IS学園の猫ちゃん   作:只の・A・カカシです

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第4話 分岐点(中)

 あれから待つこと一時間半。黒いスーツに身を包んだ男性四人、女性一人の計五人が、来栖らが待機していた司令室に現れた。

 「どうぞ、おかけ下さい。」

 「失礼します。」

 司令の薦めに従って座ったのは初老手前の見た目をした男性と、化粧が濃く逆三角の眼鏡をした女性の二人。後の男性三人は、体格や仕草からSPと思われる。

 「IS委員会IS学園課の田辺(たべ)と申します。」

 先に名乗ったのは男性。

 「同じく、松下(まつした)と申します。」

 その後直ぐに女性も名乗ると、揃って名刺を差し出してくる。

 「百里基地、司令の小畠(こはた)です。」

 「来栖翔霧と申します。」

 それを受け取ってから、小畠と来栖はIS委員会の二人に名刺を渡した。

 実は来栖にとって、これが入隊して初めての名刺交換だった。因みに、その名刺は大急ぎで作製したため専用の用紙が用意できず、コピー用紙に出力したペラペラのものとなっている。

 IS委員会の二人は興味がなかったのか、大して見ることなく直ぐに名刺を仕舞った。

 「この度はISを奪還して頂きありがとうございました。」

 深々と頭を下げるIS委員会の二人。

 「早速で申し訳ありませんが、当時の状況を教えて頂けますかの?」

 落ち着き払った口調で、田辺がそう言った。

 「はい。本日、1200頃、ヘリコプター墜落との通報を受け捜索に――」

 

 「――と言うのが空中衝突の一部始終です。」

 来栖が話し終えると、IS委員会の二人は数回頷いた。

 「何か質問はございますか?」

 そう言って、男性と女性のそれぞれを見る。暫くの沈黙の後、田辺が口を開いた。

 「ありませんな。」

 思いのほか早く終わりそうだ。来栖がそう思った直後。

 「では今回の事故、他言無用でお願いします。」

 松下の雰囲気が豹変し高圧的な言い方に変わった。

 幾ら相手が世界を股に掛けるIS委員会とは言え、警戒を怠れば今回のように奪取されるのは必須。それが今回の事故に繋がったのだから、来栖も小畠も隠蔽に付き合えという命令を承認するつもりは毛頭なかった。

 だが、彼女が次に取り出した書類に、二人は黙って従うことを強いられる。

 「この話は、既に防衛大臣の方に通っております。大臣も仰っていましたよ、『ISの優位性は損なってはならない』と。事故の原因は、機体の整備不良と言うことにするそうです。あぁ、ご心配なく。口止め料は整備士の方々にもしっかりとお出ししますので。」

 戦闘機を足蹴に出来る筈が、戦闘機との衝突で駄目になってしまう。白騎士事件の印象を誇張し、国民感情を手玉に取ることで大臣にのし上がったIS至上主義の彼女なら間違いなく言うだろうと、来栖と小谷は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 「お言葉ですが、時速一,〇〇〇キロで飛ぶ二〇トン弱の物体と衝突したのです。壊れない方が無理だと考えますが?」

 小畠がなだめるような口調で話し掛けた。しかし。

 「言わなければ分かりませんか?ISはどれだけ強いGがかかっても操縦者は平気でなければならないのです。それとも、あなたは上司の指示に何か不満でもあるのですか?」

 「いいえ、ありません。空中衝突も、我々からしても不名誉な出来事です。無かったことにするというのは、歓迎出来ることではありませんが口合わせはします。」

 そう言った司令の手が怒りに震えているのを、来栖はしっかりと見ていた。

 だが、彼を援護する言葉が思いつかない。言葉に出来ない己の無力さに、来栖は奥歯を強く噛み締める。

 「分かって頂けたのであれば結構です。では、失礼します。」

 そう言うと、IS委員会のメンバーは帰っていった。残された来栖と小畠は、互いに何声を掛けるべきか思い付かずただ沈黙を続けた。

 不意に聞こえた音に窓の外を見ると、茨城空港側の滑走路から二機のF-15Jがアフターバーナー全開で飛び立っていった。小畠と来栖は、装備からそれらがスクランブル待機の機体であることを見て取る。

 領空侵犯は未だ繰り返されている。

 ISが台頭してきた今日でも、日本の空を守っているのは航空自衛隊だ。なのに、さもISが守っているかのように伝えられている。

 やり場のない感情に、二人揃って溜息をつく。

 「来栖君、今日はもう帰りなさい。」

 「いえ、私の技量不足により起きた事故です。残ります。」

 「いや、そうじゃなく――」

 そのとき、電話が鳴り響いた。小畠は慌てて駆け寄り受話器を取る。

 「はい、そうです。・・・え!?」

 突如として、表情が驚愕に包まれた。

 「はい、了解です!」

 彼は受話器を握った左手でフックスイッチを押し、別の場所へと電話を掛けるべく番号を打ち込む。

 「T-4*1を準備してくれ!・・・あぁ、大至急!」

 話を終え、今度は受話器を元に戻す。

 「来栖一等空尉、緊急事態だ。現時刻を持って、司令である私をT-4に乗せ件の現場まで運ぶ任務を命ずる!」

 「は!了解しました!」

 直ぐに二人は司令室から出ると、パイロットスーツを取りに向かった。

 

 二〇分後。全ての装備を整え、T-4の離陸に向けた準備に取りかかっていた。

 エンジンの立ち上がりがいつになく遅く感じられる。

 起動完了後、動翼のチェックに入る。時間が惜しいが、二次災害を引き起こさないためにも作業をおざなりにすることはない。

 出来る限り急ピッチで作業を行い、短時間で滑走路まで向かえる体制を整えた。

 ISと空中衝突し、エアインテークが酷く破壊されたF-15は滑走路から退けられたので、基地側の滑走路から離陸する。

 「百里管制。こちらエルボ。離陸許可を請う。」

 『こちら百里管制。エルボ、離陸を許可する。』

 「了解。離陸滑走、開始します。指令、行きます。」

 「はい、頼みます。」

 スロットル全開で滑走を開始、素早く離陸し現場へと急いだ。

 

 F-15には及ばないが、T-4としては驚異的な所要時間で現場に到達する。

 現場上空では、先程スクランブルで発進していったF-15が旋回していた。状況を確認すべく、小畠はF-15に無線を入れる。

 「こちら小畠。状況を教えて欲しい。」

 『カプチーノです。我々が到着した直後に、陸自のヘリがテロリストより攻撃を受け被弾、撤退しました。今、火の手が上がっているのは自爆と推測しております。もうじき消火に来てくれる手筈になっております。』

 山の中腹あたりから黒煙がもうもうと上がっている。先程、来栖が当たりを付けていた場所だ。

 「了解した。来栖君。悪いが、もう少し近付いて貰えるか?」

 「はい。」

 司令の要望に応え、降下していく。極力Gが発生しない、易しい操作を心がける。

 『あれ?マーベリック?お前、今日から年末休み組だろ?何で乗ってんだよ!』

 しばらくして、驚いたような声が無線から飛んできた。

 「え?そうなの?」

 「えぇ、まあ・・・。」

 更に後席の司令からも尋ねられ、何となく気まずくなる。

 「なにゆえ任務に?」

 「忘れ物を基地に取りに来ていたんです。ついでに、少し片付けをと思って引き出しの整理をしていたらヘリコプターの捜索に行けと言われまして。随分と忙しそうだったので、非番だと言うに言えず・・・。」

 「イーグルに乗ったと・・・。それは、災難でしたな。」

 指令に気を遣い大半径で旋回をしているので、話をする時間は十分にあった。

 「もうじき現場です。それでは、機体を左に傾けます。」

 失速すれすれまで速度を落とし、山肌に手が届きそうに感じられるほどに低空を飛行。操縦に専念できるから行える芸当だ。

 「ヘリコプターとは断言できないが、少なくとも人工物があるのは見えた。」

 「もう一度航過飛行しましょうか?」

 曲技飛行をしているわけではないので、直ぐに高度と速度を回復させる。

 「うーん、この速度じゃ見分けるのは厳しいな・・・。それに、地上で何かあったときに指揮を執るために派遣されただけだから、このまま上空待機に入ろう。」

 「了解。」

 更に高度を上げ、イーグルの編隊を追う。

 司令を乗せているので安全が第一。まだテロリストがいるかも知れない空域に、丸腰のT-4で留まるのは自殺行為だ。もっとも、先程のイーグルも丸腰だったので大した差は無いが。

 『マーベリック、お前が空中衝突したのか?』

 編隊に加わると、カプチーノが直ぐに尋ねてきた。因みに、カプチーノというTACネームは、彼の愛車から取ったものである。

 「えぇ、油断しました。」

 『それは災難だったな。』

 カプチーノが同情しているように、来栖には感じられた。

 「私のミスです。」

 ところが、帰ってきたのは斜め上の返事だった。

 『災難なのは、お前じゃねえ!お前に突っ込んだ盗賊だ。パイロットが違ったら、墜落して回収できてた。』

 『同感だ。片翼がなくなっても飛べるイーグル(こいつ)*2だとしても、あの低空でフラットスピンから回復させる自信は俺にはない。』

 更に僚機のパイロットも参戦してくる。彼等が同情しているのは、来栖ではなくISのパイロットのようであった。

 「酷いね、君ら。」

 そう言った司令も、ジョークと分かっていたので大声で笑っていた。

 その中で、来栖だけが渋い顔をしていたのは言うまでもない。

  

  空が赤く色づき始める頃には、消火作業は完了していた。テロリストが、ヘリコプターを下ろすために山を切り開いていたことで延焼しなかったのが幸いした。

 お陰で、予定を前倒しして陸自や警察のヘリコプターの投入が開始される。ただ、これから夜ということで地上への人員投入は行われない。

 到着した機体から、逃走したテロリストがいないか捜索を開始する。

 しばらくして、一際目立つヘリコプターが飛来する。それは陸自の攻撃ヘリ、機種を『コブラ』というものだったのだが、来栖達は目を丸くした。なぜなら、それの武装たるや、イメージ写真でしか見たことのないフル装備を行っていたからだ。

 攻撃を受けた時点で問題ではあるが、陸自が本気になったのだけはよく分かった。

 山の稜線が空に溶け、星が出始める。燃料は十二分にあったが、ヘリコプターの体制が整ったので、航空統制と防空をそれらに譲り三機は揃って帰投した。

 

 「来栖一等空尉、一年ご苦労でした。」

 「はい、失礼します。良いお年を。」

 十九時を回ったところで解放された。

 今回の事故は防止が極めて困難なこと、損害以上に功績が大きかったことに加え、防衛省がIS委員会からの要請で隠蔽を図っていることを来栖が知っているという弱点を握られているため、他言しないという念書と引き換えに今日のことは全てなかったことになり、めでたく正月休みに入ることができたのだった。

 

 

 

 「皆さん、おはようございます。」

 IS学園で開かれた緊急会議。教師陣の前に立つ中年の男性は、挨拶もそこそこに本題へ入る。

 「本日の議題ですが、ISの輸送方法についてみなさんの意見を聞きたく集まっていただきました。」

 そう言ってパソコンを操作すると、空中ディスプレイに現在のISの輸送方法とそのルートが示された。

 「一・二機目は、トラックを用いて輸送されました。その際は、国際連合軍によって厳重な警備が行われました。しかしながら、輸送ごとに警備を要請するというのも極めて困難なことであります。三機目の今回は、過去二回に襲撃、及びその手の兆候が見られなかったことから、トラックと伴走車二台の形態で輸送を開始しました。その後のことについては、昨日連絡した通りですので割愛します。そして、これがIS委員会より送られてきた案です。」

 そう言うと、スライドを次のものに進める。そこには、こう書いてあった。

 【一.新製されたISに教員を乗せ輸送する。】

 【二.部品単位で輸送する。】

 【三.教員機/訓練機を護衛に付ける。】

 「では、この中からどれが最適かを検討して下さい。」

 その声とともに、教員達は席の近い者達と話し合いを始める。

 しばらくして、声が小さくなっていき話している者はいなくなった。

 「では、多数決を取りたいと思います。複数回答は可とします。一が良いと思う方。・・・二が良いと思う方。」

 一は誰も手を上げなかったが、二は幾人かが手を挙げた。

 「では、三が良いと思う方。」

 ところが、二と同じ数程度しか手が挙がらない。

 男は、しばらく考えた後こう言った。

 「挙げなかった方に聞きます。一から三について、どこに問題があるか聞かせて頂けますか?」

 男が言い終わるや否や、直ぐに立ち上がった者がいた。彼女は、堂々と自身の考えを述べた。

 「一ですが、ハッキリ言って気休めでしかありません。パーソナライズをしていないISで、屋外戦闘をする自信はありません。二は、リスクは低いでしょうが、ISはまだ安定性に欠けます。専門家の調整を受けていない機体に命は預けられないです。三ですが、昨日のように二機あって二機ともが不調で動けないと言ったこともあります。最悪の場合、被害を拡大するだけですので反対です。以上ですが如何でしょう。」

 それを聞き、大部分の教員は納得したように頷き、中には己の思慮の浅さに天を仰ぐ者もいた。それを見てから、彼女は椅子に座った。

 「なるほど・・・。それでは、この中に支持できる案があるという方。もう一度挙手をお願いします。」

 やはりと言うべきか、今度は全員が自信を持った顔で手を挙げなかった。

 これで、振り出しに戻った。

 「では、代替案の討論に入ります。」

 「はい!」

 またしても、直ぐに声を上げた者がいた。

 「自衛隊に依頼するのはどうでしょう!」

 「駄目です。」

 しかし、討論するまでもなく男が却下した。その訳は・・・。

 「なぜ、国際連合軍に警備を頼んだか分かりますか?IS学園はいかなる国家も干渉してはならないからです。自衛隊は軍ではないと言っても日本の実力組織ですからな。信用できるからと言って、頼むことは出来ません。何かあった際に、他国から干渉される口実になるだけですからの。」

 少し考えてみれば分かることだった。

 わざわざ国外から兵士を呼んでいる。それも、世界屈指の練度を誇る実力組織を持ち平和を維持している国に。

 なぜそれを失念したのかと、彼女は項垂れて席に着いた。

 「・・・他にありますか?」

 室内の各所から、話し声が聞こえてくる。

 散発的に意見が飛び出したが、いずれも現実的なものではなく、書き留められることなく消えていった。

 時間だけが過ぎていき、段々と話し声も小さくなってきた。

 「飛行機は駄目ですか?」

 誰かがヤケクソでそう言い放った。

 「どこに降ろす?」

 案が出ないことで堪ったストレスを発散するように、皮肉を込め『パラシュート降下でもする?』と誰かが言い返した、そのときだった。

 「おぉ!それなら出来そうですぞ!」

 意外にも、男は目が覚めたように声を上げた。

 直ぐに、研究所付近の地図が表示される。

 「この距離に、空港があります。これなら、地下トンネルを掘って輸送できるでしょう。」

 続いて、IS学園の航空写真を出す。なぜか、「おぉ!」と歓声が上がった。だが、それは何となく出てしまったもののようで、何人かがばつが悪そうに俯いた。

 「ここです。このアリーナの近くなのですが、道路がありますじゃろ。」

 カーソルをその場の上でグルグルと動かし、全員が見ていることを確認する。

 「ここは建物を建てるには細すぎるため、空き地になっておる。しかも、長さは十分に確保できますぞ。確か、・・・一.五~二kmはあったはずです。」

 『おぉ!』っと、今度こそ明確な意志を持って全員が立ち上がった。

 

 

 

 その頃、来栖は自宅でのんびりと過ごしていた。特にやることもないため、今は寝転がって本を読んでいる。

 そのとき、携帯電話に着信があった。非通知と表示されていたので、出るか否かを迷ったが通話を選択する。

 「はい、もしもし?」

 『事情により名乗れない。一つ聞く。どこの何の戦闘機が最強だ。』

 相手は抑揚のない声で話している。ただし、あまり慣れてはいないのか若干は変化が付いていた。

 その手の人間としては不慣れだと思いながらも、気持ち悪かったので彼は正直に答える。

 「F-22。愛称は『ラプター』。」

 『どこにある。』

 「アメリカ空軍が保有している。」

 そのくらい調べろと思いながらも、律儀に返す来栖。

 『そうか。』

 直後、そう言い残して電話は切れてしまった。

 いったい何の電話だったのだと思うと同時に、何となくくつろぐ気になれなくなってしまったので窓拭きでもしようと部屋を出た。

 

 午後。昼食を摂り、少し眠くなったので横になっていたときだった。

 また携帯電話が着信を知らせる。今度は誰だろうと開いてみると、また非通知と表示されていた。

 嫌がらせか何かを受けているのだろうか。そう思いながら、恐る恐る電話に出る。

 「はい?」

 『ラプターは駄目だった。次に強い戦闘機は?』

 何故か怒っている。ここまで自己中心的だと下手に逆なでしない方が良いなと思い、来栖は答えた。

 「F-15、愛称は『イーグル』。」

 『それはどこが持っている?』

 パイロットだと言うことを知っているのか。来栖は思わず身構え、辺りを見回す。

 「アメリカとか日本とか。どこの国が何機保有しているかまでは、俺の知るところではない。調べてくれ。」

 『そうか。何かあれば、また電話する。』

 もう二度としてくるな。そう思いながら相手が電話を切るよりも早く『切り』を押し、そのまま長押しして電源を落とす。ついでに電池も抜くと、来栖はそれを押し入れに放り込んだ。

 

 

 

 『――ラプター。』

 そうメモをしたのは、IS学園の教員の一人。

 先程から来栖に電話をしていたのは、他でもないIS学園の教員だった。

 「そうか。」

 彼女は、電話を切ると、ある男のもとに向かった。

 「F-22と言う、アメリカ空軍の戦闘機が強いそうです。」

 「ほう。では、早速IS委員会に聞いて貰おう。」

 番号を打ち込み、受話器を取る。ダイヤルが行われ、呼び出し音が鳴る。

 「私です。申し訳ないが、アメリカ空軍にF-22という戦闘機を手配できないか聞いてほしい。・・・そうだ。頼みますよ。」

 そう言って、男は電話を切る。

 「ところで、この来栖翔霧というパイロットは信用できるのですか?」

 「間違いないじゃろう。ワシの目が確かなら、の。」

 悪戯っぽい笑みを浮かべ、男はそう言った。そう、IS学園の教員を仕切っていた彼こそが、来栖と会った男である。

 

 正午、返事の電話がないので、昼食にしようかと思った矢先、電話が鳴った。

 『駄目です。ラプターは渡せないの一点張りで・・・。』

 電話に出ると、申し訳なさそうな声が聞こえてきた。忍びなかったので、「ご苦労」と言って男は電話を切る。

 「意外じゃったの・・・。」

 彼らは、現行の兵器はISの登場により鉄くずほどの価値しかないと世間で言われていることを信じ、もはやどこも持て余していると思っていた。それだけに、断られるということを想定の中に入れていなかった。

 「仕方ない。彼には申し訳ないがもう一度電話して、次点の機体を聞いてくれ。」

 「はい。」

 彼女は走って去って行き、二分ほどで戻ってきた。

 「日本やアメリカなどが持っている、F-15『いーぐる?』だそうです。」

 「ん。聞いてもらおう。」

 男は、彼女の仕事の速さに感心しながら、先程の相手に電話を掛けた。

*1
航空自衛隊が使用する純国産の中等練習機。ブルーインパルスで使用しているのもこの機体。

*2
イスラエル空軍のF-15が訓練中に空中衝突を起こし、そのとき片翼を失ったが基地に帰投した伝説がある。




お知らせ
2019/01/16に、部分的に加筆しました。
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