西暦2022年。
軍事基地188の第55機甲部隊に着任して一年が経過した。その間にもコンバットフレームや戦車等のビークルが多数配備され続けていた。その結果、ビークル乗りより戦車乗りやヘリ乗り等と言った一種類だけのビークル搭乗可能者が増えていった。恐らく人員の教育と補充が徐々に遅れ始めているのかも知れない。
又レンジャー、フェンサー等はある程度の数は揃いつつ有るがエアレイダー、ウィングダイバー等はまだ不足気味だと言う。
「しかし、この戦力は過剰ととしか思えないよな」
「まあ、そうだな。そのお陰で一般市民からは顰蹙の嵐だしな」
「それに今日は予備戦力用のブラッカー戦車が納車されるらしいぜ」
部隊の仲間達と食堂で食事しながら話をする訳だが。
「あーあ…それにしても花が無いよなぁ。他の部隊には数人は居るのに」
「「…言うなよ」」
悲しい事に我々クラッカー中隊には一輪の花も存在しないのだ。その為他の部隊の花に手を出そうとすると、その部隊と全面戦争になるのは必然だ。またウィングダイバー部隊は我が軍事基地188のアイドル的存在であり、ある意味高嶺の花なので何とも言えない状況である。
「そう言えば今日の予定は何か有ったっけ?」
「いや、今は一般市民を刺激しない様に待機だそうだ」
「それなら今日はゆっくりするかな」
「俺はナンパしに行くぜ!」
「コンバットフレームの調整にでもするか」
こうして俺は格納庫に向かう。後はナンパに行った奴が無事に生きて帰って来る事を祈るとしよう。
……
格納庫に行くとクラッカー中隊のコンバットフレーム12機が悠然と待機していた。正直この姿を見るだけで心踊る物が有る。そして自分の機体である紺色のニクスA2だ。武装はマシンガン1丁と大型シールドと言う基本装備だ。
「あら?また来たの。アンタも物好きね」
「まあな。コンバットフレームが無かったらEDFには入らなかったからな」
「本当、ニクス馬鹿よね」
「あんまり褒めるなよ」
此奴は整備兵の赤城 麻里奈上等兵。ボブカットで整った顔立ちをしている奴だ。正直何で整備兵になってるのかよく分からない奴だが、個人的な事情が有るのだろう。そして、俺はよく格納庫に来るので何気に話をする間柄になってる。
「褒めてないわよ。それで、また調整しに来たの?」
「ああ。もう少し操縦性を上げたくてな。OSの処理能力を上げれば多少はマシになるんだがな」
「確かCPUの余りなら有るわよ。唯初期のA型のだけど」
「有るなら構わないよ。此奴はA2型だから多少は融通が効くさ」
俺は赤城と共にニクスA2を改造して行く。そしてシュミレーターの結果、数値上では反応速度が5%と起動シーケンスが3%上昇出来た。
「取り敢えずこんな物かな」
「アンタ、整備兵に転属したら?私達は歓迎するわよ」
「遠慮するよ。何の為にビークル乗りに成ったのか分からなくなるし」
この日常が何時までも続くと信じていた。例え戦争に成ろうとも人間同士の闘いに成ると思っていた。あの日、全ての日常と考えが破壊されるその時迄。
……
その日は良く晴れた天気だった。風も気持ち良く吹いており洗濯日和と言える物だった。軍事基地188も何処か気の緩みが出てしまってる様だった。
管制塔
「此方管制塔。15分後に1番滑走路に着陸されたし」
『了解した。15分後に1番滑走路に着陸する』
何時も通りの風景であった。だが、突然基地内の電気が消えた。
「あれ?停電か?…あ、戻った。誰か総務課の方に発電機の様子を見てくれる様連絡してくれるか」
そして各部署から総務課に連絡が有り、彼等は地下施設の中に整備道具一式を持って移動用のジープに乗る。
「しっかし、相変わらず広い地下通路ですよね。移動だけで気が滅入りますよ」
「そう言うなって。様子を見て無理そうなら工作兵と整備兵にお願いすれば良いだけだしな」
そして曲がり角を曲がろうとした時、再び電気が消える。もし、その時電気が消えなければ巨大な何かの影が見えただろう。運転手はライトを点けて曲がる。そして…。
「な、何だコレはっ!」
「こ、こっちに来る!早く逃げろ!」
運転手は慌ててUターンする。
「司令部!司令部!応答せよ!司令部!」
『此方司令部。何か有りましたか?』
「化け物だ!地下に化け物が」
この先の内容を続ける事は出来なかった。何故なら巨大生物から何かが噴出される。それがジープと搭乗者に直撃した。
「うがあああ!?痛い痛いいい!!があああ!?!?」
『どうした?何が有った!報告せよ!』
しかし、返事は無かった。代わりに衝撃音と何かが多数通る音が聞こえるだけだった。
……
軍事基地188に突如警報が鳴り響く。
《総員に通達する。戦闘員は即時戦闘態勢に移行せよ。これは訓練では無い。繰り返す、戦闘員は即時戦闘態勢に移行せよ》
基地のアナウンスから即時戦闘態勢命令が出る。其れを聞いた基地に居る全ての人員が走り出す。
「おいおい、一体何が有ったんだ?まさか反EDFの連中が攻めて来たのか?」
「戦力差が有り過ぎて闘いに成らないよ。それより格納庫に急ごう」
仲間達と共に格納庫に向かう。他の部隊の連中も次々と格納庫や地下に向かって行く。
「各員、コンバットフレームを起動させ待機せよ。私は司令部から情報を確認する」
間様大尉は通信を司令部に繋げながら指示を出す。俺達はそれに従いコンバットフレームに搭乗して行く。
「コンバットフレームの武装用意急げ!」
「A装備、B装備準備完了!」
「予備弾倉の用意出来てます!」
整備兵が忙しなく準備をして行く。そんな中、赤城 麻里奈が此方に気付いてやって来る。
「織原少尉、一体何が起こってるか分かる?」
「赤城か。分からないな。突然の即時戦闘態勢の命令だったからな。お前もいざと成ったら逃げろよ」
俺は赤城にそう言ってニクスA2に乗り込む。
「システムチェック。油圧、燃料、各部異常無し。システム起動」
ニクスA2のシステムを完全に立ち上げる。
「此方クラッカー12、起動します」
そして滑走路付近に移動する為にニクスA2を動かす。
『うお!起動すんの早いな』
『流石ビークル乗りだな。あ、俺もビークル乗りだったわ』
『何ボケてんだよ。クラッカー5、随分余裕だな』
それでも仲間達も次々とニクスを立ち上げて配置に付いて行く。
『クラッカー1より各機。我々クラッカー中隊は司令部より命令があるまで滑走路付近にて待機だ』
間様大尉の指示によりクラッカー中隊は滑走路付近にて待機する。
「しかし敵影無いですね。誤報とかじゃ無いんですかね」
『誤報で此処迄の騒ぎになったら始末書を書く奴に同情するぜ』
『違い無い。其奴のご冥福を祈るぜ』
その時、通信から味方の声が聞こえた。しかし、かなり通信状況が悪いのか中々聞き辛くなっていた。
『此方レンジャ……敵影……交戦……』
『何だアレ……大き……』
『ニクス……攻撃開……』
断片的な通信内容だったが基地内部で戦闘が起こっている様だった。
『おいおい、何で敵が基地に侵入してんだよ。警備班は何してんだよ』
『と言うかニクスとか言ってたよな。基地内部でコンバットフレームを使ってんのか?』
確かに。だがそれ以上に気になる事がある。
「隊長、何故こんなにも通信状況が悪いんですか?何処かにジャミング装置が設置されてるのでは?」
『それは分からない。だが一応司令部には報告しておく』
間様大尉は再び司令部に通信を繋げる。そして何と無くレーダーを見る。未だに反応は無い。そして再びモニターから外を見ようとした時だった。レーダーに赤い反応が出たのだ。
「未確認の反応?然も何だよこれ…数がどんどん増えてるじゃ無いか。クラッカー12よりクラッカー1へ、9時方向にてレーダーに感有り。数は…多過ぎます!」
『クラッカー1より各機へ。応戦用意。未確認機を確認次第攻撃準備だ。だがまだ撃つなよ』
しかし移動速度が速い。そもそも山の頂上を削って作った基地なのだから必然的に侵攻ルートは限られて来るだろう。レーダーには9時方向から未確認の何が迫って来る。だが、其方は急な斜面と森に阻まれている筈だ。
誰もが銃口を9時方向へ向ける。その間にもレーダーは赤いマーカーにより1/4が埋まる。そして、遂に未確認の何かと接触した。
「何だ…アレ。巨大生物…だと?」
それは蟻に酷似した巨大生物だった。巨大生物は基地のフェンスを破壊しながら滑走路に次々と侵入して来る。
『隊長!攻撃の指示を!どう見ても話し合いが出来る相手じゃ無いですぜ!』
『分かっている。クラッカー1より各機、これ以上基地に被害を出させるな。攻撃開始!』
その瞬間、我々クラッカー中隊のニクスから次々と弾丸が放たれる。この戦いが俺にとって初めての戦闘になるのだった。