大胆なモルフォ
今私の目の前でモルフォはGVにこれでもかと甘えている。
互いに触れ合えないのにも関わらずモルフォはGVに自身の全身を擦り付ける仕草をして、
目を潤ませ顔を上気させ蕩けた表情でGVを見つめている。
モルフォの着ている衣服は着崩れとても扇情的な恰好でGVを誘惑している。
口から熱い吐息を漏らし背中の翼を下にへにゃんと力なく下げ、
GVに対してただ只管に愛を囁いている。
『好き、大好きよGV…愛しいの…愛してるの…GV…
アタシの事、いっぱい、いっぱい弄んでもいのよ?
好きにしていいのよ? 辱めてもいいのよ? GV…GV…』
ここまで切なげなモルフォを見るのは私でも初めてだった。
あの時皇神が私を攫いアシモフに撃たれ、
そしてGVの
十六年もの間モルフォは私の心の中でずっと一人だった。
それが突然GVの想いを感知して外に出てGVと再会したのだ。
それも大人になってモルフォの身長を越えてより逞しくなったGVに。
このようにモルフォの理性のブレーキが完全に壊れてしまっても不思議では無いのだ。
『モルフォってば…大胆過ぎるよ……』
太ももをモジモジさせながらこんな事を思わず呟いた私だけど、
多分私もモルフォと同じ立場だったらあんな風にGVに縋りついていたと思う。
だって私はモルフォでモルフォは私なんだもん。
GVはそんなモルフォを見て何というか、物凄くもどかしいみたいだった。
モルフォの気持ちが、想いがダイレクトに伝わっているからだろう。
珍しくGVの表情にもそれがありありと浮かんでいた。
GVはそんなモルフォを前に何か考え込んでいるみたいだった。
そしてGVは行動に出た。
モルフォを押し倒す仕草をしたのだ。
それを瞬時に察知したモルフォはその仕草に乗りGVに押し倒される仕草をして倒れこんだ。
そしてGVはそんなモルフォに無理やりキスをするような仕草をし、
モルフォはそれを受け入れなすが儘になった。
『わぁーー………私が前居た世界でGVとしてる事を客観的に見るとこんな感じなんだ…』
そんな風に私は呟きながら二人を私は切なげに羨ましそうに見つめるのだった。
「シアン」
色々な疑似的なアレをすませたモルフォはなんとか色々と発散させることが出来たようで、
体を草原に身をゆだねて乱れた衣服のまま夢を見ているような表情でウットリとしていた。
GVも流石に疲れたみたいで同じように草原に身を委ねている。
私はこの時、また名前の問題が浮上したのを思い出した。
今GVは私の事をモルフォと呼んでいる。
でもモルフォは本来今あられもない姿で横になっている彼女の名前なのだ。
どうしようかと頭を抱えていたらGVが起き上がりこう尋ねた。
「どうしたのモルフォ? そんなに困った顔をして?」
『GV…実は…』
GVにまた名前の問題が浮上したことを何とか伝えた。
GVも私の想いを感じ取った様で横になっているモルフォを一度見て納得の表情をしていた。
「……なるほど、こっちの君が本来のモルフォなんだね?」
『そうなの…だから如何したらいいか分からなくて…』
「……実はこんな事もあろうかと思って、幾つか名前の候補を用意してたんだ」
『……ぇ?』
こんな事もあろうかとって…
どうして? どうして名前の問題が再浮上する事が分かったの? GVは続ける。
「モルフォの名前を君にあげた時とても嬉しそうな想いが伝わって来たけど、
でもほんの少しの、ほんの少しだけの悲しみが伝わってきたんだ」
『GV…』
「前にも言ったよね? 俺は君の悲しい感情だけは嫌なんだって」
私自身でも分からなかった少しだけの悲しみをGVは理解してたの? GVは言葉を続ける。
「あの時は昆虫図鑑から候補を見つけてみたけど、今度は君の翼の色に着目してみたんだ」
私の翼の色? …私の翼の色は青色だから私の名前、ブルー辺りになっちゃうのかな?
翼の色から名前を付けてくれるのは嬉しいけど、
それだったらまだモルフォの方がと、私はGVの顔を見つめながら私は思っていた。
そんなGVの表情が心なしか悪戯っ子っぽい表情をしていた。
あの時の、私の心を弄んだ時と同じような表情で。
「君の翼の色は青色っぽく見えるけどよく見ると、
……ぇ?
GV待って。
まだ私、心の準備が出来てないよ。
今その後の言葉の続きを言われたら、私嬉し過ぎて頭が可笑しくなっちゃうよ。
その悪戯っぽい表情はそういう事だったんだね? 酷いよGV、今そんな事言われたら…!!
「
『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「君の名前は、
私はこの時この瞬間、私の本当の名前を取り戻したのだった。
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「
俺がシアンと彼女を呼んだ途端彼女の喜びの気持ちが、
まるで満開の花が咲き誇る様に広がっていく。
「君の名前は、
そう断言したらその満開の花が更に広がり、
無限にその花弁をまき散らすように彼女の喜びが広がっていく。
シアンの表情を見た。
その表情は俺の大好きな、温かな涙を流し喜びに満ちた表情だった。
……不思議な感覚だ。
シアンと呼ぶたびに彼女の名前を呼んでいた時に感じていた違和感が無くなっていく。
まるでシアンが本当の名前であるかのように彼女に馴染んでいく。
そしてシアンは感極まったのか、俺に飛びつき歌を歌いたいとねだって来た。
『GV! 歌が、歌が歌いたいの! このたまらなく嬉しい気持ちを発散したいの!!!』
「……いいよ
そう思わず名前を呼んだらまたシアンの喜びが爆発した。
本人にとっては不意打ちだったらしい。
顔を真っ赤にしている。
「じゃあ俺が決めてもいいかな?
『!!!!!!! もう、GV! わざと言ってるでしょ!?』
シアンは怒っている素振りを見せてはいるが喜んでいるのがバレバレなのが微笑ましい。
俺はシアンに何時も見せている表情でシアンを見た。
そんな俺を見たシアンの表情が段々とあの時のモルフォみたいに蕩けていく。
切なげに瞳を潤ませ吐息を漏らし、翼に力が抜けてたれ下がっていく…
シアンのその姿を見て俺はやっぱりモルフォとシアンは同一人物なんだなと再確信し、
彼女に近づき、その熱い吐息を漏らしている唇に自身の唇を重ねた。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。