君の一番になりたくて   作:ニケΘ

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走って追いかけている時、香澄は立ち止まって

 

「有咲はあたしの事が嫌いなのかな?」

 

少し寂しそうに言うと、僕も止まって

 

「ただ少し人見知りなだけだから、あまり気にしなくていいよ。」

 

そう答えると、香澄は笑顔でうん!と言ってまた走り始めた。

 

 

 

学校に着いて有咲を探していると香澄は

 

「あっ!有咲見つけた!」

 

と言い、有咲に近づいて行って

 

「有咲。もう、いきなり走って行っちゃうんだもん。追いかけるの大変だったんだよ。」

 

と香澄が言うと、有咲ビックリしたようにして

 

「ご機嫌よう。」

 

とだけ言ってまた逃げてしまった。有咲は人前に出ると猫を被っていつもとは違うお嬢様口調になる。どうしたものかと僕は考えていると

 

「何してるの?市ヶ谷さん走って行っちゃったけど大丈夫?」

 

沙綾が話しかけてきた。昨日あったことや今日のことを話すと

 

「バンドかぁ。私は出来ないけど応援するよ!」

 

沙綾は言うと、香澄はありがとうと言うとチャイムが鳴ったので追い掛けるのを諦めた。

 

 

授業中、スマホが鳴ったので先生に見えないように確認すると有咲から

 

「今日はもう早退するから。あと、家に来る時に香澄は連れてくるなよ。」

 

と送られてきた。分かったと返事だけしてまた授業に集中した。

 

 

休み時間に香澄に早退したことを伝えると

 

「有咲、体調悪いのかな?あとでお見舞い行こうかな?」

と香澄が言うと

 

「あれだけ走ってたし、どう考えても仮病だから大丈夫だと思うぞ。」

 

と僕は言った。香澄はほっとした様子になり、そうだよねと言った。

 

 

 

昼休みになると、香澄は牛込さんと話してくると言ってどこかに行ってしまった。今日は僕と沙綾の二人で昼食を食べていた。僕は

 

「沙綾とはまあまあ長い付き合いだけど、こうやって二人でご飯を食べるのは初めてだな。」

 

と言うと

 

「ホントだね。蛍くんは他の子とご飯食べなくていいの?私は全然平気だけど。」

 

と沙綾は聞いてきた。

 

「まぁ、まだそんなに仲がいい奴いないし、仲のいい人と食べた方が楽しいから大丈夫。」

 

と返すと、沙綾はほっとしたように

 

「ならいいんだけど。」

 

と言った。僕は聞きたいことがあり

 

「そういえば、沙綾の家のパン屋手伝いが必要だったらいつでも言えよ。」

 

と聞くと、沙綾は笑顔で

 

「ありがとう。でも、放課後は私が手伝ってるし平気だよ。本当に必要になったら言うからその時はお願いね。」

 

と言った。

そんな話をしていると、香澄が女の子を連れて帰ってきた。その女の子は同じクラスの牛込さんだった。

 

「二人とも聞いて!りみりんがバンドに入ってくれたの!それにね、りみりん凄いんだよ。ベースができるんだって!」

 

多分だが、りみりんというのは香澄が牛込さんに付けたあだ名なのだろう。牛込さんはおどおどした様子で

 

「そんな、少しだけだよ~。」

 

沙綾は優しく

 

「牛込さん、嫌なら断ってもいいんだよ。」

 

そう言うと、

 

「いや、そんな嫌とかじゃないよ~。」

 

とまたおどおどした様子で返した。

 

そんな時に昼休みの終わるチャイムがなった。

 

 

 

 

放課後になり、いつも通り有咲の家に着くと有咲は家の蔵を掃除していた。

 

「なんで蔵を掃除してるの?」

 

そんな問いに有咲は

 

「ばぁちゃんが蔵を掃除したら自由に使っていいって言ってたから掃除してるんだ。だから、悪いけどここ掃除するの手伝ってくれないか?」

 

と返してきた。

仕方ないかと思い掃除をしていると、

 

「有咲、私も手伝おうか?」

 

そんな声が聞こえたのでその方を見ると、香澄がいた。

有咲は大声で

 

「それ、不法侵入だからな。」

 

と注意すると、香澄は

 

「ごめん、これからは気をつけるよ。有咲、この星のギターまた少しだけ触らせてもらっていい?」

 

と言ったが、有咲は

 

「ダメだ。それはネットオークションに出すことにしたから。それもう30万円も値がついてるから欲しかったら自分のお金で買ったら。」

 

そう冷たく言った。

 

「30万円!それ、高校生ではとても買えないな。」

 

僕は驚いて言った。

香澄はその日は残念そうにして帰ってしまった。

僕と有咲だけになり

 

「別に要らないなら香澄にあげても良かったんじゃないか。」

 

僕はそう言うと

 

「はぁ?あいつはギターが触りたいだけで私に近づいてるんだろ。そんな奴にはあげたくない。」

 

と少し怒ったように言ったので

 

まぁまぁと落ち着いてと言いながら作業を続けた。

 

 

 

次の日の放課後、まだ掃除が終わってなかったので手伝いに行くとそこには既に香澄がいた。

 

「どうして香澄がいるの?」

 

香澄に聞くと

 

「昨日大変そうだったから手伝ってるの!」

 

そう答えた。

有咲は

 

「何度も帰れって言ったんだけど聞かなくて、仕方ないから手伝わせてる。」

 

 

 

それから数日間、

放課後になると三人で蔵を掃除した。

僕は少しずつだけど有咲が香澄に心を開いて言っているのを感じた。

そんなある日、香澄が

 

「この星のギター触ってもいい?」

 

とこの前と同じように聞くと、

 

「少しだけならな。気をつけろよ。」

 

有咲は優しく答えた。

 

ありがとうと言いながら、ギターケースを持つと金具が錆びていたのかギターが落ちてしまった。

香澄は悲しそうに

 

「ごめんね。私の持ち方が少し乱暴だったから落としちゃった。本当にごめん。」

 

言ったので、有咲はすぐに

 

「元々、少し錆びてたし香澄のせいじゃない。ほら、ギター持っていくぞ。」

 

そう言い有咲は僕と香澄を連れて楽器屋に向かった。

 

 

楽器屋からの帰り道、

有咲は

 

「香澄、そのギターお前にあげる。」

 

唐突にそう言った。

香澄が、なんでと言うと

 

「掃除手伝ってくれてるだろ、そのお礼。」

 

と答えた。香澄は

 

「そんなの悪いよ。だって、30万円だよ!」

 

と言うと

 

「じゃあ、出品を辞める為にかかった540円でいい。」

 

と有咲は答えた。

香澄は悲しそうな顔をして

 

「さっき、ギターを直すのにお金使っちゃって300円しかないよ。」

 

と言ったので僕は

 

「じゃあ、240円貸すよ。その代わり今度、ジュースを奢ってくれればいいからさ。」

 

そうやって星型のギターは香澄ものになった。

 

 

 

それからまた数日後、やっと蔵の掃除が終わった。

有咲のお婆ちゃんは

 

「綺麗になったね。はいこれ約束通り蔵の鍵。一つ目が出入口の鍵で、二つ目は地下の鍵ね。」

 

と言って有咲に鍵を渡した。

三人で地下に行ってみると、有咲は香澄に

 

「ここ、練習場所として使っていいよ。その代わり…

いっ、一緒に…昼ごはん食べないか?嫌ならいいけど」

 

そう言うと香澄は有咲に抱きついた。

有咲は少し苦しそうに、でも嬉しそうに

 

「香澄、離れろよ!」

 

そう言った。僕は有咲に僕以外の友達が出来て嬉しい気持ちと、少し悲しい気持ちがあった。

 




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