IS学園の猫ちゃん 作:只の・A・カカシです
T-4がIS学園にやってきた翌日。パイロットの来栖や森田をはじめとした整備士たちは、T-4の整備作業を行っていた。
ここでは初めて扱う機種だが、何人かの整備士にとっては、以前は毎日のように見てきた機種。手際よく作業を行っていた。
作業が一段落しかけたころ、お昼になったことを知らせるチャイムが鳴る。
「飯にするか。」
一斉に作業の手を止め、手洗い場で汚れや油を落とした後、詰所へと戻り昼食を摂る。
テレビを見る者、雑誌を広げる者、それぞれに昼休憩を過ごしていた。
「ん?どこか行くのか?」
それは昼食を終えて、来栖がようやく使い慣れてきたスマホを操作しているときのこと。横から覗き込んだ森田が、表示に画面されているのがチケットを取り扱うサイトであるのを見てそう尋ねた。
「おぅ。・・・家族サービスって言うのかな?今までできた試しがないからさ。沙絵香も中学生だし、優里香も来年は大学受験。今年がラストチャンスだろうと思って。」
「・・・なるほどね。」
彼も思い当たる節があるようで目を泳がせる。
「遊園地か。もう、そんな年頃じゃないしなぁ・・・。レゾナンスは友達とでも行けるし。」
どこにも、「これ!」と思うような施設がない。思い切って千葉の『ネズミの国』とか大阪の『映画の世界』にでも連れて行くかと、そう思ったとき。突然、スマホの画面が着信の画面に切り替わる。
「おっと、優里香からだ。」
来栖は立ち上がって、詰所から駆け足で出て電話を取る。
「はい、お待たせ。どうした?」
『あ、お父さーん?明日時間ある?』
「明日?あるけど?」
何日が休みかは伝えているのにわざわざ聞くということは、予定でも入ったのだろうか。
『あのね、今年オープンしたプールのチケットが手に入ったんだけど行こうよ!』
もしや悪いことでもあったのかと少し身構えていた来栖だったが、遊びへの誘いだったので肩の力を抜く。
「よっしゃ、分かった。」
『約束だよ!』
優里香が念を押す。そして通話が終了した。
来栖はスマホをポケットに仕舞い、詰所に戻る。
「お帰り。何だって?」
「明日、お出かけしようってお誘い。」
「いいな、親父孝行の娘で。」
俺の息子は肩たたきもしちゃくれないと、森田は苦笑いをする。
けれど来栖には、あまり人に言っていない家庭の事情があるため乾いた笑いで誤魔化した。
「おい、そろそろ時間だ。続きをするぞ。」
柳原の一声で全員が午後の準備を開始した。
「ただいま。」
一七時半過ぎ。来栖は帰宅した。
「おかえりー。」
「良い匂いがするな。カレー作った?」
優里香の声が聞こえた台所へと向かうと、食欲をそそるいい香りが部屋を満たしていた。
「うん。久しぶりに食べたくなって。」
「おー、そりゃ助かる。今日、何作るか全然決まってなかったからさ。」
荷物を置いて、手洗いとうがいをする。
車の鍵を掛けたか不安になったので、それを確認してから食卓につく。と、そこでお皿が二人分しかないことに気が付いた。
「あれ?沙絵香は?」
「・・・え?」
丁度椅子に座って手を合わせたところだった優里香が固まる。
「合宿に行ったけど?」
忘れたのといった感じで聞き返した彼女に対して、今初めて聞いたと来栖は目を点にした。
「・・・また言わずに行ったの!?」
その表情を見た途端、優里香は妹の行動に怒りを爆発させる。
「あいつ、お父さんを責めるなって何度も――」
「信頼されていないのは、面倒を見てこなかった俺の自業自得だ!」
刹那、来栖は少し強めの口調で娘の話を遮った。
「お前は戦闘機に乗っている俺が好きだから許せる。・・・沙絵香は辛かっただろうよ。ほとんどの友達が両親と生活してる中で、自分はおじいちゃん・おばあちゃんと暮らしてたんだから。不幸せでなかったとしても、何かしら息苦しさを感じていたはずだ。」
来栖が申し訳なさそうに俯く。
「昔は顔さえ見せてくれなかったのに、今は一緒に住んでる。それだけでも感謝しなきゃいけないのに口まで聞けなんて、それはただの我がままだろ。」
しばらくの間、二人の間に沈黙が続く。
「一生そのままだとしても?」
沈黙を破って、優里香が来栖の顔をジッと見つめながら口を開いた。
「育児放棄そのものだよ、俺がしてきたのはな。だから沙絵香が心を開いてくれるその日まで、俺は耐える義務がある。」
優里香は妹が、自身のあっけらかんとした性格とは反対であることは分かっている。
だからといって、そう簡単に理解できる話しでもないため顔をしかめて難色を示す。
「お前の気持ちは分かる。けど、当人が許せると思わなきゃ駄目だからな?」
これは当事者同士の問題。あまり首を突っ込むべきでないとみるや、優里香は小さく頷いた。
「さ、この話は終わり。明日は遊びに行くんだろ?」
「う、うん、そうだね。・・・ご飯よそってくる。」
それからは互いに何を話せばよいのか分からなくなり、就寝するまでほとんど会話はなかった。
「
翌日。まるで昨夜のことがなかったかのように優里香はプールを満喫していた。
「もうちょっと遅く出てたら、間違いなく駐車場満車だっただろうな。」
流れるプールをマットタイプの浮き輪に乗って流れていた来栖は、辺りを見回して人の多さに圧倒され、施設の壮大さに目を白黒させる。
「しっかし、この大きさのプールが屋内か・・・。一体どれくらいかかってるんだろう。」
この施設の建設にいくらかかったかを知らないから、そんな感想を抱いていた。実際のところ、彼が仕事で飛ばしている戦闘機は、金額だけで語るならこのプールと同等かそれ以上だ。
「直射日光じゃないってのは、女子にとっては最高だよね~。」
来栖と流れる速度を合わせるために、優里香はやや流れに逆らって平泳ぎをする。
「それはよかった。・・・ところで俺はいつまで浮き輪に乗っとけば良いんだ?」
この浮き輪は、入場して早々に優里香借りたもの。だが身体を動かすことが好きな彼女にしてみれば邪魔以外の何物でもなく、早々に来栖へ押しつけていた。
だが、筋肉の付き方が明らかに一般男性のそれではない大柄の男が浮き輪に乗っている光景は周囲からの視線を必然と集めており、来栖は非常に居心地が悪く感じていた。
「えっとね・・・、あの、波プールまで?」
無論、優里香は父親の心境に気が付いてはいた。だが、チラリと浮き輪の貸し出し場所の方向を見ると『現在、返却待ち』の看板を見つけ、もしかしたら使うかもしれないという思いが出てきて「返す」の一言を飲み込む。
「一回返してくるぞ。」
来栖は、その返答を「もうしばらく使わない」と解釈して、返却に向かおうとする、と。
「あぁん!待って!」
潜水して逃げようとしていた優里香が、突如として来栖に飛びついた。
衝突の弾みで来栖はバランスを崩して浮き輪から転げ落ちる・・・も、持ち前の状況判断の良さと身体能力の高さのお陰で、頭から落水すると言った醜態を晒すことは回避する。
「人が多いところ何だから、もうちょいゆっくり行動しなさい。」
「エヘッ!ごめんなさい。」
優里香はあまり反省していないように見えるが、切り替えが早いためにそう見えるだけでキチンと反省している。
『お知らせです!本日のメインイベント、水上ペア障害物レースは一三時より開始いたします!参加希望される方は十二時までにフロントへとお届け下さい!』
まさにそんなやり取りをしていた時のこと。プールにイベントの案内のアナウンスが流れた。
「あれ?また放送してな。人が集まらないのか?」
もう何度目になるかの放送を聞いた来栖が、ポツリと漏らす。
「んー?無制限なんじゃない?」
『優勝賞品はなんと、沖縄五泊六日の旅行をペアで招待します!』
ところが、今までになかった一文が加わった。大したことではないが、来栖は自身の考えが当たっていたことを確信する。
「聞いた!?参加しようよ!!」
すると、それまで気にも掛けていなかったことにもかかわらず、途端に目をランランと輝かせて優里香が来栖を誘う。
「いや待て。うぬぼれじゃないけど、俺が参加するのは拙いだろ。」
景品が非常に魅力的なことは、来栖も同感だった。
問題は、来栖の体力と筋力ではあまりにオーバースペックということ。別に、この様な場所のイベントに登場して駄目と言うことはないが、それでも気は引ける。
「えぇー?・・・あ、そっか。」
不意に優里香が静まった。
「ど、どうした?」
普段なら食い下がるところなので、そんなにショックを受けたのかと来栖は不安に駆られる。
「お父さん、私の幼稚園の運動会覚えてる?」
「え?・・・まあ。」
何を言うのかと身構えていただけに、来栖は肩すかしを食らう。
「保護者対抗のリレーで他のお父さんをぶっちぎったでしょ。その頃は『速いなー』としか思ってなかったけど、今思い出してみると当然の結果だよね。」
懐かしむような優里香。反対に、来栖は少し息苦しさを感じる。
「ごめんな。」
「え?・・・あ!気にしてないから!大丈夫だから!」
はたと、来栖が優里香は自身と妹の行事にほとんど参加できなかったことを気に掛けていたこと思い出して、自身の無意識の一言が幾ばく配慮に欠けていたと気が付く。
子供に気を遣わしてしまい、余計な罪悪感から「でも」と続けようとしたところで、二人はほぼ同時に「アッ!」ッという表情になる。
「これは止めにする約束だったな。」
「そうだったね。」
それは謝罪の押し付け合いにならぬよう父と長女の間で取り決めた「過去は戻らないから、今から思い出を作る。」だ。
ありきたりな言葉ではあるが、それ故に思い出しやすく一定の効果を生み出していた。
「よし、思いっきり遊ぶぞ!」
もうじき一二時半になろうかという頃、人のピークが過ぎた頃合いを見計らって来栖と優里香は昼食を摂っていた。
「暖かーい。」
美味しそうにうどんを啜る優里香は、ずっと水の中に居たため少し唇を青くしていた。
「お父さん、寒くないの?」
「寒くないわけじゃないけど発熱量が違うからな。あのくらいじゃ、どうってことないな。」
こちらはラーメンを購入しており、初めて食べる味のラーメンを少しずつ消費していた。
「ねえ、少し貰ってもいい?」
「いいけど、期待してるような味じゃないぞ。」
などと言いつつも、返答を待つこともなく来栖はラーメンを優里香の前へと移動させる。
「いただきまーす!」
優里香は箸で麺を一掬いすると、ズゾォッと一気に啜った。最初こそ笑顔だった彼女だが、表情が徐々に真顔になっていく。
「美味しいか?」
「んー・・・ん?」
口にもの入れたまま声らしきものを発すると、大して咀嚼することなくそれを胃に流し込む。
「ありがと。」
そして味の感想を言わぬまま来栖の前へと押し返した。
「だよな。」と言いたげな表情でそれを受け取ると、来栖は少しずつ残りを消費した。
「いろいろあるんだな。」
来栖の子供の記憶では、プールで売っている冷たく甘いものと言ったらかき氷やアイスクリームぐらいしか記憶にない。かき氷一つをとっても、今のようにシロップの種類は多くなかった。
ただしそれは、来栖が子供の頃にウォーターワールドのような大規模のプールに行ったことがないからでもある。
「あ!クレープ!あれ買って!」
「何味?」
「んー、レモンヨーグルト!」
優里香は並べられた食品サンプルを流し見て、パッと目に付いた種類を選択した。
「オッケー。俺は、・・・これにするか。」
クレープの店の前には一〇人ちょっと並んでおり、二人もその列に並ぶ。
「すいません。レモンヨーグルトと苺アイス、一つずつ下さい。」
幸運にも並んでいたのはグループだったようで、一分ほどでレジ前に到達する。
「レモンヨーグルトと苺アイスですね。一三五〇円になります。」
注文を済ませ代金を支払うと、他の客の邪魔にならぬよう脇へ避ける。
「ふーっ・・・あ、もう一三時だ。」
ふと時計を見た優里香が、そう呟いた。
「五分過ぎてるぞ。」
「んー、ま、たったの五分だし?」
場面にもよるが、日常生活において五分ぐらいは誤差の内だ。
けれど長らく戦線に生きてきた来栖にとって見れば、それは大きな時間であった。
「お前もIS乗りの端くれなら分かるだろ。例えばラファールなんかでも、高速機動のパッケージを装着すれば戦闘機に近い速度で巡航できる。仮に時速八〇〇kmで飛んだとしよう。五分あれば六七kmは飛んでしまう。」
「レモンヨーグルトと苺アイスでお待ちのお客様!お待たせしました。」
「はい、ありがとうございます。」
来栖は一瞬で表情を切り換えて店員からクレープを二つ受け取り、片方を優里香に渡した。
「わー!ありがとう!・・・確かにそうだよね。・・・よし!時間を大切にするぞ!」
「いや、今日みたいにオフの日はその限りじゃないからな?」
ただ知識として頭に留めていて欲しいからそう言う話をしたつもりだった来栖は、優里香が存外真剣に受け止めたために慌てて捕捉を加える。
「エヘヘ!分かってるよ!」
クレープを
「ん?」
そのとき、遙か前方に見覚えのあるロールを掛けた金髪の少女の姿が見えた気がした。
しかし一瞬見えただけで、すぐにテントに被って見えなくなってしまう。
「どうしたの?」
急に立ち止まった父親を見て、優里香は首を傾げる。
「いや、今・・・?!」
視線の先で水柱が高く立った。
刹那、スッと血の気がひいた。体調不良ではなく、今から何か大事故が起こる前兆のような気配が。
再び水柱が立つ。先ほどよりも高い。
来栖には何もかもがスローモーションに見えた。その前で、恐れていた事態が起きる。
背面に四枚のフィン・アーマーを装備した、鮮やかな青いIS。IS学園、一年一組の生徒の専用機。
水を滴らせながら飛び上がってきたそれに優里香は叫ぶ。
「ブルーティアーズ!?」
「だけじゃない!」
来栖には分かった。ブルーティアーズの操縦者『セシリア・オルコット』が我を忘れてISを展開する相手がいる。確実にもう一機来る。
「
来栖が機種名を言うや、言ったとおり『甲龍』が現れた。
「水に飛び込め!」
来栖は大声で叫んだ。クレープをテントの屋根の上に放り捨て、優里香の手を引く。弾みで、優里香の手からはクレープがこぼれる。が、伊達に来栖の娘をやってきたわけではない。優里香は惜しがる素振りも見せずに走り出す。
「水に飛び込め!」
プールサイドで硬直して見上げていた数人に体当たりをして強引に水中へ落とし、二人も潜水する。
二機の主要武器は衝撃砲とビーム兵器。どちらも空気から水への伝播には大きなロスを伴う。下手に逃げ惑うよりも、地面に伏せるよりも効果のある避難場所が水中だった。
パニックになっていた人達は、来栖が飛び込んだのを見て、それに釣られて次々にプールに飛び込む。
後続の人達に上を塞がれぬよう僅かに場所を移動する。けれど走った後のため、いつもほどは息が持たない。
素早く呼吸を済まして再度潜る。
少ししてまた苦しくなってきたので、状況確認を兼ね水面から顔を出そうとして、ビリビリっと言う振動を感じたため追加で十秒だけ我慢する。
恐る恐る顔を出す。
視線の先で、ブルーティアーズと甲龍が墜落した。
「終わったか・・・。」
最悪の場合、数十分と戦闘が続く可能性もあっただけに来栖はホッと息を吐いた。
水から上がると、サイレンがけたたましく鳴っていた。
あれだけの衝撃が発生したと言うことは、何が落ちているか分からない。来栖は脱げてしまった左足のビーチサンダルの代わりに近場に転がっていたゴム草履を拝借してから戦闘のあった方に駆け足で向かう。
おおよその戦闘場所に近付いたとき、カチャッという音がして足下を見る。
「ガラス?・・・天窓が割れたか。あとはプール・・・修理が必要だな。」
パッと見た限りでの被害状況を確認すると、来栖は防水ポーチに入れておいたスマホを取り出した。
「来栖です。」
『ああ!丁度良いところに!今、ISの無許可使用があったみたいなんで、調査に飛んで――』
「その現場にいるんですよ。」
『!?』
電話の相手が受話器を落とした音がする。
『し、失礼しました。そちらの状況は?』
「当該は中国の甲龍と英国のブルーティアーズ。両者の戦闘によりプール施設が破損。負傷者については未確認。甲龍、及びブルーティアーズは相打ちで墜落した。現時点では以上。」
『?!』
再び受話器の落ちる音がする。
『せ、戦闘が発生した!?』
「そうです。」
電話の向こうで『うわっ』という声が漏れた。相手が顔面蒼白になっているのは想像に難くない。
『ちょ、ちょっと上を呼んできます!』
うわずった声で告げた後、保留のメロディーが流れ始めた。
その間に振り返ると、ウォーターワールドの係員が徐々に動き始めていた。
「すいません!危険ですから避難して下さい!」
そこへ来栖を野次馬と勘違いした係員が避難を促しにやって来た。海パン一丁で首にタオルを掛けているという格好なので無理もない。
「IS学園の関係者です。」
来栖は、本当であることを証明するためにスマホカバーの内側に挟んでいる証明書を見せる。
「こ、これは失礼しました。」
「いえ、謝るのはこちらの方です。」
威圧してしまった気がして来栖は少し気が引ける。
「ところで指揮は誰が?」
「指揮はありません。避難マニュアルに従っています。」
「了解しました。引き続きお願いします。」
つい癖で、敬礼してしまう。するとそれに釣られたようで、係員も敬礼で返してきた。
「お父さん!」
そこへ優里香の声が聞こえて来栖は振り向いた。
「危ないから近づくな!」
寄ってこようとした優里香を制して、来栖の方から近付く。
「隣のホテルの喫茶店で適当に時間を潰していてくれ。終わったら電話する。」
防水ポーチから一万円札を取り出して渡す。
「・・・分かった。気を付けてね。」
しょんぼりした様子で、優里香は他の客と一緒にプールから去って行った。
『もしもし、代わった!応答願う!』
「聞こえてます。どうぞ。」
その姿を見送る間もなく通話が再開する。
『IS部隊の準備ができた。もう間もなく発進す――』
「IS部隊は不要です。余計な騒動の原因になりますから。」
それだけは絶対にさせてはいけない。来栖は話しを遮ってまで即時停止を求める。
もしIS部隊を発進させるような事態になれば、当事者二人は本国へ強制送還され、良くても代表候補生を外される処罰が下る。
「それよりも、戦闘は終わっているので私に現場処理の権限を下さい。」
『なん・・・。しかし、ISの無断使用があった以上――』
「私が許可しました。ISを使用してもよい、と。」
『・・・責任を負うことになるぞ。』
来栖の決断を心配するように、電話の相手が声を絞り出す。
「俺だけが責任を負えば良いのなら、喜んでそうさせて貰う。」
戦闘に使用したことは、到底許されることではない。
だが、十代の若者に携帯させておきながら使用すれば罰する。それも、自分達には責任はないと言いたげな様子で。
「あぁ、それとも監督責任を取って辞任されますか?日本国内で他国の代表候補生同士が私怨で戦闘することを防げなかった・・・ということで。」
無言。だがその鼻息から、苦虫をかみつぶしたような顔をしていることが手に取るように分かった。
『IS部隊の発進は中止だ!』
「英断に感謝します。」
フッと笑うと、来栖は通話を終了した。
次は9月末の投稿を目標に書いています!
乞うご期待。
2022/10/05 文章を一部改良しました