくなーい。心無くてもきっと誰でも嬉しくなーい。
「……また拉致かよ……」
口元まで痺れない内に、抗議のつもりの独り言を捻り出す。
すると、あっけらかんとした答えが返って来た。
「まぁまぁそう言わず。俺様の足なら夕方前に着くし。つーかアンタ図体の割に軽いなー」
……あーもう良いや。
腹部分が肩に食い込んで地味に苦しいけど、痺れてるから動けないし、完全にまな板の上の鯉状態である。
……もうどーにでもしやがれーである。
結局そんな感じに拉致られました。
なんかこんなんばっかじゃね?
何コレ。
マジで。