ターゲットは
その真実を知る
この話を聞いた時、私達は遂にこの時が来たかと思った。
この日を境にGVは過去の私達と生活を共にする。
その際ある問題があった。
過去の私達…過去のモルフォの存在である。
モルフォは私達と同じように音と電子の揺らめきを感じることが出来る。
この能力を誤魔化す必要が出て来たのだ。
これには私達もかなり手を焼いた。
なにしろこの能力、世界の壁も超えて今の私達はGVを感じる事が出来るのである。
ならば逆もしかり、当然このままではバレると考えてもいいだろう。
『どうしようモルフォ…』
『ここに来て最大の障害が過去のアタシになるなんてね』
もう私達二人ではどうしようもないのでミッションが始まる二年前くらいに、
GVに何か案があるか聞いてみた。
「……そうだね…一応案が無い訳じゃ無いんだ
二人共、確か小さくなる事が出来ただろう?
そのサイズを電子と同じサイズにしてみたらどうだろう?」
『電子と同じサイズ…』
『一応シアンがGVと一緒に勉強してきたのをアタシも記憶共有してるから、
そのイメージは出来てるけど…GVはいいの? アタシ達の姿が見えなくなっちゃうのよ?』
「……見えなくなるのは正直寂しい
…シアンとモルフォは今の僕だけじゃ無く、過去の僕の事も見てくれていた
だから僕も未来の二人だけじゃ無くて、今の二人を見たいんだ」
そうGVは答えていた。
そしてこの案は無事成功し、来るべき日の備えは出来た。
…GVは何時だって私達の事を真剣に考えてくれている。
想ってくれている。
そんなGVが、私達は大好き。
でも流石に過去の私達からGVを取り上げるのは良くない。
あの時の私達はGVが何もない空間をチラチラ見る事があった時以外に違和感は無かった。
だから私達はガマンしなければならない。
…しばらくこうして自由に姿を現す時間が大幅に減ってしまうのだ。
GVももう十二歳…久しぶりに疑似的な「アレ」をおねだりしてみようかな。
そう考えていたらGVは私達に近づき唇を奪い耳元で優しく囁いた。
「久しぶりにシアンとモルフォの甘い想いを受けてみたい」と。
GVは十二歳の子供の外見をしているのに、
転生前の大人の雰囲気が合わさったことで不思議な魅力が醸し出されている。
しかも私達の考えが、想いが、GVには筒抜けなのだ。
……過去の私達もこの魅力にやられたんだろうなと頭の片隅で思いながら、
頬を赤くしながら素直に首を縦に振るしか出来なかった。
そんな私達の回想を後目に、
「ターゲットは
「
そんな子をどうしてまた?」
「彼女の歌は我々能力者の
どうやら連中は
また、ごく僅かだが彼女の歌を聞いて体調不良に陥る能力者もいるらしい」
「つまりモルフォは能力者をあぶり出すためのソナーだったというわけね…」
「能力者の自由のためにも、そんなものは破壊せねばならない
ターゲットのプログラムコアは皇神の施設内に保管されている
我々が陽動を行う…GVはその隙に施設に侵入しターゲットを破壊して欲しい」
「…………」
「どうした? GV?」
「……っ! 了解、アシモフ」
「GV、大丈夫? 何か考え事をしていたみたいだけど…」
「……まあ俺もGVの気持ちは分かるぜ
何しろGVもモルフォちゃんの歌が大好きだもんな
新曲出るたびに速攻DLしてるの、知ってるんだぜ?」
「……っ! ジーノ、何時からそれを」
「GVのソワソワした様子を見ればすぐに分かるさ
…何時もの調子に戻ったな 今回の任務、失敗する訳にはいかねぇ、気合入れろよ、GV」
「ありがとうジーノ、必ず成功させるさ」
詳細確認が終わりGV達はミッションに挑む。
「シープスリーダー、潜入中のシープス2からの通信が来たわ」
「ばっちり聞いたぜ…モルフォのコアは皇神第一ビルだ…俺の事前調査通りにな」
「よくやった、シープス2…聞いていたか? GV」
「はい」
「今も次々と能力者達が特定されちまっている…! こりゃあひどいぜ」
「分かった…直ちに現場に向かう」
「コアを見つけ次第、それを破壊するんだ」
「了解」
過去の私が居るという、皇神第一ビルに向かって。
「……こちらGV、コアが見当たりません」
「何だと?」
「そんなはずは無ぇよ、場所は合ってるのか? GV」
「間違いない…何やら慌ただしく移送したような後がある、恐らく場所を移されたのかも」
「やむを得ん…ミッションを中止する…ただちに帰還するんだ、GV」
そこは既にもぬけの殻で…
「……どうやら、こちらの動きが読まれていたみたいです」
「……っ! 直ぐに其処を離脱しろ、GV!」
アシモフさんの言葉が届くことは無くGVは皇神兵に捕まり、とある場所に連れて行かれた。
……GVは今まで沢山の訓練やミッションをこなしてきた。
あの程度の数の皇神兵に後れを取るとは思えない。
恐らく情報を仕入れる為に態と捕まったのだろう。
そして連れて行かれた場所は…拷問室だった。
そしてそこに居た
「……っ!」
「どう、フェザーの少年? 電磁ムチのお味は?
アタシたち皇神グループに刃向かうなんておバカちゃんねェ…
目的は
いえ、抹殺ってトコロかしら? 今や企業の広告塔の枠を超えて大勢の人たちに愛される
国民的バーチャルアイドル──
ウフゥ、アタシも大好きぃ 新曲はソッコー
…だけど
「………」
「ウフフ…絶望した? フェザーの目論見なんてゼ~ンブお見通しってワぁケ!
これは尋問なんかじゃないの…アナタみたいなカワイイ子をいたぶりたかっただけぇ…
つまりはシュミッ!! さぁ~少年! いい
…まったく、この
GVがそんなちゃっちな攻めで満足する訳無いじゃない。
あの時私達が二人掛りでありったけの
あの後私達はGVから一杯お返しされて大変だったんだから。
ほら、案の定叩かれたはずのGVは無傷だよ? 変態のオジサマ?
「……そうか、
「むっ、無傷ッ!! 高圧電流を流した電磁ムチなのよッ!? 何で平然としていられるのォ!?」
「生憎だけど、ボクにそんなムチや電撃は効かない」
「この雷光はッ…まさか…
雷撃の…
「さようなら、変態のオジサン…情報提供感謝するよ
それと……気安くモルフォの名前を僕の前で呼ばないでもらおうか」
GVはそう言って
モルフォの名前を出されてミッション中なのにも関わらずGVは珍しく怒っていた。
GVから怒りの感情が伝わってくる。
恐らくもう察しているのだろう。
モルフォのコアが過去の私である事を。
だからあんなに怒りの感情が顔にまで出ているのだろう。
「コードネームGV“ガンヴォルト”より…シープス3、回線開いて」
「こちらシープス3! 無事だったのね、GV」
「ええ、チームに情報の修正を、ターゲット
これから施設を脱出し、ミッションを継続してターゲットを追いかけます」
「ちょっと本気? 罠の可能性だって低くないのよ!」
「こちらシープスリーダー 了解した GVはそのままミッションを継続
シープス3は情報をキャッチし次第、こちらへ連絡を回してくれ」
「…わかったわGV、無茶もホドホドにね」
「シープス2も目標を変更 GVのサポートを頼む」
「へいへい、こちらシープス2 聞こえてるぜ…まあ、結局いつも通りな流れになったな
シープス2からGVへ、命は大事にしな? そうすりゃ、一生使えんぜ?」
「……了解、善処するよ」
「善処するって…ハァ…ホントにわかってんのかねぇ…
お前いっつも無茶ばっかするから、心配なんだぜ? 俺は」
「これより
グッドラック! GV!」
通信が切れ、気絶した
「………ジーノ、そんな事、僕は身に染みて分かっているよ
シアン達の為にも、僕の命は大事にするつもりさ」
「……ミッションを再開する!」
GVは駆ける。
「GV、ターゲットの所在がわかったわ
その施設に停車している皇神の専用列車にターゲットが積載されているみたい」
「了解(絶対に間に合わせて見せる…! あそこにはシアンが、モルフォが居るんだ!)」
今の私達を助ける為に。
「上手く列車に取り付けたようだな
…ここまで来たんだ、しくじるなよ? GV」
「了解、障害を排除して先頭車輌に向かいます」
今の私達の、狭き世界を破壊する為に。
「後方より複数のレーダー反応を確認! 第九世代戦車みたいね…」
「敵を捕捉した、これより邀撃する
一機目命中、二機目命中………三機目命中! タンク三機の狙撃に成功!
露払いは済ませた…このまま先頭車輌に向かえ! GV」
「了解!」
今の私達に、色鮮やかな世界を見せる為に。
「そんな! マンティスが全滅だと!?」
「予備があと一機あるはずだ! 前の車輌へ発進準備の通信を入れろ!」
今の私達に、自由の翼を与える為に。
「やっぱプログラムコアを破壊したらもうモルフォちゃんも観れなくなるんだよなぁ
オレ、モルフォちゃん結構気に入ってたんだよ、大人っぽいところとかさ…
GVならこの気持ち分かるだろ?」
「……そうだね、シープス2」
「……GV、シープス2、
心の拠所だとしても、あの謡精により多くの同胞だちが皇神に捕らえられ今も苦しんでいる」
「…判ってるって、任務に私情を挟むほどバカじゃねえさ、そうだろ? GV」
「…………」
「GV?」
「ん? どうしたの、シープス2?」
「こりゃ俺の思ってた以上に重傷だな…気張れよ、GV
折角ここまで来たんだ…失敗しましたで終われないぜ?」
「…了解、シープス2」
そして先頭車輌を目前に
「こんなオモチャに付き合っている暇は無い! 退いてもらう!」
「迸れ、
今のGVには成すすべなく破壊されていく。
この時の
そしてアシモフさんが、動力車輌とターゲットの車輌をヘリからの狙撃で切り離し、
GVは、今の私達の居る先頭車両に乗り込んだ。
そして…
「これは……っ!」
GVは今の私達を見ていた。
この姿が視界に入った瞬間、
GVからまるで怒り狂ったと思わせるような爆発的な感情が発露される。
この光景が許せないのだろう。
納得が出来ないのだろう。
機械で繋がれ、狭き世界に押し込められ、自由を奪われている、今の私が。
無表情で、全てを諦めた瞳をしていた、今のモルフォが。
GVにとっての私達が汚されたと荒れ狂っているのだろう。
それでもGVは歯を食いしばり、一瞬だけ発露したその感情を気合と根性でねじ伏せる。
それは全て私達を想い、怖がらせない為。
GVは必死に、必死に、そのやり場の無い怒りを鎮めていた。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。