第4話
(……)
フランス、オルレアン。リヨンの街、そこにはオフェリア(偽)は静かにベットで寝ていた。
「すまない、助かる」
「いいんだよ。怪我をした子を放ってはおけないからね」
レイシフトで転移した後。色々と限界を迎えていたオフェリアをジークフリートが運びこの街へとやって来た。その後、診療所らしきところに引き取られ治療を受けていたのだ。
「腹に穴が空いてる子なんて始めてみたよ。もしかして騎士さん、あのジャンヌ・ダルクに襲われたのかい」
「あのジャンヌ・ダルクとは?」
「火刑に処されたジャンヌ・ダルクが復讐のために復活したってはなしなんだよ」
「そんなことが…」
死んだ人間は生き返らない。それはジークフリートはよく知っている。もし何らかの奇跡が積み重なればあり得なくもないかもしれないが火刑にされたのなら死んだのは確認されているはず。そんなことはあり得ない。
(あり得る。サーヴァントだ)
(マスター。もしやこの世界はマスターの言っていた世界なのか?)
(あぁ、特異点と呼ばれる世界。人理を護るための戦争、その始まりの世界だな)
魔眼のスキルは24時間が経過すれば再使用が可能となる。メシェドの眼でスキルの回復力は倍に出来るがそれを使っても12時間が最短だ。
1日2回の魔術的回復。それを数日に分けて使用して腹の傷を塞いだ。
(はやくこの街から出なければ奴が来る)
「奴?」
(ジャンヌ・ダルク・オルタが来てしまう)
「オルタだと…っ!この気配は」
ジークフリートが反応した瞬間。周囲が騒がしくなる、主に外に居た人々が…。
「あらあら、サーヴァントの気配を察してきてみれば。死にかけのマスターも着いてくるなんて」
(来たか…)
漆黒のジャンヌ・ダルク。目の前に現れたこの特異点のラスボス。ジャンヌ・ダルク・オルタはオフェリアの目の前に現れ、不敵に笑うのだった。
ーー
「その時代に対応してからやるべき事をやるんだぞ。では健闘を祈る藤丸くん」
「あの、ドクター。オフェリアさんの所在はまだ掴めていないのですか?」
「ごめん、特異点Fからは脱出できたみたいだけど途中で逸れてしまったらしくて」
オフェリアは特異点Fでの世界崩壊の際に一緒にレイシフトさせたはずなのに消えてしまった。あの世界からの脱出は観測できたがどこに逸れて着地したのかは分からない状況だ。
「彼女は協力的な上に非常に頼もしい助っ人だ。特異点では彼女の情報にも耳を傾けてくれ」
「分かりました。必ず見つけ出して見せます!」
気合い十分と言った雰囲気で声を出す藤丸。既に彼にとってオフェリアはマシュと並んで精神的支柱となりつつあった。まるで姉のように優しく接してくれた彼女。最後には所長を守ろうと血を流してまで戦った。
(俺はあの時。なにも出来なかった…)
彼女が血反吐を吐きながら戦ったと言うのに…。彼女の叫び声は今だに耳に残っている。もう、あんな叫び声を上げさせてはいけない。そう藤丸は思ったのだった。
ーー
レイシフトでの転移をした後。特異点に向かった二人を見送ったロマニ。その背後には立ち去ったはずのダヴィンチちゃんの姿があった。
「いいのかい、彼女の事は話さなくて?」
「しつこいな、話し合って決めたことじゃないか。特異点Fでの彼女の言動はこちらを支援するものだった。それに加えてレフから必要以上に狙われていたもの彼女を警戒してのことだろう」
冷凍保存されたオフェリアと特異点Fにて助けてくれたオフェリア。この二人が存在することを藤丸とマシュには知らされていない。余計な混乱を招く可能性が高かったからだ。
「所長と同じく。死んだ後の精神だけの状態だったのか?それともドッペルゲンガーなのか。実に気になる、カルデアに帰ってきた暁にはじっくりと調べたいものだ!」
「まったく…」
テンション高めのダヴィンチを余所目にロマニは二人の存在証明を開始し画面を見つめる。この際だ、彼女が何者であろうと協力してくれるのならそれで構わないのだ。
ーー
(大丈夫ですか!)
「お嬢さん…」
あのジャンヌ、入ってくるなり宝具を放って来やがった。診療所のおばさんを抱えて窓から脱出したと思えば外はスケルトンなどの化け物の群れが。
(くそっ!)
急いでスケルトンらを破壊するが群れの数が多く対処しきれない。ジークフリートを呼びたいところだが向こうもジャンヌと交戦中だ。
「くっ!」
「それが人理を護る英霊ですか?」
剣術と言う面ではジークフリートの方が圧倒的だ。だがオルタの周辺に舞っている炎が邪魔で深くまで斬り込めない。
「話になりませんね。バーサーカー!」
「■■■■■■!」
ジャンヌの掛け声と共に出てきたのはバーサーカー・ランスロット。雄叫びを上げる彼は近くに落ちていた木の柱を拾い上げると殴りかかる。
「そのようなもので!」
(油断するなジークフリート!)
ランスロットの宝具は万能。木の柱ごと斬り裂こうと剣を構えた彼を念話で叫ん止めるオフェリア(偽)。彼はその言葉にしたがい回避を選択した。
真っ黒に染まった木の柱は地面を粉砕しそれと同時に横合いからジャンヌの呪いの炎が襲いかかった。
「助かったマスター!」
(回避を優先。隙を見つけて逃げるぞ)
「しかし、それでは街の人々が!」
(くそっ、どうする?)
ジャンヌ・ダルク・オルタとバーサーカー・ランスロットの2騎。もしかしたら後ろにジル・ド・レェが控えてるかもしれない。藤丸たちがいない以上。戦力の温存が最優先だが。
(いいな、出来るだけ時間を稼ぐ。全力で援護する)
「了解した。マスター!」
魔眼で瞬間強化、魔力放出をかけると。ジークフリートは飛び出す。その動きにジャンヌとランスロットが動き出す。オシリスの塵をさらにかけるとこっちも移動する。
「やっかいね、本気でいくわよ。
「■■■■■■■■■!」
ジャンヌとランスロットの全力攻撃。呪いの炎がジークフリートを襲うがそれがまるで無かったかのように突っ込んでくる彼を叩き潰そうと来るランスロット。
(ガンド!)
「■■■!?」
突如、動けなくなったランスロットにジークフリートの斬撃が直撃。悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
(よっしゃ。見てたかこの野郎!)
「おやおや、貴方ですか?私のジャンヌを邪魔立てするのは?」
(っ!やっぱり居やがった!)
キャスター ジル・ド・レェ。その周りには無数の海魔たち。
(やめて、私になにかするつもりでしょう!◯人誌みたいに同◯誌みたいに!)
足元に落ちていた剣を拾い上げると魔力で強化して構える。
(めっちゃ重いな、おい!)
やっぱり筋力が足りない!鍛えなければ!
《では我がマスターよ! 共に筋肉を邁進しましょう。まずは! 裸で豹と戦うのです!!》
なにか聞こえたよ!筋肉数学者がなにか言ってきたよここに居ないよね?この特異点には居ないよね!?
(無事か?マスター!?)
(そっちはどうだ?)
(一矢は報いたが厳しい)
だろうな。こっちもキャスター相手ではどうにもならない。仕方がないが賭けに出るしかない。
(ジークフリート。こっちに向けて宝具を撃て!)
(なに?)
このままではなぶり殺しに合う。ならここで賭けるしかない。
(撃った後はすぐに離脱。お前が生き残ることを優先しろ、俺が死んだ場合、藤丸を探せ。ここに来ているはずだ)
(……了解した。マスター)
突然の命令で戸惑っていたジークフリートだがこちらを信じてくれたのか同意してくれる。
(用意ができたら合図をくれ)
(分かった)
「黙りですか。ですが誰であろうと私とジャンヌの復讐を邪魔することはさせませんよ」
海魔が俺を囲むようにどんどん沸いてくる。もうどこぞのゾンビ映画以上の絵面と化している。
(本物のオフェリアならもっとスマートに対処できただろうなぁ)
ジークフリートと自分の視界をリンクさせ、場所を探知する。向こうの準備が整うまで素人ながらも海魔と相手取り応戦する。
「キシャァァァァァ!」
(くそが!)
左手、筋力強化、硬化。槍と化した左手で海魔を貫手で貫き、貧弱な霊核を粉砕。地面に叩き付けるとジル・ド・レェを睨み付ける。
「素晴らしい、その眼、その魂、貴方はまさしくあの頃のジャンヌのようだ。殺すのは惜しい、お喜びなさい、貴方はジャンヌの力となってもらいましょう」
ジルの左手が光ったと思えば何やら怪しい気が視覚化出来るほどに渦巻いている。
(精神汚染系の魔術かよ!)
とことん絵面を汚したがるなこの変態。この小説はR-15指定なの!R-18指定じゃないの! え、なら書けよって?バカ野郎、そのジャンルは専門外だ!
(マスター!)
(よし、撃て。ジークフリート!)
ーー
「■■■■!」
「ちっ、儀式前の肩慣らしのつもりでしたが…」
ジークフリート相手に手間取ったオルタはおもわず舌打ちをしてしまう。その瞬間、強大な魔力反応を感じ取り、すぐさま脱出するジャンヌ。
「バルムンク!」
「■■■■!?」
「ちっ退くわよ!」
避けきれなかったランスロットは悲鳴を上げながらも四肢を使って見事に着地。流石に体力の限界を感じ、ジャンヌと共に霊体化して離脱する。
ーー
「この力は!」
(来たか!)
ジャンヌ、ランスロット、ジルを一直線に並べ発動したジークフリートの宝具は見事に命中。街を半分に割ってしまったが民間人の被害は皆無だった。
(くっ!)
「残念ながらここまでのようです。またお会いしましょう」
宝具の余波で吹き飛ばされるオフェリア。ジルも同様で相応のダメージを負いながら吹き飛ばされる。しかしすぐに霊体化した彼は姿を消してしまう。
(いっつ!)
その際に瓦礫のようなものが胸に当たったような痛みが走る。礼装がなにやら効果を発揮して魔力が服に回る。
吹き飛ばされた俺はそのまま瓦礫と共に川にドボン。そのまま流されていく。
(憑依してからろくな目に合わねぇ…)
チート気味ボディーは貰ったが使いこなせていない弊害か。前の人生ではあるかないかの濃い一瞬が何度も訪れた。
(安全に勝ちたい…)
そう思いながら流木に掴まり意識を失うのだった。