IS学園の猫ちゃん   作:只の・A・カカシです

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第40話 トム猫・危機一髪

 時間は少し遡り、時刻は一一時半になろうかという頃。

 場所は三沢基地のアラート待機室でのこと。

 ここ数日は緊急発進をすることがなかったため、待機室の雰囲気も少しばかり和らいでいた。

 だからだろうか。電話が鳴ったのは、皆が昼食のことが気になり始めたタイミングのことだった。

 待機室の空気が一変する。

 電話を受けたディスパッチがスクランブルを伝える。

 一瞬で実戦モードに切り替わると、隊員たちは一斉に走り出す。

 パイロットはコックピットに駆け上がり、機体の始動を行う。

 超特急で飛行準備を整えると、パイロットは管制と交信を行い、格納庫から機体を発進させる。

 ローリングテイクオフで離陸すると、二機のF-2は管制から指示された通り太平洋に進路を向ける。

 少ししてデータリンクが開始されると、パイロットたちは首を傾げた。

 「これ・・・F-14が向かった方角だよな?」

 『あぁ。間違えて捉えた・・・にしちゃ位置が違うか。』

 対象機は領空内のかなり入り込んだ場所にいる。

 謎なのは、所属不明機は一機だけであり、それに一直線に移動を続けていること。

 さながら設定した座標に向けて飛んでいるだけのように見える。

 対象機の意図を測りかねて首を傾げつつも、二機はデータリンクの指示のままに飛行を継続した。

 

 事態が動いたのは一〇分後のことだった。それまで接近する一方だった対象機が、突然進路を一八〇度変えた。

 まだF-2のレーダーの探知距離外のため、詳細な状況が得られない。二機はミリタリーパワーにまで推力を上げ、追跡を継続した。

 

 更に二〇分後。機種を特定できるほどの距離ではないが、なんとか自機のレーダーで探知できる距離にまで差を縮めていた。

 「あれ?二機いる?」

 『いるぞ。こっちでも二機捉えてる。』

 パイロットが話をしていると、一瞬、一機が反応を消した。

 「・・・?今見えなくならなかったか?」

 『なったな。今のなんだ?』

 隊長機のパイロットは機器の不調を疑って、僚機に確認を取る。やはり僚機でもそのようになっていたので、正常に動いていると判断する。

 などと確認作業をしていると、再び一機が反応を消した。ところが今度は、反応の復活がない。

 不審に思っていると、もう一機も反応を絶った。その瞬間、二人は気がついた。これは米海軍の空母がいる、と。

 隊長機のパイロットは、自機のレーダーの索敵モードを対空から対艦に切り替える。

 「あぁ、レーガンの空母打撃軍がいる。」

 対象機は、飛行計画なしに飛んでいたF/A-18で間違いない。ただ判明したとはいえ、記録を残す必要はある。二機はそのまま進行を続け、打撃軍の艦隊に近づく。そして上空から写真を撮ると、来た航路を引き返していった。

 

 彼らが基地に帰投したのは、十三時を過ぎてからのことだった。

 『なんか慌ただしくないか?』

 着陸して格納庫へと移動している最中、僚機のパイロットは基地が慌ただしいことに気がついた。

 「だな。・・・なんだ?」

 気になりつつも格納庫へと機体を入れる。機体の駐機手配をすませコックピットから降りる。と、そこにアメリカ空軍の士官が駆け込んできた。

 「今、どこから帰ってきた!」

 彼はひどく慌てており、よからぬ事態が起きていると二人に直感させる。

 「太平洋の方からだが・・・どうした?」

 「太平洋か?!俺たちのボスが浮かんでいなかったか?!来栖と一緒に出かけたんだが、ビンゴ*1の時間を過ぎても帰ってこないんだ!」

 「えぇ?!そう言えば、予定飛行区域の近くを通ったが姿を見なかったような。」

 「どうした?」

 話し声を聞きつけて、彼らとセットでアラート待機していたパイロットが出てきた。

 「飛行に出かけたカリアン司令官が時間になっても帰ってこないらしくて・・・。」

 「司令官が?!っても、俺たちは動けないからな。・・・あそこにいるのは、今から訓練だよな?あいつらに頼むか。」

 

 

-*・愛宕・*-

 

 

 一三時二五分。訓練に出発するためキャノピーを閉めた。誘導員の指示に従いブレーキを離して移動を開始する。

 その数秒後、誘導員が慌てた様子で停止の合図を出したので、慌ててブレーキをかける。

 「全機停止!」

 先行して移動を開始していた三機はそれに気がついていなかったので、無線で呼び止める。

 『平林だ。』

 直後、指令からの無線連絡が入った。

 『地上移動中の四機に連絡する。午前中に離陸した来栖とカリアン司令官が時間を過ぎても帰投していない。通信に応答なく、飛行中と思われる空域にも反応を捉えられないため、墜落した可能性が高い。現在、すぐに動ける機は君たちだけだ。捜索を指示する。直ちに現場へ向かってくれ。捜索範囲については、データリンクにて確認すること。続報あれば、追って連絡する。以上。』

 「え?来栖さんが?」

 あの人が墜落するなんて考えられない。根拠があるわけではないのだけど、何と言うか、墜落するところを想像できない。

 しかし任務が言い渡されたのだから、自分の考えで疑問を持ってはいけない。

 僕たち四機は、現場に急行した。

 

 現場に到着したのは一四時前。それから十数分ほど捜索をしているが、今のところ何も見つかっていない。

 そんなにすぐ見つかるわけはないが、落ち方によっては部品が散らばらないこともある。増して、墜落したならこの辺りの『この辺り』が極めて広いこともあり、日の入りまでに発見できるだろうかと言う不安がよぎった。

 『カリアン司令官捜索中の各機に連絡します。』

 そんな時、不意に無線が入った。

 『福島県沖三〇〇kmにて所属不明機を確認。現在、当該機は北上中。米軍機と推定されるが、念のため三沢よりスクランブル発進する。会敵は二〇分後。飛行には注意されたい。以上、連絡終わり。』

 洋上で捕捉した米軍機ということはF/A-18だろうか。何が飛んできているのかと気になったが、今は捜索に集中することにした。

 

 

-*・カリアン・*-

 

 

 コックピットが飛行甲板の終端を通過する。速度が足りなのか、機体は少し前のめりの姿勢で飛行甲板から離れた。

 「マズイぞ!!」

 私は思わず叫んだ。それで加速が良くなることがないこと分かっているのだが、声が出てしまった。

 海面に叩きつけられる前に脱出しようと、射出ハンドルに手をかける。

 力を入れてそれを引こうとした寸前、来栖が「バーナーオン」と叫ぶ。視界の左端で、スロットルレバーが最大開度に動いていく。

 即座に口を閉じ、頭をヘッドレストに付ける。全くの同時に、背中から背飛ばされたような加速が始まった。

 〈なんって応答速度だ?!〉

 来栖の行動を先読みしているかのようなスロットルの立ち上がり。先ほど操縦した時にも応答性のいいエンジンだとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。

 しかし、機体は下降を続ける。今どれくらい出ているのか、速度を見ようと液晶画面を見た。ついF-16のつもりで見た私が目にしたのは燃料流量計だったが、それの差していた数値に目を疑う。

 「フレームアウトするぞ?!」

 飛行速度に対して燃料の流量が多すぎる・・・と咄嗟に思ったが、エンジンはフレームアウトを起こしていない。

 私の知っているエンジンに、F-14に搭載できるサイズで、この飛行条件で、この燃料を消費しきれるものはない。私の乗機であるF-16と同じF110エンジンを使用していると思っていたが、どうやらそうではないらしい。

 そうしている間にも、機体は重力に引かれ海面に迫っていく。

 〈もはやこれまでか。〉

 脱出は間に合わない。私は、そっと目を閉じた。

 

 

-*・IS学園・*-

 

 

 輸送課の詰所の空気を凍らせた第一報。

 「落ちたぁ?!」

 続けて放たれた松戸の一言に、詰所は動揺する。

 「諏訪、来い!おい、T-4で出る!準備してくれ!」

 居ても立っても居られないと、柳原と諏訪が詰所から格納庫へとかっ飛んで行く。しかし、整備士は誰一人としてそれに続かなかった。

 彼ら整備士には、その電話が誤報であること分かったからだ。

 「落ちた?落ちてないだろ。松戸、代われ。」

 元々自衛隊にいた自分が話をした方が良いと、森田が電話を代わる。

 「墜落したって、どこの情報だ?・・・レーダーに写らない?」

 電話対応をする森田の傍で、整備士の市川がパソコンを操作していた。そして間も無く、彼はこう口にする。

 「F-14の現在位置は、宮城県沖です。」

 森田は市川に軽く右手を上げて了解を示す。

 「宮城沖を飛んでいるはずだ。確認してくれ。・・・・・何でわかるか?IS学園のF-14はISを運ぶからだよ。輸送中に落っこちたら大変なことになるだろ?だから状態監視装置を付けて、何かあればすぐに応援に行けるように備えてるんだ。」

 驚く自衛隊に、森田はサラッと説明する。

 電波の届かない距離でこんな芸当が出来るのは、F-14が人工衛星と通信を行えるからに他ならない。そしてその衛星は、遠隔地でISコア・ネットワークに接続するための衛星で、状態監視装置はその通信を間借りして行われる。お陰で第三者に覗き見される可能性は低いが、IS学園の中でしか使うことが出来ないという制約があった。

 〈宮城沖を・・・北上中?何で?〉

 市川が記録を確認していると、どう言う訳かF-14は北上中であった。無線で呼びかけられれば確認が取れるが、ここからでは届かない。もう少し通信量を割けたなら通話機能も追加できたのにと、このプログラムを組んだ市川は悔しそうにする。

 「おい、何で誰も来ないんだ!来栖が心配じゃないのか?!」

 その時、柵原がすごい剣幕で詰め所に戻ってきた。

 「元気に飛んでるんで、大丈夫です。誤報でした。」

 市川が、さらりと柵原をあしらった。しかし自衛隊からの直通電話で誤報が来ると信じられないのか、柵原は「なぜ分かる」と」続ける。

 状況を掴みきれない柵原、諏訪、松戸にはある一つの共通点があった。それは、IS学園に来てからの時間が短いと言うことだ。

 

 

-*・A・*-

 

 

 「?!圧力が!」

 カタパルトの射出ボタンを押した水兵は、瞬く間に蒸気圧が下がっていくことを確認した。

 顔を上げる。F-14は全くスピードに乗れていない。

 だが止めることはできない。

 立ち尽くしている場合ではないという衝動に駆られ、彼は、いや彼だけではなく見送りに来ていた多くの乗組員が一斉に船首方向に走り出す。

 飛行甲板に接触することなく発艦したものの、F-14は揚力を得られず、あっという間に甲板の高さより下に消える。甲板上で待機していた救助ヘリが、エンジンの出力を上げて飛び上がる。

 真っ先に船首に辿り着いた者が見たのは、アフターバーナーを焚いて足掻いているF-14。

 着水する。見ていたもの全員がそれを覚悟したが、その瞬間は訪れなかった。F-14は着水寸前で揚力を得ると、水面を進んでいるのではと思うほどの低高度を保って加速を行い、速度に乗るとアフターバーナーをカットして、それから急上昇で空の彼方へと消えて行った。

 あの速度で発艦して、どうして助かることができるのか。目撃者はしばし見たことを理解できずに立ち尽くしていた。

 

 

-*・A・*-

 

 

 〈でもま、これだけ速度があれば十分だ。〉「バーナーオン!」

 来栖はスロットルをアフターバーナー全開にする。通常のエンジンではありえない、低空低速でのフルアフターバーナー。

 間も無く最低飛行速度に達するが、確実に舵をきかせるため、敢えて機首上げを行わず加速を優先する。

 〈三六〇・・・三九〇・・・。よし、上げるか。〉

 速度がついたことで推力が上がってきた。操縦桿を引きつつ、スロットルをミリタリーパワーまで絞る。

 機体は加速しながら上昇していく。

 「ふいー。やられたなぁ。」

 高度、速度ともに安全が確保できる領域に達すると、来栖はカリアンを無事に三沢へと送ることができることに安堵する。

 〈動き出しの加速はよかったのに失速していったということは・・・カタパルト操作員は違うだろうな。誰かがバルブを絞ったか?あの空母の中にも曲者がいるとは思えないけど・・・まあ、それは海軍さんの仕事か。〉

 結果として無事ならばそれで十分と、頭の中からそれらを追い出す。

 今は帰ることを考えなければ。来栖はGPSで自機の位置を確認する。先程はF/A-18の後を追いかけていただけだったので気にしていなかったが、福島の沖合にいたことに驚く。

 思いのほか遅くなってしまった上に距離がある。急いで帰らなければという思いから、スロットル開度をミリタリーパワーのまま巡行する。

 〈ミサイルが付いてるし、音速に突入することはないかなぁ。〉

 それでも万が一に備え速度計を見ていると、割と早い段階で速度計が怪しい挙動をし始めたためスロットル開度を八割ちょっとまで絞る。

 〈あ、そうだ。追加されたオートパイロット使ってみよ。〉

 以前からオートパイロットはあったが、より細かく設定できるようになった。試すには、洋上は持ってこいの場所。来栖は設定作業を始めた。

 

 「・・・あれ?生きてる?」

 それは発艦から一〇分ほどが経過した時のことだった。静かにしていたカリアンがそんなことを呟いた。

 「来栖。」

 「はい?」

 「我々は生きているのか?」

 「??生きてますけど?」

 なぜそんなことを聞くのか。来栖が首を傾げていると・・・。

 「速度が足らなくて海に墜落したような気がしたんだが、確かに生きて・・・!」

 そこまで言ったところで何かを思い出したカリアンは、ハッと息をする。

 「このF-14はどうなっている?あんな飛行条件で、あれだけの燃料を流せば普通はエンジンが止まるぞ?」

 いつもであれば「そうですか?」と言うはずの来栖が、珍しく「そのことですか」と納得を示す。

 「燃費改善と最大推力を向上させるチューニングの副産物として、サージングを起こしにくくなったんです。」

 「止まりにくいのか。羨ましいな。」

 ジェットエンジンの泣き所の一つが、緩和されたことに間違いはない。しかし、そんなにうまい話ばかりでないのがこの世の常である。

 「その代わりエアインテーク内の圧力が上がらないと、ある回転数から上は空気流入量が増えないとか何とかで、低速での推力はスカスカです。アフターバーナーを全開にしても、低速域ではチューニング前の推力に届きません。」

 「構造としてはラムジェットエンジンに近いわけか?」

 「私もそう思ったんですけど・・・。そこまでやるとなると、エンジンどころか機体ごと設計しないと無理って言われました。まあパワーがないとは言っても、F110エンジンに匹敵する推力は出ていますし、応答速度も格段に良くなっているので、今日みたいなイレギュラーでも起こらない限りは余裕で発艦できるんですけどね。」

 「なるほど。だが、万人に扱えるエンジンではないようだな。」

 「ええ、間違いなく。特に速度が出てからは急激に推力が出るので、そこを抑えるのが・・・ん?」

 エンジンの話をしていると、接近する機影を捉えたことを知らせる音が鳴る。レーダーの情報を全画面表示に切り替えて確認すると、二七〇kmほど離れたところからこちらに向かってくる機影があった。

 「F-2?・・・空軍さんは今日、訓練のご予定は?」

 自動識別装置はF-2と判定していたが、可能性としてF-16もあり得る。それを知ったところで、これからの動きに変更は発生しないが、来栖は取り敢えず尋ねた。

 「我々か?今日は夜間飛行訓練だけで、昼間の訓練は無いはずだ。」

 「そうですか。・・・ちょっと上昇しますね。」

 得も言われぬ既視感を覚えた来栖は、スロットルを開けて高度一万五千メートルまで駆け上がる。

 レーダーを見ていると、F-2が上昇率を上げた。以前、逃げる方にF-2が追いかけて来たことがあったので、来栖は直ぐに無線を取る。

 「こちらルートマン。青森県上空を飛行中のF-2戦闘機のパイロットさん、聞こえますか?」

 五秒ほどの沈黙。再度、呼びかけようとしたところへ返事があった。

 『聞こえます。来栖さんですか?』

 「はい、そうですが。」

 『飛んでいるんですね?』

 「えぇ、元気に。」

 『了解。そちらに向かいますが、気にせずに飛んで下さい。』

 「「??」」

 行動の意味を理解しかねて、来栖とカリアンは揃って首を傾げた。しかし追い返す必要はないので、来栖は「分かりました」と返した。

 

 「ウチの連中は何をしてるんだ?」

 三沢基地に着陸すると、駐機場に多数のアメリカ空軍の関係者が集まっていることが見えた。

 「さあ、何ですかね・・・。」

 自分達が墜落したと騒がれていたとは思ってもみない二人は、その光景に困惑する。

 来栖たちは駐機場に向かう途中で、スクランブル待機の格納庫に戻る二機と別れる。

 程なくして駐機場に着くと、機体の駐機手配を行う。

 それ終え、二人がコックピットから降りる。

 即座にカリアンは空軍の関係者に囲まれ、言葉を掛けられる。

 「帰りが遅いので、心配してました。」

 一方で来栖は、平林に笑顔で出迎えられた。

 「これは指令自ら・・・。ご心配、おかけしました。」

 来栖は頭を軽く下げる。

 「ところで、この騒ぎは一体?」

 「これ?いやー、誰が言い出したのかは知らないですけど、君とカリアン司令官が墜落したって話が広がりまして。無事帰ってこられたので、こうやって出迎えているんです。」

 「そういうことですか。・・・あ、じゃあもしかして、スクランブルが出ていたのも、私どもの捜索ということですか?」

 「そうですね。」

 それを聞いた来栖は「やっちまったな」と言った感じで項垂れる。

 「それはご迷惑をおかけしました。」

 「いや、気にしないで。こっちが勝手に慌てただけだから。ところで、どちらに行かれてたんです?」

 「急に米海軍さんが来て『ちょっと来てくれ』と言われまして。普段飛ばないところを飛んでいて、しかも空軍の司令官を乗せているタイミング。これは話が付いているのかと思って、ついて行っちゃたんですよ。言い訳ですけどね。」

 「あ-、それは仕方がないですね。私でもそうなります。」

 来栖の口ぶりから、それが本当に偶然であること平林には分かった。そして、これ以上は知らない方が身のためと感じ取る。

 「まあ、中に入って。コーヒーでも淹れましょう。」

 平林がそう提案したのは、どんなやり取りがあったか聞いてしまう前に会話を切るためだ。

 「お気遣いはありがたいのですが、こんな時間ですし。挨拶だけさせてもらって、お暇(おいとま)させてもらいます。」

 しかし来栖は長居するつもりがなく、丁寧に断りを入れる。

 「おや、お急ぎの用事でも?」

 「お急ぎ・・・・お急ぎになるんですかね?定時を過ぎると整備士たちが帰宅しかねないので。」

 「え?そんなことがあるんですか?」

 「ありますよ。自衛隊じゃあり得ないことが、バンバン起きます。私もその一人ですけどね。」

 その後、何だかんだで話し込んでしまい、結局IS学園に戻ったのは定時ギリギリのことであった。そして誰も来栖の身の心配をしてくれていなかったのは、言うまでもない。

*1
ガス欠になる時間

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