【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第二十一話

 GVが救出されてから翌日。

 彼の部屋にアシモフが訪ねて来た。

 アシモフはGVを連れて会議室みたいな大きな部屋で自身の自己紹介を済ませた。

 

「昨日は名乗れなくて済まなかった 私の名前はアシモフ

この武装組織「フェザー」の創設者だ」

「武装組織…ですか」

「この組織の目的は、能力者達の人権を守る事にある」

「能力者達の…人権を守る…?」

「そう、それが我々「フェザー」の目的だ

故に君を皇神から解放した まあ、世間的にはテロリストと見做されているがな…」

 

 能力者達の人権を守るか…

 GVにあんな事をして置いて、よくもそんな抜け抜けと…!

 

『シアン? 落ち着いて、今はこの人相手に気取られる訳にはいかないわ』

『モルフォ…でも…』

『今アタシ達が気取られたらGVを人質に取られるかもしれない

それは絶対にあってはならないわ』

 

「フェザー」は人権を守るのが目的とは言え、相手はあのアシモフだ。

 私達の事がバレたら、下手をすればGVにまで被害が及ぶ。

 …アシモフはGVの(記憶)の世界が終わるまで、手を出せない事が確定してる。

 何方にしろ、今は手を出す訳にはいかないのだ。

 

「……僕も仲間に入れて下さい」

「何故? ……リベンジか?」

「違います このままでは僕は人を憎む事しか出来なくなってしまう…それに…」

「それに?」

「能力者の人権を守る、その目的に共感しました

正直、これ以上僕みたいな人達を増やしたくありません

あの苦痛に満ちた日々は、とても…辛かったから」

「そうか……我々は常に死と隣り合わせだ…相応の覚悟が居るぞ?

君が考えているよりも、ずっと大きな覚悟が」

「はい…」

「……いいだろう、君を「フェザー」に迎える…名前は?」

「…………」

「ふむ……では「ガンヴォルト」」

「……!!」

「今日から君の名は「ガンヴォルト」だ…改めて、君を歓迎しよう

後、名前が長いと思ったら「GV」と略してもらうといい

私は早速、そうさせてもらうがな、GV」

「はい……!!」

 

 GVの名前…ガンヴォルトはアシモフが名付け親だったの!?

そこまでしておいて、どうしてあの時GVを…!

 

「では早速訓練を始めよう、GV 何をするにも、先ずは体力作りだ

君には走り込みと基礎トレーニングを只管こなしてもらう」

「分かりました」

「君の能力、蒼き雷霆(アームドブルー)の事は暫くは後回しだ

その力は君が考えているよりもずっと強力で危険な力だ

ある程度体力が付き体調が万全な時に、その使い方を模索するといい

ある程度は私も協力出来る…初めて能力を自分で使用する時は私を頼るといい」

「はい…!」

 

 ……この時のアシモフ()()は明らかにGVを気遣っている。

 一見すると冷徹で冷たい印象があるのに、

こうしてGVとの会話を聞いているとどこか温かさを感じる。

 あの事が無ければとても悪い人には見えない。

 私達は疑問に思った。

 何故そこまでしておいてGVを手に掛けようとしたのか?

 GVに優しく語りかけているアシモフさんにあの時、一体何があったと言うのだろうか?

 分からない…GVの(記憶)から何か分かるといいのだけれど…

 

『…モルフォ』

『分かっているわシアン…アシモフが悪い人には見えない、そうでしょ?』

『うん…』

『ならアシモフが居る時は、GVとの会話を良く聞いておかないとね

そこから何か分かるかもしれないし』

 

 GVはあの時アシモフさんの事を

「父親と呼べる人がいるとすれば多分、アシモフなんだと思う」と言っていた。

 こんなにGVに慕われている人があんな事をするようになってしまった切欠…

私達は見つける事が出来るだろうか?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 僕が「フェザー」に入ってからもう約六年ほど経った。

 僕は十四歳になった。

 この間アシモフには様々な事を教えてもらった。

 基礎的な体力作りに加えて格闘技もみっちりと叩き込まれた。

 アシモフが言うにはカラテの「チャタンヤラクーシャンク」をオリジナルとした、

オリジナルのマーシャルアーツだって話だったけど…

 それは兎も角、蒼き雷霆(アームドブルー)の基本的な使い方は勿論、

僕の今持っている武装「ダートリーダー」の扱い方や手入れの仕方。

 雷撃の効率的な打ち込み方、SPスキルの使い方、生体電流を利用した身体強化、

水に弱い事や、EPエネルギーのチャージの型なんかも教えてもらった。

 最近では電磁結界「カゲロウ」と呼ばれる物が発見され、

今僕が首から下げている「フェザー製ペンダント」によって僕はこれを扱えるようになった。

 あの時の…シアンとの戦いの時にモルフォとの記憶転写と能力共有で、

一時的に僕自身も使えるようになっていたお陰で能力関係はとてもスムーズに事が進んだ。

 まあでも最初はこの時のEPエネルギー使い放題が癖になってしまっていた。

 だから良くオーバーヒートを起していたので、

アシモフからは「EPエネルギーの残量には気をつけろ」と今でも言われている。

 それ以外にも蒼き雷霆(アームドブルー)を利用した「ラムダドライバ」の事もアシモフに見てもらった。

 アシモフは最初、この現象に物凄く驚いていたっけ。

 まさか人体に電流流して超能力とか普通なら発想も出来ないだろう。

 これについてはアシモフと試行錯誤をしている内にある事が分かった。

 ()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()

 蒼き雷霆(アームドブルー)は水が弱点。

 特に水中でEPエネルギーを体外に放出しようとすると即座にオーバーヒートしてしまう。

 対してラムダドライバは()()()E()P()()()()()()()()()()()()()()()()()

つまり体外にEPエネルギーを放出する必要が無いのでオーバーヒートは起こさないのだ。

 この弱点を補えるのは僕の中ではとても大きかった。

 アシモフもまるで自分の事の様に喜んでくれていた。

 潜入捜査をする際ラムダドライバは大変お世話になった。

 今では息を吸う様に自在に扱うことが出来る。

 まあ弱点が無いわけでは無いけど…ラムダドライバの性能は高いが、

直接的に利用した攻撃時と防御時に凄まじいEPエネルギーを消費する。

 電磁結界「カゲロウ」の方が消費が軽いくらいだ。

 その性質上ラムダドライバを利用した戦闘ではエターナルヴォルトとの相性が抜群にいい。

 逆にそれ以外での行動ではEPエネルギーの消費が皆無と言ってもいい。

 それにラムダドライバは第七波動(セブンス)や光を遮断出来る。

 恐らくラムダドライバによって発生する力は第七波動(セブンス)とは違うのだろう。

 故に後は僕自身の特徴を変装等をして誤魔化せば能力者である事すら隠蔽出来るのだ。

 だからこそ潜入捜査に向いていると言える。

 そして僕が習った格闘技との組み合わせも良好だ。

 まあ直接的な戦闘での総合面では蒼き雷霆(アームドブルー)に軍配は上がる。

 でも局地的な場面ではラムダドライバの方に軍配が上がる。

 要は使い方次第だ。

 これらのお陰で僕の戦い方も大分しっかりとした形となり、

数年前からミッションに出る事も許されるようになった。

 そして僕には仲間が出来た。

 お調子者だけど実力は本物で、仲間思いで、僕の事を良く気にかけてくれる「ジーノ」

 僕やジーノの姉みたいな存在で、

でもちょっとおっちょこちょいだけど優秀なオペレーターの「モニカ」さん

 そして僕に様々な形で力になってくれた「アシモフ」

 最近ではこの三人に僕を加えて「チームシープス」を結成している。

 …最初はテロリストと聞いていたので転生前の知識を持つ僕は内心身構えていた。

 でもここは…「フェザー」はとても暖かかった。

 それだけでも僕としてはとても有難かった。

 …この世界で過ごしてみて良く分かった。

 能力者は皆恐れられている。

 あの時のシアンがこの世界に僕を送りたがらなかった理由が今の僕には身に染みて分かる。

 これでは確かに僕の事を送りたくないと思うだろう。

 でもこれは僕の本当の目的に必要な事なんだ。

 この先出会うであろう今を生きるシアンとモルフォの為にも僕は歩みを止める訳にはいかない。

 …僕はジーノとの格闘技の訓練を終え、モニターの画面を一緒に見ていた。

 そこには国民的バーチャルアイドル「モルフォ」姿があった。

 この時の僕はまだ隣に居るモルフォはシアンのペルソナという認識でしかなく、

 この画面に映っているモルフォがモデルになったんだな、くらいの認識しかなかった。

 そんな画面に映っているモルフォを僕の隣に居るシアン達は複雑そうな表情をして見ていた。

 そして遂に、僕にとっての運命の日がやって来た。

 電子の謡精(サイバーディーヴァ)抹殺のミッションが伝えられた、その日が。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
二十話と二十一話は、OVA版の回想シーンを参考に書かせていただきました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





※シアンとモルフォの態度について
 今回の話を読んでみて、いえ、それ以前から、
シアンとモルフォの態度に疑問を感じた人は多いのではないかと思います。
「余りにも人間性が残り過ぎているのではないかと」。
(もしそう感じて無い方がいたら、それは私の力不足です、申し訳ありません)
 その理由は転生前の平和な日常を知ることが出来たのが主な理由です。
 ヤンデレではありますが平和で穏やか世界でGVと過ごすことが出来た事で、
彼女が持つ優しさを失う事は何だかんだで(作者の中では)ありませんでした。
 まあそれ以外にも理由がありますが結構重要なネタバレ案件なのでそれは次の機会があればお話します。


追記

※原作初期のGVが爪で登場するスキルを使える件について
 第七話でシアンちゃんが転生前のGVを守ろうと足掻いていた時、
既にGVの爪から登場するSPスキル、
「グロリアスストライザー」を使っていた事を覚えていますでしょうか?
 そんなシアンちゃんと同一存在であるモルフォから、
第十七話で能力共有と使い方の記憶転写を受けています。
 それが理由で今のGVは爪までのスキルを全て扱うことが出来ているのです。
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