王国/心2某機関NO.2の姿で戦国BASARAにトリップさせられた女子の場合   作:藤 都斗

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はち

 

 

 

 

「……これからどうすっかな」

 

 一人、意味も無く呟きながら森の中に降り立つ。

 

 よく考えなくても不意打ちばっかしてるね自分。

 なんかあれだね、めちゃくちゃ卑怯だね。

 

 つっても他になんにも作戦浮かばなかったんだからしゃーないよね。

 

 ぼんやりとそんな事を考えながら、まだ持ったままだった武器をしまって、ブーツを履いた。

 傍から見たら変な人だけど、まあいいや。

 

 なんだかんだで、いつの間にか男言葉を喋るのも板に付いて来たような気もする。

 この世界に来てまだ三日しか経ってないってのに、凄いよね、順応性の塊だね。

 

 

「……なんか腹減った気がする……?」

 

 ふと呟いた事で気付いたんだけど、自分、今まで何も食べてない気がしてきた。

 

 ちょっと反芻してみよう。

 

 えーと。 

 

 一日目は徳川に捕まって拷問受けて、

 二日目は逃げ出して佐助に捕まって、

 三日目の今日もまた逃げ出して今現在。

 

 あ、ガチでなんも食ってねぇし、水飲んですらねぇや。

 えええー、大丈夫なんかこれ。

 

 色々有り過ぎたから今まで麻痺してたのかもしれないけど、だからってこれはどうなの自分。

 

「うわ、意識したらスゲー腹減って来た」

 

 ちょっとというよりも色々と問題がある気がするんだが、これはもしかしなくても心が無いから、なんだろうか。

 

 腹部を押さえることで空腹を誤魔化しながら、思案する。

 

 とにかく、何かしら腹に物を入れておくべきだろう。

 草でも食ってやろうかと思ったけど腹壊しそうだよね。やめとこ。

 

 運良く何事も無く、今まで大丈夫だっただけに、なるべくリスクの大きくなるような事は避けるべきだ。

 これから大丈夫かは分からんし、用心に越したことはない。

 

 つらつらと考えながら歩を進める枝でも踏んだのかパキパキという音が足元からした。

 

 ていうかここどこ? 

 

 むしろどこに向かえば良いのコレ。

 

「どっかになんかねーかな? 食い物的な何か、あーなにこれヤベー…………」

 

 今まで感じた事の無い空腹感に、意味もない独り言が口から出て行く。

 

 なんか、お腹と背中がくっつきそうである。

 まさにあの表現ってピッタリだったんだね、知らんかった。

 

 ぼんやり考えながら辺りを見回すが、視界に入るのは森林と獣道と草と(やぶ)

 

 

「この際ウサギとかで良い、居ないかな……あ、でも火がねーわ、意味無ェ……」

 

 いくらなんでも生肉は食べられない。

 せめて焼きたい。

 

 いや心が無いから出来ない事は無いだろうけど、もし誰かに目撃されたとしたら、めちゃくちゃヤバい人になってしまう。

 出来ることならそれは避けたい。

 

 鬼が出たぞー! とか言われて討伐対象にされても困る。

 

 取り留めのない思考を放置して、フラフラとした足取りながらも適当に歩を進めた。

 そんな中、ぼんやりと瞬きをした一瞬の内に、歩く為に前に出した足のブーツが何かに埋もれ、モギュッという独特の足音が聞こえた。

 

 何事かと意識して視線を辺りに向けてみれば、

 

「……えぇ……何……どこ……」

 

 そこは森では無く、雪景色だった。

 

 いやなんで雪景色? 

 これも神がくれた能力か何かなんだろうか。

 それとも別の何かに連れて来られたんだろうか。

 

 何が起きたのか、全然全く分からない。

 

 

 いや……まじでどこよここ……。

 

 

 辺りを見回し、現在の状況確認。

 

「……最北端の村周辺……?」

 

 BASARAで雪国っつったらそのくらいしか浮かばないんですけど、まあ、仕方ないよね。

 東北の方のどっかというか、青森とかある辺り。

 

 適当に当たりをつけたものの、状況は変わらず、むしろ寒さが身に染みてきた。とにかく寒い。

 

「……どっか村見付けたら、なんか食い物恵んで貰えるか交渉してみっか……」

 

 寒さを凌ぐ為にコートのフードを被り、意味も無く呟いた。

 

 顔面が冷たいし、めっちゃ寒いけど、フードが無駄に深いからか少しだけマシになった気がする。

 いっそ雪食ったろうかな、と考えたものの結局腹は減るだろう。

 あと、こんな寒い中こんな冷たいもの食うとかちょっと無理だわ。体温消えちゃう。

 

 

「…………───────…………!!」

 

 

 不意に遠くから、なんか聞こえた。

 

 いや、なんかっていうか、オッサン達の声というか、なんだろう。

 アキバのアイドルの応援してるオタク達みたいなそんな感じのアレ。

 野太い声援が、耳に届いた。

 

 今俺の居る現在地は、多分だが最北端の村の周辺で、しかも聞こえたのはアレ。

 

 叫び声とかじゃなく、声援。

 

 いや、うん、まあ、確認が先決かな。

 

 今のままじゃ凍死&餓死まっしぐらである。

 

 という訳で。

 

「……行ってみるか」

 

 まず死にたく無いし、それ以前に腹が減ったし、現状の確認もしたいし。

 

 うだうだと適当に考えながら声のする方へ近付いた。

 

 

 

 

 

 

「い・つ・き・ちゃぁぁぁあん!! 大好きだべェェェェエ!!」

「いつきちゃぁぁぁああん!!」

 

 

 アッハイ、これは確定ですわ。

 

 

 雪景色に似つかわしくない、人気地下アイドルとオタク達の祭典みたいな、なんか暑苦しい空気と景色。

 

 ピンク色の法被(はっぴ)を着た、ハート型の団扇を振り回すおっさん達の集団と、その中心には木で出来た朝礼台みたいな台に乗った、銀髪の三つ編みツインテ幼女が一人。

 

 どう見ても、プレイ出来るキャラクターの一人、唯一の平民で幼女枠の“いつき”と、その親衛隊の皆様である。

 

「皆ァー! ありがとーっ!!」

 

『うおぉぉお!! いつきちゃぁぁぁあん!!』

 

 この寒い中、金太郎みたいな前掛けと短パンに、手足だけ藁の防寒装備でイヤーマフした奇抜な格好の幼女が、集団に向けて手を振った瞬間、野太い声援が更にヒートアップした。

 

 

 なんだろう、この辺、空気が臭い気がする。

 

 

 そんな事を考えながら、そのままぼんやりと様子を眺めていたら、

 

「おめさん誰だ! そこで何してるべ!!」

 

 不意に背後からオッサンに叫ばれた。

 

 あっ、どうしよう何も考えてなかった。

 

 仕方がないので、適当に話しておく事にしようと思います。

 

「俺かい? 見学してんだよ」

 

 軽く告げつつ振り返りながら、このままだとちょっとアカン気がしたので、被っていたフードを取る。

 

「け、見学だべか?」

 

「そう、見学。いやー、いつきちゃんはやっぱ可愛いな」

「おめさん、お侍さんじゃねーんだべか?」

 

 俺がフードを取ったのと、幼女を可愛いと言った事で少し警戒心が薄れたらしい。

 

 ちょろいなこのオッサン。

 

「侍? 違う違う。刀持って無いし、それ以前に俺ァただの迷子だ」

「迷子!? ずーいぶんとまーでっけー迷子だぁー」

 

 なんか凄い驚いてらっしゃるけど、オッサンそれ結構失礼だぞ。

 

「茂吉どん! どうしただ? その人誰だべ?」

 

 ふと、見慣れない姿の俺の存在に警戒してか、幼女いつきちゃんは、愛用のめっちゃでかいハンマーを片手に引き摺りながら、警戒心丸出しで駆け寄って来た。

 

 ゲームと同じで、とんでもない美少女である。

 でも近くで見るとちっちゃい。

 

 いや、俺の身長がでかいだけな気もする。

 

「い、いつきちゃん! それがえーと、こん人、なんか迷子らしいだ」

「迷子? おっちゃん、その歳で迷子だべか」

 

 くりくりとした目で見詰められながら、心底不思議そうに首を傾げるいつきちゃん。

 

 心があったら多分悶えたと思うよこれ。

 

 ていうか、それよりもやんなきゃならない事があるので頑張ろうと思います。

 

「あぁ。つーかものは相談なんだが、なんか食い物恵んでくれねーか? もう三日間何も食って無いんだ」

 

 眉間に皺を寄せて、さも困ったような声で言葉を紡ぐ。

 

「食い物か、…………悪ィがオラ達もロクに食ってねェ、おめさんにやれる程のモンがあるかどうか…………」

「うわ。マジでか…………茶碗に半分で良いんだがな…………」

 

 この際、米が食いたいとか贅沢は言わない。

 時代的に農民の主食は米じゃなくて(あわ)(ひえ)だろうし、見ず知らずの人にそんな事が出来るような聖人が居るかどうか分からん。

 

 でもせめて腹の中に何か物を入れたい。

 あと寒い。

 

「じゃあ白湯をくれねーか? 寒くて死ねそう」

 

「え、そんなんで良いだか? おめさん、山賊みてーな顔してんのに随分謙虚なんだべな」

 

 しみじみと失礼な事を言われてしまった。

 

 まぁ確かにこのオッサン確かにそんな極悪ヅラしてるよね。仕方ないね。

 

 いや今は自分の顔なんだけどさ。

 

「ま、何せ俺ァ山賊でも侍でもねェからな」

 

「じゃあ、おめさん何者だべ?」

 

「そうだな、強いて言うなら、神に(無理矢理巻き込まれて)遣わされた男、だな」

 

 いや遣わされたっつーか、連れて来られたっつーか、連行されてたっつーかなんかそんなんだけど。

 

「神様に!? そうか、だからそんな妙なカッコしてるんだべな!」

 

 まって、なんか納得しちゃったよこの子。

 

 いや納得しないでよ、そこは笑うかツッコミ入れるとこでしょ。

 

「ち、ちょっと待つだっ!」

「はいはい、何だよ茂吉どん」

 

「し、証拠を見せるだよ! 証拠!」

 

 そうそう、これが真っ当な返答だよ、見習わなきゃならんよいつきちゃんよ。

 

 と考えたものの、このままじゃ未来には確実に凍死&餓死が待っているだろう事を考えると、ここでこれに乗っかっといた方が良い気がしてきた。

 

 神の遣いになって自分の立場を確立したら、多分何かしら食べ物を恵んで貰えるんじゃないだろうか。

 他に何か方法が浮かべばそっちにするけど、空腹のせいか全然何もこれっぽっちも出て来ない。

 

 ほんじゃあもうそうするしかない訳で。

 

「これで証拠にゃならねーか?」

 

 軽く跳んで、空中に立ってから、緩く問い掛ける。

 

 そのまま軽く見回せばいつきちゃんと茂吉どんと、ついでにその様子を見てたらしい奴らが口をぱっかり開けて固まっていた。

 

「あれ? ダメ?」

 

 そんな風に呟いた途端、

 

「ほ、ほ、本物だー!!! 本物の神様のお遣いだべー!!!」

 

「うわぁぁぁおっちゃんスゲーだー!」

 

 各々が好き勝手に声を上げ、わあわあと盛り上がり始めた。

 

 普段から声帯が鍛えられているからか、物凄くうるさいです。

 

 

 

「おっちゃん、いや、御遣い様! どうか、オラ達を救ってけれ!」

 

 突然そう言われたかと思ったら、いつきは俺の足元にスライディングするように土下座した。

 

 ……あれ。

 なんか違う方向に話が進んで来たよコレ。

 

 地面に降り立ちながら、どうしたもんかと思案しつつ、まずは様子を見る事にしようと思います。

 

「まぁ待て、今は寒ィからどっか家の中に入って話そうぜ」

「あっ、う、うん」

 

 そんなやり取りの後、俺は普段集会所に使われているらしい少し広めの家屋に案内された。

 

 少し寒いが外よりはマシである。

 

「…………で? …………そんなにこの村ヤバイの?」

 

 いそいそと用意されてしまった藁の座布団に腰を降ろしながら問い掛けると、怪訝そうな顔を向けられてしまった。

 

「神様から聞いてたりとかしてないんだべか?」

「…………あー、いや、大体は解るが、一応確認だ。細かい事情までは聞かないと解らないしな」

 

 ゲームでやってるからいつきが何をしたいかは知っている。

 

 まあとりあえず手助けしないと飯とか腹一杯食えなさそうだし、逃げると、後で心が戻った時後悔の念で死にそうだし、ここは一丁頑張ってみるしかなさそうだ。

 

「…………お侍が、年貢だっつってオラ達の生きてく分の米までを奪って、戦の度に田畑を荒らすだ。

 このままじゃオラ達生きて行けねぇ、村はおしまいだ」

 

 悲しそうに告げられるいつきちゃんの言葉を静かに聞きながら、とりあえず軽く相槌を打つ。

 

「この間は、隣村が理由もなくお侍達に襲われただ、オラ達もう我慢なんねぇ!」

「…………だから一揆を起こす気なんだな?」

「その通りだ、そんで、悪いお侍は皆懲らしめてやるだ!」

 

 悔しそうに、そして苦しそうに表情を歪めながら、少女は断言する。

 うん、この辺はゲームと同じなんだな。

 まあ、そりゃそうか。無意味に納得しつつ、確かめる為に問い掛けた。

 

「懲らしめてどうすんだ?」

「農民だって同じ人間だって事を、分からせてやるだ!」

 

 拳を握る少女の目には決意が見えた。

 

 確かに今日この村を見た時村の人は皆、かなり痩せていた。

 中には骨と皮なんじゃないかとまで思えるほどの者まで。

 

 話を聞く限り、彼女はそう考えても仕方ない環境ではある。

 

 しかし果たしてそれが最善の策なのか。

 

「その後はどうする?」

「自由に生きるだ!」

 

 “自由”か。

 

「人の命を犠牲にして手に入れた自由の中で、生きていくという覚悟はあるのか?」

 

 その言葉に、彼女の目の決意が揺らいだ。

 

「…………人の…………命…………」

 

「無いのなら、やめといた方がいい。辛いだけだ」

「なら! 一体どうすれば良いだ!!? 何もせずに見てるだけなんて、オラは出来ねぇ…………!」

 

 彼女は悔しそうに嘆いて、それからしょんぼりと俯いた。

 

「何の為に俺が来たと思ってる?」

 

 俺はそう言って、彼女の頭に手を置く。

 

 記憶の中の自分なら、この小さな少女を助けたいと望むだろう。

 後で後悔したくないから助ける。

 全ては俺のエゴでしかないが、だが、今だから出来る事だ。

 

「ほんとに助けてくれるだか?」

「…………代わりに飯食わせてくれよ?」

 

「っ勿論だ! うちの村の米は最高だべ!」

 

 …………いや別に米じゃ無くても良いんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

「でも一つ問題があるだ…………」

 

 それから暫くして、飯を食わせて貰っていたら不意にいつきがぽつりと呟いた。

 

「あ? 何?」

「一揆をするつもりでここ数日を過ごして来たもんだから、準備とか出来上がっちまってて、皆やる気満々なんだべ…………」

 

 うーわぁ…………マジでか。

 

「成る程ね…………そうなると今更やめるなんて言えないなァ」

「…………オラ、どしたらええかな…………」

 

 薄味の、質素だが暖かい味噌汁を啜りながらいつきを見遣る。

 なおメニューは味噌の味しかしない具の無い味噌汁と、その汁で煮たらしい芋である。

 食わせて貰えるだけ素晴らしいと思うよ、心無いけど。

 

 そんな事を考えつつ、思考するような動作をしておく事にする。

 

 うーん、と悩んで、それから、あァ、そうだ。と呟いた。

 

「準備が出来てるって事は、それを察した侍がいつ攻めて来ても可笑しくない」

 

「えっ?」

 

 考えた言葉をそのまま口にしたら、いつきは軽く硬直した。

 そんな事考えてもいなかったのだろう。

 

「だから、ついでに防衛線も張っとけ。

 まずは、どっかに攻める前に体力を付けて、力の温存を謀る、とでも言えば良い。俺の進言だと言ってな」

 

 薄味の芋を箸でつまみながら口に放り込む。

 

 うん。

 美味い。

 

「わ、わかっただ」

 

 返って来たいつきの素直な返事に何度か頷きながら、ぽんぽんと軽く頭を撫でてやった。

 

「さて、何が起きるかな…………」 

 

 何かを考えている様子のいつきを視界の隅に捉えながら、モグモグと芋を咀嚼しぼんやりと思案する。

 この様子だと、いつきはまだ伊達政宗には会った事なんて無いんだろう。

 あの男はゲームで見た印象では民を大切にする男だ。

 なら、この村が一揆を起こそうとしている程緊迫した状況だと気付かない筈がない。

 

 という事は何処かで情報が操作されている。

 もしくは、気付いてはいるが、どうすれば良いか思案してるんじゃないだろうか。

 ついでに、いつきが伊達政宗に会った事無いって事は、これから伊達政宗が来るか、こちらが行くか、どっちかな筈だ。

 

 どのみち暫くは様子を見る必要があるだろう。

 

 ……とすると俺に出来る事はこの村の警護くらいだな。

 

「ごっそさん、美味かったぜ」

 

 よっこいせ、という掛け声と共にのんびりと立ち上がる。

 

「えっ? おっちゃん、どこに行くだ?」

「見回り。こんな時山賊が来たら侍所じゃねーからなァ」

 

 そう返しながら草履の隣に置いてあったブーツを履いて、土間に降りた後引き戸に手を掛けた。

 

「あ、布団敷いとくからこの家使うと良いだ!」

「え? いや、こんな立派な家使えねーよ」

「いいや! おっちゃんは神様の御遣い様だ! 粗末にゃ出来ねーべ!」

 

 えーと、そうか、そういやそんな設定だっけ。

 うん、じゃあ仕方ない。

 

「解った、お言葉に甘えよう。あ、ついでに俺ァ、ライグってんだ、宜しくな」

「うん! こちらこそ宜しくな! ライグのおっちゃん!」

 

 まぁそんな感じにその日は見回りしてたらあっという間に夜が更けたので、寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

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