街での戦闘では多数の市民が犠牲となった。しかし巨大生物は此処だけに現れた訳では無かった。他の都市や街にも現れて市民が戦闘に巻き込まれる事になる。だが、この件を切っ掛けに市民の意識が徐々に変わりつつ有った。
「臨時ニュースです。世界各地で巨大生物が出現しました。これにより多数の死傷者が出ているとの事です」
「各地域にも巨大生物が現れました。この天野町でも街や市民に多数の被害が出ていると」
「市民の皆さんは慌てず家に避難して下さい。外出は極力控えて下さい」
「ご覧下さい!あのアンカーと思われる物から次々と巨大生物が現れています!」
「防衛省は今回の巨大生物襲撃についての関与を否定。また各国家、テロリスト等の主要組織も関与を否定しております」
「世界中に戦火が広がっております。市民の皆さんは各自避難準備をしっかりと行って」
次々と流れるニュース速報。最早誰もが実感していた。いや、実感せざるを得ないのだ。今いる場所も戦場になるかも知れないと。
……
街での襲撃から数日後。再び巨大生物…いや、正式名称α種の大群が出現した。軍事基地188はこのα種の大群に対し攻撃を行う事を決定。更に現地にいるEDF部隊の救出も含まれていた。
そして第55機甲中隊も出撃命令が下されたのであった。再び始まる悪夢の様な光景。だが人は慣れる生き物だ。いずれこの戦いにも慣れる時が来るだろう。
「これより作戦を説明する」
俺達第55機甲中隊のメンバー10名は他の出撃隊員と共にブリーフィングルームで基地司令からの作戦内容の説明を聞いていた。
「本日未明、α種の大群が北海道の最北端に多数落下したアンカーより出現。本来なら海上戦力による攻撃を行う予定であったが、上空からの攻撃により残存フリゲート艦隊は壊滅的打撃を受けた」
海上戦力の壊滅。その知らせを聞いて誰もが動揺する。
「連中が何故地上に対してこれ程の攻撃をしないのかは不明だ。現在も戦略部門、情報部門からの解答は出ていない。だが、このままα種の大群を見逃す訳には行かない」
モニターから地図が映し出される。そしてα種の位置が示される。
「敵は現在も南下しており、各街や都市が被害を受けている。これ以上の被害は抑えなければならない。よって、我々は比布町より北上に陣地を構築。この場所でα種の迎撃に当たる」
比布町周辺の地形が映し出される。しかし南下した場所には町の密集地帯だ。
「ブラッカー戦車2個大隊、ネグリング自走ミサイル2個小隊が比布町近郊の北部に展開。先に遠距離砲撃により敵を迎撃。そしてコンバットフレーム2個中隊、レンジャー1個連隊、武装装甲車グレイプ5個大隊、フェンサー1個大隊、ウィングダイバー1個中隊により敵α種を殲滅する」
かなりの大戦力だ。だがこの戦力は理解出来る内容だった。何故ならこれより更に南下すれば俺達の軍事基地188に近付く事になる。だが基地司令は更に言葉を続ける。
「α種殲滅後には全部隊は北上。最北端に設置されてるアンカーを全て破壊する事で任務完了とする。またアンカーからは一定の間隔でα種が出現している。常に戦闘が続くと思って貰いたい」
アンカーの破壊。確かにアンカーを破壊しない限り敵は出現し続ける。それを破壊するのも納得出来る。だが航空戦力が無い状態で可能だろうか。
「また今作戦に於いてエアレイダーが随行する。彼なら上手く航空支援のサポートをしてくれるだろう。現在もブラッカー戦車2個小隊が後退しながらα種と戦闘中だ。それから後方支援としてキャリバン装甲救護車両を数台待機している。負傷者は遠慮無く使用する様に。以上だ」
「では、続きは自分が。自分は戦略情報部の佐川少佐だ。敵戦力に関する情報に追加が出ているので説明する」
戦略情報部の佐川少佐はモニターにα種の映像を映し出す。
「この映像はEDF総司令官からの演説と同じ頃に撮られた物だ。EDFのレンジャー部隊が民間人を避難させる際に渓谷にて遭遇した」
それは通常の黒色とは違い赤色になっていた。
「このα種は黒色より硬い甲殻、高い耐久力を持っている。更に顎の噛む力は非常に強力だ。もし噛み付かれた場合、単独での脱出は非常に困難になる」
佐川少佐は淡々とα種の亜種の説明をして行く。
「だが個体としての高い性能を獲得した反面、遠距離からの酸を放出する事は無くなった。よって亜種と接敵した場合は可能な限り接近戦を避ける様に。私からは以上です」
「うむ。諸君からの質問はあるかね?」
基地司令は此方を見ながら質問を促す。すると数人が手を挙げる。
「弾薬の補給ポイントはどうなってますか?」
「補給に関しては武装装甲車グレイプに積まれる。部隊が展開されるのと同時に各部隊に補給物資が配られる」
「航空戦力はどうなっておりますか?」
「残念ながらN9ヘウロスの支援は無いと思ってくれ。先の襲撃によりヘリパイロットが不足している。だが戦闘爆撃機KM6、重爆撃機フォボスの支援は可能だ」
そして基地司令は全員からの質問が無くなったのを確認して口を開く。
「では、総員出撃用意。出撃用意が出来次第比布町に向かえ。諸君達の健闘を祈る」
「基地司令に対し敬礼」
俺達は号令と共に基地司令に対し敬礼をする。そして基地司令も答礼して退席する。
「よし、総員出撃準備だ。各自素早く行くぞ」
間様大尉の言葉に全員が頷きながら格納庫に向かうのだった。
……
格納庫に着けば殆どのコンバットフレームは出撃準備が完了していた。そして自分の乗機であるニクスA2へと向かう。
「あれ?武装が追加されてる」
ニクスA2の両肩にリボルバーカノンの長砲身仕様が搭載されていた。
「あ!織原少尉!追加武装が何とか間に合ったから搭載しといたわ。一応説明するわね」
俺に気付いた赤城上等兵が此方に来て追加武装の説明をする。
「以前織原少尉がニクスの火力不足だと言ってたでしょう?それで予備武装のリボルバーカノンを両肩に設置したの」
「確かに火力面は解決してるな。これならシールドを装備し続けれるしな」
更に赤城上等兵は説明を続ける。元はリボルバーカノンと言え長砲身仕様により射程と威力の向上に成功。装弾数は各2400発となっており継戦能力は高い。
但し重量の増加により跳躍能力の低下と機動性の低下を招いている。しかし機動性に関しては僅かな低下で済んでる為、友軍との歩調合わせは問題無い。
「リロードはどうするんだ?あの弾倉は通常のより大きいし」
「それなら安心して。アレは通常の弾倉を入れる器よ。補給では通常の弾倉を4個づつ装填するの。後は撃ち切り次第自動で装填されるわ。その際弾幕が途切れるから注意して」
「成る程な。しかし、よくこんな物考え付いたな。現地での補給も出来るし。弾倉の規格も合ってるから特に問題無さそうだし」
「私にはこれくらいしか出来無いからね」
赤城は少し自称気味に言う。そんな赤城に感謝の気持ちを込めてデコピンを一つプレゼントする。
「痛!な、何するのよ」
「これくらいとか言うな。お前のお陰で俺達は生き残る確率が上がってるんだ。もっと胸張っていけよ」
コイツが無理してやってるのは分かっている。何せ目の下に隈が出来てるし顔色も良いとは言えない。だが赤城自身が無茶をして今この時に間に合わせたのだ。そんな奴にこれくらい等とは言わせない。
「織原少尉…うん、ありがとう」
「後は俺達に任せろ。お前は一回休めよ。顔色悪いぜ?今の顔色じゃあ乙女とは呼べないぜ?」
「う、悪かったわね。後で休むわよ。だけど今だけはね」
「やれやれ。無茶だけはするなよ」
俺は赤城上等兵にそう言い残しニクスA2のコクピットハッチを開けて中に入る。
「システム起動。システムチェック開始」
システムを起動させればモニターに機体情報が表示される。そして両肩のリボルバーカノンの接続も確認出来た。
「システムオールグリーン。クラッカー12より管制塔へ、これよりニクスA2で出撃します」
『此方管制塔、了解した。御武運を』
ニクスA2の動力源から唸り声を上げながら立ち上がる。そして戦場に向かう為に移動するのだった。