【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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Chapter:狂愛

全てを捧げた男を永久(とこしえ)に監禁し、狂愛を捧げんと呪う堕ちた謡精女王(ティターニア)
「狂気纏いし監禁者(フォールンコンファインメント)」
その本心を狂気で固め、男をこの場に永遠に繋ぎ止める為、世界を越えし力を振り翳(かざ)す


第十八話

 僕とシアンは今互いに向き合っていた。

 今のシアンの表情は大人になった事以外は何時もの綺麗な笑顔のままだ。

 だがその身に宿る膨大な狂気、そして第七波動(セブンス)の波動を感じる。

 モルフォからの能力共有、そして記憶転写により、

僕は蒼き雷霆(アームドブルー)と電子の謡精(サイバーディーヴァ)を扱える。

 だからこそ今のシアンと僕との力の差が歴然なのを痛感した。

 余りにも桁が違い過ぎる。

 今の僕にはモルフォが付いていてくれているがシアンと切り離された為か弱体化している様だ。

 第七波動(セブンス)の強さとは使い手の意思の強さが反映しているのだという。

 今のシアンの、この桁違いの第七波動(セブンス)…それだけ僕の事を想ってくれていると、

自惚れても良いのだろうかと場違いな事を考えてしまう。

 

『そうだよGV…私は貴方の事をこれだけ強く想っているの』

『……! いけない! GV、貴方の思考が読まれてるわ!

アタシの方で防いでおくから、GVは目の前のシアンに集中して!』

『モルフォ…やっとGVの思考が読める機会が出来たのに、邪魔をしないで』

 

 これは…電子の謡精(サイバーディーヴァ)の精神感応能力を利用した物か。

 …シアンは息を吸う様に、当たり前の様に使って来たな。

 これが能力の練度の差か。

 しかし、こうして対峙してみたはいいが、

手の内が殆ど無効化されているというのは中々にハードルが高すぎる。

 蒼き雷霆(アームドブルー)と電子の謡精(サイバーディーヴァ)はシアンも使いこなせる。

 間違いなく今の僕以上に。

 シアンはモルフォと一緒に膨大な模擬戦や能力の訓練をしてきたのだ。

 まともにやり合おうとすれば間違いなくこちらが負ける。

 可能性があるのは僕が持つシアンには無いイメージで虚を突く事くらいか…

…もしかしたら僕の考えが正しければ蒼き雷霆(アームドブルー)は通せるかもしれない。

 僕はシアンに向かって走り出しシ(・)ア(・)ン(・)に(・)雷(・)撃(・)を(・)浴(・)び(・)せ(・)た(・)い(・)と(・)願(・)い(・)な(・)が(・)ら(・)雷撃鱗を展開した。

 

 『GVの雷撃はいつ見てもキレイだなぁ…でも、私には効かないよ?』

 「知ってるさ、モルフォを通じてね…でも、そうやって油断するのは良くないよ? シアン」

 

 一筋の雷撃が走り、その雷撃がシアンを貫く。

 シアンは雷撃を無力化したと油断していた為、自身の体を走る雷撃に驚いていた。

 この現象は本来は未来の僕が持つ「ダートリーダー」から放たれる避雷針(ダート)を、

対象にあてた時に雷撃鱗を展開すると発生する物だ。

 ……こちらの予想通り、シアンはこう思ってくれていたか。

 僕(・)の(・)雷(・)撃(・)を(・)受(・)け(・)て(・)み(・)た(・)い(・)と。

 これは「相州戦神館學園八命陣」に出てくる「協力強制」と呼ばれる物だ。

 作中に出てくる「邯鄲の夢」を用いた戦闘技法なのだが、

どうやら第七波動(セブンス)を利用した戦いにも使えるらしい。

 本来はもっと「嵌る」為にあれこれと仕込んだり、

入念な準備が必要だったりと作中では条件を満たすのは厳しかったりするのだが…

 シアンと切り離され、暴走したモルフォを助けたのもこれを利用した物だ。

 

 『あぁぅ……!』

 

 シアンは僕の雷撃を受けて身悶えている。

 心なしか嬉しそうに見える。

 いや、あれは間違いなく喜んでいる。

 …まあ本人がそう望んでいる以上この雷撃からは逃れられない。

 出来ればこのまま喜んでいる内に終わって欲しいと思っていたがそうはいかないらしい。

 

『GV…GVの雷撃…凄いよぉ…でも、何時までもこうしている訳にはいかないよね』

『…GV! シアンから反撃が来る気配があるわ!

雷撃麟を解いて、身体能力を強化して回避して!!』 

「……っ! ありがとうモルフォ!!」

 

 シアンが反撃をして来た。

 巨大な雷の聖剣を僕に振り下ろしてきた。

 僕もモルフォも本来ならばこの攻撃を無力化できる。

 しかしシアンが僕との「協力強制」に嵌っているように、僕自身もそれに嵌っている。

 故に回避しなければならなかった。

 今の僕はまだ雷撃麟と身体能力強化を同時には出来ない。

 僕は雷撃麟を解き、蒼き雷霆(アームドブルー)による身体能力強化をして雷の聖剣を回避した。

 あれは確か「スパークカリバー」だったはずだ。

 ただしモルフォから貰った記憶の中の物よりも十倍ほど大きさが違うが。

 あれだけの物を、ノータイムで出現させて反撃して来るとは…

モルフォのサポートが無ければ避けられなかった。

 

『残念、当たらなかったかぁ』

「……簡単には、当たってはあげられないからね」

『でもまだまだ甘いよGV! マンダラー!!』

 

 雷の聖剣の軌跡に発生していた雷が拡散し、僕に襲い掛かる。

 マズイ、これは躱し切れない…!

 

『大丈夫、GVはアタシが守る!!』

 

 モルフォが僕の前にバリアを展開する。

 拡散していた雷がそのバリアに阻まれ消失した。

 僕がホッとしたのもつかの間、シアンはもう次の手を打っていた。

 

『前もこうやって動きを止めたよね? モルフォ』 

 

 シアンから無数の鎖が僕達に向かって飛んできた。

 その無数の鎖は僕とモルフォの手足に巻き付き四肢を拘束した。

 

「ぐっ……」

『マズッ…』

『あは♪ 捕まえたよ? GV、モルフォ』

 

 シアンはとても嬉しそうに鎖につながれた僕達を見ていた。

 僕は鎖を解こうと雷撃麟を展開するがまるでビクともしない。

 モルフォの方も同様のようだ。

 ライトニングスフィアも放ってみたが結果は同じだった。

 

『こうやって一度、GVの事を鎖で繋いでみたかったの♪ …もう「積み」だよ、GV、モルフォ』

 

 シアン…僕に対してそんな事考えてたの?

こんな時じゃ無かったら歓迎しても良かったが、今はそういう訳にはいかない。

 ……「協力強制」以外にももう一つ考えていた切り札がある。

 もしこれがうまく行くならば…

僕は蒼き雷霆(アームドブルー)のEP(エレクトリックサイコ)エネルギーを僕(・)自(・)身(・)の(・)体(・)に(・)流(・)し(・)込(・)ん(・)だ(・)。

 

「……どうやらまだ「積み」じゃないみたいだ、シアン」

『え?』

 

 シアンの発生させた鎖が僕の発生させた不(・)可(・)視(・)の(・)力(・)に(・)よ(・)り(・)粉々に砕け散った。

 …どうやら成功したようだ。

 

『鎖が…GV、何をしたの!?』

『ありがとう、GV! アタシも助かったわ』

「この戦いが終わったら教えてあげるよ、シアン」

 

「ラムダドライバ」は無事再現出来た。

 これは考えたことが形となる「フルメタルパニック!」に登場する架空兵器の一種だ。

 物凄く乱暴にざっくりと説明すると人間はみな微弱な超能力を持っているらしく、

それを増幅する兵器がラムダドライバなのだ。

 だが増幅するにしても、

莫(・)大(・)な(・)電(・)力(・)を(・)人(・)体(・)に(・)流(・)す(・)必(・)要(・)が(・)あ(・)り(・)、(・)普(・)通(・)な(・)ら(・)そ(・)の(・)電(・)力(・)に(・)人(・)間(・)は(・)耐(・)え(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)。

 そこを作中では人体を模した兵器「アーム・スレイブ」で解決していたが…

 僕には蒼き雷霆(アームドブルー)、雷撃を操る第七波動(セブンス)がある。

 試す価値は十分にあったが、懸念事項もあった。

 それは「極度の緊張状況でありながらなお理性的でいられる時」

という精神状態でないと使用が出来ないという所だ。

 だがどういう訳か、それを無視して発動できた。

 その効果も僕の予想を超えて高い結果となっており、更にどういう訳か、

ウィスパードが発動させたラムダドライバと同質の力を振るう事が出来る様だ。

 …この辺りは第七波動(セブンス)側の力なのかもしれない。

 この力も割と何でもありなイメージが僕の中にはある。

 僕の間違った知識や足りないイメージを第七波動(セブンス)が補っているのかもしれない。

 

『今のは本当に驚いたよ、GV…でも、も(・)う(・)時(・)間(・)は(・)十(・)分(・)に(・)稼(・)げ(・)た(・)よ(・)?』

『時間ですって…まさか!』

「モルフォ、どういう事だ?」

『「詩魔法」よ! シアンはGVと対峙していた時からそれを紡いでいたのよ!』

 

 「詩魔法」…「アルトネリコ」の「レーヴァテイル」と呼ばれる種族が使う魔法だ。

 確か「内なる想いを高めることで様々な現象を起こすことの出来る能力」だったはず。

 シアンは確かヒュムノス語を完璧に理解していた。

「アルトネリコ」に登場する詩を物凄く気に入っていた為だ。

 そう考えるとシアンが「詩魔法」を扱えるのも分かる。

 寧ろ電子の謡精(サイバーディーヴァ)との相性が抜群だ。

 何故ならば両方とも歌…詩が軸になっているからだ。

 シアンにとって間違いなくイメージしやすい筈。

 そんな事を考察している僕らを後目にシアンが高度を取り歌を…詩(・)を本格的に紡ぎだす。

 そして…

 

『世界樹を模した増幅塔よ…どうか私に愛しき人(GV)を繋ぎとめる為の力を貸して』

『「世界樹を模した増幅塔…まさか!!」』

『Ar(アル) tonelico(トネリコ)!!』

 

 シアンの背後から身に覚えのある天高く聳え立つ塔が出現した。

「アルトネリコ」の第一塔の姿だ。

 その塔のキラキラ綺麗に光る玉…「氷の瞳」から強大な光の柱が僕達に降り注ごうとしていた。

 膨大な、とてつもない膨大な第七波動(セブンス)の波動をあの塔の光から感じる。

 あれをまともに受ければ僕達は再び立ち上がるのは無理だろう。

 

『GV…あり得ない話をするけど…

もし、もしもだよ? この一撃に耐えることが出来たら、私は負けを認めてあげる』

『耐えるって…こんなの、耐えられるわけないわ!』

 

 あのシアンがあれだけ大口を叩くだけあって凄まじい第七波動(セブンス)の波動だ…

 でも僕の方も第七波動(セブンス)がどういうものかというイメージが固まった。

 要するになんでもアリなのだ。

 もうそれが分かった為、この状況でも僕に不安は無い。

 だがモルフォはシアンの圧倒的な第七波動(セブンス)に怖気づいてしまっているようだ。

 そこで僕は今にも不安に押しつぶされそうになっているモルフォに声をかける

 

「大丈夫だよ、モルフォ」

『GV…でも、シールドヴォルトとバリアをいくら重ねたって…』

「モルフォ…今この瞬間だけでもいい、僕を信じて欲しい

その意思が、想いが、僕の力になるからね」

『……分かったわ、GV…ごめんなさいね…アタシ、弱気になっちゃって…』

「…あれだけの第七波動(セブンス)の波動を感じれば、そう思うのも分かるさ

さて…やろうかモルフォ! 僕に君の翼(チカラ)を貸してくれ!」

『……っ! うん! アタシの歌が、貴方の翼(チカラ)になる!!』

 

 モルフォのありったけの想いが籠った謡精の歌(ソングオブディーヴァ)が僕に力を与えてくれている。

 これでもう僕達に負ける要素は無くなった。

 僕は再び蒼き雷霆(アームドブルー)のEPエネルギーを僕自身の体に流し込む。

 …僕達の決着が付こうとしていた。 

 

『GV…これからは、どこまでもずっと…ずっと一緒にいられるね…

GVの夢(記憶)の世界が消えてしまった時、私は絶望したの

まだGVが生きている内に転生させてあげれば、消えてなくなる事何て無かったのにって…』

 

 シアンの気持ちが、悲しみが、痛いほどに伝わってくる。

 彼女の本音を覆いつくしているあの狂気の正体は、

もう二度と僕の傍に居られないと思った時の絶望なのだろう。

 

『でも、私達二人だけのこの真っ暗な暗黒の世界に、GVは来てくれた

お話が出来るようになった…お互い、触れ合えるようになった…私にはもう、それで十分なの

だからGV…貴方を、ここから先(地獄)へは行かせない…! 絶対に!!』

 

 シアン…僕がもっと長く…いや、永(・)遠(・)に(・)生(・)き(・)て(・)い(・)ら(・)れ(・)れ(・)ば(・)、

シアンにこんな悲しみや苦しみを与えなくても済んだのに…

でも、それでも…僕はここで立ち止まる訳にはいかない!

まだ僕はシ(・)ア(・)ン(・)と(・)モ(・)ル(・)フ(・)ォ(・)に(・)出(・)会(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)!

ここで僕が立ち止まってしまったら、ここに居る彼女達が消えてしまう!

そんなの、僕には耐えられない!!

それに…そんな表情をしておいて十分だなんて、そんな言葉に説得力なんてあるはずもない!!

 

『シアン…貴方…』

「……僕の事をとても強く大切に思ってくれている事は良く分かった

いや、昔からずっと分かっているよ、シアン

でもそんな辛そうな、悲しそうな顔をして、

自分の本当の気持ちを封印してまでしなきゃならない事なのか!!

僕はシアンの悲しみの感情が嫌なんだ! 君には本当の笑顔で笑っていて欲しい!

だから絶対に本音を聞き出して、先(地獄)に進ませてもらう!!」

 

 塔から僕達に向かって光が降り注ぐ。

 僕はイメージする。

 彼女のあの綺麗なシアン色の翼を。

 モルフォのモルフォチョウを連想させる素敵な翼を。

 そして紡ぐ。

 僕の心からの決意を。

 

「迸(ほとばし)れ! 蒼き雷霆よ(アームドブルー)! 響け! 謡精(ディ-ヴァ)の歌声よ!

シアンの…

愛しい人(シアン)の悲しみと絶望の闇を照らす、歓喜と希望の曙光(しょこう)となれ!」

 

 そして発動する、光の柱への対抗策を。

 

「愛(いと)しき謡精達の翼よ! その儚き輝きを携(たずさ)え、森羅万象を犯す異能を否定する力となれ!」

「謡精の羽(フェザーオブディーヴァ)!!!」

 

 不可視の力が光の柱を遮断する。

 異能を否定する力が光の柱を蹂躙する。

 光の柱は全て防がれた。

 …シアンは元の姿に戻っていた。

 翼の色も僕の大好きな綺麗なシアン色だ。

 僕はシアンの表情を見た。

「しょうがないなぁGVは」と言いたげな困った様な、でも何処か嬉しそうな表情だった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





※Ar(アル) tonelico(トネリコ)について
この小説内のシアンによるSPスキルです。
シアン本人の膨大な第七波動(セブンス)によりアルトネリコ第一塔を生成後、
「氷の瞳」から追尾する光の柱を複数、対象に落とす。
つまりは「詩魔法:塔結線orアルトネリコ」の再現とも言えます。
元ネタは当然アルトネリコ。

※謡精の羽について
この小説内のGVによる蒼き雷霆(アームドブルー)と電子の謡精(サイバーディーヴァ)を合わせたSPスキルです。
効果は異能の否定、つまりはこの小説内におけるあらゆる第七波動(セブンス)の無効化です。
謡精の羽の元ネタは勿論フルメタです。
元ネタと違って効果範囲等を調整できるとなかなかに便利な仕様となっております。
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