【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第十話

 大学受験が終わり無事大学に進学して、もう二年がたった。

GVもこの二年間で一人称が「僕」から「俺」に変化しており、

ワイルド感が増してますます魅力的になった。

 背も大きく伸びて、声もすっかり大人になって、脱いだ時の体つきも…

 まあそれは置いといて、GVは今年に必要な学科の単位を取り切り、

今日は私とのデートを満喫していた。

 何時もの最後の締めでカラオケでいっぱい二人で歌って大学寮に戻った時、

GVの携帯から電話がかかって来た。

 それはGVの妹からだった。

 確か名前は侶露奈(ろろな)だったっけ。

 その電話の内容はこうだった。

 

「どうした侶露奈? こんな時間に?」

「優君、優君、僕、今日遂に(あきら)君に告白されちゃったんだ♪」

「……そうか、やっと告白してもらえたんだな」

「そうなんだよ! 僕、とっても嬉しくて、思わず優君に電話しちゃったんだ♪」

「良かったな侶露奈 しかしあの堅物をどうやって告白までに持ち込んだんだ?」

「明君の妹の美晴(みはる)ちゃんに、私の友達皆に協力してもらったんだ♪」

「……そうか、それなら納得だ」

 

 どうやらGVの妹…侶露奈に彼氏が出来たようだ。

色々なアニメや小説なんかの娯楽作品を見てみると、

こういったシチュエーションが展開された場合真っ先に兄は反対の立場に回る。

 でもGVは…心から祝福しているみたい。

 侶露奈は見た目は可愛いんだけどしゃべり方が少し男子っぽかったから、

彼氏が出来るかどうかGVも私も心配してた時があったけど今回の件でその心配が無くなった。

 明君という人については度々GVに嬉しそうに侶露奈が喋っていた事だけしか

私とGVには情報は無いけれど侶露奈曰く、

「カッコイイのもそうだけど、普段は堅物で素っ気ないのに、

時折見せる優しい言葉を、本当に必要な時に出してくれるのがいいんだ♪」何だとか。

 …他の人の惚気話を聞くのって、

口の中が砂糖みたいに甘くなるなんて例えを良く聞くけど、本当にその通りだった。

 GVと侶露奈の会話は続く。

 

「所で優君? 僕の事はもうこれで解決したけど、優君の方はどうなのさ?」

「……ごめん、俺の方はダメみたいだ」

「そっかぁ…結局事件にはならなかったけど、優君のストーカー被害の影響はそのままかぁ」

「最悪、俺は独身を考えているよ」

「そんなぁ! それじゃあ、美晴ちゃんの気持ちはどうなるのさ!」

「……それはもう、終わった話だろう? 侶露奈」

「でも……優君が美晴ちゃんの告白を断ってから、

表には出してないけど、美晴ちゃん、今でも悲しんでるんだよ!?」

「……ごめん」

「謝るのは僕にじゃなくて美晴ちゃんにだろ!?

……ごめん、僕も言い過ぎた 心の傷はそう簡単には直らない

分かってる事だけど…でも…」

 

 侶露奈と良く遊びに来ていたから、美晴の事は私も知っている。

 綺麗な長い黒髪をしていてどこか儚げな、守ってあげたくなるような女の子だ。

 そしてこのGVの(記憶)の世界において、()()()()()()()()()()()()()()

 美晴はGVの事が好きだったのだ。

 私は今までGVに寄り付く()達を見てきたから好意を抱いてるのは直ぐに分かった。

 侶露奈と遊びに来たと言っておきながらGVに対して色目を使ってるんだもん。

 それ以外にも色々と手作りのお菓子とかプレゼントしたりとあれこれしてたけど、 

最終的にはGVに当然の如く振られていた。

 ……今までGVに告白してきた女子達と違って、

一からコツコツと関係を積み上げてきていたから私も内心ハラハラしていた。

 GVも表には出してなかったけど満更でも無かったみたいだし……

 

「侶露奈…」

「…そういえば優君にはストーカー被害以外にも、

(さくら)さんに振られた経験もあったよね?

それも心の傷になってダメになっちゃってるんじゃないの?」

「……確かにそうだな その自覚はあるよ、侶露奈

正直、もう俺は誰かを好きになる事は出来そうもない」

「……優君、それでも美晴ちゃんは諦め無いぞ?

一度振られて一杯泣いてたけど、それでも諦めてない」

「……美晴ちゃんの事は機会が合ったら、彼女(美晴)に直接改めて話をしよう

俺はこの事で逃げるつもりはないから」

「絶対だからね!? …せめて振るにしても、美晴ちゃんに優君の事をスッパリ諦めさせてよね!

そうじゃないと美晴ちゃんは…前に進めないよ」

「わかったよ、侶露奈」

「じゃあもう夜も遅いから僕はもう寝るね? おやすみ、優君」

 

 GVは苦虫を噛み潰したような表情で会話を終えて電話を切った。

 でも少し経って覚悟を決めたような表情をしていたので、GVは大丈夫そうだった。

 この時の会話に出ていた桜さんという人はGVのいとこのお姉さんで、

私の居た世界で以前話してくれた「GVが気になっていた女の人」の事であった。

 彼女はしっかり者で家庭的な人で、そばに居るだけでどこか安心出来る人。

 初めて私が桜さんを見た時、

私が唯一「この人にならこの世界のGVを任せられるな」と思ってしまった人でもある。

 まあでも以前の会話を覚えていた私は、

GVを取られる心配は無いと既に分かっていたからこそそう思っていたのだけれど。

 そもそも私がこのGVの(記憶)に来る前にもう(GVの告白)は終わっており、

それでもGVに優しくしてくれていたのもあって私は安心して見ていられた。

 そういえば一週間前、桜さんの結婚式があった。

 あの時の桜さんのウェディングドレス姿、綺麗だったなぁ…

 うん、あの時のウェディングドレスを参考に、私の服のバージョンを増やしておいて正解だったよ。

 GVにこのウェディングドレス姿の私を見せた時、GVは私の事しばらく見惚れてたんだから♪

 …でも桜さんの事、偶に私の世界の何処かで彼女に似た人が居たような…

 そんな錯覚を覚える事があるのよね。

 うーん、誰だっただろう?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 久しぶりに家に帰って来て俺は一息付いていた。

 あの電話の後、侶露奈が美晴ちゃんとのセッティングを済ませてくれており、

今日はそう、美晴ちゃんに改めて俺の事を諦めてもらうつもりであった。

 まあ流石に目の前で泣かれてしまった時は内心動揺してしまったけど、

ここで心を鬼にしないと美晴ちゃんは前に進めない。

 その俺の意思もあってその流れはスムーズに進み、

最終的に美晴ちゃんに完全に諦めてもらう事が出来た。

 今美晴ちゃんは侶露奈の胸の中に顔を埋めて泣き腫らしていた。

 そんな時だった。

 突然ドアが開いて見知らぬ男が…

どこと無く美晴ちゃんと似た男が入り込んできて、こう切り出してきた。

 

「お前が美晴を泣かせた男、優か」

「君は…」

「俺は明…美晴の兄だ…お前を、討滅する!!」

 

 突然の事だった。

 明は俺に向かって殴りかかって来た。

 モルフォからも突然の明の行動に戸惑いを隠せないようだ。

 俺は明の拳を辛うじて受け止め、明に対して質問する。

 

「何故こんな事をする?」

「お前は…美晴の想いを知っておきながらそれを断り、美晴を泣かせた!

お前のその腐った性根を、俺がこの拳で浄化してやる!!」

 

 俺はその言動は如何な物かと一瞬思いながら力を込めていく。

 そういえば美晴ちゃんの家は神事を取り仕切る名家だと聞いた事がある。

 この明の言動はその影響を大きく受けているのだろう。

 …明の気持ちは同じ兄である以上俺も良く分かる。

 俺だって、明と同じ立場だったら同じ行動をする。

 

「ちょっと明君! 何優君に殴りかかってるのさ!!」

「明君! やめて! 私は大丈夫だから!!」

『GV! …大丈夫、GVは私が守るから!!』

 

 モルフォが俺に歌を歌い出した。

 モルフォの歌が俺に力を与えているのが分かる。

 だが俺はあえて力を抜き、明の拳をそのまま受けた。

 

「ぐっ……」

『GV!? どうして!?』

「……! 何故態と殴られた! 優!!」

「君のその気持ち、同じ兄である俺にも良く分かる…

俺だって侶露奈に同じ事をされたら君と同じように殴り掛かるだろう…!」

「……けじめを、つけようとしたのか」

 

 明の体から力が抜ける。

 周りの目もあるのだろう。

 明から俺に敵対する意思は無くなった。

 明は侶露奈と美晴ちゃんに「なんでこんな事したの!!」と質問攻めに合わされ、

最終的に二人の「明君の馬鹿!!!」の一言で撃沈していた。

 俺はそんな様子を見ながら皆から見え無い様にモルフォに向かって手を伸ばし、

歌を歌ってくれた事に対してモルフォの頭を撫でる素振りをする事で答える。

 モルフォはとても嬉しそうに、でもどこか心配そうに俺を見ている。

 

(…モルフォを不安にさせてしまったな…後で埋め合わせしておかないと)

 

 歌によって姿を現していたモルフォの姿が消えた今でも、撃沈している明を二人は未だ追撃している。

 その光景がどこか可笑しくて俺は内心笑っていた。

 妹の涙の為に年上の相手でも臆せず飛び掛かれる兄である明。

 少なくとも明には妹を、侶露奈を任せられそうだと心から思った。

 そして二人からようやく解放された明に対して俺はこう言った。

 

「君になら侶露奈を任せられる…必ず幸せにしてやってくれ」

「……当たり前だ 優、貴様に言われるまでも無い」

 

 明はこの時ぶっきらぼうな態度だったが、何所と無く嬉しそうだったのを俺は感じた。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。




※何処かで見たことがあるキャラが居る件について
 GVの(記憶)の世界における「もしも」を想像して設定してみました。
配役はこんな感じです。

美晴(みはる)=ミチル
侶露奈(ろろな)=RoRo(ロロ)
(さくら)=オウカ
(あきら)=アキュラ

今はまだ転生前の世界なので、GVとシアンちゃんが大半の言動を占めていますが、
そろそろ他のキャラの言動を練習しようと今回の話を書いてみました。
…うまく、それっぽく表現出来ているでしょうか?
なお、転生するのはGVだけなので、向こうの世界の彼女達に影響はありません。

※GVの(記憶)の世界の明が異常におとなし過ぎる件について
 この世界には第七波動(セブンス)が存在していませんので、
言動のちょっと痛いブラコン兄貴程度と奇跡的に収まっています。
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